孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  ロシア・プーチン大統領訪中で“蜜月”演出も、したたかにロシアの足元を見て利益確保を狙う

2024-05-17 23:42:39 | 国際情勢

(【5月16日 FNNプライムオンライン】プーチン大統領の到着を笑顔で迎える習近平国家主席)

【“蜜月”を演出す中ロ首脳 思惑の違い・温度差も】
周知のようにロシアのプーチン大統領が16日訪中し、習近平国家主席との首脳会談を行いました。
中ロ両国首脳はその蜜月ぶりをアピールしています。

“「ここ数年、私とプーチン氏は40回余り会談し、密接な意思疎通を保ってきた」(習近平氏)” “ウクライナ侵略開始後、プーチン氏の外遊機会は限定的となっているが、訪中は続けている。プーチン氏は会談について「温かく、友好的」なものだったと共同記者発表で評価した。”【5月16日 産経】

ただ、多くが指摘しているように、とにかくウクライナでの戦争を中国の支援で勝利したいロシア、アメリカとの対立も視野に入れながら、そこでの優位なポジションを得ようとする中国、両国間で思惑の違い・温度差もあります。

****中国とロシア“蜜月”見せつけも……両首脳に「温度差」 プーチン氏、侵攻長期化で「経済力の強化」狙い 習主席は米揺さぶりか****
ロシアのプーチン大統領が16日訪中し、習近平国家主席との首脳会談に臨みました。5期目の大統領となって初の外遊先に中国を選んだプーチン氏と、電気自動車などをめぐってアメリカとの摩擦を抱える習主席。それぞれ、どんな狙いがあったのでしょうか?

■侵攻、経済…協力について意見交換か
(中略)
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「16日の首脳会談では、ウクライナ侵攻や経済など、幅広い分野での協力について意見が交わされたとみられます。今回、とにかく2人は蜜月ぶりをアピールしたい、アメリカ一強の今の世界を変えたいという狙いでは一致しています」

■首脳会談にかける熱意には温度差も
日テレNEWS NNN藤井キャスター
「2人の表情を見ていると仲は良さそうですし、一枚岩のようにも見えましたが、どうでしょうか?」

小栗委員長
「会談にかける熱意という意味では温度差もあります。プーチン大統領の方が思いが強いようです。プーチン大統領の頭の中にあるのは、ウクライナ侵攻の長期化です」

「ロシアに詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は『プーチン大統領は、侵攻が年単位で長引くのではないかとみているのでは。それだけに経済力の強化を急いでいて、今回訪中を決めたのではないか』と指摘しています」

「5月に入ってロシア軍の攻勢はますます強まっていますが、今ロシア国内ではセンサーやレーダーといった軍事転用できる製品の生産は難しく、ここで頼りになるのが中国。廣瀬教授によると、こうした軍事転用品の中国への依存率は既に 90%ほどになっています」

■アメリカと対立…中国側の狙い
日テレNEWS NNN藤井キャスター
「そうなると、ややプーチン大統領は前のめりになるのかなと思います。習主席はどう考えているのでしょうか?」

小栗委員長
「習主席の方が冷めている部分もあるようです。NNN 中国総局の柳沢総局長によると、中国としては国際的な批判にさらされているプーチン大統領と一緒にされたくはない」

「ただ、プーチン大統領が圧倒的な勝利を大統領選で収めて新たな任期が始まった今であれば大歓迎で受け入れてもいいかな、というくらいの心境だといいます」

「さらに中国としては、プーチン大統領との仲の良さをアメリカに見せつけてけん制したい思いもあったようです。バイデン大統領は電気自動車など中国からの輸入品がアメリカの市場を脅かしているとして、関税を4倍に引き上げるなどの決定をしました」

「中国としては、ただでさえ国内経済が低迷する中、大ダメージです。そういうことをするなら本当にロシアと仲良くしますよ、それでいいんですか? と、アメリカを揺さぶっているという形です」(後略)【日テレNEWS】
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中国・習近平主席としては、ロシアが負けてアメリカが再び勢いづくような事態は困りますので、ロシア勝利に向けた支援はやぶさかではないでしょう。ただし、ロシア・プーチン大統領と一体視されて国際批判の矢面に立つのは得策ではありません。

