孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  見せかけの「安定」 力で封じ込めれた戦争反対の声 膨大な戦費の一方で疲弊する社会

2023-11-18 23:21:23 | ロシア

(ロシアで9日、開演直前のライブ会場に治安部隊が突入した。その理由は、バンドのリーダーがプーチン政権を批判したためだった。【11月18日 FNNプライムオンライン】)

【戦争停止・和平を求める少なからぬ世論】
戦争遂行が大変なのはどこの国も同じ。どんな大義を掲げた戦争でも、国内では不満や厭戦感が高まります。
ウクライナでも。

****徴兵逃れ、2万人出国か 英報道、ウクライナから****
英BBC放送は17日、ロシアの侵攻を受けるウクライナで、約2万人の男性が徴兵を逃れるために国外に出国したと報じた。

一方で約2万1千人が出国に失敗しウクライナ当局に拘束されたとした。川を泳いで渡ったり、暗闇に紛れて徒歩で国境を越えたりして逃れているという。

米当局者は8月、ウクライナ軍の死者数は7万人に達するとの推計を示した。侵攻長期化で犠牲者が増え続ける中、兵員の確保が喫緊の課題になっているが、徴兵逃れや関連する汚職の問題が深刻化している。

BBCによると、ウクライナに隣接するポーランド、ルーマニア、ハンガリーなど5カ国の不法入国の記録から判明した。【11月17日 共同】
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7万人が犠牲になり、国土が戦場となっているのですから当然でしょう。

ウクライナについては取り上げる機会も多いので、今日は相手国ロシアの事情。

ウクライナと違って国土が戦場になっている訳ではありませんが、ウクライナのように国土防衛といった明確な戦争目的がなく、しかも“人海戦術”的な作戦で多大な死傷者を出していると思われます。

ロシアのウクライナ戦争での犠牲者数はよくわかりません。
“ウクライナ軍参謀本部は29日、ロシアの侵略開始以降、露軍の死者が27万7660人に上ったと発表した。”【9月30日 読売】
“NYTによると、ロシア軍の死傷者は30万人に近づいており、このうち死者は最大12万人、負傷者は17万─18万人に達しているもよう。”【8月19日 ロイター】

数だけでなく、ワグネルのような傭兵や受刑者などがどれくらい含まれているのかによっても社会的な影響は違ってきます。

****「価値観、文化守る戦い」 ロシア大統領、侵攻を正当化****
ロシアのプーチン大統領は3日、ウクライナで続けている軍事作戦により「われわれは自らの道徳的価値観や歴史、文化を守っている」と述べ、国の独立を懸けた歴史的な戦いと位置付けて侵攻を正当化した。4日の祝日「国民統一の日」を前に、モスクワで開かれた国の諮問機関「社会評議会」メンバーとの会合で語った。

プーチン氏は、2014年にウクライナの親ロ派政権が暴徒化した野党側デモで倒されなければ、ロシアによるクリミア半島併合も「なかっただろう」と指摘。その後に起きたウクライナ東部のロシア系住民とウクライナ政府軍の交戦を念頭に、昨年2月の侵攻開始以前にロシアは「攻撃されていた」と主張した。【11月4日 共同】
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「価値観、文化守る戦い」・・・・それで10万、20万人といった犠牲者が出ていることに国民は納得するのでしょうか。

世論調査によれば、(ロシアのような自由が制約される社会でどこまで本音を引き出す調査が可能なのかは知りませんが)戦争停止を求める声が少なからずあるようです。

****ウクライナ戦争の停止、露国民7割が支持 露世論調査*****
「仮にプーチン大統領がウクライナとの戦争停止を決めた場合、その決定を支持するか」とロシア国民に尋ねたところ、70%が「決定を支持する」と回答したことが、露独立系機関「レバダ・センター」の10月の世論調査で分かった。

