孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  就職難、地方に都市若者を誘致するためさまざまなプログラム 習近平氏下放体験を反映

2023-11-13 22:26:52 | 中国

(10代に暮らしていた穴居を訪れる習氏(2015年)【11月8日 WSJ】)

【中国若者の「日本化」 中国政府「苦労は買ってでもしろ」】
中国では16歳から24歳の「若者の失業率」が6月には21.3%にまで達し、中国当局は7月から若者の失業率の発表を取りやめてしまいました。

そうした厳しい雇用情勢や経済状況、また、結婚などの厳しい社会情勢からドロップアウトするかのように、仕事もしない、結婚もしないといった、とにかく現実に抗わない内向きな若者像もよく指摘されています。(実際のところ、そうしたイメージどおりの若者がどれだけいるのかは知りませんが)

そうした若者像はバブル崩壊後の長期不況下の日本にもよく似ているとの指摘も。

****30年前と酷似…中国で進む若者の日本化 “寝そべり族”の大量発生で「恋愛の仕方がわからない」****
(中略)
若者たちを突き放し、「引き締め」を強化する中国政府
中国政府が失業率の数字を公表しなくなったために最近の動向はわからないが、若年層(16〜24歳)の雇用状況が改善しているとは思えない。

シンガポール紙「聯合早報」(10月2日付)は、中国財政省の発表として、今年1月から8月までの宝くじの売上高が前年比約52%増の3757.61億人民元(約7兆5000億円)だったことを伝えた。同紙によると、中国メディアは宝くじ販売店の多くが「以前より若者が増えた」とコメントしたことを報じ、SNSでは巨額当せん金の使い道を想像するトピックが人気を呼んでいるという。そのためSNS上では、若者たちにとっての宝くじは「溺れる者がつかむ藁」とみなされるようになっているそうだ(10月5日付Record China)。

このような状況にもかかわらず、中国政府は若者たちに救いの手を差し伸べる姿勢を示していない。それどころか、「苦労は買ってでもしろ」と突き放し、思想や行動に対する「引き締め」の強化に走っている印象が強い。

中国では9月に入り、北京の名門大学のキャンパス内で宣伝活動が強化され、スパイを見つけた場合の通報方法に関する短期集中講座が実施される事態となっている(9月15日付ブルームバーグ)。

社会の閉塞感に絶望した若者が「日本化」
不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じていることから、中国経済の「日本化」が指摘されることが多くなったが、筆者は、高まる社会の閉塞感に絶望した若者の間で広がる「日本化」にも注目している。

中国の「寝そべり族(タン・ピン)」は日本でも有名になった。タン・ピンとは「だらっと寝そべる」という意味で、仕事をしないで寝そべって何もしない、結婚もしないというライフスタイルを指す。30年前のバブル崩壊後の日本でもこのような若者が大量に発生していたことが思い起こされる。

中国の昨年の婚姻件数は前年比11%減の683万組と、9年連続の減少となった。ピークの2013年から半減した形だが、婚姻件数はさらに減少することが確実視されている。

寝そべり族が増殖したせいで、「結婚しない」若者が急増しているからだ。中国では2021年時点で15歳以上の独身者の人口が約2億3900万(中国統計年鑑2022)に達したが、彼らが「結婚しない」ことが大きな社会問題になっている。中国紙「中国青年報」が交際相手のいない男女を対象にアンケート調査を実施したところ、男女とも悩みは「恋愛の仕方が分からない」だった。

若者の「日本化」が社会に混乱をもたらす危険性
中国で進む若者たちの「日本化」について、筆者は「社会を混乱させるリスクを内包しているのではないか」との思いを禁じ得ないでいる。

日本ではすでに「ブラックバイト(就業環境が劣悪、常識はずれの低賃金など条件が悪すぎるアルバイト)」という言葉が定着しているが、近年は中国でも大学生らを狙ったブラックバイトが横行している。マルチ商法の片棒を担ぐケースなども増えているという(9月12日付東方新報)。