****プーチン氏、中露共闘で対ウクライナ「戦勝」狙う 中国は「戦後」の影響力確保か****
(中略)一方、ロシアの軍事産業を支えていると欧米に批判される中国は米国への対抗上、ロシアと対立するフランスなど欧州主要国との関係強化も重視するため、ウクライナ侵略に一定の距離を演出。習氏は5月上旬の欧州歴訪で「中国は危機を作り出した者ではなく、当事者でも参加者でもない」と強調した。

ただ、実際には米国と対立する中で、ロシアとの共闘は不可欠。北京の外交筋は「ウクライナでロシアが負け、プーチン政権が崩壊することは中国にとって絶対に避けたい事態。そのためにも密接な経済・貿易関係を続けてロシアを支えてきた」と指摘する。

中国側は、露軍が有利な状況でウクライナ戦争が終わる可能性を計算に入れているとみられる。その際、米欧・ウクライナとロシアとの間の橋渡し役として影響力を高めることを狙っているとの見方もある。【5月16日 産経】
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【軍事利用できる物資・機器をロシアに輸出する中国 しかし、“高値”で利益確保】
中立を装う中国はさすがにロシアへの兵器供与は行っていませんが、アメリカは中国がドローンなど軍事用にも使える機器をロシアに輸出していると指摘し、侵攻を続けるロシアを結果的に支援していると批判しています。

****「中国がドローン輸出などでウクライナ侵攻を支援」批判に中国反論****
中国がロシアに軍事転用可能な物資を輸出しているとアメリカなどが批判していることについて、中国政府は「輸出は厳格に管理している」と改めて反論しました。

北京で16日に行われた中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の会談では、ウクライナ侵攻をめぐって「政治的解決が正しい方向」との考えで一致。一方、アメリカなどは中国がロシアに対してドローンなど軍事用にも使える機器を輸出していると指摘し、侵攻を続けるロシアを結果的に支援していると批判しています。

これについて、中国外務省の報道官は。

中国外務省 汪文斌報道官  「中国は軍用品の輸出において常に慎重かつ責任のある態度を持ち、民間用ドローンを含む軍民両用品の輸出を厳格に管理している」

首脳会談が行われた当日の会見で改めて反論し、「アメリカがウクライナに前例のない規模で軍事支援を行いながら、中国とロシアの正常な貿易を根拠なく非難したことは無責任だ」と強く批判しました。【5月16日 TBS NEWS DIG】
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「厳格に管理している」と言われても・・・・あまり反証にもなっていないような。
ウクライナに大規模軍事支援しているアメリカにとやかく言われる筋合いはないというのは、中立スタンスの中国からすれば、もっともな言い分でしょう。

実際のところは、軍事目的に使う物資を中国がロシアに大量輸出している現実があります。

****中国からロシアへの「ニトロセルロース」輸出 ウクライナ侵攻以降急増****
弾薬の材料としても使われる物質「ニトロセルロース」について、ロシアによるウクライナ侵攻以降、中国からロシアへの輸出が急増していることが分かりました。

ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、西側諸国は中国からロシアへの軍事転用可能な物資の輸出に警戒を強めていて、その1つとして「ニトロセルロース」が指摘されています。

「ニトロセルロース」は塗料などに使われる一方、着火すると激しく燃焼するため、弾薬の材料としても使われます。

中国の税関当局が公表しているデータによりますと、「ニトロセルロース」のロシアへの輸出は、2021年までほとんどありませんでした。

しかし、ロシアがウクライナ侵攻を開始したおととしになって、年間700トンあまりに増加、去年はその2倍近い年間1300トン余りに急増しています。

「ニトロセルロース」をめぐっては、アメリカのブリンケン国務長官が先月、中国を訪れた際、中国側に懸念を示しています。

これについて、中国外務省の汪文斌報道官は16日の記者会見で「輸出を厳格に管理している。中国とロシアの正常な貿易を根拠なく非難するのは無責任だ」と反論しています。【5月17日 TBS NEWS DIG】
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興味深いのは、その価格です。 友好国への支援ということであれば、無償とか格安が想像されますが、実際は他国への輸出より高値でロシアに輸出しているということで、ロシアの“足元を見る”形でしっかり利益を確保しています。

