エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

会津・身知らず柿

2006-10-25 | 食文化
 青空に映える柿の色はいい。秋の風物詩だ。我が家にも2本あるが、日陰で育ちが悪く、残念ながら、まだ実を付けない。この辺ではどの家にも身知らず柿が植えてあり、そろそろ収穫の時期を迎えている。
 昔、川俣にいたころ、渡邊弥七町長宅の離れをお借りして6年間生活した。2階建ての借家の前には大きな柿の木があった。確か百目柿と言っていたような覚えがある。たわわに実った柿をもいでご馳走になったことを思い出す。
 会津身知らず柿は、種のない渋柿だが、川俣の柿も渋柿で、皮を剥いて干し柿にしていた。近くの梁川のあんぽ柿は有名だ。身知らず柿は、焼酎にさわして渋を抜く。私はあまり食べないが、妻は大好きで、心配になるほど食べる。
 柿は保存が効かないものだ。すぐに熟れて柔らかくなってしまうが、そのぶよぶよになった柿はシャーベットのように冷たく、炬燵に当たって風呂上がりに食べるのは確かに何とも言えず美味しい。
ときどき神奈川や長野の親類へ身知らず柿を贈っていた。昔、小さいころは木の箱だったが、何時のころからかそれは段ボール箱に替わった。箱には、焼酎を打ってから、渋が抜け食べられる日、開封の日付けが書いてあった。子供心にも待ち遠しかったような記憶がある。
 今年も身知らずを楽しみたい。

*)会津の秋の特産品「見知らず柿」の命名は、
 ・献上された会津藩主の絶賛のお言葉 「未だかかる美味しい柿は見知らず」 
 ・枝が折るくらいたくさん大きな実をつける <身の程知らずな柿> などの説あり。

高田梅  そろそろ梅もぎ

2006-06-19 | 食文化
        《大きな高田梅》

会津高田町(現:会津美里町)の高田梅は日本一ジャンボで、ゴルフボールより一回り大きいくらい、種が小さく果肉が厚く、味がいい。室町時代に旅の僧が豊後の梅を植えたのが始まりらしい。その後、豊後梅に在来種の梅を掛け合わせ改良し現在の高田梅になり、400年の歴史があると言われている。
 植木市で間違いなく高田梅と言われて買ったが、白加賀だった。その後本物の高田梅の苗木を買った。どちらも毎年沢山の実を付けている。でも、今年はわが家の梅は30年来初めての不作、高田も白加賀もほとんど実を付けていない。どうも天候、雪や寒さのせいではないかと思っている。同じように庭の北西側にある小田原小梅もだめだった。ところが、庭の南側の豊後や2軒隣の娘の家の高田梅はたわわに実っている。
 不思議なことは、白加賀梅はどういうわけかカリカリに仕上がらない。いろいろな漬け方を工夫したが、どうしてもだめ、いつも梅干しにして食べている。その点高田梅はカリカリに漬かり、あまり大きいので、実を割って甘漬けにしている。そう言えば、昔は梅割の道具を工夫して作ったが、最近は梅割機を売っているのを知り驚いている。
今年も、そろそろ梅もぎの時期、初夏の風物詩梅漬けが始まる。

美味しい 旬の地ダケ

2006-06-14 | 食文化
 《孫も手伝いながら ジダケの皮を剥く》

 今年も地ダケ(ジダケ)が届いた。会津ではネマガリダケ、チシマザサのことをジダケと呼ぶ。
何年か前までは5月末になると、会津布引山へよくジダケ取りに行った。磐梯吾妻スカイラインの高湯あたりに行ったこともある。時期になると米沢までのスカイバレーは何台もの車が止まっている。背丈以上のササの地下茎が横に這って繁殖する。ジダケ取りに夢中になって自分の位置が分からなくなってしまうので、ラジオを木に掛けておいたり、テープで印を付けしたりして迷子にならないようにした。もう、いま深いヤマへは行けない身体になってしまったが、この時期どこかしらからジダケが届く。有難いと思う。
 ジダケは、アクが少なくフライパンで焼いてすぐに皮を剥きながら食べる。香ばしく美味しい。わが家では身欠きニシンと白味噌で煮物にすることが多い。
 山菜図鑑によると、ビタミンB1・B2・Cを初め、カリウム、カルシウム、鉄分、マグネシウム、亜鉛、銅などのミネラルが豊富とある。
 この辺では沢山取ってきて、業者に缶詰加工を頼む人もいるが、旬に食べるジダケが一番美味しい。今夜は炊き込みご飯と味噌汁にして旬の味をいただきたい。歯触りが何とも言えず美味しい。

