孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス  年金改革は財政的には不可避 政治的には国民の反発を招き、大票田・年金受給者を失う

2024-10-15 22:38:25 | 欧州情勢

(2023年1月1、パリでの年金改革に反対するデモの様子【ウィキペディア】)

【2023年に年金受給開始年齢を引き上げたマクロン大統領 国民は反発】
日本でもそうですが、どこの国でも社会の高齢化が進むなかで年金制度を財政的に維持することが非常に困難になっており、年金制度の改革が避けて通れない課題となっています。例えば中国でも・・・

****中国、来年から15年かけ定年引き上げへ 年金財政逼迫を緩和****
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、法定退職年齢の引き上げに向けた草案を承認した。新華社通信が13日伝えた。

中国政府は7月、多くの省における年金財政の逼迫を緩和するため、退職年齢を段階的に引き上げる方針を示していた。

現在、法定退職年齢は、男性が60歳、女性はホワイトカラーが55歳、工場労働者は50歳と、世界的に見てかなり低い。

定年引き上げは来年1月1日から段階的に開始され、最終的に男性の定年は63歳に、ホワイトカラーの女性は58歳に、工場労働者の女性は55歳に、それぞれ引き上げられる。

王暁萍・人力資源社会保障相は13日、定年は15年かけて引き上げると発言。労働者が早期退職や最長3年の定年延長を選択できるなど、柔軟かつ任意に定年を引き上げていくという。

中国の平均寿命は1960年の約44歳から2021年には78歳に延び、50年には80歳を超えると予測されており、改革が急がれる。同時に、高齢者を支えるために必要な労働人口は減少している。【9月13日 ロイター】
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事情はフランスでも基本的には同じ。マクロン大統領は昨年3月に年金受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる改革を断行しましたが、国民の激しい抵抗にあいパリはゴミで溢れました。

だいたいフランス人は仕事よりバカンスを重視するお国柄ですから、もっと長く働け・・・とは、もってのほかということでしょう。

****34歳の新首相誕生で、加速するフランスのシニア市場****
国民は猛反対、強行採択された年金改革法案
2023年3月、マクロン政権は国民の強い反対にもかかわらず、年金制度改革を強行採択し、年金受給開始年齢は62歳から64歳に引き上げられた。

大規模な抗議活動が全国で数カ月も続いた。抗議行動はゴミ収集作業の職員にも広がり、首都パリの街は路上に山積みになったゴミで溢れた。この大規模な反発は後にボルヌ首相の辞任のきっかけとなった。

2023年から続く国民の政府への不信感の責任を取る形で、2024年1月にボルヌ首相が辞任した。これを受けて、マクロン大統領は、国民から人気の高かった34歳のアタル国民教育相を首相に任命した。

そもそもフランスには、早期退職が社会的に有益であるとみなされる傾向がある。これは長年にわたり、シニア層の雇用を優遇すると若者の雇用が奪われ、若年層の失業率をさらに悪化させるという懸念から取られた多くの政策の結果でもあるが、シニア側も早期退職を望む人は多く、生涯現役という概念は少ない。

また、リタイアを現役生活からの撤退とはみなさず、仕事に縛られることなく余暇を存分に楽しめる人生の新たなステップと捉える人が多く、仕事よりバカンスを重視するフランスらしい一面である。
 
フランスの社会保障は充実しており、強固な社会保護の枠組みを提供している。正式な定年前に退職することを選択した場合でも、許容可能な生活水準を維持するのに十分な退職年金の恩恵を受けることができるのも大きい。経済的に可能な限り、多くの人ができるだけ早く退職したいと思う理由となっている。これが年金改革における法定退職年齢引き上げ時の猛反発を引き起こした原因でもある。

極端に低いフランスのシニア就業率
アタル首相が就任後に取り組んだ課題は、シニアの雇用促進であった。これは、2030年までに完全雇用を実現するための法案の一部であり、55歳から64歳のシニア層の就業率を改善し、国の年金費用を軽減するだけでなく、シニア層の経験を労働市場で活用することを目指している。定年年齢が64歳に引き上げられたため、現在、シニア層を労働市場に統合するための対策が急務となっている。(後略)【5月8日 リクルートワークス研究所】
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どんなに国民の反発が強くても、やるべきことはやる・・・・と言えば、強いリーダー、ポピュリズムに堕すことのない健全な民主主義ということにもなりますが、別の角度からは、国民の声を聞かない、傲慢・・・・といった評価も。

【年金制度改革を撤廃を掲げる左派が総選挙で勝利 しかし、左派に任せると財政・経済は大混乱する懸念も】
6~7月に行われた総選挙では左派連合は、2週間以内に年金制度改革を撤廃し、法定退職年齢を64歳から60歳に引き下げる方針を公約にしました。

****フランス左派連合、年金改革の撤廃、最低賃金の大幅増を公約****
フランスで6月30日と7月7日に行われる国民議会(下院)選挙に向け、選挙協力で合意した左派の社会党、環境派、共産党、極左・不服従のフランス(LFI)の4党からなる左派連合「新民衆戦線」は6月14日、選挙公約となる政策プログラムを発表した。

経済政策ではまず、下院選の決選投票が実施される7月7日から2週間以内に年金制度改革を撤廃し、法定退職年齢を64歳から60歳に引き下げる方針を盛り込んだ。マクロン政権が実施した失業保険制度改正(2023年11月28日記事参照)も同時期に撤廃する。(後略)【6月20日 JETRO】
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財源的には、、富裕層に対する優遇廃止(所得税の累進課税強化、連帯富裕税の再導入など)、企業の超過利潤への課税強化、キャピタルゲインに対する一律課税制度(30%)の廃止、相続税などの増税によって確保するとしていますが、他の政策を含めて、それでまかなえるのか、そうした制度改革の結果、富裕層・企業などが国外に脱出するとか、意欲を削がれるとかの弊害はないのか・・・といった疑問も。

このあたりが、ルペン氏率いる極右・国民連合とも手を組めないが、左派、特にその中核たる急進左派「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏にも政権をまかせる訳にはいかない・・・とマクロン大統領と考え、三すくみ状態が続く所以でもあります。

ただ、やはり“年金制度改革を撤廃”といった公約は有権者には受けます。結果、左派は大勝利。

****仏下院選、左派が逆転勝利 与党の年金改革に国民反発****
フランスで7日、国民議会(下院、定数577)選挙の決選投票が実施され、野党で左派連合の新人民戦線(NFP)が最大勢力となった。マクロン大統領が率いる中道の与党連合は第2勢力となり議会の多数派から転落した。第1党になるとの予測もあった極右の国民連合(RN)は失速して第3勢力にとどまった。

マクロン氏が2023年春に強行した年金の受給年齢を引き上げる改革に対する国民の不満が強く、与党連合が支持を失う要因となった。NFPは年金改革の廃止を訴えており、政策が逆戻りする可能性がある。(後略)【7月8日 日経】
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【再度年金問題に挑むバルニエ政権 政治的には厳しい状況】
しかし、マクロン大統領が選挙で勝とうが負けようが、年金制度の改革は避けて通れません。再び年金問題にのぞむ構えですが・・・

一方で、政治的には、膨れ上がる大票田でもある年金受給者層を敵に回すような政策はできない・・・という“民主主義の欠陥”があります。“欠陥”とは言い過ぎでしょうか。

****膨れあがるベビーブーム世代への年金支給、仏政権の改革案は前途多難****
膨れあがる財政赤字の削減に取り組むフランス政府が、火中の栗とも言える年金問題に再び挑もうとしている。今回は、年金受給者に支出削減への取り組みへの貢献を求め、また高齢有権者におもねる傾向のある国民議会議員らにも支持を求めている。

エコノミストやアナリストは、フランスが歳出肥大化に真剣に対処するには、1946−1964年に生まれたいわゆる「ベビーブーマー世代」が受け取る年金の改革は避けて通れないと指摘する。フランス政府の歳出に占める年金の比率は4分の1を超えている。

バルニエ首相率いる現内閣は2025年度の予算編成で、インフレを反映した年金増額を2025年1月から同年半ばに先送りすることで40億ユーロ(6511億円)を削減する案を提示している。

だがこうした暫定的な措置でさえ、政界からの反発を呼んでいる。まじめに投票所に向かう年金受給者が、支給額に手を付けようとする政党に反旗を翻すことを恐れているからだ。

極右政党「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏はすかさず、先送りの動きは受け入れがたく、「我が国の高齢から数十億ユーロを盗むに等しい」と述べた。RNは国民議会でも最大勢力の1つで、その暗黙の支持はバルニエ首相にとっても生命線だ。

バルニエ陣営側であるはずのジェラルド・ダルマナン前内相でさえ、増額先送りは愚策になると発言している。

一方で、エコノミストやアナリストの間では、対GDP比57%と世界有数の高さとなっているフランスの公共支出全体のうち、明らかに支出削減の対象となり得るのは年金との見方が増えている。

「年金にまったく手をつけないまま歳出を減らそうとしても難しい」と、元会計検査官のフランソワ・エカル氏は指摘する。

マクロン大統領率いる仏政府は昨年、年金コスト削減のため、定年退職年齢を2年引き上げて64才とする改革を断行した。その一方で既存の年金受給者を標的にすることはほぼ控えてきた。

フランスの年金制度は勤労者の給与から大きく差し引かれる保険料により支えられており、労働人口に比べて年金受給者の数が膨れあがることで圧迫されつつある。

起業家のラフィク・スマティ氏はX(旧ツイッター)への投稿で、「フランスで触れてはならない問題が1つある。ベビーブーマー世代がその後の世代に残す、信じがたいレベルの負債だ。ブーマーは私たちに借りがある」と指摘した。

若い世代の納税者のあいだでは、痛みを共有しようとしない「ブーマー」への不満が高まっている。X上で「コスタ・ブーマー」と名乗るフランスの風刺系アカウントは、若い納税者があくせく働いているあいだに甘やかされた年金受給者はクルーズを楽しんでいる、と揶揄している。

<膨らむ年金負担>
仏国民議会は各党の勢力が拮抗するいわゆる「宙づり議会」状態で、バルニエ首相としては、倒閣に動く可能性のある有力議員らに配慮せざるをえない。

批判に直面したバルニエ首相は、年金以外で同じ規模の支出削減を実現できるのであれば、年金増額を予定どおり1月に実施することも国民議会の議題になり得ると述べた。

だが、これまでに示された代案は、年金への支出削減には金額の点でまったく及ばない。ルペン氏は移民を支援しているという非政府組織(NGO)への補助金削減を提案しているが、年間7億5000万ユーロ規模にとどまる。

ダルマナン氏は公共放送の予算削減や週35時間の労働時間規制の廃止を提案している。

一部のエコノミストは、前政権が今年1月にインフレ調整として年金支給額を5.3%引き上げたことで、年金支給額抑制のチャンスを逸したと指摘している。

欧州議会選挙の数カ月前に実施されたこの増額により、年間150億ユーロ近いコストが生じ、退職年齢を64才に引き上げたことで節約できた170億ユーロの大半が帳消しになった。

マクロン大統領の与党に属する国民議会議員はロイターに対し、マクロン氏は選挙間近に年金制度に手をつけることは政治的な自殺行為だと考えている、と語った。若者や労働者階級の有権者はすでに与党に見切りをつけており、マクロン支持者の中心は年金受給世代になっている。

アリアンツ所属のエコノミスト、ルドビック・スブラン氏は、「1月の年金増額は、この10─15年のあいだで最悪の経済的判断だった」と語る。「それだけで(前回の)年金改革による財政面での効果を台無しにしてしまった」

この増額によって年金受給者はインフレの影響から守られたが、勤労者の側では、必ずしもこれと同水準の昇給を確保できなかった。

フランス年金理事会によれば、フランスの年金受給者の生活水準は勤労世代の水準に迫るか、むしろ恵まれているほどだが、大半の国では勤労世代よりも低くなっているという。

またフランスの場合、他の経済開発協力機構(OECD)諸国の大半よりも定年退職年齢が低く、平均寿命は長くなっている。そのため年金支給額の対GDP比を見ると、OECD平均が8%であるのに対し、フランスは14%近くに達している。

同理事会は6月、何も手を打たなければ、2023年の改革もむなしく、年金制度は今年中に赤字となり、今後何年も字を解消できないという見通しを示した。

ペンシルベニア大学ウォートン校のエコノミスト、シルバン・キャサリン氏は、「もう1度退職年齢を引き上げる年金改革が必要になるだろう。どの国もそうしているのだから」と予測した。【10月13日 ロイター】
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「もう1度退職年齢を引き上げる年金改革が必要になるだろう」・・・・多分政権がもたない。その後に出来る政権は急進左派政権か? それとも極右政権か?
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ドイツ  2年連続のマイナス成長 EU内での影響力も低下 基幹産業・自動車の中国市場も苦戦の様相

2024-10-12 22:57:28 | 欧州情勢

(ドイツ政府は9日公表した秋の経済見通しで、2024年の実質成長率をマイナス0.2%と4月時点のプラス0.3%から下方修正した。マイナス成長は2年連続になる。個人消費の戻りが鈍く、設備投資や生産も冷え込む。ロシアの安価なエネルギーと中国市場の拡大に頼った成長が限界を迎え、構造的な経済不振の様相が強まってきた。【10月10日 日経】)

【「脱ロシア依存」でエネルギー価格高騰 ドイツ経済の悪化】
失われた20年だか30年だかと言われている日本が他国の経済状況を云々できる立場にはありませんが、それはさておき、私の若い頃(1978年のボンサミットの頃ですから大分昔ですが)は“日独機関車論”などと日本とともに世界経済の牽引車とも目されていたドイツ経済の不振が目立ちます。

****ドイツ経済予測、今年もマイナス成長へ-統一後で2度目の連続縮小か****
ドイツ政府は9日、最新経済予測を発表し、今年の国内総生産(GDP)を0.2%減へ下方修正した。欧州最大の経済大国であるドイツは、長引く低迷から抜け出せずにいることがあらためて示された。

昨年のドイツ経済は0.3%縮小。今年もマイナス成長となれば、1990年のドイツ統一後で2度目のGDP連続縮小となる。4月末の予測では今年は0.3%の拡大が見込まれていた。2025年の経済成長率は1.1%、26年は1.6%と、プラス成長が予測されている。【10月9日 Bloomberg】
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経済に浮き沈みはつきもので、ドイツ経済も上記の“日独機関車論”のあと、20002~03年は高い失業率や慢性的な財政赤字などから「欧州の病人」と呼ばれた時期もありました。

その後、ロシアからの安価なエネルギーを活用することで経済は回復しましたが、ロシアのウクライナ侵攻で「脱ロシア依存」を進めた結果、エネルギー価格が高騰して経済も再び悪化して今の状況に至っています。(ドイツ経済の「日本化」とも)

24年は物価高を受けた賃上げの動きが出る中で持ち直しが期待された個人消費の回復ペースが鈍いとか・・・日本とも似通っています。

【独経済の低迷、国内連立の不統一で独のEUへ影響力も低下、EUの統一的対応も困難に】
国内需要が低迷するなかで、輸出にドライブがかかりますが、輸出先として大きな影響力がある中国も経済悪化で中国向け輸出も低迷する状況に。

中国経済が悪化しているとは言え、ドイツ基幹産業である自動車産業にとっては死活的に重要な輸出先ですから中国市場は大事にしたいところですが、周知のように欧州と中国は中国産EVへの追加関税で揉めています。

ドイツとしては、中国に追加関税を課すと中国からの報復が予想されますので、そうした中国と事を構えるようなことは避けたいところ。

かつて欧州政治を牽引したメルケル前首相の頃なら、そうしたドイツの事情をふまえてEUのかじ取りをしたところでしょうが、前述のように経済も低迷、国内政治も連立与党間で不協和音が目立つような状況では、シュルツ首相にかつてのメルケル前首相のような力を期待することはできません。

ドイツ(そしてフランスも)がEU内で十分な指導力を発揮できず、国内の連立与党間の意見の不一致にふりまわされている結果、EUも中国に統一的な対応ができない状況にもなっています。

****EUでドイツの影響力低下、中国EV関税問題で鮮明に*****
ドイツのショルツ首相は、中国から輸入する電気自動車(EV)に追加関税を課す欧州連合(EU)欧州委員会の提案に反対した。しかし、加盟国に追加関税案賛成の輪が広がるのを止めることができず、ドイツが国内政治分断によってEUの政策のかじ取り役を担うのが困難になっている構図があぶり出された。

ドイツの自動車メーカーは売上高のほぼ3分の1を中国市場で稼いでおり、追加関税による中国側の対抗措置を懸念。こうした声に押されてドイツ政府は今月4日のEU加盟国の採決で反対票を投じたが、同調したのは4カ国にとどまった。

これは10年前とは極めて対照的だ。2013年7月のある週末、当時の中国政府とドイツのメルケル首相、欧州委のバローゾ委員長の間で何度も電話のやり取りが交わされた結果、EUの太陽光パネルに対する関税案は撤回され、代わりに最低価格を設定する合意が成立した。

メルケル政権の16年はドイツの産業界が活況を呈すると同時に、メルケル氏の政治力がEUの結束を可能にしていた。ところが、現在のショルツ政権は社会民主党、自由民主党、緑の党の連立でなかなか内部の足並みがそろわない中で景気後退2年目に突入し、来年には連邦議会選挙を控えていることから、まずはEUの政策よりも国内問題を優先せざるを得ない。

こうしたショルツ政権の内部がばらばらな状態を巡っては、EUの外交官から憤まんが聞こえてくる。欧州におけるドイツの影響力を弱め、EUの団結を損なっているというのがその理由だ。

EUはEV問題で引き続き中国と妥協できる線を模索すると約束しているが、ドイツの意見が異なることはEUの交渉力を低下させている。

市場調査会社ユーロインテリジェンスのアナリストチームは「ドイツと残りの(EU諸国)の溝は、個別の加盟国への外国による圧力に一枚岩の態度を示していくという欧州委にとって大事な取り組みの1つを台無しにしている」と記した。

緑の党出身のベーアボック氏がトップに立つドイツ外務省のある高官は、EUは中国の不公正で市場にダメージを与える措置を阻止するべきで、関税を選択肢から外してはならないと発言している。ショルツ政権内部の亀裂も露呈した形だ。 前途多難

政治的にまとまれないドイツが他の加盟国と同一歩調を取れなかったのは今回が初めてではない。3月には、企業寄りのドイツ自由民主党が強く反対したにもかかわらず、EU各国は企業に自社サプライチェーン(供給網)の監査を義務化する法案を支持。ドイツは採決で棄権した。(中略)