日本では2000年代以降、刑法犯の認知件数は減少傾向にあるが、中国の刑法犯は2001年から2021年にかけて2倍以上に増加している。国防費を上回る予算を社会秩序維持のために投じているのにもかかわらずに、である(9月30日付共同通信)。

さらに中国の深刻な状況とは、「社会的地位の低い」男性が不特定多数を標的にする襲撃事件(社会報復事件)の増加に歯止めがかからないことだ(7月11日付BBC)。

若者の「日本化」が社会に混乱をもたらす危険性は、排除できないのではないだろうか。【10月11日 藤和彦 デイリー新潮】
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もっとも、仕事もせずに寝そべっていられるのは、ある意味贅沢。それが可能なのは親世代の経済支援などもあってのことでしょう。特に、あせって意に沿わない就職をするより大学院に進む若者などは、親の支援があってのことでしょう。そういう意味では豊かになった中国社会の一面を示す現象なのかも。

【都市若者を地方農村へ 習近平版「下放」 若者に仕事を与え、農村の活性化に資するとのことだが・・・】
「苦労は買ってでもしろ」と突き放す中国当局の対応・・・・習近平国家主席が文革時代に個人的に経験した下放体験を色濃く反映したものです。

そして今、再び都市若者を地方農村に送り込む施策が取られています。

さすがに農村に無理やり放り込まれて、農村に学ぶという毛沢東・文革時代の「下放」とは異なり、習近平思想や新しい技術を農村に広めて農村を活性化する役割を担うボランティア活動といったようにソフィスティケイテッドされてはいるようですが。

これにより無職の若者に職を与え、都市若者の失業率も下がること、併せて農村も活性化することが期待されているようですが、そううまくいくかな・・・若者がそういう農村での生活に満足するかな・・・という感も。

****都会の若者を送り込め 中国が地方空洞化で****
記録的な水準にある若者の失業率、政府は地方に誘致するためさまざまなプログラムを立ち上げ

中国の習近平国家主席は、10代だった文化大革命(文革)の時期に農村に送り込まれ、1960年代後半と70年代前半の数年を農業に従事したり穴居で本を読んだりして過ごした。

それから半世紀がたち、習氏はより多くの若者が自分の先例に倣うことを望んでいる。
若者の失業率が記録的な水準に達し、中央政府が地方空洞化への懸念を強める中、習氏は学生や大卒者に苦難を受け入れ、都会での生活を捨てて田舎暮らしを検討するよう呼び掛けている。

政府は若者を地方に誘致するためにさまざまなプログラムを立ち上げた。農村に入った若者は、地元の農産品を宣伝したり、壁にペンキを塗ったり、共産党の指導力を農家の人に称賛したりする役割を担っている。

何十万人もの若者を地方に送り込むことで、無職の若者に仕事を与えると同時に、国の経済成長から取り残された村落が活性化されることを政府は期待している。

だが、多くの若者がこうしたプログラムを利用するのは、今は難しそうな大都市での職探しを先延ばしするためだ。彼らが働いたところで、ビジネスや投資の不足といった地方の問題を解決できるわけではない。

中国南部の広州市の西にある村では最近、ボランティアの大学生が壁に麻薬撲滅のスローガンを描いていた。政府が再生計画を掲げるこの村は、ひと気がなく、商売は成り立たず、空き家には雑草が生い茂っていた。

ペンキ塗りを志願し、公式アプリで登録すれば、後に共産党に入党しやすくなると考える学生もいる。公職に就ける可能性が高まり、就職に非常に有利になるとの期待がある。

別の村では、党に協力している若者が、子どもに食品ラベルの賞味期限の読み方を教えていた。ある女性は、フルタイムのボランティアに参加することでキャリアについて考える時間ができたと語った。「他に何をすればいいか分からなかった」。そこへ政府関係者が来て、これ以上話を聞くことはできなかった。

