エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

興味の尽きない虫たち

2008-06-30 | 昆虫

 ニシキギやアオキの葉を食べる小さなムシの集団を見た。オレンジ色の羽の下の方には白い紋があった。蔵書の昆虫図鑑で調べたらワモンナガハムシのようだ。
 解説には「体は黄褐色で上翅後端近くに黒色の環紋のある美しい種である。5~8月頃マユミよりえられる。」とあった。 また、ハムシ科について「甲虫類の中で世界で最も多い種類を含む科で、本邦には約500余種産すると推定される」とあった。驚きだ。
 子どもの頃からチョウばかりを追い求めてきた。きっかけはチョウに詳しい従兄弟との採集体験であった。確か小学校3年生だった。なぜチョウでなければならなかったのだろうか。肉食のトンボは腐ったり変色するので標本にしにくいが、チョウは展翅し乾燥するだけ、そしてなにより美しいことが理由だろう。ガには興味を持たなかったし、今子どもたちにブームのカブトやクワガタにもあまり関心を持たなかった。
 あまり気に掛けないでいた甲虫類だが、少し注意して観察してみようと思っている。

 庭で見つけた虫たち

《ベニカミキリ》
《ヤホシゴミムシ》
《マメコガネ》

梅雨の晴れ間の里山散策

2008-06-28 | 昆虫
 
      《鮮やかなマタタビ》

 今年はまだ梅雨らしい雨が降らない。曇りの日が続いてたが、天気予報では、今日は梅雨の晴れ間で週末は本格的に降るという。本格的な夏を思わせるさわやかな天気に誘われ、しばらくぶりに東山方面へ車を走らせた。一昨年、異常発生したテングチョウが乱舞する集団吸水の光景が忘れられなかった。また、何年か続けて斑紋異常のヒメシジミに出会ったので、それも楽しみだった。でも、残念ながら、1時間ほどの観察だったが、ほとんど何も見かけなかった。
 山の緑にひときは白く、花のように見えるマタタビの葉があざやかにきれいだった。物音一つない山の草原で、羽の傷んだヒメシジミがのどかに舞っていた。
 物足りなかったので、昼食後、あらためていつものフィールドを一回りしてきた。
 磐梯を仰ぐいつもの草原にはノアザミが咲き、ウラギンヒョウモンが姿を見せ始めた。産卵行動か、なかなか止まらないで草むらを飛び続けていた。ギンイチモンジセセリは春型の傷んだ♂の個体が多かった。

 《ノアザミのウラギンヒョウモン》
 《ギンイチモンジセセリ春型 ♂》


ハラビロトンボが多くなってきたが、特に成熟したオスの黒青色の頭のルリ色が美しく輝いていた。あれほど賑やかだったオオイトトンボがすっかり姿を消していて少しさびしい池の端だった。新しい友に出会った。シラホシカミキリだ。

 総包が淡紅色の品種、ベニヤマボウシをときどき見るが、いつも見ていたヤマボウシ木に白から変色したようなピンクの花びらがきれいに咲いていた。新しい発見だった。
 《ヤマボウシ》

 農道にまばらにある桑の実が黒く熟し、一粒口に入れると何とも言えない懐かしい味がした。日陰に舞うクロヒカゲやヒメジャノメにも、夏の訪れを感じた。(2008.6.27)

 

たのしみは・・・

2008-06-24 | 日々の生活
   【ある日の登園 プール始まる】 


 しばらくぶりに、橘暁覧の歌集を開いた。
 「独楽吟」の連作には、
 『たのしみは 三人の児ども すくすくと 大きくなれる 姿みる時』とある。
 考えてみると、今の楽しみは、先ずは孫たちの成長をみることである。
毎日、孫たちから、じーちゃん!じーちゃん!と呼ばれることが嬉しく楽しい。