プーチン政権は従来、「国民の大多数がウクライナでの軍事作戦を支持している」と主張してきたが、今回の調査結果は露国民内での厭戦(えんせん)機運の高まりを示唆した。

レバダ・センターは10月19〜25日、18歳以上の露国民約1600人を対象に世論調査を実施。結果を31日に公表した。

それによると、冒頭の質問に対し、37%が「完全に支持する」と回答。「おおむね支持する」とした33%を合わせると計70%が戦争停止を支持した。一方、「あまり支持しない」は9%、「全く支持しない」は12%で、9%は「回答困難」とした。

レバダ・センターは同時に「仮にプーチン大統領がウクライナとの戦争停止と、併合したウクライナ領土の返還を決めた場合、その決定を支持するか」との質問でも世論調査を実施。

この質問形式の場合、「完全に支持する」「おおむね支持する」とした回答者の割合は計34%まで低下した。反対に「あまり支持しない」「全く支持しない」との回答は計57%に上った。残りは「回答困難」だった。

半数超の露国民が領土の返還を条件とした戦争の停止は支持できないと考えていることが明らかになった形だ。【11月2日 産経】
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****ロシア人のほぼ半分が和平交渉を望む 世論調査****
ロシア人のほぼ半数がウクライナとの和平交渉を求めていることが世論調査で分かりました。戦争継続を支持する人を始めて上回りました。

世論調査はロシアの独立系調査会社「ロシアンフィールド」が10月21日から29日にかけて電話で行われ、1611人が回答しました。

ほぼ半数の48%のロシア人がウクライナと和平交渉の必要があると回答しました。女性や45歳未満の人がより強く和平交渉を支持していることも分かりました。

一方、39%が和平交渉に反対し、「特別軍事作戦」の継続を支持しているということですが、和平交渉を求める人が戦争継続を支持する人を始めて上回りました。

依然として65%のロシア人はロシアが正しい方向に進んでいると考えていますが、前回6月の調査に比べて8%減少しているということです。 また、21%の人は事態がうまく進行していないと考えています。【11月15日 テレ朝news】
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【戦争反対の声を力で封じ込める政権】
戦争停止、和平を求める声は少なからずあるようですが、昨年、動員を発表したひと頃のように反戦の抗議デモなどは最近は聞きません。それは反戦の声が消えた訳ではなく、政権が力で封じ込めた結果でしょう。

****ロシア兵帰還求める集会禁止 妻ら計画、反戦機運警戒****
ウクライナ侵攻によりロシア軍に動員された兵士の妻らが帰還を求めて25日に計画していた集会について、モスクワ当局は新型コロナウイルス対策を理由に許可しなかった。ロシア独立系メディア「メドゥーザ」などが17日伝えた。

コロナ対策は既に形骸化しており、実際には反戦機運の高まりを警戒したとみられる。他の都市でも同様の集会が禁じられた。

動員兵の妻らはボリショイ劇場などがあるモスクワ中心部の劇場広場で集会を計画し、最大300人の参加を見込んでいた。当局は2020年に導入されたコロナ対策の集会制限を根拠として禁止し、無許可で開催すれば責任を問うと警告した。【11月8日 共同】
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****ロシア スーパー「値札」でウクライナ侵攻批判した芸術家に懲役7年 強まる言論統制****
ロシアでスーパーマーケットの値札をウクライナ侵攻を批判するメッセージに替えたとして、芸術家の女性に懲役7年の判決が言い渡されました。

サンクトペテルブルクの裁判所は16日、芸術家のアレクサンドラ・スコチレンコさんに対し、ロシア軍に関する虚偽の情報を広めたとして懲役7年の判決を言い渡しました。

スコチレンコさんは去年4月、スーパーマーケットの商品の値札をウクライナ侵攻を批判するメッセージに替えたとして拘束されていました。

メッセージには「ロシア軍はマリウポリで400人が避難していた芸術学校を爆撃した」などと記されていたということです。

スコチレンコさんは法廷で「私の事件について特別軍事作戦の支持者でさえ、服役が必要だとは考えていない」と批判。

判決が言い渡されると戦争支持者らから「恥を知れ」などと声が上がったということです。

ロシアでは、ウクライナ侵攻後、言論統制の動きが強まっていて、反戦を訴えた人などの拘束や有罪判決が相次いでいます。【11月18日 TBS NEWS DIG】
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****「ロシアは有害で虐待的」プーチン政権批判したバンドのライブ会場に“治安部隊”突入 女性ファンと乱闘騒ぎも ロシア****
ロシアで9日、開演直前のライブ会場に治安部隊が突入した。その理由は、バンドのリーダーがプーチン政権を批判したためだった。現地のメディアは、「ロシアは有害で虐待的」などと発言していたと伝えている。