欧州改革センター(CER)のアシスタントディレクター、ザック・マイヤーズ氏は、追加関税を巡る論争は、ドイツがもうEUの通商政策を主導できない上、フランスの影響力もより限定されていることを物語ると分析。後者については、フォンデアライエン欧州委員長がフランス出身のブレトン委員を交代させ、後任者の権限を縮小したことが原因だとの見方を示した。

フォンデアライエン氏にしても、米国により接近して中国リスクの低減を図ろうとしているものの、ドイツとフランスの先導がなければ、せいぜい産業セクターごとの政策遂行と国際貿易ルールの尊重を通じて加盟国の支持を得るしかないだろう。

ロジウム・グループのシニアアドバイザー、ノア・バーキン氏は、欧州委は中国製EV向け追加関税で加盟国の賛成多数による支持を得たが、今後はドイツの後押しがなければ、中国に対して一貫したより懐疑的な政策を行っていくのは難しくなると警告した。

ドイツ国内で目先の視野の狭い問題が優先されている限り、欧州委は新たな対外経済政策の課題を推進するのに苦労を強いられるだろうと指摘している。【10月8日 ロイター】
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【ドイツ自動車の中国市場での苦戦】
“ドイツの自動車メーカーは売上高のほぼ3分の1を中国市場で稼いでいる”ということですが、上記関税問題を抜きにしても、ドイツ自動車産業にとって中国市場の動向は厳しそうです。

ドイツ国内では、中国産自動車は好評のようです。かつてのように低価格が注目されるのではなく、中国産EVの技術力が評価されています。時代は変わっています。

****ドイツ人の約6割、中国ブランド車の購入を検討 独ADAC調査****
ドイツ最大の自動車関係団体、ドイツ自動車連盟(ADAC)がこのほど発表した調査結果によると、ドイツ人回答者の59%が中国製自動車の購入意向を示した。特に若年層の購入意欲が高く、30〜39才では74%、18〜29才では72%に上った。純電気自動車(BEV)に限れば、8割が中国製を選びたいと答えた。

中国のハイエンドモデルもドイツの消費者から評価されており、高級車ユーザーの約60%が中国ブランド車を購入する可能性を排除しないと回答した。 

中国ブランドを選ぶ理由については、ドイツ人回答者の83%がコストパフォーマンスを最大の理由とした。55%が革新的な技術、37%がデザインを挙げた。 

ADACが4月に発表した中国ブランド13車種を対象とする評価報告によると、中国車の多くの車種がユーロNCAP(欧州新車アセスメントプログラム)で最高評価を獲得し、中国のバッテリー技術が成熟し、ものづくりの質が良好であることが示された。【10月2日 新華社】
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その一方で、中国市場におけるドイツ車は・・・苦戦しているようです。

****BMWとベンツ、中国市場で販売台数が大幅減―独メディア****
2024年10月10日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ドイツの大手自動車メーカーBMWとメルセデス・ベンツがそれぞれ中国市場での販売台数が大幅に減少したと報じた。

記事は、BMWの今年7〜9月の中国市場における納車台数は前年同期比約30%減の14万8000台、ベンツも同13%減の約17万台になったと紹介。世界の他地域の市場に比べて顕著に業績が悪化しており、両ブランドにとって最も重要である中国市場の販売が疲弊していると評した。

そして、ベンツの関係者が中国市場について「全体的な需要が減少している。特に高級ブランドの需要低下が目立つ。また、電気自動車(EV)の価格下落が続いていることも中国での販売に影響した」と分析していることを紹介するとともに、中国での業績悪化に伴ってベンツが今年に入ってすでに2度にわたり利益が大幅に減少する可能性があるとの情報を発信していることを伝えた。

記事は、中国の自動車市場全体がここ数か月縮小を続けている一方で、中国政府による購入奨励措置によってEVに関しては逆に活況を呈していると紹介。ドイツブランドはこの状況から利益を得ることができていないとし、その原因が「中国のライバルによってより低価格で燃費が良く、経済的なモデルが提供されているからだ」と指摘した。

その上で、世界のEV大手BYD(中国)の9月におけるEVとハイブリッド車の合計販売台数が前年同期比45%増で41万8000台に達したほか、テスラ(米国)も9月の中国での販売台数が同66%増の7万2000台となったことを発表したと紹介。

一方で、化石燃料車メーカーの上海汽車は9月の販売台数が前年同時期から30%以上減少したと伝えている。【10月12日 レコードチャイナ】
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ドイツ自動車産業、ひいてはドイツ経済の苦境ぶりが窺えます。
では、日本経済は? と言えば、ドイツ同様かも。と言うか、冒頭【日経】にあるように、ドイツ経済が日本のような構造的経済不振に近づいている・・・ということでしょう。
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欧州  オーストリア総選挙で極右・自由党勝利 極右台頭は民主主義の危機か

2024-10-11 23:32:21 | 欧州情勢

(オーストリア総選挙で勝利を確実にし、演説する極右・自由党のキクル党首(中央)=ウィーンで2024年9月29日【10月1日 毎日】)

【オーストリア 極右政党・自由党が第1党に】
フランスでの国民連合の堅調ぶり、ドイツにおけるAfD(ドイツのための選択肢)の勢力拡大、イタリアのメローニ政権など、反移民などの右傾化、極右勢力の台頭が続く欧州にあって、9月29日に行われたオーストリア国民議会(下院、183議席)の総選挙で、極右政党の自由党が“暫定結果によると、自由党が前回2019年選挙から13ポイント増の得票率29.2%でトップ。ネハンマー首相率いる中道右派、国民党が11ポイント減の26.5%、野党の社会民主党が0.1ポイント減の21.0%で続いた。”【9月30日 共同】と勝利しました。

****極右が初の第1党=与党敗北も政権維持の公算―オーストリア総選挙****
オーストリアで29日、国民議会(下院、定数183)議員選挙が実施され、反移民を掲げる極右・自由党が3割弱の票を獲得して初めて第1党となった。ただ、他党は協力に否定的で、自由党主導の政権が誕生する可能性は低い。

キックル党首は「われわれは歴史の一部を記した」と支持者に語った。自由党は1956年に元ナチス親衛隊将校が創設。選挙戦では移民の送還強化や減税を訴えた。欧州連合(EU)に批判的で、ウクライナに侵攻するロシアに対する制裁に反対している。

与党の中道右派・国民党は敗北し、第2党に転落。しかし、連立交渉では主導権を握る見通しで、引き続き政権を率いる公算が大きい。【9月30日 時事】 
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他党が自由党との連立を嫌っていますので、連立交渉は難航しそうです。
“(自由党の)キクル氏はファン・デア・ベレン氏(大統領)に、従来の慣行に従って第1党に政権を樹立させるよう求めているが、ファン・デア・ベレン氏はそのような義務はないと反論。憲法の専門家も同氏の主張を支持している。”【10月1日 ロイター】とも。

ただ、“(国民党の現首相)ネハンマー氏は自由党のキクル党首が首相など中枢ポストに就くのであれば組まないとの考えを示している。両党は17年に国民党主導で連立政権を構築した。”【9月30日 共同】とのことですから、逆に言えば、“自由党のキクル党首が首相など中枢ポストに就かない”のであれば中道右派・国民党との連立もあり得るかも・・・・ということでしょうか。

自由党は1956年に元ナチス親衛隊将校が創設した政党で、極右色を薄めるフランスのルペン氏や、EUとも協調路線をとるイタリアのメローニ首相などと異なり、オーストリアの自由党キクル党首は自らをナチスの表現である「人民宰相」と呼ぶような“極右の中の極右”【10月10日 Newsweek】とも言われています。

【危機に瀕しているのは民主主義ではなく中間層の怒りに正面から向き合わないリベラリズム・・・との指摘】
極右勢力の台頭について、既存の政治エリートが地方で生活する労働者など有権者の声に共鳴していないことを理由にあげる指摘があります。

****欧州「極右」の勝利は“民主主義の危機”ではない…「リベラル政治家」は中間層の怒りと向き合うべき****
(中略)
極右勢力の台頭で政治が機能不全に陥りつつある欧州だが、根本の原因は何だろうか。

オランダ、フランス、ドイツなどと同じくオーストリアでも「表面化する移民問題に後押しされた」と見られているが、今回の選挙で自由党は、移民がほとんど居住していない農村部で特に票を伸ばしている。

オーストリアの専門家はこの現象について「自由党のメッセージの中核は移民ではなく、『エリートは有権者に共感していない』ということだ」と分析している。

高学歴のエリート層が牛耳る欧州連合(EU)は新自由主義的な政策を進める。対して地方で生活する労働者たちの間では、自分たちの政治的な意思が反映されていないという認識が広がっている。極右政党は彼らの被害者意識に寄り添ったことで勢力を拡大することができたというわけだ。

この分析が正しいとすれば、既存政党が移民政策を厳格化しても、極右政党から票を奪い返すことは困難だと言わざるを得ない。欧州でも米国と同様、政治の構図は左派と右派ではなく、上と下の対立に転じた感がある。

「政治エリート」に対する反発
(中略)
極右の台頭で民主主義の危機が叫ばれているが、筆者は危機に瀕しているのは民主主義ではなく、これまで政治を主導してきたリベラリズムだと考えている。

リベラリズムを信奉する政治家(リベラル政治家)は、移民などの積極的な受け入れや経済のグローバル化を重視するが、中間層の不満にあまり関心を示してこなかったからだ。

リベラル政治家が中間層の怒りに正面から向き合わない限り、ドイツをはじめ欧州で民主主義の危機が発生するのは時間の問題なのではないだろうか。【10月10日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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ただ、単純に有権者の声に寄り添う・・・ということでは、中道右派の国民党が移民に関する極右・自由党の姿勢を受け入れて強硬な姿勢を打ち出し、移民問題に関する国民党の政策は「自由党とほぼ区別がつかない」(保守系日刊紙プレッセ)といった状況にもなってきます。

【自由党勝利は単に既成政治への抗議ではなく、欧州で極右が普通の存在として受け入れられるようになった結果・・・との指摘も】
一方で、オーストリア有権者は単に従来の既成政党への批判票ということではなく、自由党・キクル党首の極右体質を理解したうえで自由党に投票している、そのように有権者が右傾化している・・・との指摘も。

****オーストリア総選挙で「ナチス礼賛」の自由党が第1党、背景にコロナ禍で政府の規制より「個人の自由」を擁護****
<欧州を席巻する極右勢力は今や「体制側」の存在だ。最近もドイツ東部やオランダで極右が躍進しており、オーストリアもその流れに加わった形。欧州の右傾化が新たな次元に>

欧州を席巻する右傾化の波が9月29日、さらに加速した。オーストリアの総選挙で極右政党「自由党」が初めて第1党に躍り出たのだ。

イタリアやスロバキア、クロアチア、ハンガリーなど多くのEU加盟国で反自由主義かつ権威主義的な主張を掲げる極右政党が既存の政治体制を揺さぶっている。最近もドイツ東部やオランダで極右が躍進しており、オーストリアもその流れに加わった形だ。(中略)

自由党は今や同国政界の中心的な存在だ。キクルは選挙期間中に「オーストリアの要塞化」を約束。移民の流入を阻止し、外国ルーツの市民の「再移住」(つまり国外追放)を推進し、教育制度を一新し、公共メディアを中立化させると訴えた。

自由党の躍進はコロナ禍のおかげでもある。自由党は当時、政府の規制より個人の自由を擁護する唯一の存在だった。コロナ関連の陰謀論も、非合理的な主張を展開する自由党の追い風となった。さらに政府自身も、4度の全土ロックダウンや違反者への厳罰を強行して不興を買った。

自由党は欧州極右の歴史の中でも特異な立場にある。2000年に国民党との連立政権に加わると、冷戦時代から続く保守と社会民主主義の二大政党制が崩壊。欧州で極右が普通の存在として受け入れられる契機となった。

当時、同党のカリスマ党首イェルク・ハイダーが首相に就任する可能性もあった。この前代未聞の事態を受け、EU諸国は同国に制裁を科した。民主主義を脅かす政党を容認すれば、各国で類似勢力が台頭すると懸念したのだ。

平均的な人が極右に投票
実際、その懸念は現実のものとなった。自由党が17年に再び政権に返り咲いたときには、もはやEUからの反発は起きなかった。(中略)

過激さを増した自由党が政権を担う可能性が欧州で容認されている現状は、新たな時代の兆候だ。大規模な抗議運動も制裁を求める声もない。(中略)

オーストリアの右傾化と欧州全体への影響は表層的ではない。この選挙結果を「抗議票」や漠然とした政治批判と見なすべきではない。

キクルは極右の中の極右であり、人々の醜悪な本能を刺激する。彼の勝利は、欧州の極右勢力が1990年代から描き続けてきたシナリオに新たな1ページを書き加えた。

ウィーンの研究機関、オーストリア・レジスタンス資料センターのアンドレアス・クラネビッター所長は、「この数十年で、今ほど国民の間で人種差別主義や反ユダヤ主義が高まり、外国人を嫌悪し、移民に敵意を抱く人が増えている時はない」と述べる。

クラネビッターによれば、自由党はこの傾向に拍車をかけ、「人民宰相」や「民族共同体」といったナチス的な用語を党綱領に再び採用している。「これらは右派の過激派の間で通じている隠語で、新しい支持者にも容認する人や無関心な人が増えている。そこには女性や専門職、大卒者、若者も含まれる」

ドイツのレーゲンスブルク大学のオーストリア歴史学者であるウルフ・ブルンバウアーも、自由党支持者は抗議票を投じたわけではないと考えている。

「今日、自由党はエスタブリッシュメントの政党だ。オーストリア国民は、自由党が人種差別主義的で権威主義的であり、キクルが憎悪に満ちた親ロシアで反移民であることを十分理解している。彼らに投票する人の大半はイデオロギー的な信念からだ。オーストリア社会の平均的な人をほぼ反映している」

自由党の台頭は、オーストリアの伝統的な保守政党である国民党を変貌させた。社会世論の変化の結果にせよ、自由党がそれを利用することに成功した結果にせよ、国民党は自由党に対抗していないどころか、移民に関する同党の姿勢を受け入れている。

国民党党首のカール・ネーハマー首相は今年に入り、難民申請者に対して国内居住の最初の5年間は社会給付の支給を拒否するなど、保守派の有権者に向けたポピュリスト的政策を相次ぎ打ち出した。
「われわれが望むのは、働けない人のための社会福祉制度であり、働きたくない人のための制度ではない」とネーハマーは移民を批判して述べた。

同国の保守系日刊紙プレッセは、移民問題に関する国民党の政策は「自由党とほぼ区別がつかない」とし、「そうした政策の支持者は皆、以前から自由党に投票している」と指摘した。国民党が今回失った得票率の11ポイントは、大部分が自由党に流れた。

パンデミックが自由党の再浮上に重要な役割を果たしたとの指摘もある。オーストリアが21年後半にワクチン接種を義務化すると、キクルは「今日からオーストリアは独裁国家だ」とぶち上げた。自由党の支持率は30%前後に上昇し、同党はスキャンダルによる低迷から脱した。(中略)

2000年と同様、自由党はいま再びヨーロッパの極右の主唱者の仲間入りをし、かつて信頼を失った極右政党が政治文化全体を覆し、傷つけることが可能であることを証明した。この教えは、中欧の他の親ロシア派のポピュリストに刻まれるだろう。【10月10日 Newsweek】
*******************

上記指摘によれば、有権者は極右勢力の“極右体質”を容認しつつあるということになり、まさに“民主主義の危機”が進行しているのかも。

そうした有権者が極右勢力の“極右体質”を容認する背景には、「リベラル政治家」が有権者の声に正面から向き合っていないということもあるでしょうから、二つの指摘はまったく別物ではないでしょうが、有権者が極右勢力の“極右体質”をどこまで容認しているのかについては差があります。
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ジョージアそしてモルドバ  ロシアと欧米の間で揺れる ロシアの周辺に位置する国々

2024-10-04 22:55:33 | 欧州情勢

2024年9月17日/ジョージア、首都トビリシ、政府与党の反LGBT法案に抗議するデモ(AP通信) 【10月3日 KWP News】)

【「反スパイ法」に続いて反LGBT法 反リベラル姿勢をつよめる現政権】
8月19日ブログ“ジョージア  「反スパイ法」にLGBT規制 反ロシア感情の一方で深いロシアとの関係”で取り上げたように、旧ソ連構成国の一つグルジアは、ロシアと微妙な関係にあります。

ロシア系分離独立地域南オセチアとアブハジアを抱え、2008年にはロシアと戦火を交えたこともあり、国民に反ロシア感情が強く、多数がEU加盟を望んでいる一方で、ロシアとも政治・経済・文化的な強いつながりがあり、 現在の与党「ジョージアの夢」は、表向き“親欧米路線であり、EU加盟を目標とする”とされながらも、ウクライナ侵略後のロシアに融和的な政策をとっており、反リベラルの姿勢を強めています。

そのジョージアでは、「反スパイ法」あるいは「ロシア法」とも呼ばれて いる資金の20%以上を外国から得ている非政府機関、活動家集団、メディアは「外国の代理人」として登録することを求められる法律が成立しました。

ロシアにおいては、同様の法律により、多くの政治的な反対派が迫害され、メディア、人権団体が閉鎖に追い込まれています。 そのため、ジョージアでも・・・と懸念されています。

「反スパイ法」(「ロシア法」)に続いて、反LGBT法も議会で可決しました。

****ジョージア、反LGBT法案を可決 進む反リベラル化 EU入りに暗雲****
欧州連合(EU)加盟を目指す南カフカス地方の旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)の議会は17日、性的少数者(LGBTなど)の権利を制限する反LGBT法案を可決した。現地メディアが伝えた。

EUは昨年12月に「加盟候補国」の地位を与えたジョージアの反リベラル化を懸念し、法案を廃案にするよう求めていた。ジョージアとEUの関係悪化は確実で、同国のEU入りの先行きには不透明感が増す見通しだ。

現地メディアによると、法案は伝統的家族観と未成年者の保護を名目とし、同性婚の禁止▽性的少数者による養子受け入れの禁止▽性別適合手術の禁止▽メディアなどでのLGBTの宣伝の禁止−などを定め、違反すれば罰則を科すとする内容。同国のコバヒゼ政権の与党「ジョージアの夢」が議会に提出していた。

