静かに降る雨の野外能楽堂に思い出に残る能舞台を鑑賞した。
ご近所のH先生から思いがけないお誘いを受け、しばらくぶりに能を鑑賞した。
10/26 会津能楽会主催の「能と謡」、初めて見る妻と楽しみに出かけた。
当日は、地区文化祭の前日で準備作業に追われ、何とかプログラムの終わり3題を鑑賞することが出来た。
舞台脇に、そぼ降る雨に濡れた庭の石、松の緑にこころが落ち着いた。
脇に立つトチノキが色づき薄日が射し始めた。
静寂に謡いが響いた。
情感に響く横笛、かん高い大鼓の響き、やさしい小鼓と、独特なは心地よく、久々に流れる伝統的雰囲気に魅せられた。
ひととき、いろいろな思いを巡らせた。
舞囃子「松虫」は番組の解説で僅かに知るのみだったが、秋の野の虫の音の風情を十分感じることができた。
素謡「巴」は、ほとんど内容も聞き取れなかったが、ときどき分かる言葉にほっとさせられた。
最後の能は「土蜘」、H先生は主役の後シテを務められた。
土蜘蛛の精を退治しに行った武者と土蜘蛛との死闘、宙に放物線を描き広がる蜘蛛の糸が美しく素晴らしかった。
今更ながら、豊かなこころ広がるこういう世界があることを再認識させられた。
もう半世紀も前、水道橋の能楽堂で鑑賞した微かな記憶が甦った。