ライブ直前に治安部隊が突入
ライブ会場で、床に大勢の観客が寝そべっている。 画面奥のステージにアーティストの姿はなく、会場の真ん中には治安部隊がいた。

9日、ロシアで開演直前のライブ会場に治安部隊が突入した。 なかには抵抗するファンの姿もあった。

治安部隊が「おとなしくしろ!こっちは銃を持っているんだぞ!」と言うと、ファンは「離して!」と抵抗する。さらに、治安部隊が「動くな!」と命令すると、ファンは「ちくしょう!ちくしょう!」と悔しがった。

ライブは中止になった。 その後、バンドのメンバーは「このような事態に巻き込まれた全てのファンに、心から謝罪します」と動画を投稿した。

リーダーがプーチン政権を批判
ライブと治安部隊…似つかわしくないが、突入した理由は何だったのだろうか。 それは、バンドのリーダーがプーチン政権を批判したためだ。 現地のメディアは、バンドのリーダーが「ロシアは有害で虐待的」などと発言していたと伝えている。

そんななか、プーチン大統領に新たな動きがあった。 ロシアのメディアによると、毎年恒例の記者会見と国民との対話イベントを復活させるというのだ。

ウクライナへの侵攻を始めた2022年は、厳しい質問を避けたのか、見送りになった。 2024年春に大統領選が控えるなか、プーチン氏は余裕なのだろうか。 (「イット!」 11月10日放送より)【11月18日 FNNプライムオンライン】
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【疲弊するロシア社会】
対話イベント復活など、プーチン大統領の「すべてが侵攻以前と変わりない」というアピールにもかかわらず、ロシア社会には「戦争なんかしているよりは・・・」といった疲弊も色濃く見られます。

****ロシア 地方都市の困窮と住民の本音−国民対話再開はプーチン大統領安泰の証なのか?****
プーチン大統領は今年12月、国民からの要望を直接受け付けるホットラインと地方からの記者も集めた大規模紙記者会見を同時に実施する見通しだ。

関係者によると、去年は不満が高まる世論に正面から対峙することが難しく実施を見送った。今年、恒例行事を復活させるのは、すべてが侵攻以前と変わりないという国民に対するアピールだとみられている。

プーチン大統領は国内経済も順調だと繰り返し主張しているが、本当だろうか?ロシアの地方を取材すると、大都市ではわからない、国民が疲弊している状況が如実に見えてきた。

■足を踏み入れた途端に悪臭が…黒い煙の街
ロシア北西部、フィンランドと国境を接するカレリア共和国。

首都ペトロザボーツクから北へ3時間ほど車を走らせ、幹線道路をそれてセゲジャの街に入った瞬間、異様な光景が目に飛び込んでくる。

工場の煙突から真っ黒い煙がもくもくとあがっているのだ。街の産業を支えている製紙工場だという。
車の窓を開けると、ひどいにおいが車内に入り込み、思わずえずきそうになる。街をしばらく歩くとどうにか鼻は慣れてくるが、それでも違和感は消えない。(中略)

■「水道水はコニャックのよう」 自宅は1930年代築の木造
診療所に勤務するターニャさん(44)は3人の子供を育てている。自宅はこの地方の特徴でもある木造の歴史的な建物で1938年にドイツ人によって建てられたものだという。(中略)

しかし、この家は2018年に危険だと宣言された。別の部屋の住民は床が抜けて、別の場所に引っ越したが、居住登録を変えることができず2重に家賃を支払い続けているという。

ターニャさんは1カ月2万7000ルーブル(約4万5000円)の給与と子供手当てで暮らしていて、引っ越しをする資金的な余裕はない。水光熱費だけでも1万5000ルーブル(約2万5000円)に上る。