 『たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時
 これも良く経験する楽しみだ。

 『たのしみは 昼寝せしまに 庭ぬらし ふりたる雨を さめてしる時
今朝起きてみると、昨夜来、久しぶりに降った雨に、庭がしっとり落ち着いた雰囲気であった。特にこの梅雨は雨が少ないので、このお湿りが欲しかったこともあり、何となく楽しい気分であった。

 暁覧の、清貧の日々の暮らしの中に詠んだ歌の数々は、その心情がよくわかり楽しい。
一度、今の自分の楽しみ、嬉しさ、苦しみや辛さを整理してみたい。

庭の家族

2008-06-23 | 自然観察
             【初見したセンノカミキリ】

 昨日は庭のクモの観察記を書いた。毎日、暇さえあれば小さな庭に出て小さな虫たちの生活を楽しんで観察している。

 今朝はバラの葉上に止まるセンノカミキリを初見した。また、薹が立ってきれいな黄花を付けるチンゲンサイにモンシロチョウがさかんに産卵していった。孫にせがまれ、ずらーっと並ぶ盆栽の植木鉢を持ち上げると、下にはワラジムシ、ダンゴムシ、ナメクジ、ゲジなどが仲良く棲んでいる。レンギョウの葉の上のテントウムシの蛹に群がるアリも見た。

最近は、朝方長いことウグイスが鳴いている。ウグイスの谷渡りに口笛で答える。口笛で真似るとホーホケキョと返す。声はすれども姿はほとんど見えないが・・・。西側の広場ではキジが朝に夕に、甲高い声で鳴きゆっくりこちらを窺いながら姿を見せてくれる。

 梅雨と言っても、これまであまり降らなかった。ようやく雨模様が続きそうで、久々の雨降りに庭の緑が嬉しそうだ。次々に咲き誇ったバラが色あせた花びらを落とし始め、バイカウツギの花びらが地面一面に散り、しとしと降る雨に濡れている。気づくとウメモドキが小さな花を付けていた。

 飛び交う蝶やハチ、アブたち、虫たち、さらに庭の一木一草、ときどき訪れる鳥たちも、すべてが同じ空間に住む家族の一員と思いたい。そして構成員のそれぞれを理解したい気持ちで小さな庭をながめている。

【ウメモドキの小さい花】


【チンゲンサイに産卵するモンシロチョウ】

 

クモの子

2008-06-22 | 昆虫

「クモの子を散らす」まさにその通りだった。何度か観たことがある子グモの集団だ。目測してみるに、おそらく数百匹の集団だ。一匹の親がどれくらいの卵を産むのだろうか。なにを食べているのだろうか。
興味深く観察していたが、昨日の朝にはもう抜け殻だけになっていた。集団を確認してから1週間だった。脱皮してどこへいってしまったのだろう、付近を探しても一匹も見つけられなかった。親が張ったものだろう、大きなクモの巣を伝って四方に分散したのだろうか。

クモ目の仲間は世界中に約35,000種、国内には約1200種が知られ、造網性,徘徊性,地中性に分けられると言う。
 クモは昆虫には含まれず、眼は単眼のみで触覚は無く、脚は8本など、昆虫と違う。

 何種類ものクモの巣を見る。梅雨の雨にクモの巣がきれいに光っていた。
 ゴミグモの巣をよく見てみた。円網を張り、中央部分に、ゴミや食べかすを縦に重ねた太い帯を作り、その真ん中に褐色のクモが止まっていた。スケール・ルーペ(×10)でよく見ると、クモは逆さに前足を4本そろえ止まり、複雑なまだら模様の背中には前の方に2個、尾の方に4個の突起が見えた。よく見ないとどこにクモがいるのかわからない。他のゴミグモのゴミには小さな甲虫類の金属色に輝く羽がキラキラ光っていた。
 しばらくいろいろなクモの生活を見ていきたい。