****中国 ウクライナ侵攻後 ロシアへ軍事転用可能物資の輸出急増****
(中略)
今回のNHKの分析では、中国が欧米向けにニトロセルロースを輸出する際、1キロ当たりの価格がおおむね2ドル台から3ドル台であるのに対し、ロシア向けへの輸出では4ドル台と、高くなっていることも分かりました。

これについて、山本氏は「欧米から厳しい経済制裁を受けているロシアに言い値で売って、利益を取っている。これは、単純な軍事支援ではない。ロシアの弱い部分につけ込んでいる。これからは中国が主で、ロシアが従だという中国の立場をロシアに知らしめようとしているともみることができる」と述べました。

さらに、中国が欧米にもニトロセルロースを輸出していることについて「中国からアメリカやヨーロッパに対する輸出が制限されることになれば、欧米の弾薬の製造に影響が及ぶかもしれない。そうなれば、今ですら欧米からウクライナへの弾薬支援が限定的である中、より一層制約されるのではという危惧を持ってしかるべきだ」と述べ、中国側の対応によっては、欧米のウクライナ支援に影響を与える可能性もあるという認識を示しました。【5月16日 NHK】
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【ロシアが求める天然ガスパイプライン建設 弱い立場のロシアを買いたたくために交渉を先延ばしする中国】
中国のしたたかさは、天然ガスでも。
ロシアが中国に求めているのは戦争のための軍事利用出来る物資の他に、西側の制裁を受けるロシア経済を長期にわたり安定させるロシアから中国への天然ガス輸出(パイプライン建設)です。

しかし買い急ぐ必要はない中国は、欧州への販路を失い弱い立場のロシアから徹底した値下げを勝ち取る戦術です。

****中国優位か ロシアは「依存」に弱み 新ガスパイプライン交渉難航****
ロシアと中国を結ぶ新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設を巡り、交渉が難航している。

今月下旬にウクライナ侵攻開始から2年を迎えるのを前に、ロシアは欧州へのガス輸出市場を失いつつある。ロシアは代わりの輸出先として中国への輸出を増強したい意向だが、中国はロシアの足元をみて、好条件での契約を求めているとみられる。

建設が検討されてきた「シベリアの力2」
「シベリアの力2」はロシア北部ヤマル半島のガス田で生産した天然ガスを、モンゴル経由で中国に輸送する全長約3550キロのパイプライン計画。建設費は10兆円規模に達し、年間約500億立方メートルの輸送力が見込まれている。建設の議論は2014年以降に始まった。

ロシアのノバク副首相は1月25日発行の政府系エネルギー専門誌で「パイプラインの建設時期や技術、予算面は、中国側との契約締結後に決まる」と述べ、建設計画の詳細が未定であることを認めた。

また「シベリアの力2」が経由する予定のモンゴルのオユーンエルデネ首相も1月28日の英紙フィナンシャル・タイムズで、「(両国は)経済効果の調査に、さらに時間を要するだろう」と発言。交渉が難航している状況を示唆した。

欧州連合(EU)によると、ロシアはウクライナ侵攻前、年間1550億立方メートルの天然ガスを主にパイプラインで欧州に供給し、欧州全般で輸入される天然ガスの約4割を占めていた。

だが侵攻後、EUはロシアへの依存を低減させるため、天然ガスの輸入元の多角化を進めた。ノルウェー産のパイプラインによる輸入拡大や、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入増などに伴い、ロシア産の輸入は現在、年間約400億~450億立方メートルに減少している。