法案は今後、署名のためズラビシビリ大統領に送付される。同氏が署名を拒否した場合でも、議会が拒否権発動を無効だと議決すれば、法案は成立する。

政権側が法案を可決した狙いは、今年10月に行われる議会選を見据えて保守層の支持を拡大することだとする観測が強い。

実際、政権側は6月、大規模な抗議デモが相次いだにもかかわらず、外国から資金提供を受けて活動する団体を規制する「反スパイ法」を成立させた。

これも議会選に先立って政権側に批判的なNGO(非政府組織)などの弱体化を狙ったものだとみられている。

反LGBT法と反スパイ法を巡っては、類似の法律が施行されているロシアで言論統制の手段として使われてきたことから、ジョージア国内では言論の自由が悪化しかねないとの不満が強い。

EUが批判してきた両法の制定により、ジョージア国民はEU加盟が遠のく事態も懸念している。このため、両法の制定で政権支持率がかえって低下する可能性も指摘されている。

反スパイ法に続く反LGBT法の可決で、ジョージアとEUとのさらなる関係悪化は不可避だ。反スパイ法の制定に際し、EUはジョージアの加盟手続きの一時停止を発表し、同国への3千万ユーロ(約47億円)の財政支援も凍結した。

米国もジョージアの反リベラル化を批判し、同国政府高官や与党議員ら数十人にビザ(査証)発給を制限する制裁を科したほか、9500万ドル(約135億円)超の財政支援を停止した。【9月18日 産経】
***********************

法案に反対するズラビシビリ大統領が署名を拒否し、法案を議会に差し戻していましたが、議会のパプアシビリ議長は3日、法案に署名し、法案は成立しました。

【地政学的に重要なカフカス地方 10月26日の選挙がジョージアの行方を決める】
****西側と中ロの狭間で迷えるジョージア...10月議会選は「戦争か平和か」を選ぶ、「最後のチャンス」に?*****
<世論はEUとNATO加盟を望んでいるが、与党「ジョージアの夢」は中国・ロシアの強権体制に親和性。この国の行方を決める議会選が近づいているが──>

旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)。この国を訪れた人が真っ先に気付くのは青地に金色の星が輝く旗、そうEU旗だ。ジョージアの首都トビリシの官庁街に立ち並ぶビルから地方の小さな警察署まで、この旗が国中にはためいている。白地に赤い聖ゲオルギウス十字をあしらった国旗と並んで......。

その光景は西側に向けた熱いラブコールのようにも見える。実際、国民の圧倒的多数はEUとNATO加盟を支持している。それなのに、この国の現政権は西側に背を向けようとしている。代わって大きな影響力を持ち始めたのがウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアだ。

プーチンの思惑とは裏腹に、ロシアのウクライナ侵攻は民主主義陣営の結束固めに役立ったと、西側は主張する。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟がその証拠だ、と。

だが、かつては西側入りを切望していたジョージアはそれとは逆の方向に進みつつあるようだ。

ジョージアの人口は約370万人。アメリカのジョージア州の人口の3分の1にすぎない。今の米外交の焦点はウクライナと中東で、ジョージアをはじめカフカス地方の国々の優先度は低い。

だがカフカスの戦略的な重要性は看過できない。北はロシア南部、南はイラン北部と境を接し、カスピ海産の石油や天然ガスを西側諸国に運ぶ通り道にもなっている。

冷戦終結後に、アメリカは唯一の覇権国となった。その状況が崩れた今、世界の多くの国々はどの陣営に付くべきか様子見を続けている。西側とジョージアの今後の関係は、これらの国々にとって重要な判断材料になる。

西側寄りのジョージアの野党によると、ロシアはこの国を支配下に入れようと盛んに情報戦を仕掛けている。今月26日実施の議会選挙はそれに抵抗する最後のチャンスかもしれない──野党はそうにらんでいる。

「私たちは旧ソ連の一部だったから、(ロシアの支配下に置かれたら)どうなるか身をもって知っている」と、野党政治家のグリゴル・ワシュゼは本誌に語った。「今度の選挙はジョージアの命運を決める地政学的な選挙になる」

西側はこの国の政権与党「ジョージアの夢」が強権支配に傾きつつあることに警戒感を募らせている。ジョージアの夢は今年5月、野党の反対を押し切って外国の影響下にある個人や団体を規制するロシア式の法案を可決させた。

政府と与党は「ジョージアの主権を守るための法律だ」と強弁するが、活動家やメディアの弾圧に利用されかねないと、多くの市民が抗議の声を上げている。

困難な戦いを強いられる野党
もっとも、ジョージアは何十年も西側との関係深化に努めてきたのに、EU加盟で経済が飛躍的に成長することもなければ、NATO加盟でロシアの脅威に対抗できる集団防衛体制を保証されることもなかった。

しかも、ロシアのウクライナ侵攻で「いざというとき、西側は頼りになるのか」という疑念も生まれた。

ロシアはウクライナ戦争の前哨戦として、2008年にジョージアの分離独立派にテコ入れするため一部地域に軍を差し向けた。以後、ジョージアの国土の5分の1近くを占める地域にロシア軍が居座り続けている。

「(カフカス地方における)西側の戦略的な競争力は低下している」と、ジョージア政治研究所のコールネリー・カカヒアは指摘する。「この地域ではロシアに加え、中国、トルコ、イランが(覇権を争って)いる」

カフカス地方が中ロなどの陣営に取り込まれたら、その影響ははるかに広い範囲に及ぶと、政治アナリストらは警告する。

「ジョージアがロシアの影響下に入れば、戦略的にも象徴的な意味合いでも、アメリカとNATO、西側にとって大きな地政学的痛手となる」と、大西洋協議会ユーラシアセンターのローラ・リンダーマン上級研究員は言う。

「ジョージアはユーラシアの内陸国とヨーロッパを結ぶ国で、カスピ海のエネルギー資源をヨーロッパに運ぶ経由地点に位置し、エネルギー資源の調達先の多角化を目指す西側の計画にも重要性を持つ」

ジョージアを失うことは「プーチンの勝利であり、NATOと西側の恥となる」と言うのだ。

ジョージアの現政権は建前上は今もEUとNATO加盟を掲げているが、西側との関係はここ数カ月で急速に悪化している。

「外国からの影響に対する透明性(外国の影響)」法案をめぐりジョージア国内で大規模な抗議デモが起こったが、治安警察が武力で抑え付け、法案は成立。

こうした成り行きを重大視し、EUは7月、ジョージアの加盟手続きを停止し、ジョージア軍強化のための3000万ユーロの支援も凍結した。

米国防総省がこの夏、ジョージアと毎年実施している合同軍事演習「ノーブル・パートナー」を延期したことも、米政府の不快感の表れだろう。米政府はまた「民主主義の弱体化に責任があるか加担した」ジョージアの政治家へのビザ発給を制限した。

西側からの批判にジョージアの夢は強硬姿勢を強めている。先日は、10月の選挙で勝ったら野党の統一国民運動を違憲とすると述べた。彼らが言うには、統一国民運動は外国が組織した「グローバル戦争党」なるものを支持している。

この組織はウクライナの戦争を長引かせ、ジョージアからロシアに新たな戦線を仕掛けようとしており、LGBTQ+(性的少数者)の権利など「えせリベラル」なイデオロギーを擁護している張本人だという。

また、ジョージアの夢は物議を醸したパリ夏季五輪の開会式を、ジョージアの伝統的な家族観と未成年者を守るために新たな法律が必要な理由だと有権者に訴えている。

「10月の議会選挙は一種の国民投票であり、戦争か平和か、道徳の低下か伝統的な価値観か、外部勢力への従属か独立主権国家か、ジョージア国民は最後の選択を迫られる」

そして、自分たちが再び与党として選ばれることによってのみ、EUおよびアメリカとの関係を再構築できると、ジョージアの夢は主張する。

これに対し野党陣営は、公正な選挙で自分たちが勝利できると主張する。彼らが強調するのは、ジョージアのEU加盟が国民に支持されていることだ。昨年末にトビリシの非営利団体、国家民主主義研究所が行った世論調査では、加盟支持は80%近くに達している。

多くのジョージア国民は、ヨーロッパのよりリベラルな社会政策に必ずしも賛同しないかもしれないが、EU加盟がもたらす移動、貿易、雇用、投資の自由を望む声は高まっている。

「問題は、ジョージアで機能している大規模な偽情報のメカニズムだ。彼らはメディアやチャットのチャンネルを持ち、インターネットを利用して、人々を洗脳するために大金を投じている」とワシュゼは語る。

ほかにも野党勢力が分裂状態であることなどジョージアの夢の優位を専門家は指摘する。同党の創設者でオリガルヒのビジナ・イワニシビリ元首相は国内で最も裕福な実業家で、首都を見下ろす鋼鉄とガラスの宮殿はジェームズ・ボンドの悪役の隠れ家にも例えられる。

「この国で選挙に勝つことは非常に難しい。約30万人の公務員が政府の影響下にあるため彼らを行政資源として悪用できる」と、カカヒアは言う。「さらにジョージア企業の80%が与党を支持している」

野党側は現政権に対する西側の措置を歓迎しているが、効果は疑問視している。「今やロシアとジョージアの夢のプロパガンダが社会に深く浸透しており、支持者にとって(西側からの)制裁は勇気の証しのようになっている」と、野党政治家のアレキサンドル・クレボーアサティアニは言う。「制裁はあまりに軽く、あまりに遅く感じられる」

反対派はジョージアの夢を親ロシアと呼ぶが、状況はもっと微妙だ。トビリシ市内で見られる反ロシアや親ウクライナの落書きは、ロシアに対する強い憎悪の証しでもある。

1801年にジョージアはロシア帝国に併合された。1917年のロシア革命後につかの間の独立を果たすも、ソビエト連邦の侵攻により数年で鎮圧された。独立を取り戻したのは91年のソ連崩壊後のことだ。

旧ソ連衛星国の多方向外交
2008年にロシアがジョージアに侵攻したのは、NATOがジョージアとウクライナがいずれ加盟するだろうと語った数カ月後だった。

ロシア軍は5日間の戦闘で、親ロシア派の飛び地である南オセチアでジョージア軍を撃退。その後、ロシアは南オセチアと、ジョージア北部の黒海沿岸のアブハジアを独立国家として承認した。これは、ウクライナではるかに大規模に展開されることになる事態の兆候だった。

ジョージアの夢は平和的な方法で領土保全を回復すると語っているが、ロシアが、占領している飛び地について友好的な政府のために手綱を緩めるそぶりを見せることはない。

そして、ジョージアはロシアだけを見ているわけではない。西側との意見の相違が深まるにつれて、中国とも関係を強めているのだ。

中国の「一帯一路」構想の一環として、中国の業者がジョージア周辺でインフラを建設していることは明白だ。黒海沿岸のアナクリアでは、アメリカが投資を引き揚げた後に中国の企業コンソーシアムが巨大な港の建設を受注した。

政治的な接近も見受けられる。中国外務省は、アメリカによる国外での政治干渉に関する最近の報告書の中で、ジョージアを一例として挙げている。ジョージアの夢の政治家たちはすかさず支持を表明した。

ジョージアはロシアの周辺に位置する他の国々にとって、ある面では親西側だが、別の面では親ロシアまたは親中国という手本になりつつあると、ワシントンのシンクタンク、米国平和研究所のドナルド・N・ジェンセンは言う。

「ジョージアは、ロシアに完全に服従するわけではないが、同時にいくつかのベクトルを見据える多方向の外交政策というグレーゾーンに落ち着く可能性がある。(旧ソ連圏の)多くの国がその方向を目指そうとしているかもしれない」【10月3日 Newsweek】
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【ロシアの選挙介入を警戒するモルドバ】
“ロシアの周辺に位置する他の国々”のひとつがやはり旧ソ連のモルドバですが、モルドバもロシアと欧米の間で揺れています。

****ロシア系勢力がモルドバ大統領選とEU投票で13万人買収=国家警察****
モルドバ国家警察は3日、大統領選と欧州連合(EU)加盟の是非を問う国民投票を20日に控え、ロシア系勢力が13万人以上を買収し、サンドゥ政権の親EU政策を妨害する「前例のない直接攻撃」を仕掛けていると発表した。

国家警察トップのビオレル・チェルナウタヌ氏は記者団に捜査状況を説明し、ロシアが管理するネットワークを経由し、「選挙プロセスの混乱を狙った資金提供と汚職がまん延している」と述べた。9月だけで約1500万ドルがロシアのプロムスヴャジバンクに開設された口座に送金されたと明らかにした。

サンドゥ大統領は2期目を目指している。ロシアが政権転覆工作を繰り返していると長く非難してきた。ロシア政府はこれを否定している。

今回の大統領選では立候補者が過去最多の11人と乱立しているものの、世論調査ではサンドゥ氏が圧倒的なリードを保っている。【10月4日 ロイター】
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モルドバはロシアのウクライナ侵攻後の2022年6月にEUの加盟候補国となりましたが、ソ連時代の名残で国民の3分の1が親ロシアとも言われ、国内に抱える親ロシアの未承認国家「沿ドニエストル」にはロシア軍が駐留しています。

アメリカも、ロシアがウクライナ周辺などの諸外国で、親ロシア候補への間接的な資金提供やネット上の世論操作を通じ、選挙に介入しようとしてきたと分析しており、民主主義を弱体化させることを警戒しています。

サンドゥ大統領が危機感を深める背景には、強まるロシアの揺さぶりがあります。

ウクライナ侵攻後、ロシアはモルドバへの天然ガスの供給を大幅に削減。ガス料金は6倍、電気料金は3倍に上昇し、世論調査では、半数がサンドゥ政権で経済が悪化したと回答しています。

プロパガンダ対策でロシア語のニュース報道などを禁止した政権に対し、「強権主義」との批判も出ています。

サンドゥ大統領の支持率は30%台で圧倒的ですが、1回目の投票で過半数を獲得して当選を決めないと、決選投票で野党が連合すれば負ける可能性もあります。

また、国民の多くはEU加盟に賛成とみられていますが、政権への不満が高まれば、投票率が下がり国民投票が成立しない恐れもあります。


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ウクライナ  ゼレンスキー大統領のアメリカでの“もう一つの戦い”

2024-09-27 23:34:17 | 欧州情勢

(記者会見した米国のハリス副大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=ホワイトハウスで2024年9月26日【9月27日 毎日】)

【ロシアの電力インフラ攻撃でウクライナは今冬に過去最悪の電力不足も】
ウクライナではロシアに電力インフラを狙った攻撃が激しく、ウクライナは深刻な電力不足に直面しています。

****ウクライナ、今冬に過去最悪の電力不足も ロシアのインフラ攻撃で IEAが報告書****
国際エネルギー機関(IEA)は19日、ロシアの侵略に伴うミサイル攻撃などでウクライナの電力供給能力が危機的水準に達しており、今年冬に侵略開始後で最悪の電力不足が発生する恐れがあるとする報告書を公表した。IEAは電力不足を緩和するためには支援国によるウクライナの防空能力の強化や、修理部品の供給の迅速化などが必須だと指摘した。

IEAは、発電所や送電施設などを標的とした露軍のミサイルやドローン(無人機)攻撃でウクライナの電力インフラの損傷が進んでおり、電力供給能力は今年半ば時点で侵略前の約3分の1に低下していたと指摘。修理が追い付かず、今年夏は最大需要量12ギガワットに対して2ギガワット以上が不足したと報告した。停電も常態化し、1日に数時間しか電力供給が受けられていない地域もあるとした。

その上で、インフラの修理を進め、欧州からの電力輸入を続けた場合でも、今年冬は予測される最大需要量18・5ギガワットに対し、6ギガワット程度が不足する恐れがあると警告。「ウクライナはロシアの侵略後、2回の冬を乗り越えたが、今年冬は最も厳しい試練となることが予想される」とした。

国連ウクライナ人権監視団(HRMMU)も19日、露軍の電力インフラ攻撃に関する報告書を公表。露軍が今年3月〜8月に計9回の大規模攻撃を行い、多数の電力インフラを破壊して市民生活に損害を与えたと指摘した。「ウクライナは今年冬、深刻な電力不足に直面する」とも予測。1日に最大18時間の停電が起きる恐れもあるとした。

民間人を危険にさらす電力インフラ攻撃について、ウクライナや欧米諸国は国際法違反だと非難。ロシアは電力インフラが軍事関連施設に当たると主張し、攻撃を正当化している。【9月19日 産経】
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****ウクライナのエネルギー不足深刻化の恐れ、G7が支援強化…ロシアの攻撃受け発電能力3分の1****
ロシアの侵略を受けているウクライナで、深刻なエネルギー不足が再び懸念されている。露軍が最近、ウクライナの発電所などへの攻撃を繰り返しているためだ。先進7か国(G7)などは23日、国連総会に合わせて米ニューヨークで開いた閣僚級会合で、エネルギー分野の支援強化を確認した。(中略)

会合後に発表された共同声明はエネルギー施設などへの攻撃について、「寒い冬の間、ウクライナの人々にとってきわめて重要な電力や暖房、水の確保を脅かすものだ」とロシアを強く非難した。エネルギー需要が増える冬に向け、支援の増強を国際社会に呼びかけた。(中略)

米政治専門紙ポリティコ欧州版は、ロシアが、ウクライナで稼働中の原子力発電所に電力を送る変電所を標的にしているとの見方を報じた。原発が運転を停止すれば電力不足の深刻化は必至で、ポリティコは「ウクライナの戦闘能力は低下し、経済は破綻し、和平交渉が始まったとしても立場は弱くなる」と指摘した。【9月24日 読売】
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原発頼みのウクライナにとって原発が止まると致命傷になります。ロシアにとっては原発そのものへの攻撃は大惨事につながるので難しいところですが(ウクライナはロシアが原発攻撃を計画していると主張していますが)、原発に電力を送る変電所を標的というのは「あり」でしょう。

戦争をしているのだから、「厳しい冬」、これまでと違う生活状況は当然だろう・・・というのはウクライナに対して厳し過ぎる言い方でしょうか。ただ、戦争をするかどうか、続けるかどうかは単に戦況だけでなく、そういう国民生活・経済がどうなるのかを含めて判断すべきことでしょう。

ロシアの電力インフラへの攻撃は続いています。

****ロシア、送電施設を攻撃 ウクライナ3カ所****
ウクライナのシュミハリ首相は26日、ロシア軍が前夜から南部ミコライウ州を含む3カ所の送電施設を攻撃したと発表した。被害程度は不明だが、シュミハリ氏は「電力供給停止の予定はなく、ロシアは目的を達成できなかった」と表明した。