ウメもぎ

2008-06-21 | 日々の生活


夏至の朝、ウグイスがよく鳴いていた。すだれ越しに緑の風が吹いていた。
梅雨入りしたものの今日も快晴、今年一番の暑さで、午後には若松で30℃を越えたようだ。
強い日差しの中、ウメもぎをした。去年は生り年で大収穫、沢山の梅干しをつくった。その白加賀は今年ほとんど実を付けていない。珍しいことだ。十分大きく育った高田梅を収穫した。妻は甘梅漬けにすると張り切っている。

 
すだれ越しに 揺れる緑の 夏至の朝

シモツケ咲く

2008-06-20 | 自然観察
           【松本シモツケ】
 シモツケが咲き出した。咲き出す前のピンクの濃い色がいい。少し前に咲いたキョウガノコととても似ている。また、これらに似たシモツケソウは今年はなぜかまだつぼみも見えない。
 キョウカノコとシモツケソウはモミジ葉状の葉で、花の付き方が少し違う。
 シモツケはしっかりした木で、細長い卵形の葉の縁に鋸歯がある。
シモツケは種類が多く、会津シモツケとか土佐シモツケなど地名を付けたものが多い。 我が家のシモツケは妻の実家(松本市)からのもので、松本シモツケと聞いた。

【キョウカノコ】
 

嬉しそうに舞うチョウ

2008-06-18 | 昆虫

    【ベッコウガガンボ】               

庭でベッコウガガンボをみた。ふわふわと優雅?に飛びツバキの葉裏に止まった。
刺したりしないので安心してゆっくり観察した。腹部は湾曲し先は二股に分かれていてサソリを連想させる。黒とオレンジ色のベッコウ色をした美しいガガンボだ。
数日前にはマダラガガンボの交尾を見た。ネットで調べたら、日本産のガガンボ科は,学名がついている種類だけでも約700種が記録されていて、未記載種を含めると2000~3000種が分布しているという。

【ベッコウガガンボ】

【マダラガガンボ】

 また今日は、さわやかな初夏の庭にホシミスジを初見した。兄弟だろう、3頭で初めての緑を楽しむようにスイスイと舞っていた。我が家では庭のユキヤナギに産卵し、育ち、蛹化し、羽化している。木陰には、朝夕の水まきを喜ぶように、クロヒカゲ、ヒメジャノメ、ウラナミジャノメがチョンチョンと飛んでいる。
皆、愛しい家族の一員である。


《ホシミスジ》
 

マツケムシヤドリバチ

2008-06-17 | 昆虫

先日、見たことのないムシを見た。イトトンボが飛んでいると思い、あとを追うとクガイソウの葉の上に止まった。さかんに手をこすって身繕いしていた。
 早速昆虫図鑑で調べると、「マツケムシヤドリバチ」によく似ていた。その解説には、日本全土、シベリア、欧州、インド、北アフリカに広く分布し、各地にきわめて普通で、成虫は春から秋遅くまで見られるとあった。それにしては、初めて見るムシだった。多分間違いなさそうだ。イトトンボに見えたのは、細く長い産卵管のようだった。また、マツケムシの幼虫に寄生とある。マツケムシ専門なのだろうか、庭にはヒマラヤスギの大木があり、あのグロテスクな毛虫には年によってはときどき悩まされたこともあった。でも、今年は少ないようだ。

