さきほど、NHKニュースが「ベトナムの反中国デモ」を報道した。南沙諸島問題に抗議するベトナム人デモの映像だ。「東京新聞」も下掲のような記事を掲載した。
ベトナムと中国は、歴史的に見て極めて仲が悪い。千年の「北属」という言葉があるように、ベトナムの歴史は中国に侵略され続けた歴史でもある。さらにベトナム戦争後には、カンボジア問題をめぐって中国軍が中越国境を越えてベトナムに侵入し、中越戦争が起きたことはまだ記憶に残っている。
「ひとつの中国」を標榜する中共(=中国共産党)当局は、あらゆる詭弁を弄してでも、領土を拡張しようとしてきた。かねてから中国は「琉球は中国の一部」だと主張していたが、本気とは捉えなかった日本人が大多数だったのではないか。だが、尖閣諸島での中国漁船衝突事件によって、彼らが「本気」であることが分かった。
中国は、南沙諸島、尖閣諸島の他にも、インドとの国境問題、ビルマ・タイとの河川使用問題などの領土問題を抱えている。
日本政府に”外交力”があるならば、この際、ベトナムとの連携を強めて、中国の領土的野心に対抗すべきだと思うのだが、進退問題を「言った、言わない」で騒いでいる菅直人にはとてもそれを期待できない。
それから、もうひとつ奇妙なことがある。先の尖閣事件で、東京の中国大使館周辺を日本人の抗議デモが取り巻いたが、NHKを始めとするマスメディアは、一切それを報道しなかった。その理由は、抗議デモが「右翼」によるデモだということ、報道によって中国政府を刺激することになるということだった。
それでは訊くが、ベトナムの反中国デモを夜のニュースで大々的に採り上げたNHKの意図とはいったい何なのか? 同じ領土問題でありながら、自国の反中国デモを黙殺し、わざわざベトナムのデモを報道する、その「理由」を説明してもらいたいものだ。
まあ、NHKにそんなことを訊かなくても、その答えは次の記事の中に出ているけれども…。
「関係筋によると、中国側は事前にベトナム側にデモを許さないよう要請していた」
尖閣事件の時も、中国政府から同じような恫喝があったということ、そのことが問わず語りに語られている。中国政府に屈した民主党政権の弱腰(柳腰?!)がバレバレではないか。少しはベトナム政府のしたたかな外交を学ぶべきだろう。
ベトナムで異例の反中デモ 南沙諸島めぐり、当局容認
2011年6月5日 17時01分
5日、ベトナムの首都ハノイの中国大使館前で、治安当局者の監視の中、反中デモを行う市民ら(共同) |
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【ハノイ共同】ベトナムの首都ハノイの中国大使館前で5日、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島や西沙(同パラセル)諸島などの領有権を主張する市民や学生ら約300人が「中国は侵略をやめろ」などと抗議デモを行った。南部の最大都市ホーチミンでも千人以上が中心部で反中デモ行進を行った。
共産党独裁体制下にあるベトナムではデモは異例。中国による南シナ海での探査妨害などで反中感情が高まっており治安当局は監視下でのデモを容認、一定の“ガス抜き”を図ったとみられる。
デモ隊は大使館正面の公園内で、南沙、西沙は「ベトナムのものだ」「中国の挑発に反対」などと書いた横断幕や紙を掲げ、気勢を上げた。警察は周辺の道路を封鎖、機動隊を配置するなどしたが、混乱はなかった。
先月26日に南シナ海で中国の監視船がベトナムの探査船を妨害。31日にはベトナム漁船が中国船から威嚇発砲される事件が発生した。インターネットの交流サイト、フェイスブックや携帯メールでデモの呼び掛けが広がっていた。
関係筋によると、中国側は事前にベトナム側にデモを許さないよう要請していた。
「中国の侵略反対」ベトナム200人異例のデモ
読売新聞 6月5日(日)18時16分配信
南シナ海で先月、資源探査船や漁船が中国監視船に相次ぎ妨害されたことへの抗議で、参加者は「中国の侵略に反対」などと書かれたポスターを掲げ、気勢を上げた。一党独裁のベトナムでのデモは異例で、まもなく警察当局に解散させられた。
デモは、インターネットなどを通じて呼びかけられた。学生ら多数が参加する動きを見せていたが、当局は大学などを介して「デモ参加者は罰する」と警告していた。