ロシアによるインフラ攻撃が続き、ウクライナでは冬の電力不足の深刻化が懸念されている。訪米中のウクライナのゼレンスキー大統領は国連総会一般討論での演説などで、ロシアがウクライナの原発への攻撃を計画しているとの見方も示している。【9月27日 共同】
********************

前線付近の砲弾が飛んでくるなかで命がけの電力復旧作業を行う作業員は、ウクライナ市民にとっては「英雄」でもありますが、電力を届ける肝心の集落自体が攻撃で廃墟になってしまうという悲劇的な結末も。

****前線付近で命がけの電力復旧、作業員は「英雄」 ウクライナ****
ウクライナ東部ドネツク州のポクロウシク戦線までわずか数キロの集落で、ビタリー・アシネンコさんは同僚が電線工事を行う様子を不安げに見守っていた。 空は雲に覆われ、空気がしんとしている。「こんな天気だと、爆弾が飛んできても見えない」と話す。(中略)

自身のチームも軍部隊同様に「標的」にされるようになり、この地区で負傷した同僚もいるという。 数メートル上では、旧ソ連時代の高所作業車に乗った同僚が、砲弾の破片で断線した電線を急いでつなぎ合わせていた。

遠くで爆発音が鳴り響いた。「ロケット弾だ」。ビタリーさんは作業に戻った。

■今も残る人々のために
(中略)突然、砲弾が空気を切り裂いた。爆発の衝撃を受け、作業車のバスケットに入っていた作業員が身を縮めた。

「逃げろ! 早く!」と、ビタリーさんが叫んだ。作業員らは装甲車に飛び乗った。作業車はあわてて反転した。 次の日にまた戻ってくると、ビタリーさんは約束した。

だが、この日の作業は無駄になった。翌日、集落は廃虚と化していた。 【9月26日 AFP】
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【ゼレンスキー大統領 「終わりに近づいていると思う」「勝利計画」】
戦況についてはゼレンスキー大統領は強気姿勢を崩していません。

*****ゼレンスキー氏「東部でロシア軍の攻撃能力が低下」 戦況改善との認識示す****
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日のビデオ声明で、最激戦地の東部ドネツク州で「ロシア軍の攻撃能力を低下させることに成功した」と述べ、劣勢が続く戦況に一定の改善がみられるとの認識を示した。

露西部クルスク州への越境攻撃の結果、約4万人の露軍兵力を同州に引き付けられた上、多数の露軍兵を捕虜にしたとも表明。これらは戦争の見通しに「重要な要素」と指摘した。

ただ、ゼレンスキー氏は、露軍が全域の掌握を狙うドネツク州の小都市ポクロフスクとクラホベ方面で激戦が続いているとし、「戦況は(ウクライナ軍にとって)非常に厳しいままだ」と説明した。(後略)【9月20日 産経】
*****************

東部戦線でロシアの激しい攻撃が報じられるなかで「本当だろうか?」という感もありますが、“大本営発表”ですので・・・。

****ロシアとの戦い「終わりに近づいていると思う」 ゼレンスキー大統領“ウクライナ強化”の重要性訴え****
ウクライナのゼレンスキー大統領がアメリカメディアの取材に対し、ロシアとの戦闘について「終わりに近づいていると思う」と述べるとともに、早急な支援強化の重要性を訴えました。

国連総会に出席するためアメリカを訪問中のゼレンスキー大統領はABCテレビの単独インタビューに応じ、「我々が思うよりも和平に近づいていると思う」「我々は戦争の終わりに近づいていると思う」と述べたということです。

また、アメリカのバイデン大統領に説明する、いわゆる「勝利計画」について、詳細は明らかにしなかったものの、「ウクライナを強化するものだ」「プーチンに戦争を止めさせることができるのは、強い立場に立つことだけだ」と述べたということです。

ゼレンスキー大統領は、ロシア領内を攻撃するために射程の長い兵器の使用を認めるようアメリカなどに訴えていて、ロシアとの和平交渉を有利に進めるためにも、こうした支援の重要性を指摘したものとみられます。【9月24日 RBS NEWS DIG】
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「終わりに近づいていると思う」・・・そうかな? 「勝利計画」・・・何それ?そんなものあるの? といった感じもしますが・・・

【ウクライナの今後を死活的に左右する米大統領選挙】
****ゼレンスキー大統領、「勝利計画」をバイデン氏に説明…ホワイトハウスで会談****
米国のバイデン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は26日、ワシントンのホワイトハウスで会談した。バイデン氏は追加の軍事支援を行う方針を伝え、支援国による首脳級会合を10月12日にドイツで開くと表明した。

米政府によると、追加軍事支援は総額約80億ドル(約1兆2000億円)規模となり、地対空ミサイルシステム「パトリオット」の追加供与などが含まれる。バイデン氏は会談で、「ウクライナが将来のロシアの侵略から国を守るために十分な能力を持てるようにしなければならない」と強調した。ゼレンスキー氏は「あなたの決意は我々が勝利するためにきわめて重要だ」と述べ、支援への謝意を伝えた。

ゼレンスキー氏は、ロシアの侵略終結に向けた「勝利計画」をバイデン氏に説明し、支持を求めた。内容は不明だが、両首脳は「計画の外交、経済、軍事面」について協議したという。両首脳は10月の支援国会合に合わせ、再び会談することで合意した。

米欧がウクライナに供与した長射程兵器の使用制限緩和についても協議したとみられるが、会談後の両政府による発表に言及はなかった。

ゼレンスキー氏は米大統領選の民主党候補のハリス副大統領、議会上下両院の超党派の議員団とも会談した。ゼレンスキー氏はハリス氏との会談で、「我々は米国と共にあることによってのみ、戦争に勝利し、公正な平和に近づくことができると信じている」と述べた。

一方、ゼレンスキー氏が27日、共和党大統領候補のトランプ前大統領とニューヨークで会談することが決まった。トランプ氏はウクライナ支援の継続に批判的な立場を示している。【9月27日 読売】
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ウクライナが求めている長射程兵器の使用制限緩和については“ワシントン・ポスト紙によると、米国製の長距離兵器によるロシア領内への攻撃容認を求めたが、バイデン氏は認めなかった。”【9月27日 共同】とのこと。

ウクライナにとって、11月の米大統領選挙でどちらが勝つのかは、死活的に重要な問題です。自身ではどうにもできないのはゼレンスキー大統領にとっては胃が痛くなるところでしょう。

****ウクライナの行方、米大統領選が左右 ハリス氏「支援は国益」 トランプ氏「停戦が利益」****
バイデン米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領との26日の会談で、支援継続の決意を表明した。米大統領選の民主党候補、ハリス副大統領もバイデン氏の路線を踏襲する構え。

一方、27日にゼレンスキー氏と会談する共和党候補のトランプ前大統領は早期の停戦交渉を主張しており、両候補の姿勢は大きく異なる。大統領選の結果はウクライナの行方を左右する。

ハリス氏は26日、ゼレンスキー氏との会談を前に「ウクライナ支援は慈善事業でなく、米国の戦略的利益」だと述べた。

あえて「国益」を強調した背景には、大統領選を前にしたウクライナ支援をめぐる党派的な対立がある。米メリーランド大の最新の世論調査によると、支援継続への支持は民主党支持者で63%に上ったのに対し、共和党支持者では37%にとどまった。

バイデン氏は26日、米国製の長射程ミサイルによるロシア国内への攻撃を認めなかったと報じられたが、「ウクライナが勝つために必要な支援を行う」と述べ、従来より踏み込んで対露勝利が支援の目的だと言明した。同様の決意を示したハリス氏は「それどころかウクライナに領土の大部分を放棄するよう迫る者がいる」とも語った。

ハリス氏の発言は、ウクライナが戦場で優位に立つ前に交渉を急げば譲歩を強いられ、プーチン露大統領の思うつぼになるとの趣旨で、トランプ氏を念頭に置いている。ただ、ハリス氏は戦争終結の道筋に関し自らの構想を語っていない。

対照的にトランプ氏は一貫して、再選すればプーチン氏と速やかに交渉し停戦に導くと言明している。今月の討論会では司会者から「ウクライナの勝利は米国最大の利益と思うか否か」を問われ、「戦争終結が最大の利益」と断言。長引けば「第三次大戦を招く」と警告した。

トランプ氏に近い一部の専門家や議員は、支援の縮小や停止で浮いた予算を中国の台湾侵攻に対する抑止力強化にシフトすべきだと唱える。

トランプ氏は25日の集会で、ロシアとの交渉を拒否しているとゼレンスキー氏を非難したばかり。ゼレンスキー氏との会談で、約80億ドル(約1兆1560億円)の大型支援でゼレンスキー氏を迎えたバイデン、ハリス両氏に対抗して、どのような構想を伝えるか注目される。

一方、米戦略国際問題研究所(CSIS)のマリア・スネゴバヤ上級研究員は「ウクライナの前線が崩壊し、露軍が首都に迫れば誰が大統領になろうと問題」と述べ、トランプ氏が再選しても、戦況次第で米国の関与が強化される可能性を示している。【9月27日 産経】
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【トランプ前大統領 辛辣なゼレンスキー批判 それでもゼレンスキー大統領としてはトランプ氏との関係構築も必要】
トランプ前大統領のゼレンスキー氏批判は辛辣です。

****トランプ氏がゼレンスキー大統領を「最高のセールスマン」と揶揄…ウクライナ支援「無駄使い」主張***
米共和党のトランプ前大統領は23日の演説で、ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領について「最高のセールスマンだ。米国に来るたびに600億ドルを持ち帰る」と述べた。米国のウクライナ支援が「無駄使い」にあたるとの認識を改めて示したものだ。ペンシルベニア州インディアナでの集会で語った。

トランプ氏はウクライナへの支援を削減し、国内の移民対策などに予算を回すべきだと主張している。4月に約610億ドルのウクライナ支援予算が成立した際には、共和党議員らに圧力をかけて与野党合意を遅らせた。

トランプ氏は集会で、ゼレンスキー氏が支援をさらに引き出すため、米大統領選で民主党のハリス副大統領の勝利を強く望んでいると一方的に主張した。

一方、ゼレンスキー氏は米誌ニューヨーカー最新号のインタビューで、当選すれば「24時間以内」に侵略を終わらせるというトランプ氏の主張について、「トランプ氏は戦争を止める方法を知っていると思っているかもしれないが、本当は知らないと思う」と批判した。(後略)【9月24日 読売】

****トランプ氏、ゼレンスキー氏を非難「ディールを拒否」****
米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ前大統領は25日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーはロシアとの戦いを終結させるための「取引(ディール)」を拒否していると非難した。

トランプ氏はノースカロライナ州での選挙集会で「われわれは取引することを拒否する男、ゼレンスキーに何十億ドルも与え続けている」と発言。(後略)【9月26日 AFP】
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ただ、トランプ氏勝利も五分五分の確立でありうるため、ゼレンスキー大統領としてはトランプ氏との関係も作って置く必要があります。

ゼレンスキー大統領の「トランプ氏は戦争を止める方法を本当は知らない」といったトランプ批判で、一時は両者の会談は中止も報じられていましたが、結局は会談することになりました。

****トランプ前大統領がゼレンスキー大統領と会談することを明らかに ロシアとの取り引き「ディール」実現に自信****
アメリカのトランプ前大統領が、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談することを明らかにしました。トランプ氏は戦闘終結のためのロシアとの取り引きの実現に自信を見せています。

トランプ前大統領(米・ニューヨーク 26日)
「明日会うのを楽しみにしているが、彼とは意見が合わないだろう」

トランプ前大統領は、“27日にニューヨークでゼレンスキー大統領と会談する”と明らかにした上で、戦闘を終わらせるためのロシアとの取り引き=「ディール」の実現に自信を示しました。

トランプ前大統領
「プーチン大統領とゼレンスキー大統領とのディールを私はかなり早く作れると思います。(どんなディールですか?)どんなディールかは言いたくない」

一方、ホワイトハウスでゼレンスキー大統領と会談したハリス副大統領は、「アメリカにはウクライナの領土の大部分を放棄させようとしている人たちがいる。それは和平の提案ではなく降伏の提案だ」とトランプ氏を強く批判しました。【9月27日 TBS NEWS DIG】
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バイデン・ハリス氏には支援の継続・強化を求めつつ、プーチン寄りとされるトランプ氏とも一定の関係を維持しなければならない・・・ゼレンスキー大統領の“もう一つの戦い”です。
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フランス  極右忖度・依存の少数内閣 短命は必至の状況

2024-09-26 23:09:48 | 欧州情勢

(フランスのルタイヨー新内相は一連のメディアインタビューで、社会の広範な右傾化の流れを踏まえ、移民規制や治安対策を強化する考えを表明した。写真は演説するルタイヨー内相。パリで23日撮影【9月25日 ロイター】)

【「極右・国民連合の監視下」にある少数政権】
今朝TVを観ていたら、フランスメディアのニュースで、閣僚のひとりが首相(?)から叱責されたというものがありました。その閣僚は、多くの右派勢力とは協議していくが、極右は排除する・・・みたいな主旨の発言したことが叱責の理由。

これに対し、極右・国民連合(RN)を実質的に率いるルペン氏は、「閣僚の中には、内閣の方針を理解していない者がいるようで・・・」と余裕のコメント。

現在の極右の意向を忖度せざるを得ない少数与党政権と極右勢力の力関係を反映したものとして印象的でした。

フランスでは「マクロンの賭け」と評された総選挙の結果、9月8日ブログ“フランス  新首相決定も、少数与党 左派「選挙が盗まれた」 極右「新首相は自勢力の監視下にある」”でも取り上げたように極左が中心の左派、マクロン大統領与党の中道、ルペン氏率いる極右の三すくみ状態となり、マクロン大統領は左派の切り崩しに失敗、中道右派の共和党と連立してバルニエ首相の少数内閣が発足しました。

バルニエ新政権は右派支持層、極右勢力・国民連合を意識しながらの少数政権です。

****フランス新内閣発足 移民強硬派を内相に マクロン大統領、少数内閣で不安な再出発****
フランスで21日、バルニエ首相(73)が率いる新内閣が発足した。マクロン大統領を支える中道与党連合に、これまで野党だった中道右派「共和党」が加わる「相乗り内閣」になった。内相には、移民受け入れ削減を求める共和党強硬派が起用され、右派色の強い陣容となった。

フランスは6〜7月の下院選で与党連合が第2勢力に転落し、政治空白が続いていた。マクロン氏は、共和党のバルニエ元外相を今月5日に首相に任命。21日に閣僚名簿を発表した。

新内閣は、下院で過半数の議席を持たない少数政権で、外相には与党連合からジャンノエル・バロ欧州担当相(41)が就任した。経済・財務相はアントワヌ・アルマン下院経済委員会委員長(33)。国防相はセバスチャン・ルコルニュ氏(38)が留任した。

内相となったブリュノ・ルタイヨー氏(63)は共和党の上院議員団長。欧州連合(EU)のルールに縛られず、フランスが独自に移民対策を強化するよう主張してきた。共和党からは農相も入閣した。

新内閣は来年の予算編成が喫緊の課題。バルニエ氏は10月1日、下院で施政方針演説を行う。下院第一勢力の左派連合は、不信任案提出の構えを見せる。

新内閣は極右野党「国民連合」の動向に配慮せざるを得ず、マクロン氏は政策実行の手足を大きく縛られた。EUの大国フランスの政治不安は、欧州経済やウクライナ支援にも陰を落とす。

下院選は左派連合、与党連合、国民連合の三つどもえの結果となり、いずれも議席の過半数に達しなかった。アタル前首相は7月に辞任し、パリ五輪は暫定内閣で乗り切った。

マクロン氏は左派連合が擁立した首相候補を退け、下院第4勢力の共和党との相乗りで、公約だった債務削減を進める姿勢を示した。【9月22日 産経】
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選挙で第1位の勢力を獲得したにもかかわらず政権から排除された左派は新政権への対決姿勢を強めています。

一方の極右勢力は左派の倒閣には同調せず、しばらくは静観の構え。その裏には「バルニエ氏はRN(極右国民連合)の監視下にある。(マクロン政権は)われわれなしでは何もできない」という自信があります。

****フランスの極右、倒閣に同調せず=左派は抗議デモ****
フランスの極右政党・国民連合(RN)のバルデラ党首は7日、「民主主義の混乱にくみしたくない」と述べ、バルニエ新内閣の発足後直ちに倒閣を目指す構えの左派に同調しない考えを示した。新内閣は中道と中道右派による少数与党となる見込みで、不信任を回避できるかは極右に懸かっている。

民放テレビTF1のインタビューで語った。バルデラ氏は、RNが唱える治安強化や移民抑制などの政策が「尊重されることを望む」とした上で、5日に首相に任命されたバルニエ氏に「マクロン大統領の政治を続ければ、新内閣は頓挫する」と警告した。

7月の総選挙では左派4党連合が下院の最大勢力となったが、政党単位ではRNが初の第1党に躍り出た。バルデラ氏は7日、記者団に「バルニエ氏はRNの監視下にある。(マクロン政権は)われわれなしでは何もできない」と訴えた。

バルニエ氏はこれに対し「私は全国民の監視下にある」と指摘。極右が新内閣に及ぼす影響力は限定的だと反論した。

一方、左派を率いる急進政党「不屈のフランス」は7日、政権批判の抗議行動を各地で展開し、支持者や学生運動の活動家らが参加。内務省によればデモ隊は約11万人(主催者発表30万人)に上った。【9月8日 時事】 
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こうした新政権の極右依存傾向を社会党・オランド前大統領は批判。

****新内閣は「極右に依存」=前大統領、不信任に賛成―仏****
7月のフランス総選挙で下院議員に返り咲いた左派・社会党のオランド前大統領(70)は9日、バルニエ新首相が樹立する内閣は「存続を極右の善意に頼る」ことになると批判し、下院に不信任案が提出されれば賛成すると表明した。公共ラジオのフランス・アンテルで語った。【9月9日 時事】 
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一方、極右のマリーヌ・ルペン氏は新政権への圧力を強めています。

****極右RNルペン氏、国民投票実施で政局打開を マクロン氏に呼掛け****
フランスの極右政党「国民連合(RN)」を実質的に率いるマリーヌ・ルペ)氏は8日、エマニュエル・マクロン大統領に対し、移民など重要問題をめぐり国民投票を実施するよう呼び掛けた。直接投票で民意を反映させることで、不安定化している政局の行き詰まりを打開できる可能性があると示唆した。