《大事に育て羽化を心待ちにしていたアゲハのサナギからヤドリバチが穴をあけて飛び出した。》そのときの少年の驚きと憎らしさがよみがえってきた。

まだまだ、よく見ると知らない虫たちが潜んでいるだろう。まさに「自然に学ぶ庭」で観察を続けたい。

防衛予算は聖域なのか

2008-06-15 | 日々の生活
              【ドクダミ咲く】

 イージス艦の漁船事故が起きた頃、テレビ番組、爆笑問題の「私が総理大臣になったら」で、「防衛予算を半分に」の提案があり可決された。私も大賛成だ。今その国民的議論が必要ではないだろうか。
 昨今、社会保障や高齢者対策、医療費負担の軽減等々で、国民の暮らしの改善が叫ばれている。税金の無駄使いが指摘される一方、消費増税議論が始まり、国民はさらなる重い税負担を強いられそうだ。
 数日前、日本の防衛予算は約5兆円、世界5位と報道された。実に一般会計予算の1割だ。その1%でも500億円、本当にこんなに必要なのだろうか。
 憲法第2章(9条)には「戦争の放棄」がある。本来、日本は戦力は保持できないし、戦争も出来ないはずなのに、「専守防衛」の名のもとに莫大な税金が防衛予算として使われているのだ。クラスター爆弾を一体どこで使うのだろうか。平和に、武器は要らない。今こそ国会で防衛予算の見直しをして欲しいと思う。


ゆったりと時が流れる。

2008-06-15 | 日々の生活
日曜日はいい。皆がお休みでゆったりとした時間が流れる。

 日曜の朝の散歩には、幼稚園が休みの孫たちもついてくる。今朝はママも一緒にオタマジャクシの観察会だ。もう後ろ足が生えたオタマジャクシが元気に泳いでいた。

今朝方、思いがけず父の夢を見た。めったに登場しない父との偶然の再会を喜んだ。頭の片隅に「父の日」があったからだろうか。元気でいてくれたらどんな話をしているだろうか。別れて20年にもなるが、今、父に聞きたいことは沢山ある。
 母の日には母を、父の日には父を想いたい。

昨日の岩手・宮城地震、ゆっくりした揺れが数十秒続いた。これは大きいと思いすぐにラジオのスイッチを入れた。それから1日中地震報道が続いた。
何時なにが起こるかわからない。この自然の災害に遭われた方々のニュースを切なく聞きこころから見舞いたい。自然の途方もない力をあらためて思い、自然に包まれて慎ましく生活できる幸せを感謝している。
 
 今朝、3件の電話があった。信州の妻の姉たちからそれぞれに、岩手・宮城の地震の影響を心配しての電話が入った。いずれも長いおしゃべりになった。しょっちゅう連絡を取り合い、実に仲の良い四姉妹をあらたまって羨ましく思った。


求めない
すると
時はゆっくり流れ始める 
  加島祥造

ヒメシジミの楽園

2008-06-14 | 昆虫
            【ニガナに吸密するヒメシジミ♂】

 今年もヒメシジミが舞い始めた。年1回、今の時期に発生するこの身近なヒメシジミを見つめた。
 いずれの個体も新鮮で、翅の様子から羽化したばかりのものが多かった。お前達には、この初めて見る緑の山野はどう映るのだ。梅雨の季節を前に、さわやかな緑の野に舞うヒメシジミをしばし見つめた。まさにここはヒメシジミの楽園だ。
 この小さな自然の空間に、いつの頃からか、多分営々と続いてきた小さな種の命を思った。この翅の純白の縁毛が実に美しいヒメシジミが好きだ。
 ヒメシジミは環境省レッドデータブックで準絶滅危惧種に挙げられている。何時までもこのささやかな緑の空間、しっとりした里山の草原に舞って欲しいと願っている。



 図鑑で調べると、ヒメシジミの食草が多いのには驚いた。アザミ類、ヨモギ、ヒメジョオン、フキ、ヒヨドリバナシロツメクサ、イタドリ、ワレモコウなどありとあらゆる科の草で育つのだ。
 ヒメシジミと区別がつかないほど似たチョウにミヤマシジミがいる。その食草はマメ科のコマツナギだけである。でも、多くのシジミチョウと同様、いずれも幼虫期にアリとの共存生活史をもつようだ。
 一昨年斑紋異常のヒメシジミを見つけた。また昨年も同じく♀の斑紋異常の個体に出会った。2年続けての出会いだった。この斑紋異常は遺伝しているのだろうか。今年も出会うことが出来るだろうか。興味を持ちながら観察してみたい。