侵攻後の輸出減少、補いきれず
これに対し、ロシアも輸出先の多角化を試みるが、欧州への供給減を補えていないのが現状だ。中国との間では19年、「シベリアの力」(輸送容量年間380億立方メートル)を稼働させており、「シベリアの力2」を新たに加えることで、輸出量の挽回を図る。

中国によるロシア産天然ガスの輸入は、「シベリアの力」と北極圏からのLNG輸入などで、30年には輸入量全体の2割に達する見通し。「シベリアの力2」の供給が加わると、天然ガス輸入量の約4割をロシア産が占めることになる。

中露間では別のパイプライン建設が既に始まっている。中露両首脳は23年2月、ロシア国内の既存のパイプラインを利用した「極東線」ルートも建設することで合意。26年から年間最大100億立方メートル分のガス供給を開始する予定で、国営新華社通信によると、24年1月に中国国内の建設が始まった。

過度のロシアへの傾斜を警戒か
ただ、中国の習近平指導部は、エネルギー分野でも安全保障を強化する方針を示しており、ロシアに過度に依存することへの警戒感もあるとみられる。極東線とは対照的に「シベリアの力2」の交渉に関する報道はほとんどない。

習近平国家主席とプーチン露大統領は23年に互いに相手国を訪れて会談を重ねたが、これまで「シベリアの力2」の建設を巡り、目立った進展は見られていない。

「シベリアの力」を巡っても、中露のガス価格交渉は07年以降、難航した前例がある。ようやく建設合意に達したのは14年5月。ロシアがウクライナ南部クリミアの強制併合で欧米諸国から制裁を科せられた直後だ。ロシアは孤立を深めたことから、値下げに応じたとみられる。

現在、中国は国内生産と既存のロシアとの輸入契約、米国産LNGの輸入などで、30年までに必要とされる天然ガス供給量の大半を確保できる見通しだ。そのため専門家の間では、中国側が、「シベリアの力2」でも優位に交渉を進めるとの見方が強い。

ロシアとアジアの貿易に詳しい英国の政治危機コンサルティング会社「エンメテナ・アドバイザリー」の設立者、マクシミリアン・ヘス氏は「中国は天然ガスの輸入元の多様化を進めており、現状ではロシアの交渉力は弱い。ロシアはどこかの時点で妥協を迫られることになり、中国はそのタイミングを待っている」と分析する。【2月7日 毎日】
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今回のプーチン・習近平会談でも中国からの色よい返事はなかったようです。

*****ロシア 中国とのガスパイプライン建設計画で合意得られず****
ロシア産の天然ガスを中国側に送る新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設計画は中国の同意を得られず、延期されたままとなっています。

プーチン大統領は習近平国家主席に対して去年から「シベリアの力2」の建設計画への同意を求めています。

ロシアメディアによりますと、今回のプーチン大統領の訪中で公表された協定文書の中に「シベリアの力2」の建設に関する内容はありませんでした。

「シベリアの力2」の事業主体となるロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」のトップ、ミレル氏はプーチン氏に同行しなかったということです。

関係者によりますと、プーチン大統領は去年から首脳会談のたびに習近平国家主席に対して建設計画への同意を求めていますが、中国側の対応が厳しく、交渉は難航しています。

ウクライナ侵攻によってヨーロッパとの取引が激減したガスプロムは2023年12月期決算で24年ぶりの赤字に転落し、中国との新たな契約は必須だと指摘されています。

年末にはウクライナを通過するヨーロッパ向けのパイプラインの契約も満期を迎えます。

ウクライナのエネルギー省は「契約は更新しない」との立場を表明していて、ガスプロムの経営は厳しい状況に追い込まれています。【5月17日 テレ朝news】
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ロシアとしては中国に頼らざるを得ないものの、足元を見る中国からしたたかに買いたたかれる・・・・こうした力関係の変化の一点をみるだけでも、プーチン大統領のウクライナ侵攻はその勝敗にかかわらず「失敗」だったと言えます。
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