ルペン氏は、極右の拠点である北部エナンボーモンで演説し、マクロン氏に対し、移民、医療、安全保障などの重要な問題について国民投票を実施するよう要請。RNとしては、「国民に直接決定権を付与するためのあらゆるアプローチを無条件で支持する」と述べた。【9月9日 AFP】
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【極右忖度で移民規制強化方針 国外命令を受けていたモロッコ人によるレイプ事件で更に規制は強化か】
新政権は極右への配慮もあって、移民規制強化の方針を示しています。

****フランス新内相、移民規制強化の方針示す 極右政党に配慮示唆****
フランスのルタイヨー新内相は一連のメディアインタビューで、社会の広範な右傾化の流れを踏まえ、移民規制や治安対策を強化する考えを表明した。議会運営の鍵を握るとみられる極右政党「国民連合(RN)」への配慮をにじませた。

ルタイヨー氏は中道右派・共和党の重鎮でかねてより移民受け入れに消極的な立場を示してきた。仏紙フィガロに対し、数週間内に新たな移民対策を打ち出す考えを示し、「立法措置の強化をためらってはならない」と述べた。

「不法入国に歯止めをかけ、特に不法滞在者の出国を増やすことを目指している」とした。

また、24日はニュース専門局「Cニュース」のインタビューで、RNの幹部らの発言に同調し、フランスと欧州の同志国が協力して欧州連合(EU)に移民対策関連法の強化を促すべきだと述べた。

仏テレビTF1のインタビューでは、北アフリカの諸国がフランス滞在の許可なく同国に向かう市民の出国阻止を強化するよう交渉すると確約。法違反者の厳罰化を望むとも述べた。

「イスラム教礼拝所を閉鎖したり、憎悪の説教師を(国外に)追放するのに、私の手が震えることはないだろう」とフィガロに語った。【9月25日 ロイター】
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こうした状況のなかで、過去にレイプで有罪となり国外退去命令を受けていたモロッコ人男性が再び19歳女子学生をレイプ殺害するというショッキングな事件が。

****フランスで外国人による女子学生レイプ殺人事件 内相「国民守る」と明言****
仏パリで19歳の女子学生がレイプ・殺害され、遺体を公園に遺棄された事件で、容疑者のモロッコ人の男がスイスで逮捕されたのを受け、保守派のブルーノ・ルタイヨー内相は25日、「フランス国民を守る」ために新しい規則を導入すると明言した。

消息筋によると、容疑者は22歳のモロッコ人の男で、検察によれば、過去にレイプの罪で有罪となり、国外退去命令を受けていた。

フランスでは今週発足した右派政権が移民の取り締まりを計画しており、この事件によって政治的緊張がさらに高まる見通し。

ルタイヨー氏は「忌まわしい犯罪だ」「フランス国民を守るための法整備を行う必要がある」「規則を変える必要があるなら、変えよう」と述べた。

ルタイヨー氏は先に、法と秩序の強化、移民法の厳格化、有罪判決を受けた外国人の強制送還の容易化を約束している。

検察によると、容疑者の男は未成年だった2019年に犯したレイプの罪で、2021年に有罪判決を受けた。 服役後、今年6月に釈放され、入管施設に収容された。  裁判官は9月、定期的に当局に出頭することを条件に、男を仮放免した。

AFPが確認した判決の写しによると、仮放免の決定は、男が難民認定申請を行わず、出国命令に異議を唱えなかったという事実に基づいていた。 また、入管施設でも、威嚇的態度は示していなかった。

だが、学生をレイプして殺害する直前、仮放免の条件に違反したため手配されていた。

この事件を受けてフランスでは怒りの声が巻き起こり、極右だけでなく左派の政治家らも厳しい措置を取るよう求めている。

極右政党「国民連合」のジョルダン・バルデラ党首はX(旧ツイッター)に「女子学生の命は、出国命令を受けていたモロッコ人によって奪われた」「わが国の司法制度は緩く、国家は機能不全に陥っている。わが国の指導部は国民を人間爆弾と共生させている」と投稿。 「政府が行動する時が来た。率直に言って、フランス国民は怒っている」と訴えた。

左派・社会党のフランソワ・オランド前大統領も、出国命令は「速やかに」執行されなければならないと指摘した。

フランスは定期的に出国命令を出しているが、執行されているのは7%にすぎず、欧州連合全体の30%よりも低い。 【9月26日 AFP】
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これで新政権の移民規制は更に強化の方向に向かうでしょう。
政局的には、国民の反移民感情が刺激され、その受け皿としての極右・国民連合の存在感が更に強まり、政権への影響力も強まることが想像されます。

【短命は必至 来年また総選挙か】
いずれにしても、左派提出の不信任案に極右が賛同すれば、いつでも内閣は倒れる、また、極右勢力の賛同なしには重要法案が通せない・・・という状況では、短命に終わるのは避けられないでしょう。

再び解散・総選挙となれば、現在の左派との対立状況から、前回のような決選投票での左派・中道の候補者調整で極右当選を阻むという戦略も使えず、極右の更なる伸張が予想されます。

****フランス新政権の短い命と極右次第の解散総選挙 法案審議のたびに不信任投票にさらされる必然****
(中略)
内相は「移民への強硬姿勢」という配慮
(中略)
内相には移民に対する強硬姿勢で知られる共和党のルタイヨー氏が就き、これには大統領支持会派から反発の声も聞かれた。

議会の過半数を確保していないバルニエ内閣が存続するためには、政権奪取の機会を奪われた極右政党・国民連合(RN)が左派会派の提出する内閣不信任案に賛成しないことが必要となる。ルタイヨー氏の内相就任は、移民規制の強化を訴える極右勢力に配慮した側面が大きい。

政権発足の機会を奪われた形の左派会派は、バルニエ政権を極右に支えられた正統性を欠く政権であるとして対決色を強めている。

9月21日には早速、フランス各地で左派が主導する大規模な抗議デモが行われた。政権発足に先駆けて、左派会派に加わる極左政党は、マクロン大統領の弾劾手続きを開始した。

弾劾には上下両院で3分の2以上の賛成が必要で、こうした試みが成功する可能性は低い。ただ、左派会派は10月1日に予定される夏季休暇明けの国民議会でバルニエ政権に対する内閣不信任案を提出することを示唆している。

左派会派と極右勢力の合計議席は335議席と議会の過半数(289議席)を上回り、両勢力がお互いの内閣不信任案に賛成票を投じれば、政権打倒がいつでも可能な状況にある。

解散総選挙は1年に1回、「いつやるか」
憲法の取り決めにより、国民議会の解散・総選挙は1年に1回しかできない。現時点で政権を倒しても、マクロン大統領がバルニエ氏に代わる新たな首相を任命するだけに終わるうえ、政局混乱を招いたと批判されかねない。

極右勢力はひとまず政権発足を容認する構えだが、マクロン大統領にとって最も政治的な打撃が大きいタイミングを見計らっているのだろう。

議会の過半数を握っていないバルニエ政権は難しい議会運営を迫られる。与党が提出する法案の多くに、左派連合や極右勢力が反対票を投じることが予想され、通常の立法手続きで法案を成立させるのは困難を極める。

2022年の国民議会選挙で議会の過半数を失った大統領支持会派と同様に、議会採決を迂回する特別な立法手続き(憲法49条3項)を使って法案を通そうとするだろう。

議会が法案成立を阻止するには、24時間以内に内閣不信任案を提出し、過半数がそれを支持する必要がある。内閣不信任案が否決された場合、法案は成立する。

つまり、今後の法案審議のたびに、新政権は内閣不信任投票にさらされることになる。

極右勢力が無条件でバルニエ政権の存続を支持することはない。極右が新政権に突きつける条件のうち、今後の政局展開にとって重要となるのが選挙制度改正だ。

国民議会選挙は任期前解散の場合を除き、5年ごとの大統領選挙の直後に行われ、577の選挙区で、2回投票制の小選挙区制で争われる。初回投票で過半数の支持を集めた候補が勝利し、過半数の支持を得た候補がいない場合、上位2名と有権者の12.5%以上の票を獲得した候補が決選投票に進み、決選投票で最多票を獲得した候補が勝利する。

「選挙制度の壁」を崩したい極右
極右勢力はこれまで選挙制度に阻まれることが多かった。今回の国民議会選挙でも、極右勢力は初回投票で圧倒的にリードしたが、決選投票では左派会派と大統領支持会派が候補者を一本化したことで、多くの議席を落とした。

選挙制度と反極右票の一本化に阻まれて第三勢力に転落した極右勢力だが、決選投票での得票率は37.1%と、左派会派の25.8%、大統領支持会派の24.5%を上回っている。

極右の主張通り、比例代表の要素を盛り込んだ選挙制度改正が実現した場合、次の選挙で極右の政権奪取を阻止するのは従来以上に難しくなる。

むろん、今回の左派会派のように、極右が次の選挙で第一党になったからと言って、単独で過半数の議席を確保しない限り、極右勢力から首相を任命する必要はない。

だが、極右勢力に今以上に多くの議席が配分されれば、単独過半数が難しいにしても、左派会派と大統領支持会派が手を組む以外になくなる。

左派会派が政権入りした場合、極右政権誕生時よりも拡張的な財政運営となる恐れがあり、こちらも金融市場の動揺を誘うことになろう。

また、極右が主張する選挙制度改正が実現しない場合も、次の選挙で極右の台頭を阻止できるかは予断を許さない。最大勢力となりながら政権発足の機会を与えられなかった左派連合が、次回も大統領支持会派との選挙協力に応じるとは限らないためだ。

このように、新たにフランスの舵取りを託されたバルニエ首相はどうにか政権発足にこぎつけたが、議会運営は困難を極め、極右勢力に政権の命運を握られている。

危うい予算成立、確実な来年の解散総選挙
10月1日に再開される国民議会では、法案審議のたびに内閣不信任案にさらされる異例の事態が待ち受ける。政権発足の遅れで議会の審議日程もタイトとなり、脆弱な議会基盤とあいまって、年内の予算成立を危ぶむ声も浮上している。

政治空白の長期化で財政再建の遅れが意識され、金融市場に再び動揺が広がる事態は回避されたが、不安定な政治環境が続くことは避けられない。短命政権に終わり、来年にも議会の解散・総選挙が行われるのはほぼ確実とみられる。

今回の政権がマクロン大統領による院政と受け止められれば、行き場を失った反マクロン票が極右勢力や左派連合にさらに流れる恐れもある。史上最大の選挙イヤーを通過した来年もフランスの政局不安が払拭されることはないだろう。【9月25日 田中理氏 第一生命経済研究所】
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法案審議のたびに、新政権は内閣不信任投票にさらされる、左派と極右が連動すれば不信任案が成立する・・・・これでは少数内閣はもたないでしょう。いずれ極右・レペン氏は“攻め時”と判断した時点で政権を見限り総選挙に誘い込むでしょう。

もう1回選挙をやれば、極右政権への道が開けるのか、現在のような三すくみ状態が続くのか・・・・???

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イギリス  経済再建の重圧を担う労働党スターマー首相 国民支持は急落

2024-09-24 23:28:24 | 欧州情勢


(【7月6日 FNNプライムオンライン】 諸問題への国民の不満から、政権交代が起きたイギリスですが、政権の座についた労働党スターマー首相に問題改善の重圧がかかっています)

【パンク寸前の刑務所 受刑者を早期釈放】
刑務所がパンク状態のため受刑者を早期釈放する・・・といったニュースを目にすれば、犯罪多発の中南米のどこかの話かとも思うのですが、イギリスの話。

****英 刑務所パンク寸前で受刑者1700人釈放 増設が間に合わず****
過密状態となっているイギリスの刑務所で受刑者の早期釈放が行われました。

10日、イギリス政府はイングランドとウェールズの刑務所から一部の受刑者を釈放しました。 比較的、刑が軽く刑期の40%を終えた受刑者が対象で、およそ1700人に上るということです。

ロンドン西部にある刑務所前では混乱を避けるため多くの警察官が警戒にあたるなか、出所した受刑者が出迎えの友人らと抱き合う光景がみられました。

出所した受刑者 「5日早く出所した。(刑務所では)更生はない。屈辱を味わうだけだ。すぐに殴られるし、食事は冷たい」

イギリスでは犯罪の厳罰化に伴って刑期が長期化する一方、刑務所の増設が間に合わず、収容人数が限界に近付いています。

また、7月末から各地で発生した反移民などを訴える暴動で多くの実刑判決が出され、さらに受刑者が増え問題となっています。

イギリス政府は家庭内暴力や性犯罪、4年以上の刑期で服役する受刑者を除き、来月末までにおよそ5500人を釈放する予定です。

地元メディアによりますと、麻薬の密売や強盗などで服役していた受刑者も含まれていて、専門家や市民からは再犯を懸念する声も上がっています。【9月11日 テレ朝news】
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“英国は今月、移民排斥の暴動で数百人が逮捕されたことをきっかけに刑務所の過密状態が危機的水準に達し、スターマー新政権は、容疑者を警察署で留置する期間を延ばす緊急計画「夜明け作戦」を発動させた。

ただ、刑務所のパンク状態を抜本的に解決するには、インターネット環境を改善して社会復帰のための教育環境を整える道が必要との指摘も出ている。”【8月25日 ロイター】

イギリスの刑務所の多くはビクトリア朝時代に建てられて老朽化している上、予算の制約もあり、デジタル時代に取り残されているとのことですが、通信教育で教育課程を履修した受刑者は、そうでない受刑者よりも再犯の可能性も頻度も低いので、国内の刑務所にブロードバンドインフラを設置して教育環境を整えれば・・・という指摘です。

ただ、そうした指摘が目指すところと、冒頭記事の“更生はない。屈辱を味わうだけだ。すぐに殴られるし、食事は冷たい”という現状の間にはかなりの落差もあるようです。

【救命医療を待つ間に「消える命」が週300人近く NHS(国民保健サービス)の逼迫】
どこの国も、日本もいろんな問題を抱えていますが、イギリスも・・・といったところでしょう。

イギリスで特に緊急の課題となっているのが、かつては福祉国家モデルともてはやされた医療保険制度の問題。

*****救命医療を待つ間に「消える命」が週300人近く...「揺りかごから墓場まで」福祉国家イギリスに何が起きている?*****
<人員や資金の不足などによりNHS(国民保健サービス)が逼迫。がんを早期発見できたキャサリン妃はまだ幸せとすら言える英国の惨状とは>

原則無償で医療サービスにアクセスでき、かつては「揺りかごから墓場まで」の福祉国家モデルともてはやされた英国のNHS(国民保健サービス)が逼迫し、昨年、長い待ち時間が原因で週268人以上のA&E(救急救命センター)の患者が死亡したと推定されている。

英国ではコロナ危機で23万2000人超の死者が出た。世界に先駆けてコロナワクチンの集団接種を展開したものの、ワクチン接種と自然感染を組み合わせた集団免疫(人口の一定割合以上の人が免疫を持つと感染拡大が収まる状態)を目指した代償と後遺症は大きい。

昨年3月時点で英国の人口の2.9%に相当する推定190万人がコロナ後遺症を報告した。うち130万人は1年以上、76万2000人は2年以上症状が続いた。一般的な症状は疲労(患者の72%)、集中困難(51%)、筋肉痛(49%)、息切れ(48%)で、英国の労働力不足に拍車をかける。

コロナ対策に医療資源を集中させたため、他の患者は後回しにされ、大量の積み残しが出た。欧州連合(EU)離脱派はEUを離脱すれば「NHSに投入できる資金を増やせる」と唱えたが、EUからの新規看護師はゼロ近くに減少、歯科医師の採用も長期にわたって減り続けている。

150万人以上の患者が12時間以上待たされる
英国の王立救急医学会によると、昨年、150万人以上の患者が12時間以上待たされ、そのうち65%が入院待ちの患者だった。「標準死亡率」を使って死者数を推定すると、入院前に8~12時間の待ち時間を経験した患者72人ごとに1人が死亡している。

12時間以上に及んだ待ち時間に関連した超過死亡は1万4000人近く、死者は週268人以上にのぼったと推定される。英国政府とNHSイングランドは昨年1月から救急救命医療サービス改善のため病院のキャパシティーや医療従事者数を増やして待ち時間を減らす計画に取り組む。

しかし病院のベッド稼働率は常に平均94%以上と依然として高いまま。余裕のある稼働率85%を達成するにはさらに1万1000床以上のベッドが必要だ。今年2月、A&E(緊急治療室 アメリカで言うER)の待ち時間を4時間にする目標を達成した患者の割合は56.5%で、昨年1月に比べ1.5ポイントも低下した。

入院患者数は1年後に10%増加すると予想されている。しかし最新の数字では退院決定後も入院している患者は1日平均1万3690人で、昨年1月より275人減っただけだ。王立救急医学会のエイドリアン・ボイル会長はこう言って唇を噛みしめる。

「死亡の1つひとつが単なる数字ではない」 「これらの死亡の1つひとつが単なる数字ではなく、愛する人や家族のものであったことを忘れてはならない。もし状況が違っていたら、もしシステムが本来の機能を果たしていたら、もしA&Eでの待ち時間が目標時間よりも長くなかったら...」(ボイル会長)

「このような困難で受け入れがたい状況の中で、可能な限り最善の医療を提供しようとする現実に対処しなければならない臨床医を取り巻く環境もひどい。関連死の数字が注目されるのは当然だ。政府の改善計画は効果的でなく、結果も出ていない」(同)

「必要なのは困難な状況に陥っているシステムと闘う臨床医と、多額の投資と救急救命医療を蘇生させるコミットメントだ。このようなケアの不平等、本来なら回避できたはずの診療の遅れ、膨大な関連死を放置することはできない」(同)。

王立救急医学会は次の勧告を掲げる。
医療・社会ケアシステム内にさらなるキャパシティーを構築する長期計画を実施(2)病院のベッド稼働率が85%を超えないよう有床診療所を増設(3)病院のパフォーマンスを向上させるため各病院の数値を公表(4)インフルエンザ、コロナのワクチンプログラムを改善する。(後略)【4月2日 木村正人氏 Newsweek】
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イギリスでは物価高から22年末に看護師ストライキが行われ、医療体制に更なる重圧ともなりました。

****英国民保健サービスの看護師が初のスト、インフレ進行受け****
英国民保健サービス(NHS)の下で働く看護師らでつくる労組の「王立看護協会(RCN)」が15日、インフレが進行する中での待遇改善を求めて全国規模のストライキに突入した。こうしたストは、結成から106年が経過したRCNの歴史で初めて。20日にストが予定されており、既にひっ迫している英国の医療体制に一層重圧が懸かる事態が懸念される。

