お魚三昧生活

鹿児島の定置網で獲れる魚や市場の魚、鹿児島大学総合研究博物館魚類ボランティア(魚ボラ)の事などを紹介します!

10年越しの標準和名提唱 新称ユカタヒメジ

2018年03月23日 | 定置網
 10年前にうちの定置網で獲れ、「ヒメジ属新たな1種」と題してこのブログで紹介した謎なヒメジ属の魚がいる。その長いこと謎だったヒメジ属の正体が遂に判明する。昨年オーストラリア北部とインドネシア南部の一部に生息するヒメジ属の魚が新種記載され、それに伴いこの謎なヒメジ属の魚がその新種のUpeneus spottocaudalis Uiblein and Gledhill in Uiblein et al., 2017と同定された。その論文が魚類学雑誌のJ–STAGE早期公開版として公開され、日本初記録種として標準和名ユカタヒメジと提唱されました。日本初記録種としてだけでなく、オーストラリア北部とインドネシアの南部にしか生息が確認されていないので、北半球での初記録でもある。10年前の当時は今では新種となったサクヤヒメジに初記録種のアカネヒメジと立て続けにヒメジ属の魚が見つかり、それに続いた謎なヒメジ属の魚であった。しかし、その後まったく見つからず1個体だけなうえ、尾鰭の上葉が欠落していて完全な個体ではなかった。未記載種であったので同定できなかったはずである。あのあと何個体も見つかっていれば新種記載もできたかもしれないが、1個体では。今回の新種記載は幼魚から成魚まで揃っており、しかもそれが南半球でのことであり、更に限られた地域でしか見つかっていないようである。この個体がどのような経路でうちの定置網に入網したのか不思議である。サクヤヒメジも最初はU.poriと同定されていたが、その生息域は日本から1万キロも離れている紅海と地中海東部だけであった。サクヤヒメジはその後も毎年見つかり、更に年々見つかる個体数も増えている。標本が多数確保できたことでU.poriとの違いも見つけ出し、新種記載することが出来た。このユカタヒメジも今後見つかり、ある程度の標本数が確保できればと思うが、いまだに1個体のみでもう10年間見つかっていない。新種記載の可能性は低い、と言うか確実に無いだろう。
*ユカタヒメジは2019年10月に学名がUpeneus heterospinus Uiblein and Pavlov in Uiblein et al., 2019に変更されました。

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