「ここは退屈」
中国はこれまで数々の地方向け貧困対策を打ち出してきたが、最新の特徴は、習氏の主要な政治目標を推進するために若者に協力を求めている点だ。

こうした取り組みが加速したのは、習氏が昨年12月の演説で、より多くの卒業生を地方に向かわせるよう政府関係者に要請してからだ。

習氏は、この40年で進んだ地方から都市部への人口移動について、国の食糧供給を危険にさらし、西側諸国との競争が激化する中で国を脆弱(ぜいじゃく)にしているとの懸念を表明。「一部の村落で発展が遅れているのは、もっぱら人材不足が原因だ」としている。

習氏の構想は、より多くの若者を、1年や2年ではなく長期的に田舎に定住させることだ。今夏時点で都市部の若年層の失業率は20%を超えていた。町や村に移住させることで、多くの卒業生が望むホワイトカラーの仕事を十分に創出していない都市部の緊張をいくらか緩和できる。

だが多くの若者は、都会で店員や配達員などの低賃金労働でしのぐ方を選ぶだろう。親のすねをかじって生活している人もいる。
2021年から広東省の田舎で党のボランティアとして働いているチェン・リンミンさんは、「ここは華やかな都市と違って退屈だ」と話した。

チェンさんは大学で美術を専攻していた。今は党の青年団とともに、都市と農村に400万人余りが住む肇慶の北にある、自身が滞在している田舎町を宣伝する動画を製作している。

党はチェンさんのような若者のデジタル分野の感性を積極的に活用しようとしている。えびやピーナツといった地元の特産品を売り込むネット通販サイトの立ち上げを指示された若者もいる。商品をブランド化して差別化することで都会の人にアピールし、地方の商品をもっと購入してもらい、相対的に貧しい地域に収入をもたらす狙いがある。

だが、大都市の人にアピールできるような特産品がない村も多い。
チェンさんは、米を他の地域にも売り込むためパッケージを刷新し、肇慶で自然栽培されたものであることを前面に出すデザインに変えた。今のところ、リブランドしたこの米を購入しているのは主に地元政府と村の住民だという。

チェンさんは、ボランティアを通じて経営方法を学んだことや、田舎ならではの体験ができることを好意的に受け止めている。だがそこにとどまるつもりはなく、年内にプログラムが終了したら都会に戻るつもりだ。

毛沢東のこだま
若者を田舎に送り込むという考えは、中国共産党の歴史に深く根ざしている。党は毛沢東の指導の下、1960年代から1970年代にかけて1600万人余りを農村に下放して労働に従事させた。

15歳だった習氏は、北京の恵まれた環境から北部の荒れ地の村に送られた。公式メディアによると、同氏は穴居で眠り、羊の世話をし、農業従事者と畑の手入れをした。

国家主席となった習氏は当時について、国家のために犠牲を払うことの大切さを教えてくれた、人生を変える経験だったと語っている。中国の農業競争力を高め、若者に雇用を創出するという現実的課題に加えて、若者はもっとたくましくあるべきとの同氏の信念も、農村での労働推奨を後押ししている。

中国国営メディアによると、習氏は「『苦難を自ら追い求めること』は、私が自分自身に要求する最も重要なことだ」と語ったことがある。

ただ、現代の政策は習氏が耐えたものとは根本的に異なっている。まず、強制ではなく政府は有志を募集している。
また、都会人は農村から学ぶ必要があるとされた文革期とは異なり、今の当局者は農村の現代化を支援するために大卒者が必要だとしている。

国営メディアは数人のボランティアを党の賛同者として紹介した。国の農業政策を宣伝するため、田畑まで足を運んでいる。リ・ユエヤンさんは今夏、新卒者に「農業に3年従事して、たくさん収穫できるようになった」と語ったという。

仕事がない多くの若者が国の運営に幻滅することを危惧する共産党にとって、若者に党のイデオロギーを植え付けるのはとりわけ重要だ。

新卒者は国家のニーズに沿ってキャリアを選ぶことが期待されている。たとえそれが地方の低賃金職だったとしてもだ。

大いなる復活
広東省は、25年末までに20万人の若者を地方に誘致する目標を掲げている。仕事を求めて都市部へ移った若者に、地方の故郷に戻って働くよう奨励するのもその一環だ。