特に困っているのが水回りだという。
「ほら見てください」 ターニャさんはキッチンに続く風呂場の蛇口をひねる。たまりだした水はうっすらと茶色い。 「もう少したまれば、コーヒーのようになります。茶色です。時間帯によっても違いますが、コニャックといったほうが良いかしら」

別の60代の年金暮らしの女性も水道水に悩まされている。水質が茶色い理由を教えてくれた。 「私たちの水は工業用水であり、すべて汚れています。家は崩壊しつつあります」

この自宅も1936年に建てられて以来、修繕されていないという。 2019年に安全ではないと宣言されたが、移転の目途は2030年で「それまで生きているのかしら」と女性はつぶやく。

■「生き延びているだけ…」崩壊間際の部屋に住む女性
ガリーナさんがわずかな年金で暮らす木造アパートは、入り口の玄関と階段が崩れ落ち、部屋の壁も崩壊し始めている。

木造にもかかわらず1938年に建てられて以来、一度も修繕されたことがないそうだ。国からは今すぐに退去が必要な住宅に指定されている。しかし何の支援もないため、ガリーナさんには住み続ける以外の選択肢は残されていない。

水道や光熱費などを差し引いて手元に残る数千円ほどで、どうにか日々暮らしている。趣味や楽しみに使うお金がガリーナさんの手元に残ることはない。

「生き延びているだけ」だというガリーナさんの言葉を私は否定できなかった。
ロシアでは、ガリーナさんと同じように崩壊しかけている家に住み、政府が住み替えの対象としている人は少なくとも150万人にのぼる。

ガリーナさんのようにギリギリの生活を続けている人が多く、政府の補償がなければ転居先の家賃も払えず、建物を自力で修繕することもできないため、住み続けるしかない。

住宅問題は大きな社会問題となっていて、常に行政の最優先課題の一つだとされるが、具体的な進展はほとんど見られない。(中略)

■国民ではなく戦争に費やされる税金
ガリーナさんに「特別軍事作戦(=ロシアによるウクライナ侵攻)」について尋ねても「反対」だとは答えない。
ガリーナさんは特別軍事作戦で親しい友人を2人亡くし、さらに2人が今も戦っているという。だから「特別軍事作戦」に多額の資金が投じられていることについては「惜しいとは思わない」と言う。それでも、疑問を呈さざるを得ない。

「ドネツクに資金が投じられています。そこが大変な状況だということはわかっています。しかし私たちには割り当てられませんし、年金だって増えません。何らかの見直しが必要かもしれません」

ドイツの国際安全保障問題研究所の試算によれば、ウクライナへの侵攻には1日300億ルーブルが費やされている。2024年の予算では10兆8000億ルーブルが「国防」費に充てられる見通しだ。

一方で、ロシア全土の住宅問題の解決に必要な資金は1・3兆ルーブルから3兆ルーブルだとされている。住宅問題の解決に必要な額の3倍以上が、ウクライナへの侵攻に費やされることになる。

■プーチン大統領の直接対話再開は「安定」の証か?
(中略)今はロシア国内で反戦の声もほとんど聞こえず、一見ロシア社会が「安定」を取り戻したかのようにみえる。しかし、ロシア人が反戦を唱えなくなったのは、厳しい弾圧によるものだろう。 言論に対する取り締まりは、ますますエスカレートしている。(中略)

■消去されていない「戦争反対」の落書き
カレリア共和国で旅行業を営む50代の男性は「戦争には反対だ」と打ち明ける。 彼は80年代に旧ソ連のアフガニスタン侵攻に参加し、当時ウクライナ人とも戦友として戦ったという。

「なぜ、かつての仲間を敵にすることができるのですか? 反対です。もちろん反対です。」 男性は、溜まっていたものを吐き出すかのように繰り返した。

セゲジャの街の中心近く、キーロフ通りのバス停には、黒いスプレーで大きくこう記されていた。 「戦 争 反 対」

モスクワなどでは真っ先に消されているだろう。 しかし言論統制の手も回らないのか、それとも見逃されているのか。 このスプレーの黒い文字は長い間、消されずに残されている。【11月18日 テレ朝news】
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