     《ジダケと身欠きニシンの味噌煮》 

ニシンの山椒漬け

2006-05-19 | 食文化
        《自作の織部風のニシン鉢に漬ける》

 庭のサンショウが勢いよく新芽を伸ばしている。終わった花をルーペで見ると、らっきょ形のタマがペアになって見える。これが青い実に成長して次第に赤く色づいていき、秋には黒い実となって弾ける。サンショウは毎年、芽吹きから実りまで、そして葉を落とし実の殻だけが残る晩秋まで、興味深く観察を楽しませてくれる。
 (ところで、俳句の季語で、「山椒の芽」は春。「山椒の花」は夏。「山椒の実」は秋だそうだ。)

 この時期、わが家ではこの山椒を使ってニシンを漬ける。
この山椒漬けは、簡単だし、酒の肴を楽しむ私なので毎年私の仕事だ。
会津は海から遠い山国、ニシンの山椒漬けは棒タラと共に古くから海の幸を干物に利用してきた会津の伝統料理である。
このニシンの山椒漬けはもちろん自作した「ニシン鉢」に漬けなければダメ。タッパーではどうしても気分的に美味しくない。また、今は真空パックでスーパーやお土産で売っていていつでも食べることができるが、やはりこの時期に食べる”旬の味”が何とも言えない。

  私が煮物が好きなので、妻はいろいろ作ってくれる。会津では干物の身欠きニシンに対して生のニシンをカドイワシと呼んでいるが、このニシンを使った煮物は、大根干しやタケノコ、椎茸、ジャガイモなどと、またワラビやイラなど山菜によく合いとても美味しい。
 先ほど漬けて冷蔵庫に入れた、3,4日後の出来上がりが楽しみだ。

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ニシンの山椒漬けの作り方
材料:・身欠ニシン(10本)・山椒の葉(20~30枚)・しょうゆ(150cc)
   ・酢(100cc)・酒(100cc)・赤唐からし1本
  ①ニシンは水でよく洗い、米のとぎ汁でアクを抜く。
  ②山椒の葉も水でよく洗って水気を切っておく。
  ③ニシンを漬ける器に①のニシンと②の山椒の葉を交互に重ねる。
  ④漬け汁にしょう油・酢・酒に、種子を取り除いた赤唐辛子をみじん切りにして加え、火にかけて汁を作る。
  ⑤上から汁をかけて、押しぶたと軽い重石をのせて漬ける。
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  拙ブログ(2006.1.10)「お正月に 会津の食文化を楽しむ」

懐かしいおやつ 「やしょうま」

2006-04-27 | 食文化
 3時のお茶に、妻が「冷蔵庫を整理していたら出てきた」と言って「やしょうま」を出してくれた。米の粉を蒸してこねた、懐かしいふるさと信州のおやつだ。
  数年前、母がまだ元気な春に妻の実家を訪ねた折りに、妻たち4人姉妹が仲良く楽しそうに作っていた。初めて見るものに興味をそそられ、にぎやかな楽しい料理教室をじっくり参観させてもらった。
なかなか難しいが、姉たちは長年の経験がものを言い、菊や桜、あやめなど美しい形ができた。金太郎アメと同じだ。
 数年間冷凍保存していたあのときの芸術作品を電子レンジで温めた。柔らかくなった「やしょうま」はほんのり甘い味で、素甘(すあま)という和菓子の感触でとても美味しかった。
 ふと母を思い出しながら懐かしい味を楽しんだ。

     やしょうまの 花の模様に 義母思う

《「やしょうま」をつくる》

 
 ●本来「やしょうま」は、毎年春、お釈迦様の命日である2月15日から1ヶ月遅れの3月15日前後に、長野市を中心として善光寺平周辺、さらに麻績や坂井村などでつくられ食べられるそうだ。だから、この時期スーパーや和菓子屋さんの店頭では、20センチ程の長さの「やしょうま」がたくさん並べられているそうだ。
 『広辞苑』には「2月15日の涅槃会の供物。米の粉または小麦粉でだんごを製するが、手で握った形が馬に似るところからいう。やせうま。」とある。
【参考:http://homepage3.nifty.com/himegappa/ikyo/yasho/yasho.html】

フキノトウの香りと味を満喫

2006-03-06 | 食文化
 山頭火の句に「山深く蕗のとうなら咲いている」とある。放浪の俳人の心境はどうであったか、残雪にひときわ鮮やかな黄緑色が眼に浮かんでくる。
 県道沿いの、所々に雪が残る畦に、春一番の自然の贈り物を見つけた。
枯れ草の中に鮮やかに輝く蕗のとうは、黒い土やさわやかな春の青空によく映え本当に美しかった。雪解けが待ちきれず開きかけた苞に包まれ、房状に顔をのぞかせている頭花がかわいらしい。そっと手を触れマクロ写真に納めた。
 ごめんねと言いながら摘んだ指先に、土の香り、ほのかな蕗の香りが広がり、新しい季節のすがすがしさを感じた。
 蕗みそと天ぷら、お浸しやお汁には小さく刻んでまぶし、夕食は一足早い春の香りに包まれた。 
   残雪に ほのかに香る 蕗のとう