NHS傘下の病院76カ所で推定10万人の看護師がストを行い、診察予約や手術など7万件の手続きが取り消される恐れがある。

RCNを率いるパット・カレン氏はBBCの取材に応じ「看護業務や患者たち、この社会とNHSにとって悲劇的な1日だ」と語った。ただRCNによると、家計のやりくりに苦しんでいる看護師のためにはストをするしかないという。

看護師側は、もう10年にわたって実質所得の目減りに見舞われ、低賃金のため常に人手も足りず、患者のケアが脅かされていると主張し、物価上昇率プラス5%の賃上げを要求している。これは19%の賃上げ率に相当するが、政府は今のところ交渉を拒否。カレン氏は、このままでは来年にかけてストが拡大する局面が想定されると述べた。【2022年12月16日 ロイター】
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日本も高齢化に伴い医療保険制度が資金的に行き詰まるのでは・・・という問題を抱えています。

政権交代した労働党・スターマー英首相は、国家医療制度(NHS)の抜本的改革に10年かけて取り組む方針を表明しています。

****英首相、向こう10年で国家医療制度の抜本改革に取り組む方針****
スターマー英首相は12日に行う演説で、国家医療制度(NHS)の抜本的改革に10年かけて取り組む方針を表明する。首相官邸が事前に演説内容を公表した。

NHSについては、既に政府が委託した外部報告書で危機的状況にあると指摘されている。新型コロナウイルスのパンデミックや選択的な手術執行の遅れ、労働争議などの問題からなかなか立ち直れないためだ。

保守党の前政権は長時間の診療待ち問題に十分対処できず、NHSの下で働く看護師らの賃上げストを非難していた。

7月の総選挙で大勝したスターマー氏はこの争議解決を最優先事項として掲げているほかに、高齢化が進展する中で医療費が跳ね上がる事態に増税なしで対処するには、場当たり的でないNHSの「大々的な外科手術」が必要だと強調している。

スターマー氏は今回の演説で「働く人々にはこれ以上支出を増やす余裕がないと分かっている」と述べ、NHS改革が必須だと訴える見通し。

また医療ひっ迫は経済に悪影響を及ぼしており、280万人が長期にわたり病気を患っているために経済活動に参加できていないという。

スターマー氏は、NHSのデジタル化や、病院よりも地域社会でのケア重視、病気予防活動の強化などを推進する考えだ。【9月12日 ロイター】
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【緊縮財政で財政の健全化を目指すスターマー首相 国民不満で支持率急落】
刑務所にしてもNHS(国民保健サービス)にしても“カネがない”というのが根底にある問題。
イギリス財政全体が悪化していますが、スターマー英首相は経済成長で収入を増やす一方で、緊縮財政で支出を削減する計画です。

****英国、緊縮財政へ 前政権の予算は「4兆円の財源不足」****
英国のリーブス財務相は29日、スナク前政権が編成した2024年度予算に220億ポンド(約4兆3000億円)の財源不足が見つかったと明らかにした。暖房代補助の削減やインフラ計画の中止などの緊縮策を始める。今後の増税の布石との見方が出ている。

14年ぶりの政権交代で労働党のスターマー政権が5日に発足した。リーブス氏が財源の裏付けのない歳出などを財務省に洗い出させ、29日の議会演説で結果を示した。

保守党のスナク前政権が3月に編成した24年度予算よりも実際の歳出が大きく膨張する見通しだという。「前政権は実態を隠蔽していた」とまくし立てた。

例えば、英仏海峡を渡る不法入国者数の予算上の見積もりが過少だったため、対策費用が想定より膨らむ。職員のストライキなどで収益が減る鉄道会社への支援金を十分に計上していなかった。ウクライナに対する軍事支援の準備金も不十分だと訴えた。

緊急の歳出削減策として、年金生活者への冬場の暖房代補助を縮小する。所得の低い人に絞る。保守党政権が決めた40の新病院建設を見直すほか、一部の道路や鉄道計画を取りやめる。外部コンサルタントへの委託費など不要不急の歳出の停止を各省庁に求めた。

それでも帳尻が合わないため、10月に示す秋季予算案で増税を打ち出すとの観測が広がっている。リーブス氏は「財政ルールを順守するために難しい決断を迫られる」と述べた。

労働党は総選挙の公約で所得税、国民保険料、付加価値税、法人税を引き上げないと宣言した。投資収益にかかるキャピタルゲイン課税や相続税、年金課税などが増税の候補になると英メディアは予想している。

表明済みの外国人富裕層への税制優遇の廃止や私立学校の授業料に対する付加価値税の課税はすでに使い道が決まっているため、新たな財源が必要になる。

英国の政府債務残高は国内総生産(GDP)とほぼ同規模。GDPの2倍を超える日本ほど悪くないが、英国としては歴史的な高水準にある。財源の裏付けのない減税表明で市場が混乱した22年のトラス・ショックの教訓もあり、新政権は財政規律を重視する。

リーブス氏は歳出の実態について「財務相に就任するまで知らないことがあった」と強調した。
保守党のハント前財務相は「(影の内閣の財務相だった)リーブス氏は財務省の事務次官とでも面会できる立場にあった。必要なことは何でも知ることができたはずだ」と疑問を呈した。

選挙戦で触れなかった緊縮策を政権獲得後に急に打ち出したことに批判もある。

財務省は29日、公立学校の教員や公的医療の従事者らの賃金を平均5.5%引き上げると発表した。2%まで落ち着いたインフレ率を大幅に上回る賃上げでストライキに終止符を打ちたい考えだ。労働者への分配を優先する新政権の姿勢が鮮明になってきた。【7月30日 日経】
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しかし、緊縮財政というのは基本的に国民からは嫌われる・・・ということで、スターマー首相の支持率は急落したいます。

****英労働党大会で財務相が演説 不人気の財政緊縮策を正当化 首相の支持率低下鮮明に****
7月の英総選挙で14年ぶりに政権の座に返り咲いた労働党の年次党大会が22日、中部リバプールで4日間の日程で始まり、リーブス財務相が23日に基調演説を行った。

リーブス氏は有権者から反発を浴びている政権の財政緊縮策について「正しい決断をした」と強調。スターマー首相は緊縮財政に加え、支援者からの多額の利益供与で人気が下落しており、党大会を求心力回復の機会としたい考えだ。

リーブス氏は演説で、保守党のスナク前政権が組んだ予算に220億ポンド(約4兆1千億円)の財源不足が見つかったと指摘し、事態打開に向け今後の財政政策で「厳しい決断を下す必要がある」と警告した。

リーブス氏は7月29日、年金生活者への冬場の暖房費補助の削減や、保守党政権下で決定された病院や道路、鉄道の建設計画の見直しといった事実上の財政緊縮策を打ち出した。

このうち暖房費に関しては約1千万人が補助の対象外になるとみられ、世論は強く反発。党を支える複数の有力労組も今月22日、補助削減の方針を撤回するよう政権に要求した。

リーブス氏は演説で、一連の政策は緊縮財政ではないと反論し、新たな産業政策などを通じた雇用の創出で経済を成長軌道に乗せていくと強調した。

政権が10月30日に公表する予算案では「労働者への増税はしない」と明言した。ただ、専門家の予想では投資収益への課税増や将来的な企業増税、歳出削減が見込まれている。

一方、スターマー首相をめぐっては妻のビクトリアさんが労働党上院議員の富豪から高級な衣服を贈られていたことが党の内外で問題視されている。

英メディアは富豪からスターマー氏らへの利益供与に関する報道を展開。過去5年間の贈答品は、米歌手テイラー・スウィフトさんのコンサートのチケットなどを含め計10万ポンド以上相当に上るとされている。

こうした寄付や贈与は申告すれば違法でないが、清廉潔白を売り物にしてきたスターマー氏のイメージを傷つけたのは明白だ。中道路線を掲げるスターマー氏に不満を抱く党の左派勢力が一連の問題で対決姿勢を強める事態も予想される。

英調査会社オピニウムが今月20日に発表した世論調査ではスターマー氏の支持率は24%で、不支持50%を大きく下回った。7月の政権発足直後の調査では支持38%、不支持は20%で、有権者のスターマー氏離れが鮮明になっている。【9月24日 産経】
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「労働者への増税はしない」緊縮財政で財政を健全化させる一方で、NHS(国民保健サービス)など行き詰まった諸問題を改善する・・・・なかなか至難のわざです。

これまでの延長線上にない新たな発想が必要になりますが、そうした発想は労働者の権利を守るという労働党の党是とのバッティングも懸念されます。

【ブレグジットの悪影響 政治的にはEU復帰はタブーか】
イギリス経済はインフレ、エネルギー危機、生活費の高騰、交通機関や病院のスト、食料不足、貧困と格差の拡大、ウクライナ戦争の影響、そして忍び寄る不況の影・・・多くの問題を抱えていますが、背景にあるのはEU離脱の悪影響。

“ブレグジットにより、国内外の企業では事務作業やコストが大幅に増えた。貿易障壁の復活で輸出入は急激に落ち込み、投資も減った。労働力が不足し、物価が上昇した。”【2月13日 Newsweek】

国民の間では「後悔」の念も強まっていますが、ブレグジットを推進した保守党はもちろん、労働党もブレグジットが英経済にマイナスの影響を与えることを、公には認めていません。
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フランス  新首相決定も、少数与党 左派「選挙が盗まれた」 極右「新首相は自勢力の監視下にある」

2024-09-08 21:51:10 | 欧州情勢

(【7月9日 共同】)

【6,7月総選挙ではマクロン大統領は極右政権誕生は阻止したものの、政局は左派・中道与党・極右の三すくみ状態】
与党が不人気のなかで国民の反極右に期待してマクロン大統領は総選挙に打って出て「マクロンの賭け」とも言われました。

総選挙結果は周知のように、6月30日の第1回投票でマリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党「国民連合(RN)」が勢いを見せました。ルペン氏は、マクロン大統領が3選禁止で出馬できない次回大統領選挙の有力候補です。

この事態にマクロン大統領は、7月7日の上位候補者による決選投票では、中道・マクロン大統領派と左派連合の選挙協力・候補者調整を進めた結果、極右政党「国民連合(RN)」は失速して第3位に終わっています。

****意外にも極右は143議席****
フランス議会総選挙は2回投票制になっていて、上位2候補による決選投票ではなく、12.5%の得票があれば2回目に残ることができる。

そこで当初は、6月30日の第1回投票で優位に立った極右が、7月7日の第2回投票では過半数289議席に対して250議席(左派が190議席、大統領派が75議席、共和党が40議席)を獲得すると予想された。ことによっては、極右が過半数を獲得することもあり得るとされた。

これに慌てた大統領派と左派が共闘を決め、候補者調整を大胆に進めたので、投票日直前には、極右は第一党にはなるが190議席程度に留まると予想された。

ところが投票が終わると、意外にも極右は143議席しかとれず、左派が180議席で首位、大統領派が158議席で2位、右派は67議席となったのだ。【7月17日 八幡和郎氏 デイリー新潮】
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こうしてマクロン大統領は極右政党の過半数獲得という事態は回避したものの、極右に代わって今度はメランション氏率いる急進左派「不屈のフランス」(第1勢力となった左派連合の中核)という大敵を前にする形となりました。

フランス政局は左派・中道与党・極右の三すくみ状態となり、首相指名・組閣もままならず、首相指名は近づいたパリオリンピック後に先延ばしされました。それまでの間は、辞任した最年少アタル首相が暫定内閣であたることに。

****フランス下院、続く主導権争い 連立なお見通せず 18日開会、内政停滞の危機****
フランスで国民議会(下院)総選挙を受けた各党の連立協議がなお難航している。

どの勢力も過半数を獲得できず、マクロン大統領は自身の与党連合に有利な形での連立を模索しているが、第1勢力となった左派連合はマクロン氏陣営が主導権を握ろうとする動きに対して反発。新議会は18日に開会するが、内政停滞の危機が高まっている。

「勝者はいない。強固な安定多数を築こう!」 マクロン氏は10日に公表した書簡で、安定した大連立政権の樹立を各党に求めた。

下院選では今月7日の決選投票の結果、左派連合「新人民戦線」が最大勢力となり、与党連合は第2勢力、第1回投票で首位だった極右政党「国民連合(RN)」は第3勢力となった。ただ、いずれの勢力も過半数の289議席に届かず、マクロン氏は法案可決に必要な多数派の形成を目指している。

欧州メディアによるとマクロン氏が模索するのは、新人民戦線の切り崩しだ。構成政党のうち、社会党など比較的穏健な左派政党と協力し、与党連合と特に政策面で相いれない中核政党の急進左派「不屈のフランス」の排除を目指す。同時に中道右派の共和党も取り込みたい考えとされる。

ただ、不屈のフランスを率いるメランション氏は「敗北を受け入れろ」と主張し、マクロン氏主導の政権樹立を警戒。社会党も「マクロン氏の政策を受け継ぐ政権は組まない」との姿勢を崩していない。不屈のフランス抜きで左派と連携するのは難しそうだ。

多数派形成の見通しがたたないため、内政を担う新首相の指名も困難な状況。フランスでは、大統領が議会多数派の意向を踏まえて首相を指名する仕組みで、マクロン氏は連立の枠組みが定まるのを待って指名する考えとみられる。

一方、各党の政策が微妙に異なる新人民戦線側も、マクロン氏に提案する首相候補を明確に一本化できていない。

マクロン氏は16日、与党連合の敗北後、慰留していたアタル首相の辞任を受理した。アタル内閣は暫定内閣として当面、職務を続けるが、権限は限られ、下院での法案提出などに支障が生じる可能性がある。【7月17日 産経】
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【2か月の政治空白を経て、中道右派・共和党との連携で最年長新首相がようやく決定】
上記のような経過を受けて首相が決まらない状況が続いていたフランスですが、オリンピックも終了した9月、マクロン大統領は左派穏健派取り込みには失敗したものの、社会党と並んでかつての政権政党でもあった中道右派・共和党との連立でようやく新首相が決まりました。

最年少アタル氏から一転、バルニエ元外相という最年長首相の誕生です。
しかし、新内閣は中道・大統領与党と中道右派・共和党による少数与党となる見込みで、左右からの不信任案なども予想され、政権基盤は脆弱です。

****新首相にバルニエ元外相=政治空白、2カ月で幕―仏****
フランスのマクロン大統領は5日、7月の総選挙後に人選が難航していた新首相に、外相や欧州連合(EU)の要職を歴任した中道右派・共和党のミシェル・バルニエ氏(73)を任命し、組閣を指示した。

左派、中道、極右の3陣営が対立する現在の下院で、最多の支持を得られると判断した。アタル内閣の総辞職から続く政治空白は約2カ月で幕を閉じる。

総選挙で下院の過半数を制した陣営はなく、マクロン氏は当初、大連立内閣の樹立へ幅広い勢力の結集を呼び掛けた。しかし、左派が独自の首相候補を擁立するなど不調に終わり、マクロン氏の中道連合と共和党がバルニエ氏を支える選択肢が浮上した。

マクロン氏は左派のカズヌーブ元首相(61)や右派のベルトラン元保健相(59)の起用も一時検討。いずれも少数内閣は必至だが、バルニエ氏なら就任直後に下院で不信任案が可決されるリスクが比較的小さいとみられており、任命の決め手となった可能性がある。

一方、総選挙で最多議席を獲得した左派連合の主要政党「不屈のフランス」を束ねるメランション氏は「国民が許すとは思えない」とバルニエ氏の任命に反発。7日に行う抗議デモへの参加を支持者らに呼び掛けた。【9月5日 時事】 
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【新首相は強硬な移民対応 極右への忖度は否定】
中道右派とされるバルニエ新首相は、移民政策などでは強硬な立場を示しています。

****バルニエ仏新首相、移民政策に強硬姿勢 大統領の主要政策は堅持****
フランスのバルニエ新首相は6日、マクロン仏大統領の主要政策の一部を擁護する意向を示唆した。政府の移民問題に対する措置は強化するとし、強硬姿勢を示した。

首相指名後初のインタビューに応じたバルニエ氏は、同氏の政権にはマクロン氏率いる中道与党連合の議員らだけでなく保守派も含まれるだろうと発言。「希望する全ての人に門戸を開く必要がある」と述べた。

バルニエ氏は複数の問題を巡って右傾化の兆候を示しており、移民の流入については抑制に向けてより厳格な政策を求めると主張。「わが国の国境はざるのようで、移民の流れは制御されていないという感覚が依然としてある」と述べた。

一方、左派連合は7月の総選挙で最大勢力となったにもかかわらず、マクロン氏が同連合から首相を選出しなかったことに不満を示し、週末にデモを行うよう呼びかけている。【9月7日 ロイター】
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新首相の移民対応は、極右支持層にも受け入れやすいないようですが、今後の政局のカギを握る極右を忖度したものではないとしています。

****新内閣、移民抑制へ=フランス首相、極右忖度は否定****
フランスのバルニエ新首相は6日、民放テレビTF1による就任後初のインタビューで、7月の総選挙で極右・国民連合(RN)に投票した有権者の判断を尊重すると述べた。その上で、今後発足する内閣は、RNも唱える移民抑制策に優先的に取り組むと表明した。

新内閣はバルニエ氏が所属する中道右派・共和党と、マクロン大統領の中道連合による少数与党となる見込み。下院で不信任を回避できるかは極右の動向にかかっている。

バルニエ氏は以前から移民対策に積極的。インタビューでは「自分にはRNの主張との共通点は何もない」と訴え、極右に対する忖度(そんたく)はないと否定した。【9月7日 時事】 
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【新政権に対し、左派は「盗まれた総選挙」として激しく抗議】
新政権に激しく反発しているのが第1勢力となった左派。
極右阻止の選挙協力によるいささか棚ぼた式の勝利とは言え、1位は1位です。
第1勢力となりながら政権から排除された左派は新首相に反対し、大規模な抗議行動を行っています。

世論調査でも、現段階での新政権への評価は厳しいようです。

****フランス全土でデモ、マクロン氏の首相選出に抗議****
フランスのマクロン大統領が中道右派のベテラン政治家ミシェル・バルニエ氏を首相に指名したことを受けて、フランス全土で7日、抗議デモが行われた。

これに先立ち、左派連合は7月の総選挙で最大勢力となったにもかかわらず、マクロン氏が同連合から首相を選出しなかったとして、デモを呼びかけていた。

総選挙では左派連合、マクロン氏が率いる中道連合、極右「国民連合(RN)」のいずれも過半数議席を獲得できず、マクロン氏が5日、英国の欧州連合(EU)離脱時にEU側の首席交渉官を務めたバルニエ氏を首相に指名した。

