(写真は雄弁に語りますが、現実の切り取り方で語る内容は様々 上の写真は“Need a hand?”というタイトル バグダッド “flickr”より By panzerwaffen43)
イラク内務省、国防省および保健省が共同編さんした統計によると、10月に、宗派間抗争や武装勢力による攻撃で死亡したイラク人は少なくとも887人(内訳は民間人758人、警察官116人、兵士13人)とのことです。
この数字について、AFPは「8月の1770人から、9月は半分以下の840人まで減少したが、10月に入って(887人と)増加に転じる結果となった。」と“増加”という趣旨で報じています。
時事通信社は民間人758人に含まれている333人は“9月以前に殺害された遺体”としてこれを除き、10月の民間人死者を554人とカウント、「暴力沈静化の兆し―イラク 対立が激化する契機となった昨年2月のイスラム教シーア派聖廟攻撃事件以降、最も少ない月の1つであることが分かった。」と“沈静”と報じています。
他方、共同通信社は民間人死者758人をとりあげ、「ロイター通信は1日、テロや攻撃などによる10月のイラク民間人の死者数は758人で、月間の死者数としては今年最少だったと伝えた。」と報じています。
同じ数字でも、どのように解釈するかはさまざまのようです。
内容的には、ひと頃に比べるとやや落ち着いていると見ていいように思えます。
イスラム教スンニ派部族の協力を得た米軍による武装勢力の掃討作戦や、南部で衝突を繰り返してきたシーア派2組織による衝突停止合意などが背景にあると思われます。
イラク駐留米軍のナンバー2として現場指揮に当たっているオディエルノ陸軍中将の発言「状況が逆戻りしないとは断定できないものの、前向きな空気が出ている」といったところでしょうか。【11月2日 時事】
トルコの大規模な越境侵攻とかになれば、また違う話になるのかも。
また、こんなニュースも。
「イラク生物兵器情報は作り話=元学生が亡命のためねつ造 米CBSテレビは1日、イラクのフセイン政権は生物兵器を保有しているという2003年の対イラク開戦の根拠となった情報について、ねつ造した男性を特定したと発表した。男性は、ドイツ亡命許可を得るため、自分は移動式生物兵器を製造している施設の責任者だとの話をでっち上げた。 」【11月2日 時事】
ストレートに読むと“作り話を信じてイラク戦に突入した”ともとれますが、恐らく実態は先に開戦の意思があって、何か都合のいい理由を探しているときにたまたまこういう話もあったので、真贋は別にして最大限に利用した・・・というあたりでしょう。
こちらのニュースは本音の話しとしてストレートに読んでいいようです。
アメリカのイラク大使館勤務を希望する外交官が不足し、ベトナム戦争以来の本人同意のない強制赴任に踏み切ったというものです。
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【11月2日 AFP】イラクに外交官を強制赴任させる米国務省の方針決定に職員から猛反発が起きていることについて、ライス米国務長官は1日夜、職員らに説明を行い、方針への理解を求めた。
「(イラクにおける外交活動は)米国の最重要課題の1つであり、われわれは義務を果たさなければいけない。一部の職員の行動によって、米外交官がイラクでの活動に消極的だとの印象を与えたことは、非常に残念だ」などと述べた。
国務省は、イラク大使館で計48ポストの補充枠に対し志願者が不足していることから、外交官を強制的に赴任させる方針を決定、拒否した場合は解雇も辞さない姿勢を示している。
これに対し、職員らは激しく反発。10月31日午後に同省で開かれた方針説明会では、集まった外交官らから「(強制派遣は)死刑判決のようなもの」「他国はイラク大使館の閉鎖を検討しているのに」などと激しい非難が相次いだ。
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アメリカの外交官が日本のそれ(終身雇用的な外務省役人)と比べてどのようなものなのか知りませんが、「(強制派遣は)死刑判決のようなもの」と言われてはライス国務長官も立つ瀬がないです。
もちろん、“じゃ、イラクで暮らす何千万の人々はどうなるの? 国外に非難したくても出来ずにいる何百万の難民はどうなるの?”というのは、言わずもがなですかね。
(バグダッドで家宅捜査をする米兵 “flickr”より By Mujahada - Very Proud To Be Muslim )