橋下徹・大阪市長が「能力主義」に基づく公務員改革を進めている。まずやり玉に挙がったのは、大阪市交通局。市バスの運転手の給料が「民間に比べて」極めて高い点が、攻撃の的になった。
橋下流の手法は、はっきりしているというか、ワンパターン。「敵」を見つけて、アドバルーンをぶち挙げ、「世論」を味方につけて、仇敵をぶち倒すというやり口だ。
だが、橋下市長が決してこぶしを挙げない相手がある。そのひとつが、障害者。大阪市役所では、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(下記参照)に基づき、障害者を一般職員とは別枠(障害者枠)で採用してきた。これらの障害者職員は、市役所のかなりの部局に配属されているはずだが、その人事考課はどう行われているのか? 橋下市長は「人事考課でDを2年続けて評定された職員は、分限処分の対象とする」と広言している。つまり、勤評が極めて悪ければ、有無も言わさずクビにすることもできる。障害者職員といえども、公務員=大阪市職員であることに変わりはない。障害があることが特別扱いの理由にはならない。そもそも「障害者の雇用の促進等に関する法律」は、障害者職員を「特別扱い」や「優遇」するように定めた法律ではないのだ。
仄聞するところでは、障害者職員のかなりの部分が、法律に基づき雇用されたものの、実際の職場では「お荷物」状態になっていると聞く。他都県のある特別支援学校(養護学校)に配属された障害者の事務職員は、脳性麻痺のため、一般職員の十分の一も仕事が進まない。当人の無能力を承知の上で「一人前」の職員として配属した人事当局のやり方は無責任きわまりない。当然、職場での人事考課が悪かったのだが、それに対し当該職員が「障害者の権利」を主張したので、職場の上司も、教育庁(教委事務局)も下手に手を付けれらない状態となった。行政が最も恐れるのは「障害者を差別した」と言われることだからだ。結局、その職員の不始末の責任は、管理監督者である校長と職場の監督者が負わされる結果になったという。橋下市長がこのようなケースに遭遇した場合、「能力主義」と「障害者の権利」をどう折り合いをつけようとするのだろうか。これまで「触らぬカミに祟りなし」という状態だった障害者公務員の問題を明るみに出し、きちんと決着をつけてほしいものだ。
果てしない公務員叩きが続く中で、法律上の要請で雇用された障害者枠職員が、本当に公務員としてきちんと働いているのかどうか、改めて検証すべき時期だろう。これまでのような、議論の対象にもせず見て見ぬふりをする、障害者職員の不祥事は現場の管理者に責任を負わせるという行政当局の態度は、到底、許されることではない。橋下市長は、この際、障害者職員の実態を把握し、公務員として相応しくない者については、断固とした処分を下すべきだ。
橋下市長がこの問題で、毅然たる態度を示すことができるかどうかは、「橋下改革」がホンモノかどうか見極める重要なポイントだ。
「障害者の雇用の促進等に関する法律」