【♂】
【♀】

初夏の虫たち

2008-06-12 | 自然観察
       【カンボクの花にコアオハナムグリが沢山集まって花粉にまみれていた。】

すがすがしい初夏の陽気だ。朝のうちに庭の伸びた枝を刈り込んだ。アジサイのつぼみがない枝や混んできたジンチョウゲ、バラ、アオキなどを挿し芽にした。

一段落してトンボ池へ行った。今日は、いろいろ心配する妻も一緒だ。先週の里山観察散歩の際は、一人で行った私の帰りが遅いので、心配して娘とトンボ池まで様子を見に来たと後から聞いた。

トンボ池はミズキは終わって、今ヤマボウシとカンボクがさわやかに咲いていた。湿原には、一週間前には咲いていなかったキショウブが見事に咲き、まだカキツバタもきれいで、ゼンテイカもこの前と別の株が咲いていた。
 
 初夏里山の花   
<
 
 カキツバタ                     アヤメ                    キショウブ                             モネを思わせるスイレン          ゼンテイカ                ヤマボウシ咲く                   咲きだしたノアザミ  <
      
【オンマウスで止まる】

オオイトトンボはかなり少なくなり、ヨツボシトンボやハラビロトンボ、オナガサナエが出始めた。小柄なコサナエはわりと動かないので撮りやすいが、シオカラトンボは警戒心が強くあまり近づけない。交尾中のシオカラトンボを撮った。
 トンボの同定は難しい。ヤマサナエだろうかあまり見ないトンボにも出会った。笹の葉に止まっていたが、風が吹いてすべり台のようにトンボが滑り、笑ってしまった。 チョウはミヤマカラスアゲハがサツキ(大盃)に、クモガタヒョウモンがカマズミに密を求めていた。日陰には大分翅の傷んだヤマキマダラヒカゲや、新鮮なクロヒカゲが静かに飛んでいた。 

見つめる虫たちの一つ一つの行動が実に愛おしい。そんな一瞬の姿を記録し学んでいる。
 今日も折吹き来るさわやかな風が心地よかった。まだ、北陸、新潟、東北は梅雨入り宣言がない。でも、アジサイのつぼみも日に日に大きくなってきた。梅雨入りも近そうだ。(2008.6.11)

 
 初夏里山のトンボ・チョウ
<     

   ヨツボシトンボ              オナガサナエ                コサナエ               シオカラトンボ交尾                   サツキに密吸 ミヤマカラスアゲハ   ウツギに止まるクモガタヒョウモン 
<
    
【オンマウスで止まる】

暮れなずむ磐梯

2008-06-11 | 日々の生活


昨日、所用があって、昼過ぎ郡山へ行った。帰りは午後7時過ぎになったが、まだ空は明るかった。
 磐越道のトンネルを抜けると、何時も麗しの磐梯山が迎えてくれる。昨日は暮れなずむ磐梯のシルエットが薄いあかね空にひときわ美しく感じられた。

 ウィキペディアで「夏至」を調べてみた。7月末だったかと思っていたら6月21頃とあった。やはり今頃が一番日が長いのだ。
 二十四節気で、次の「小暑」は7月7日頃、「大暑」は7月23日頃とある。
 春分から秋分までの間、太陽は真東からやや北寄りの方角から上り、真西からやや北寄りの方角に沈むが夏至の日には日出・日の入りの方角が最も北寄りになるらしい。
 寝起きする2階の北と東向きの窓から、今朝もカーテン越しに夏の朝陽が眩しかった。

 七ヶ宿ダム  - 湖底の故郷 -

2008-06-09 | 旅行
             【在りし日の七ヶ宿  太田邦三 画】

 もう10年以上も前、銀婚式の記念旅行で遠苅田温泉に泊まった。帰りに白石から国道113号で七ヶ宿町を通過し南陽、米沢を回って帰ったことがあった。その折りに七ヶ宿ダム湖畔の歴史館で、ダムに沈む村の様子を描いた絵を見た。その素晴らしい絵を忘れなかった。