左派連合に参加する極左「不屈のフランス」のジャン・リュック・メランション党首は、民主主義では敗北を受け入れる謙虚さが必要だと主張。デモ参加者に「長い戦いに着手する」よう呼びかけた。

主催者側の発表によると、フランス全土で約30万人、うちパリで16万人が平和的なデモを実施した。警察の発表ではパリのデモ参加者は2万6000人となっている。

バルニエ氏は6日、新政権に保守派、中道連合のほか、左派の一部が参加することを望むと述べた。10月初めに議会で政策目標を説明する予定で、不信任案の採決に直面する可能性がある。

同氏が率いる共和党は総選挙で第5勢力にとどまった。左派はバルニエ氏が大幅な歳出削減を進め、移民に強硬な姿勢を示すと警戒している。

抗議デモは国内130カ所で行われた。デモ参加者はマクロン氏が有権者を裏切ったとして、弾劾を求めている。

世論調査機関エラベが6日公表した調査結果によると、有権者の74%はマクロン氏が選挙結果を無視したと回答。選挙が「盗まれた」との回答は55%だった。【9月8日 ロイター】
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【極右は倒閣には同調しないという余裕・様子見の姿勢 「新首相バルニエ氏は極右RNの監視下にある」】
一方、左派主導の内閣不信任成立に決定的影響力を持つ極右「国民連合(RN)」は、倒閣には同調しないと余裕というか様子見の対応です。

****フランスの極右、倒閣に同調せず=左派は抗議デモ****
フランスの極右政党・国民連合(RN)のバルデラ党首は7日、「民主主義の混乱にくみしたくない」と述べ、バルニエ新内閣の発足後直ちに倒閣を目指す構えの左派に同調しない考えを示した。

新内閣は中道と中道右派による少数与党となる見込みで、不信任を回避できるかは極右に懸かっている。

民放テレビTF1のインタビューで語った。バルデラ氏は、RNが唱える治安強化や移民抑制などの政策が「尊重されることを望む」とした上で、5日に首相に任命されたバルニエ氏に「マクロン大統領の政治を続ければ、新内閣は頓挫する」と警告した。

7月の総選挙では左派4党連合が下院の最大勢力となったが、政党単位ではRNが初の第1党に躍り出た。バルデラ氏は7日、記者団に「バルニエ氏はRNの監視下にある。(マクロン政権は)われわれなしでは何もできない」と訴えた。
バルニエ氏はこれに対し「私は全国民の監視下にある」と指摘。極右が新内閣に及ぼす影響力は限定的だと反論した。

一方、左派を率いる急進政党「不屈のフランス」は7日、政権批判の抗議行動を各地で展開し、支持者や学生運動の活動家らが参加。内務省によればデモ隊は約11万人(主催者発表30万人)に上った。【9月8日 時事】
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全国的抗議行動を展開する左派、「バルニエ氏はRNの監視下にある。(マクロン政権は)われわれなしでは何もできない」と豪語する極右・・・どうみても今後の政権運営は左右両方からの圧力で難しそうです。

マクロン大統領も極右・ルペン氏も、最終目標である2027年次期大統領選挙を見据えながらの政治闘争になります。
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ドイツ  東部州議会選挙で極右政党AfD勝利 続く経済苦境 VW社、国内工場閉鎖検討

2024-09-04 23:12:12 | 欧州情勢

(テューリンゲン州議会選に向けたAfDの選挙集会(8月31日)画像の人物はビョルン・ヘッケAfD党首。
ヘッケ氏はナチス時代のレトリックを使い、極端な民族主義・極右的見解で物議を醸してきた。ベルリンのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念碑を「恥ずべき記念碑」と呼び、ナチスの過去を「180度逆転」させるよう提唱した。

ヘッケ氏はナチスの準軍事組織ナチスSA(突撃隊)のスローガン「ドイツのためにすべてを」を使用したとして何度も有罪判決を受け、罰金を科せられている。ドイツの裁判所はヘッケ氏を「ファシスト」と呼んでも名誉毀損に当たらないとの判決を下している。)【9月3日 Newsweek】)

【難民申請者によるテロ事件で、難民への反発が高まる】
8月23日夜、ドイツ西部ゾーリンゲンのフェスティバルで、3人が死亡、8人が負傷する刺傷事件が起きました。
過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出しています。

****ドイツ3人殺害 「イスラム国」が犯行声明 計画知りながらも通報しなかった疑いで15歳少年逮捕****
ドイツ西部で23日、祭りの最中に男が来場者らを刃物で襲い3人が殺害された事件で、過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出しました。また、警察は事件の計画を知りながら通報しなかった疑いで、15歳の少年を逮捕しました。

ドイツ西部のゾーリンゲン市で23日夜、市の創立650周年を祝う祭りの最中に、男が刃物で来場者らを次々と襲い、3人が死亡、8人が重軽傷を負いました。

ロイター通信によりますと24日、過激派組織「イスラム国」が「パレスチナやほかの地のイスラム教徒のための報復だ」とする犯行声明を出したということです。

また、ドイツメディアは警察が24日、事件の計画を知りながら警察に通報しなかった疑いで、中央アジア・キルギス出身の15歳の少年を難民保護施設で逮捕したと伝えています。

逃走中の実行犯の男は襲撃の際、アラビア語で「神は偉大なり」を意味する「アラー・アクバル」と叫んでいたということです。

警察は実行犯は1人とみていて、無差別のテロ事件として捜査しています。【8月25日 ANNニュース】
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犯人は22年にシリアから入国して難民申請していた男性でしたが、この事件によってドイツ社会で難民への反発が高まっているとのこと。

****独刃物襲撃、拘束のシリア人逮捕 22年に難民入国、社会反発****
ドイツ西部ゾーリンゲンで3人が刃物で殺害された襲撃事件で、検察は25日、殺人やテロ組織に参加したなどの容疑で警察が拘束していたシリア人の男(26)を逮捕した。報道によると、男は2022年末に入国して難民申請をしていた。ドイツ社会で難民への反発が高まっている。

検察は男について過激派組織「イスラム国」(IS)の一員の疑いがあるとし「異教徒をできるだけ多く殺害しようと、首や上半身を繰り返し刺した」と指摘した。ISは24日に犯行声明を出しており、関連を調べる。

事件後、難民政策への批判が噴出し、最大野党キリスト教民主同盟のメルツ党首は難民を巡る対応の厳格化を主張した。【8月26日 共同】
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メルケル前首相時代から難民受入れに寛容な政策をとってきたドイツですが、こうした難民に反発する世論の空気に反応してショルツ首相は在留資格のない難民の強制送還を強化する方針を示しています。

****ドイツ刃物襲撃事件、首相が強制送還の強化表明****
ドイツのショルツ首相は26日、週末に3人が刺殺された西部ゾーリンゲンを訪れ、在留資格のない難民の強制送還を強化する方針を示した。(中略)

ショルツ氏は「ドイツに留まることができない人々を確実に国外に退去させるため、できる限りのことをしなければならない」と発言。難民申請は最初に到着した国で行うとする欧州連合(EU)の「ダブリン規則」に言及した。

ドイツのメディアによると、当局は昨年、今回の事件の容疑者である26歳のシリア人の男をブルガリアに強制送還しようとしたが、男が難民収容施設にいなかったため、送還できなかった。【8月26日 ロイター】
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【反移民感情の受け皿となっている極右政党AfDが東部州の議会選挙で躍進】
特に旧東ドイツでは旧西ドイツ地域との経済格差が今もなお残っており、旧東ドイツ地域住民の不満を、移民流入が高い失業率や労働賃金の引き下げ、更には治安悪化を招いているとして「反移民」という形で吸い上げ、支持を広げてきたのが極右政党AfD「ドイツのための選択肢」です。

そのドイツ東部のテューリンゲン州とザクセン州で9月1日、州議会選が実施されましたが、予想されていたように極右政党AfD「ドイツのための選択肢」が躍進し、テューリンゲン州では第1党となっています。

*****反移民のAfDが第1党になったドイツ東部州議選 欧州での右派伸長、改めて鮮明に****
ドイツ東部2州で1日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、テューリンゲン州で移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が第1党となった。同党が2013年の結党以来、州議会で第1党となるのは初めて。ザクセン州でも第1党に肉薄した。

選挙は来年9月の総選挙の前哨戦とみられており、惨敗したショルツ首相の中道左派、社会民主党(SPD)など連立与党3党は警戒を強めている。欧州での極右・右派の伸長が改めて鮮明となった。

独メディアが報じた暫定集計によると、テューリンゲン州でAfDは32・8%を得票し、前回選挙から9・4ポイント増。2位は国政最大野党の中道右派、キリスト教民主同盟(CDU)で23・6%。SPDは6・1%にとどまった。

ザクセン州ではCDUが得票率31・9%で首位を維持したが、2位のAfDは30・6%と僅差だった。

両州とも単独過半数に達する党はなく、今後は連立交渉が焦点。テューリンゲン州でAfDによる政権が発足する可能性は低いとみられている。

AfDは移民・難民の受け入れ反対を主張し、欧州連合(EU)にも批判的。ウクライナ侵略を続けるロシアへの制裁にも反対している。独当局は特にテューリンゲン州の党支部長、ヘッケ氏についてナチス・ドイツに近い思想を持つ「極右過激派」とみて警戒している。

テューリンゲン、ザクセン両州は1990年のドイツ統一以前の旧東ドイツに位置する。旧西ドイツ地域との経済格差はなお残り、AfDは近年、旧東ドイツ地域で住民の不満を吸い上げ、支持を広げてきた。22日には旧東独のブランデンブルク州で議会選があり、AfDは州議会第1党のSPDをしのぐ勢いを見せている。

欧州では6月のEU欧州議会選で極右・右派勢力が伸長。同月末のフランス下院選第1回投票では極右政党の国民連合が得票率で首位となった。【9月2日 産経】
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今回選挙はAfDがもともと強い地域での選挙であり、また、ナチスのイメージを彷彿とさせるAfDとの連立を他党は否定していますので、AfDは第1党になっても州政権の獲得はないと予想されていますが、それでも国政全体への影響は大きなものがあります。

****独首相、与党惨敗「苦い」 右派躍進、連立崩壊説も****
ドイツのショルツ首相は2日、ドイツ東部2州の1日の州議会選で排外主義を掲げる右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が第1党などに躍進し、国政与党が大敗したことを「苦い結果だ」と述べた。来年9月の総選挙を前に、連立政権の崩壊もささやかれている。

ショルツ首相はフェイスブックへの投稿で、2州では「極右団体」に認定されるAfDの躍進に「慣れてはいけない。経済を弱体化し、社会を分断する」と警鐘を鳴らし、支持拡大の阻止に取り組む考えを強調した。

地元メディアは与党の敗因を「寛容な移民政策やウクライナ支援の継続、環境保護政策への偏重にノーを突き付けた」と分析。【9月3日 共同】
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寛容な移民政策やウクライナ支援の継続、環境保護政策・・・連立与党が掲げてきたものであり、AfDが否定しているものです。

【欧州各国でも同様の右傾化】
反移民の世論、その受け皿としての極右政党の台頭はドイツだけでなく、欧州に共通する現象となっています。

****反移民、欧州で強まる右傾化 独仏英、結束に影****
ドイツ東部の2州の州議会選で排外主義を掲げる右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。欧州では、欧州議会選で欧州連合(EU)に批判的な極右や右派が議席を増やし、フランスや英国では極右や右派ポピュリスト政党が台頭するなど右傾化が強まる。特に欧州をけん引する大国に顕著な動きで、結束の弱体化が懸念される。
 
ドイツやフランス、英国で躍進した右派や極右政党は反移民を掲げる。移民流入が高い失業率や労働賃金の引き下げなどを招いたとする声も少なくなく、不満の受け皿となって支持を拡大した。

6〜7月のフランス国民議会総選挙では、反移民、反EUを掲げる極右「国民連合(RN)」が第3勢力にとどまったものの党史上最多の議席を獲得。

7月の英下院総選挙では、反移民の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」が二大政党に次ぐ得票率で初めて議席を獲得し、存在感を示した。

6月の欧州議会選でドイツやフランスの与党が大敗を喫する中、イタリアのメローニ首相率いる右派政党は伸長した。【9月2日 共同】
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欧州における右傾化はここ数年ずっと言われていることで、極右勢力はときに拡大したり、ときには思ったほど結果をだせず・・・といったことを繰り返しています。それは極右勢力への抵抗感もまた強いことを示してもいますが、そうしたことを繰り返しながら徐々に右傾化の裾野が広がっているようにも思えます。

【経済的にも苦境が続くドイツ 基幹産業自動車の中核メーカーVWが国内工場閉鎖を検討】
経済面で見ると、ドイツ連邦統計局が1月15日に発表した2023年のGDP統計の速報値によれば、ドイツと日本の経済規模(米ドル建て名目GDP)が2023年に逆転したとされています。

しかし、これはドイツ経済が好調なためではなく、ドイツの高インフレと円安ユーロ高によるもので、実質的な経済力を示す購買力平価で測ったGDPでは、引き続き日本が上位にあります。 

現実のところドイツ経済を取り巻く環境は厳しく、23年のマイナス成長に続き、2024年もドイツ経済の不調が続いています。

ドイツ経済の基幹産業と言えば自動車産業ということになりますが、欧州各国は安価な中国製EVの拡大に不安を感じています。EUは中国製EVに対し高関税をかけることを検討していますが、そうしたなかで中国依存が高いドイツ産業界は中国の報復を恐れ、中国製EV高関税に反対しています。

****脱炭素に踊らされたドイツの「悲惨すぎる末路」…国際競争力が地に落ち、産業の空洞化も深刻、過度な中国依存が裏目に****
(中略)
EUが温暖化防止のためとして、ガソリン車とディーゼル車の駆逐を宣言してから、すでに久しい。EU各国はEV車の普及に注力し、購入の際の補助金など、さまざまな政策を実施してきた。それどころか今では、35年からはガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するという、まさに自由市場経済に逆らった荒技まで打ち出している。

しかし、EUがどんな飴と鞭を使ってもEV車は売れない。特にEU製のEVは高くて売れない。今ではたいていの政府で、補助金も尽きてしまった。だから、どうしても買わなければならないなら、当然、中国の安価なEV車が選ばれる。

そこで困ったEUが思いついた次の対策は、自分たちがもっと競争力のあるEV車を作ろうということではなく、中国のEV車へ関税をかけること。中国のEV車が安価であるのは中国政府からの不当な補助金のおかげであるから、制裁すべきという理屈だ。

景気が落ち込んでいるドイツの主原因
ただ、これまで中国市場の閉鎖性に抗議し、自由貿易を謳ってきたのはEUだった。しかもEV車の優遇策は中国に限らず、EU各国も同じだ。それでもEUは7月より、BYDに17.4%、Geely(吉利汽車)に20%、SAIC(上海汽車)に38.1%の関税を掛け始めた。

ちなみに、中国のEV車のせいで特に困っていたのが、ドイツのメーカー。ところが、中国EV車への課税に一番強く反対したのが、ドイツ政府だった。

なぜなら、もし、中国が怒って報復関税を掛けてくれば、中国市場に一番大きく依存しているドイツの自動車メーカーが最大の犠牲者となるからだ。

Statistaの今年の統計によると、20年、ドイツ製の乗用車の39.4%が中国向けだった(メーカー別では、フォルクスワーゲンが43%、ベンツが32%、BMWが33%)。この割合が昨年は34.3%にまで減少し、多くのメーカーが生産縮小を余儀なくされている。

これ以上縮小すれば、死活問題だ。つまり、今や、中国EV車への関税があってもなくても困っているのが、ドイツのメーカーと言える。

ドイツはすでに景気が落ち込んでいる。主原因は高すぎるエネルギー価格と、高すぎる税金と、肥大した官僚主義。膨大な書類の処理に時間を取られ、高い電気で高い製品を作って高い税金を払えば、当然、国際競争力は地に落ちる。

だから現在、誰もドイツに投資したがらず、それどころかエネルギー多消費企業が次々とドイツを後にし、産業の空洞化が深刻な問題だ。以前は、たとえ製造工程を外国に出しても、企業の頭脳である研究・開発部門は国内に残すと言われたが、今ではそれさえ外国に移している。

では、企業はどこへ行っているのか? 昨年はドイツ企業の中国への直接投資が、初めて1000億ユーロを超えた。これは、ドイツが国外で行っている直接投資の7.2%を占めるという。一部の政治家や評論家が、いくら中国の政治的リスクや人権問題を訴えても、ドイツ企業は今も中国市場を巨大なチャンスと見ているのだ。

ドイツにとって「脱中国」は夢のまた夢
たとえば世界一の化学コンツェルンであるBASFは100億ユーロを投資し、その生産拠点の多くをドイツから中国の湛江市に移した。これは、過去にドイツ企業が中国で行ったうち、最大の投資だという。また、70年代から中国に進出し、中国における西側老舗といえるフォルクスワーゲン社は、ドイツで計画していたEV車の製造を取りやめ、安徽省に25億ユーロで新工場を建設した。

要するに、ドイツにとっては脱中国など夢の夢。さらに言うなら中国には、レアメタルはもちろん、太陽光パネル、医薬品、ノートブック、また、自転車のフレームも、ベビーカーも、とにかくありとあらゆる物を売ってもらう必要もある。(後略)【8月10日 川口マーン恵美氏 現代ビジネス】
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「脱炭素に踊らせた」云々は保守派川口氏の見解です。

ドイツで計画していたEV車の製造を取りやめ、安徽省に25億ユーロで新工場を建設したフォルクスワーゲン社が、ドイツ国内の工場2カ所の閉鎖を検討していることが明らかになりました。実施されれば、国内初の閉鎖となります。

****フォルクスワーゲンがドイツ国内工場2カ所の閉鎖検討 EV車で厳しい開発競争に****
ドイツの大手自動車メーカー「フォルクスワーゲン」がドイツ国内の工場2カ所の閉鎖を検討していることが明らかになりました。実施されれば、国内初の閉鎖となります。