あるプログラムでは、新卒者は地方に2~3年住むことになる。参加者は「ボランティア」と呼ばれるが、政治的忠誠心を審査され、月300ドル(約4万5000円)程度の手当てが支払われるほか、住居や食事の支援も受けられる。多くの参加者は地方公務員とともに働く。

期間を満了して公務員試験を受けると、点数にげたを履かせてもらえる。政府系企業に応募した場合も優遇措置を受けられる。(中略)

純粋に習氏の呼び掛けに触発されたという若者もいる。ただ、長期的にとどまることまで説得できるかは別の話だ。
農村の生活環境は大都市に比べて遅れている場合がある。広東省の農村で働く若い新卒の女性ボランティアが撮影した自身の住居の動画には、セメントの壁と格子窓のある貧相な部屋が映っていた。ベッドには虫よけ用の網が張られていた。

恩返しにも限界はある
広東省の北の農村出身というライ・チアンさん(29)は、大学院に進むための奨学金を得たことをきっかけに、国に恩返しをしたいと思うようになったという。(中略)

卒業を控えていた22年、地元の共産党青年団が広東省の農村で働くボランティアを募集していた。ライさんは申し込むことにした。「国や学校に育ててもらったので、恩返しがしたかった」。ライさんは役所でのインタビューでこう答えた。(中略)

こうした取り組みは党からも認められているが、ライさんはこの先も広東省の農村にとどまりたいか迷っている。
ガールフレンドは省都出身で、田舎暮らしには興味がない。それに、都会は田舎よりはるかに稼ぎがいい。「結局、自分も田舎を出た口だ」とライさん。「お金の問題も考えないといけない」【11月8日 WSJ】
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いかにも役人が習近平主席の意向を忖度してひねり出した制度のようにも見えます。
部屋で“寝そべって”いる若者が、そんな農村での厳しい生活に飛び込むのか、仮に飛び込んだとしてどれだけ満足するのか・・・そんな若者ボランティアが農村活性化にどれだけ役立つのか・・・疑問も多々。

【若者の安定志向で日本企業が人気】
もう少し現実的なところでは、就職事情。若者の安定志向で日本企業が人気だとか。

****“就職難”中国で日系企業が就職説明会 学生の「安定志向」強まる****
若者の就職難とされる中国で、日系企業の就職説明会が開かれました。経済を不安視してか、学生の「安定志向」が強まっています。

日系企業13社が集まった説明会には、中国の外国語大学に通う学生らおよそ500人が参加しました。

就活生:「就職が不安定になり始めたころに(大学院への)進学を決めた。大学院を卒業したらもっと不安定になっていた」「教育塾から内定をもらったけど他にはもらっていない。これからも就職活動を続けていきたい」

2021年から就職率の発表を取りやめた中国政府は、特定の組織に所属しない配達員やライブ配信者などを「柔軟な就業」という指標でカウントし始めました。

最新の発表では、労働人口9億人のうち「柔軟な就業」は2億人以上になっていて、近年では高学歴の若い世代の割合が増えているということです。

就活生:「大学のクラスメートは『柔軟な就業』をしてファッション関連をSNSで発信している。私の性格を考えると、決まった仕事をするほうがいい」「(就職活動は)とても大変。就職できても満足できる仕事かどうか分からない。『柔軟な就業』を選ぶ人もいるでしょう」

一方で、中国経済を不安視してか学生の「安定志向」が強まっているといいます。

パーソルケリー 樊蕾さん:「皆、安定を求めています。公務員や大学を卒業して修士・博士コースに進学する人がとても多いです。日本や欧米への留学から戻ってきた新卒の人たちもいて、競争がかなり激しい」

日系企業は、欧米企業などに比べて給料は相対的に低いものの、雇用が安定しているため就職先として人気だということです。【11月13日 テレ朝news】
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