昨日、いわゆる「加計問題」で衆参の閉会中審査が行われた。NHKは全プロセスを生中継したから、それを見た人はかなりの程度まで自分なりの認識・判断を得ることができたのではないか。
私が印象的だったのは、加戸守行・前愛媛県知事の証言。文科省OBで前川助平・前事務次官の先輩でありながら、この問題をめぐって真っ向から対立する立場に立った。証言をつぶさに見ていると、この人の誠実さが十分に感じられた。少なくとも、歌舞伎町の売春クラブまがいに行く人ではありえない。
ところが、今朝の「朝日」も、TVのワイドショーも、この加戸証言については一切触れずに、前川証言が政府の矛盾を突いたなどと、前川をヨイショする報道ばかり。実際に加戸証言を流してしまえば、ワイドショーがたくらむ「印象操作」「世論誘導」は成り立たないから、まさに証言を無視したということだろう。だが、これはマスメディアの自殺行為。敢えて言えば、狂気の沙汰ではないのか。
ここに「加戸守行証言」の映像がある。青山繁晴議員が質問する後ろで、その言動をせせら笑う、杉尾秀哉(民進党、元TBSニュースキャスター)の顔も見られる。この映像だけで、マスメディアの世論誘導とそれを企ててきたマスメディアのボス(杉尾)、「加計問題」で好色ピエロ役になった元事務次官が三題噺のように伝わってくる。思わず、失笑。
前川喜平前次官、参考人招致のポイントは? 「思い上がった文科省にメスを」と元官僚・八幡和郎氏
参考人招致で、前川氏は伝聞と密室でのやりとりを「真実だ」と印象操作するだろう。それをウソと証明することも不可能だ。偽証すれば刑事責任も問える証人喚問をしても、意味がない。
それより、「週刊現代」(7月15日号)に掲載された、前川氏のインタビューに注目すべきだ。ジャーナリスト、田原総一朗氏の「戦いの真意は何ですか」との問いに、前川氏は次のように答えている。
「文部科学省が官邸の世界からできるだけ離れられるようにすること。大学設置審議会における大学の設置審査は、政治的圧力から免れて、役所としてまっとうな審査をしてほしい」
何と、思い上がった発言なのか。文科官僚の本性を示している。
政治が無原則に行政を壟断(ろうだん)すべきではないが、どこに大学や学部をつくるかは、当然、政策的な意向も考慮すべきである。政治が枠組みだけつくって、後は役所にお任せではいけない。かつて日教組などが「教育は、三権(立法、行政、司法)と同じ、第四の権力だ」と言っていたが、前川氏の論理はそういうことなのだろう。
文科省では、それぞれの分野のボスたちの意向・利益が優先されてきた。業界が「既得権が侵されない方がいい」となれば、52年も獣医学部をつくらせなかった。ボスらが「ポストを増やしたい」となれば、定員を満たせないほど新規の大学や学部が設置され、文科官僚は彼らを擁護する代償として天下り先を堂々と獲得してきた。
まさに、文科省は「霞が関の守旧派省庁」であり、それが白日の下にさらされたのが、前川氏が引責辞任した昨年の組織的天下り問題なのだ。文科官僚は、この国の未来を構築することにこそ情熱を傾けてほしい。
参考人招致では、この思い上がった「聖域の哲学」にメスを入れることが望まれる。
民進党も政権時代には「政治主導」を唱えていたのだから、「岩盤規制の親玉」の味方をして政権を困らせ、一時の快感を味わうことだけで終わらないように願いたい。
一部野党とメディアは「加計学園ありきだった」と批判しているが、今年4月開校予定で断念した、籠池泰典・森友学園前理事長の小学校は、最終決定を得られないまま「認可見込み」で工事中だった。教育分野では意思決定はなし崩しでされ、見切り発車にしないと間に合わないのだ。
その意味で、「加計問題」の真実を明らかにするためには、前川氏と加戸氏らの参考人招致だけでは不十分だ。日本獣医師会の蔵内会長や、愛媛県今治市の菅良二市長、加計学園の加計孝太郎理事長らも一緒に招致すべきだと思う。