フォルクスワーゲンは2日、声明を発表し「情勢は非常に緊迫しており、単純なコストカットでは乗り越えられない」と厳しい経営状態を明らかにしました。

ロイター通信によりますと、ドイツ国内の車両工場と部品工場の2カ所の閉鎖を検討しているということです。

世界屈指の販売台数を誇るフォルクスワーゲンですが、近年は電気自動車開発などでより安価な中国勢との開発競争にさらされていて、経営合理化を目指し、2026年までに日本円でおよそ1兆6000億円のコスト削減を行うと発表していました。

今週中にも労働者側と話し合いの場がもたれる予定ですが、すでに労働組合が対決姿勢を示していて、波乱が予想されます。【9月3日 テレ朝news)】
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ドイツ国内で中国産EVに押されているというより、43%が中国向けというVWにあって、中国市場での不振が大きいとも想像されます。

これに関連し、米CNNは「VWの中国での業績不振は、中国の電気自動車(EV)メーカー、特に比亜迪(BYD)に負けていることによるもので、BYDは欧州におけるVWの事業にも脅威を与えている」と報じています。

【「脱原発」の一方で、高い電気代】
自動車を含めドイツ経済にとって足かせとなているのが高い電気・エネルギー価格。
緑の党を含め連立政権は「脱原発」を推進しています。

****国外逃避が止まらない…!「電気代が異常に高い」ドイツがいま陥っている「産業の空洞化」と「雇用の喪失」****
(中略)
脱原発は「歴史的業績」?
いずれにせよ、これ(原発の冷却塔破壊による不可逆的脱原発)により、ドイツはもはや電気の高騰と逼迫から抜け出せない。

元々、ドイツのエネルギー政策とは、メルケル時代より一貫して、1)原発を止め、2)CO2削減のために石炭火力も止め、3)再エネ100%に移行していく。そして、その繋ぎとして、4)安いロシアガスを使うという計画だった。 

ところが、(ウクライナ)戦争のせいで、その頼みの綱のロシアガスが、突然、途絶えてしまった。もっともガスを止めたのはロシアではなく、ドイツがロシアに「経済制裁」を掛けるとして輸入を減らしていったからだ。 

すると、まもなく誰かが、ロシアからドイツへ直結している海底パイプラインを爆破してくれた。

だから今のドイツは、原発と石炭火力だけでなく、ガスも足りなくなった。確実に増えているのは再エネだけだが、気まぐれな再エネは、いくら増えても電力の安定には繋がらなかった。(後略)【8月23日 川口マーン恵美氏 現代ビジネス】
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犬猿の仲のトルコ・ギリシャ・・・ではあるが、ビザ簡便化で観光客誘致も 進展しない日中間ビザ問題

2024-08-21 23:11:01 | 欧州情勢

(【Tripadvisor】ギリシャ領のロードス島リンドス ロードス島もトルコから7日間の到着ビザで行けるようです)

【エーゲ海東部のギリシャの島々で観光を楽しむトルコ人】
今日TVを観ていると、トルコ沿岸のエーゲ海・ギリシャ領の島々にトルコ人観光客が大勢押し寄せて休暇を楽しんでいる様子が放映されていました。

これはなかなか興味深い光景です。というのは後述のようにトルコとギリシャは険しい対立関係にあるというイメージが強いせいです。

ギリシャの島々でトルコ人観光客が遊ぶ・・・という光景は、ギリシャ側の観光客誘致措置によって実現したもののようです。

****さあ、エーゲ海の島へ―必要な書類は?****
トルコ国民がギリシャの島々に到着ビザを取得して入国できるようにする措置が講じられた。レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領のギリシャ訪問中、ギリシャのミツォタキス首相は到着ビザに関する発表を行い、ギリシャの10の島で7日間の到着ビザが導入されると述べた。トルコ国民がビザを申請するには、国境で行う必要のある手順がいくつかある。

ギリシャのキリヤコス・ミツォタキス首相は、本日エルドアン大統領と行った記者会見で、エーゲ海東部でトルコ国民に向けた7日間の到着ビザ問題についても話し合われたと述べた。

■トルコ国民のギリシャ諸島への到着ビザ
ギリシャのミツォタキス首相は、到着ビザに関する発言の中で、「トルコのEU加盟のプロセスでの支援提供についても議論した。ビザの問題に関しては、トルコの学生とヨーロッパの学生とのより緊密な協力を確保するためビザ免除の問題についても議論した。同時に、エーゲ海東部で年間を通じて7日間のビザを認めることで、トルコ国民がエーゲ海の島々及び東部エーゲ海の島々を訪問する自由を与える決定を取り上げた」と述べた。

■ギリシャ大臣発表:夏だけでなく一年中有効に
ギリシャの移民・庇護大臣ディミトリス・カイリディス氏は、協定の範囲内でトルコ国民がビザなしで1週間訪問できる島を発表した。

同大臣は、ギリシャがシェンゲン圏内にあることを指摘し、トルコ国民が東エーゲ海の島々をより容易に訪問できるよう、シェンゲン協定からの例外を要請したと述べた。

カイリディス大臣は、10島のビザ免除が夏だけでなく年間を通じて有効であるという情報を共有し、以下の島を挙げた。

リムノス島、レスボス島、キオス島、サモス島、レロス島、カリムノス島、コス島、ロードス島、シミ島、カステロリス島(メイス島)。(後略)【2023年12月07日付 Hurriyet 紙 TUFSmedia】
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ギリシャはEU・シェンゲン協定加盟国で、協定によれば、域内では国境管理をなくす一方で、対外国境では出入国管理に共通のルールを導入することになっています。

トルコからの観光客誘致についてはこの協定上のハードルがあったようですが、協定ルールの例外措置とすることでハードルをクリアして実現した“エーゲ海東部でトルコ国民に向けた7日間の到着ビザ発給”措置のようです。

【犬猿の仲のトルコ・ギリシャ関係 キプロスやガス田問題も】
トルコとギリシャ・・・・古来、両者は犬猿の仲。
小アジア世界とギリシャということでは古代ギリシャの時代から両者はひとつの地域を形成する関係にあって、都市間で戦争も繰り返されてきました。

例えば、トロイの木馬で有名なトロイ戦争(紀元前1700年~紀元前1200年のどこか)も、小アジアのトロイアとギリシャ・ペロポネソス地方のミケーネを中心とする勢力の間で戦われた戦争です。

オスマントルコ成立でギリシャはトルコ領となりますが、ギリシャ独立戦争を経て1832年ギリシャは独立します。

第一次世界大戦後の1919年5月~22年、敗戦国オスマン帝国の支配地として残るギリシア人居住地を統合してギリシア国家を完成させるという「大ギリシア」主義の願望を持っていたギリシアがトルコのイズミル(スミルナ)に侵攻(ギリシャ・トルコ戦争)。これをトルコが撃退に成功してイズミルを奪回。戦争を指導したムスタファ=ケマルの主導権が確立し、トルコ革命を完成させることになりました。【「世界史の窓」より】

現代史において両国関係を悪化させた問題が分断国家キプロスの問題。

****キプロス トルコの軍事侵攻から50年 南北の分断いまも続く****
南北に分断された状態が続く地中海のキプロスではトルコ軍の軍事侵攻から50年になるのにあわせ、ギリシャ系住民の多い南部とトルコ系住民の多い北部でそれぞれ式典が開かれました。

ギリシャがキプロスの再統合を訴えているのに対し、トルコは北部の独立を主張していて、半世紀が経ったいまも対立が続いています。

地中海の島キプロスは、多数派のギリシャ系住民と少数派のトルコ系住民の対立が激しくなる中、50年前の1974年7月、トルコがトルコ系住民の保護を理由に北部に侵攻しました。

その後、北部は北キプロスとして一方的に独立を宣言し、ギリシャ系住民の多い南部と分断された状態が続いています。

侵攻から50年になるのにあわせて南部では20日、ギリシャのミツォタキス首相が出席して追悼式典が開かれ、「ギリシャは常にキプロスの側に立つと約束する。私たちはキプロスが再統合されるまで闘いをやめない」などと述べ、分断の解消を訴えました。

一方、トルコだけが国家承認する北部では、記念の式典が開かれ、トルコのエルドアン大統領は「50年前、トルコはトルコ系住民を見捨てないことを全世界に示した。北キプロスの承認と2国家解決に向けた努力を決意をもって続ける」と述べ、北キプロスの独立をあらためて主張しました。

侵攻から半世紀がたったいまも南北の再統合を訴えるギリシャと北部の独立を主張するトルコの間で溝は深く、対立が続いています。【7月21日 NHK】
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キプロスへのトルコ軍侵攻は50年前のことですが、もっと最近の話では、2020年には東地中海のガス田をめぐり一触即発の険悪な関係にもなりました。

****一触即発 東地中海で何が起こっているのか****
東地中海。・・・さんさんと降り注ぐ陽光の下に広がるエメラルド色の海を連想する人も多いだろう。しかし、インターネットで検索すると「軍事演習」や「衝突」といった何やらきな臭いキーワードが目につくようになってきた。

この海でいったい何が起きているのか。実は海底に眠る天然ガス資源を巡って、トルコとギリシャが他国も巻きこみパワーゲームを繰り広げているのだ。

ことし8月、東地中海は一触即発の危機を迎えていた。トルコ軍とギリシャ軍が、海では艦船が接触し、空では戦闘機がドッグファイトさながらの接近飛行を繰り広げたのだ。なぜそこまで両国の間で緊張が高まっているのか。

背景にあるのはトルコとギリシャの領有権の主張がぶつかりあう東地中海の海底で2009年以降、ガス田の発見が相次いでいることだ。

長年続く対立
東地中海をめぐるトルコとギリシャの対立は100年近く前までさかのぼる。第1次世界大戦でドイツ側についたオスマン帝国は敗北。後継国家のトルコは、勝利した連合国が賠償請求権を放棄する代わりに、エーゲ海の島々の多くをギリシャに割譲することとなった。この決定にトルコは不満を持ち続けてきた。

さらに1974年には、キプロス問題が起きる。この年、トルコは島の北側に住む少数派のトルコ系住民を保護する名目で軍を派遣。「北キプロス・トルコ共和国」として独立させた。しかし国際社会はギリシャ系住民の多い南側を「キプロス共和国」として承認したため、島は40年以上にわたって南北に分断されている。東地中海は両国の対立につながる火種がくすぶり続けてきているのだ。

トルコ外し
エネルギーをめぐるトルコとギリシャの対立は地中海を取り囲む国や地域を巻き込んで拡大している。ギリシャは東地中海で採掘した天然ガスをヨーロッパへ輸出する2つの大型プロジェクトに関わっている。

1つは採掘したガスをエジプトに送り、LNG(液化天然ガス)に加工して輸出する「エジプト・エネルギーハブ化構想」。そしてもう1つが、イスラエルの沖合で採掘したガスをギリシャへと伸びる1900キロものパイプラインを建設して輸出する「東地中海パイプライン構想」だ。

この2つのプロジェクトの実現に向けて、関係する7つの国と地域(ギリシャ、エジプト、イスラエル、イタリア、キプロス、ヨルダン、パレスチナ)は「東地中海ガスフォーラム」というグループを立ち上げた。いずれのプロジェクトでもトルコは排除された。

歴史の塗りかえに警戒
ことし1月、パイプラインの建設プロジェクトに調印した際、ギリシャのミツォタキス首相が強調したのは、プロジェクトが「地域の平和と安定に貢献する」ということだった。

東地中海の深い海底に築くパイプラインの採算性を疑問視する声は少なくない。関係するイタリアもプロジェクトには消極的だ。

なぜギリシャがそこまでパイプラインにこだわるのか。ギリシャはトルコが国境を実力行使で変えて「歴史の塗り替え」をするのではないかと警戒しているという研究者の指摘もある。プロジェクトからは、トルコに対抗してできるだけ東地中海で仲間を増やしたいというギリシャの思惑が見え隠れする。

リビアの対立持ち込まれる
ギリシャのパイプラインプロジェクトに対抗するため、トルコはある“奇策”に打って出た。去年11月、地中海の対岸のリビアの暫定政府とEEZ=排他的経済水域を設定。

トルコのエルドアン大統領は「イスラエルからギリシャへ海底経由でパイプラインを敷設するにはトルコとリビアの承諾がないと不可能になった」と釘をさした。

怒るギリシャに加勢したのはフランスだった。肩を持つ大きな要因の1つは、東西に分裂して戦闘が続くリビアを巡るトルコとの対立だ。

リビアでフランスは自身が権益を持つ油田をおさえていた軍事組織を支援していたが、トルコが暫定政府を支援し始めると軍事組織は劣勢に追い込まれた。

リビアでのトルコの台頭に不快感を隠さないフランスの後押しもあり、EU=ヨーロッパ連合はトルコに対して制裁を科すか、議論するため、9月下旬、臨時の首脳会議が開かれることになっている。

“チキンレース”
東地中海をめぐりトルコとギリシャはどちらも後に引かない。トルコがリビアの暫定政府とEEZを設定したのに対して、今度は、ギリシャがエジプトとEEZを設定するといういわば“意趣返し”を行った。これにトルコは、東地中海へ探査船を軍艦のエスコートつきで派遣。冒頭で紹介した緊張高まる事態につながっている。

みかねたドイツはトルコとギリシャとの仲介に乗り出し、マース外相は「小さな接触をきっかけに破滅的な衝突が起きかねない」と警告。

トルコとギリシャが加盟するNATO=北大西洋条約機構は、双方の軍の間で偶発的な衝突が起きるのを回避するため、協議を始めることで両国が合意したと発表したが、翌日には、ギリシャがその発表を否定する異例の事態となった。一見穏やかに見える東地中海で続く“チキンレース”の行方は予想がつかない。【2020年9月8日 NHK】
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【関係改善の動きも 観光など国民レベルの交流が関係改善には重要】
そんな険悪なトルコ・ギリシャ関係にあって、関係改善の動きも。

****トルコとギリシャ、関係改善で合意 アテネで首脳会談****
トルコのエルドアン大統領は7日、訪問先のギリシャの首都アテネでミツォタキス首相と会談し、両国の関係改善に取り組むことで合意した。

意思疎通の窓口をオープンにし、緊張を招く要因を排除するために軍事的な信頼の構築を模索するほか、貿易の促進やエーゲ海を巡る両国の課題に取り組む方針で一致した。

両国はともに北大西洋条約機構(NATO)に加盟していながらも対立が続いていたが、2月に大地震が起きたトルコをギリシャが迅速に支援したことで関係が改善に向かってきた。両国関係をより緊密にし、新たな時代を切り開くロードマップを策定し、関係を再構築することを目指す。

エルドアン氏はミツォタキス氏との会談後に「大局的な視点に立つ限り、われわれの間に解決できない問題はない」とし、「エーゲ海を平和の海にしたい。トルコとギリシャの共同歩調を通じて世界の模範にしたい」と語った。

両国はまた、年間貿易額を現在の50億ドルから100億ドルへ引き上げたい考えとした。【2023年12月8日 ロイター】
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もっとも、細かいいざこざ、対立は今も続いています。

****博物館モスク化、対立の火種=ギリシャ苦言、トルコは反論****
トルコ最大都市イスタンブールにあるカーリエ博物館が今月、約4年にわたる改装作業を終え、モスク(イスラム礼拝所)として一般向けに開放された。

元はキリスト教会の聖堂で、イエス・キリストや聖母マリアを描いたビザンチン美術の傑作とされるモザイク画やフレスコ画が多数残る建物だけに、隣国ギリシャはモスク化に反発。歴史的に対立を繰り返してきた両国間の新たな火種になる懸念も出ている。

かつて「コンスタンチノープル」と呼ばれたイスタンブールは、ギリシャ正教会の中心地でビザンチン帝国の首都だった。15世紀にトルコの前身オスマン帝国に制圧された歴史的経緯がある。

「カーリエモスク」となった聖堂は5~6世紀ごろ建てられ、オスマン帝国下の16世紀にモスクへ変更。政教分離を掲げるトルコ共和国成立後の1945年に博物館となった。

イスラム色の強いエルドアン大統領が2020年、同じく博物館だった世界遺産アヤソフィアをモスクに変えた直後に、カーリエもモスクへの変更が決まった。

今月13日にトルコを訪れたギリシャのミツォタキス首相は、モスク化に「再び礼拝の場所になったのは残念だ」と苦言を呈した。これに対し、エルドアン氏は「文化遺産の保護において、トルコは模範的な国だ」と反論した。

改装後のカーリエモスクは、ドーム内の天井などに描かれた鮮やかなフレスコ画を一目見ようと、観光客でにぎわっていた。一方、礼拝部屋にあるモザイク画は、壁と同系色の覆いで隠されていた。

初めて礼拝に来たという大学教授ビュレント・デイルメンジさん(48)は「イスラムに適さなくても、元の形や壁画は保存されている。トルコの寛容さの表れだ。これがギリシャだったら全て壊されただろう」と話した。【5月18日 時事】 
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上記のように、さまざまな対立の歴史、関係改善の試みのある両国関係ですが、冒頭で紹介したような観光を通した国民レベルの交流が深まることが関係改善に向けた重要な一歩となると思われます。

【翻って日中間のビザ問題】
観光を通した国民レベルの交流ということで言えば、現在実質的にストップしているのが中国への日本人観光客。

コロナ後の観光再開に際し、従来短期の入国についてはビザを免除していた中国側が相互主義(日本は中国に対しビザを求めています)を理由に日本人短期入国者にビザを求めることになっており、ビザ申請センターでの指紋採取など非常にハードルの高いビザ発給が実質的に日本人の中国観光を諦めさせています。(観光は諦めればすみますが、ビジネスでは障害となっています)

ただ最近、ここひと月か半月でしょうか、各メディアが提供するニュースを一覧できるニュースサイトで、急に中国国営メディア・新華社の記事、それも政治記事ではなく、観光案内のような情報提供を目にするようになりました。しかも連日、1日に5本、6本という大量の情報が発信されています。

おそらく、経済不振という事情もあって中国政府の日本人観光客誘致の方針に沿ったものだろうと想像しています。しかし、日本人観光客誘致のためなら、そういう情報提供以上にビザ発給の簡便化がはるかに有効。

中国側の相互主義の主張はもっともな話ではありますが(中国は欧州など一部の国に対しては一方的なビザ免除を再開していますが、日本との関係では微妙な両国関係を反映して、話が膠着しています)、ビザ免除でなくても、せめて到着ビザとか、あるいは郵送・オンラインでのビザ発給とか・・・簡便化してもらえれば、私などはすぐにでも中国に出かけるのですが・・・・。
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