これは、先月出たばかりの新刊だ。
この本を見かけ、読んでみようと思ったのは、昨年末の紅白歌合戦で彼女を見ていたからだ。
キャンディーズのメンバーとしてデビューしてから50周年だということもあって、紅白出場となったようだ。
紅白歌合戦では、「年下の男の子」「ハートのエースが出てこない」「春一番」の3曲を、「キャンディーズ50周年 スペシャルメドレー」として歌っていた。
その様子を見たら、たたずまいや歌う様子、歌声などが以前と変わっていなかった。
私が高校生の頃にデビューしたのだったし、私より少し年上だったはずなのに、こんなに若々しく活躍しているなんて、びっくりだった。
数年前に歌手として復帰して、また歌うようになったとは聞いていたけれど、あのキャンディーズ解散からは実に46年近い年月が経っている。
解散したステージの一部はテレビで見た記憶があるけれど、生放送で歌う姿はそれ以来と言ってもいいくらい久しぶりだった。
若い頃、別にキャンディズのファンでも伊藤蘭のファンでもなかったのだけど、見ていた頃から50年近くがたった。
50年の歳月は、彼女だけでなく私にも同じ50年だ。
私もいろいろあったけど、彼女はどんなふうに50年を過ごしてきたのだろう。
本書の表紙の写真を見ているうちに、興味がわいて読んでみることにした。
内容は、41編のエッセーが、わたしのA面(Work)とわたしのB面(Private)の2部構成で語られていた。
子ども時代のことや、キャンディーズとしてデビューしたころのこと、そして今の生活までいろいろと語り口調で綴られている。
ところどころに、結構たくさんの写真が入っていることもあって、キャンディーズファンだった人にはいいのではないかなあと思えた。
エッセーの一つ一つは、肩の力を抜いて語られているようで、生活の重苦しさを感じなかった。
子ども時代のことや、趣里や水谷豊という家族とのことも述べられているが、どこを読んでいても、なんだか微笑ましく思えてしまう。
それは、きっと伊藤蘭という人の性格的なものからきているのだろうなあ、と思う。
いろいろと一生懸命に取り組むのだが、困ったことにも深く悩まずに受け流すしなやかさをもっている。
デビューした頃の姿もそうだった。
あの「8時だヨ!全員集合」にレギュラー出演していたときも、よく体操の演技等をさせられて体当たりで取り組み、いかりや長介から「ハイ、ポーズ!」と求められて笑い顔でポーズをとっていたっけ。
いやみがない明るさ、くったくのない笑顔。
そういったものがキャンディーズの魅力だったが、今もそのままに生きているのだなあ。
あっさり41のエッセーを読み終えてしまった。
明るく、しなやかに。
そうやって生きてきたのだなあ。
なんだかちょっと元気をいただいたよ。