孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

バイオ燃料 忍び寄る食料危機

2007-05-24 19:11:01 | 国際情勢


先日、地球政策研究所々長レスター・ブラウン氏の発言が報道されていました。
「米国では車の燃料の16%をバイオエタノールで賄っている。米国が石油の不安定さを補おうとしてバイオエタノール燃料に移行したことで、世界の食料事情を危うくしている。トウモロコシの値段はこの15ヶ月間で倍に上がった。コメ、大豆など他の穀物も高騰著しい」

たしかにこのところ日本でもバイオ燃料の原料植物栽培拡大の影響ということでオレンジジュースやマヨネーズの値上げが報じられています。
また、メキシコではトウモロコシ価格の急騰で主食のトルティーヤが値上がりしてデモも起きたとか言われています。

ジュースやマヨネーズ程度であれば、市場原理に基づく生産・価格調整としてすますこともできます。
しかし、世界には未だに8億人を超える飢餓人口が存在していると言われています。
今でも十分な食料を得られない人々の生活が、バイオ燃料関連作物(サトウキビやトウモロコシなど)の生産拡大で影響を蒙るとすると重大な問題でよく配慮する必要があります。

“市場原理”というのは一見選挙投票制度にも似て合理的なシステムに思えます。
ただ、先進国と途上国、金持ちと貧乏人という貧富の差は所与の前提としたシステムでもあります。
いわば、ある人は1000枚の投票用紙を持っていて、別の人は1枚しかもっていない・・・そういう制度でもありますので、何らかの補完措置が必要かと思います。

もとより、バイオ燃料がその削減を目的とするCO2は先進国社会が増加させてきたものと思われます。
その対応として、今後更に飢餓に苦しむ人々の生活が脅かされることがあってはいかにも不条理です。

お題目だけ唱えていても何もスタートしません。
また、人々に犠牲的精神を要求するようなことを言っても非現実的です。
自分を含め人間はみな自分のことが一番大切な身勝手な生き物であり、そうそう他人のことなどかまってはいられません。
ただ、“わずかの配慮で”“少しの節約で”これだけのことができる、これだけの人が助かるということが具体的に示されれば、全く耳を貸さないほど冷淡でもないと考えています。

今後のバイオ燃料に関する予想をよく検討して、燃料と食料の奪い合いというシビアな情勢のなかで実現可能な具体的提案がなされることを期待しています。

写真は今年GWに旅行したインドネシア・スマトラ島のサトウキビ生産地の風景で、牛を使ってサトウキビの汁を絞り、それを煮詰めて黒砂糖を作っています。
コメント
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