 一昨日、家族で八木山動物園に遊んだあと、その絵をもう一度みたい思いで米沢まわりで帰宅することにした。
 前に寄ったところは、郷土資料館「七ヶ宿町水と歴史の館」とあった。別の場所に、当時はなかった立派な道の駅が出来ていた。そのためか資料館の広い駐車場は草が生え、あまり観光客は訪れていない様子だった。受付の方に、懐かしくて絵をもう一度見に来た旨話すと、少しならと、絵の写真を撮ることを許可してくれた。
 その絵は館の開館のため寄贈された絵で、三人の作家(太田邦三氏、太田厚氏、千葉節夫氏)が、湖底に沈んだ三集落の四季の風景を描いたものだった。絵をながめ、今はない生活を想像すると切ない思いが去来した。また、それぞれの寄贈に当たってのメッセージにこころ打たれた。
 以下は千葉厚氏のコメントである。
湖底に沈む七が宿を描き続けて
 『七が宿の人々が、数百年も受け継いできた祖先伝来の田畑、小川、森、家並み、そして四季折々の一木一草に到るまで永久に湖底に沈む集落。在りし日の面影。その美に魅せられ、後世の人々に思いを残したい一心で、私なりに追求し、描き続けた作品です。』 

 折しも館内では特別展【戊辰戦争140年in七が宿】が開催されていた。あわせて、あらためて七が宿町の歴史を学ぶことが出来た。

【太田厚 画】

【千葉節夫 画】

【大田邦三 画】

★ 東海林太郎の歌う「湖底の故郷」が思い出された。
     夕陽は赤し 身は悲し
     涙は熱く 頬濡らす
     さらば湖底の わが村よ
     幼き夢の 揺り籠よ
★ さらに4年前に旅した飛騨の御母衣ダムを思い出した。
以下はそのときのエッセイである。
-----------------------------------------
湖底に沈んだ村の桜に思う」  (2005.5)
 旅はいつもいくつもの感動をくれる。
 桜の時期に飛騨の旅を楽しんだ。飛騨高山から白川郷へ向かう途中、御母衣ダム湖畔の荘川桜に車を止めた。そこでつぼみを膨らませたこの桜の感動の物語を知った。
「進歩の名の下に、古き姿は失われていく。だが、人力で救える限りのものはなんとかして残していきたい。古きものは古きが故に尊い」と、ダムに沈んだ村に数百年生き抜いた老桜が移植され、ふるさとが二本の桜によみがえったのだ。
 先祖伝来の郷土、家や田畑、神社、学校等思い出のすべてがダムに沈んだ村、その村人の切なさは察するに余りあった。物言わず数百年間、時代を静かに見つめてきた桜を眺めると胸が熱くなった。そして、国のため、地域のための礎となった日本各地の湖底のふるさとを思った。さらに成田闘争が思い出され、国家のためと、秤にかけられない個人の権利、三里塚の農民のいい知れない辛い思いがよみがえった
-----------------------------------------

 [七ヶ宿ダム] (ネットから)
************************************
七ヶ宿ダムは、昭和48年以来、およそ19年の歳月をかけ平成3年に完成しました。この完成により、流域の洪水調整を図るとともに、農地へのかんがい用水、水道水、工業用水の確保など、多目的ダムとして幅広い活躍をしています。
 一方、ダムが建設される事で、三つの集落(追見・原・渡瀬)の158戸が湖底に沈みました。住み慣れた家から移転を余儀なくされた人々の惜別の気持ちをバネに、水源の町として新たな未来を形にしようとしています。
七ヶ宿湖は、平成17年3月にダム湖百選に認定されました。
************************************