(抱擁するプーチン大統領とモディ首相【7月10日 中央日報】 モディ首相にとっては、ややタイミング悪い“抱擁”ともなりました)
【モディ首相 7月にロシア訪問 プーチン大統領との抱擁に批判も】
インドは対中国ではクアッドの一員として日米と協力する関係にありますが、ウクライナ侵攻を巡ってはロシアを非難することを控えた中立的立場をとり、対話と外交を通じた紛争終結を求めています。
背景には、インドにとってロシアは従来から兵器の主要な供給国であるなどこれまでの両国の緊密な関係、また、ウクライナ侵攻後に西側先進国が買わなくなり、割安になったロシア産石油をインドが爆買いし始めたことなどがあります。
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図1(省略)に見るロシアとインドの二国間貿易は、ずいぶんといびつな姿になっている。21年までは平凡に推移していた貿易額が、22年になって急増し、しかもインド側の輸入だけが突出して伸びている。
その原因は、ロシアが22年2月にウクライナへの全面軍事侵攻を開始して以降、先進国がロシア産石油を買わなくなり、割安になったその石油をインドが爆買いし始めたことに尽きる。ちなみに、23年には、インドの対露輸入の81%が原油・石油製品によって占められた。
石油輸出の急増の結果、23年の時点でインドにとりロシアが第2位の輸入相手国に躍り出た。だが、インドの輸出相手国としてロシアは取るに足らない存在であり、23年の時点でシェア0.9%、順位30位にすぎない。【7月26日 WEDGE】
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更にインド外交について言えば、従来からの西側と一線を画した非同盟主義が基本路線であり、今日的な意味合いで言えば、欧米にもロシアにも依存しない、いわゆるグローバルサウスのリーダーとしての立場を目指していることもあります。
そのインド・モディ首相は7月8日ロシアを訪問し、プーチン大統領と会談を行っています。
****インド首相、5年ぶり訪ロ プーチン大統領公邸で非公式会談*****
ロシアのプーチン大統領は8日、モスクワ郊外の公邸でインドのモディ首相を迎え、非公式に会談した。9日に大統領府(クレムリン)で公式会談に臨む。モディ氏のロシア訪問は5年ぶり。
国営タス通信によると、プーチン氏はモディ氏を抱擁して迎え、「親愛なる友人」と呼んであいさつを交わし、会えて「とても嬉しい」と語った。
また「公式会談は明日だが、きょうはこの快適で心地良い環境で、同じ問題について非公式に話し合うことができる」と述べた。 プーチン氏はモディ氏にお茶などを振る舞い、邸内を案内した。
米国務省はロシアがウクライナ侵攻を続ける中でのモディ氏の訪ロと印ロ関係は懸念を抱かせると述べた。
ロシアと長年緊密な関係を維持してきたインドはウクライナ侵攻を巡りロシアを非難することを控え、対話と外交を通じた紛争終結を求めている。
インド政府高官が先週明らかにしたところによると、モディ氏は今回の訪ロで両国の貿易不均衡是正や、だまされるなどしてウクライナ戦争に加わったインド国民の帰国などを働きかける見通し。【7月9日 ロイター】
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ただ、モディ首相が訪露した7月8日にロシアがウクライナに対し大規模なミサイル攻撃を行い、子供など民間人犠牲者が多数でたことで、プーチン大統領との抱擁はモディ首相にとっては居心地の悪い面もありました。
****首都キーウなどにミサイル攻撃 今年最大規模か 小児病院も被害****
ロシア軍がウクライナの首都キーウなどへ大規模なミサイル攻撃を開始しました。ウクライナ最大規模の小児病院でも被害が確認されています。
地元メディアなどによりますと、ロシア軍は8日午前、ウクライナの複数の都市に向けて大規模なミサイル攻撃を開始しました。
今年最大規模の攻撃とみられ、キーウ市内の少なくとも3カ所で爆発があり、煙が上がっています。 ウクライナで最大規模の小児病院でも被害が確認されています。
極超音速ミサイル「キンジャール」などが使用されたとみられます。 オデーサやドニエプルの各都市でも被害が報告されています。【7月8日 テレ朝news】
地元メディアなどによりますと、ロシア軍は8日午前、ウクライナの複数の都市に向けて大規模なミサイル攻撃を開始しました。
今年最大規模の攻撃とみられ、キーウ市内の少なくとも3カ所で爆発があり、煙が上がっています。 ウクライナで最大規模の小児病院でも被害が確認されています。
極超音速ミサイル「キンジャール」などが使用されたとみられます。 オデーサやドニエプルの各都市でも被害が報告されています。【7月8日 テレ朝news】
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【微妙なインドの中立外交】
さすがにモディ首相もこの攻撃を踏まえて、「心が痛む」とプーチン氏を公然と非難しています。
****インド首相の訪ロ、注目される微妙なバランス外交****
プーチン氏と抱擁の一方で小児病院攻撃は非難
ロシアがキーウ(キエフ)の小児病院などウクライナ各地にミサイル攻撃を行った数時間後、インドのナレンドラ・モディ首相はモスクワでロシアのウラジーミル・プーチン大統領とハグをする自身の写真をソーシャルメディアに投稿した。その後、ロシア大統領府は、両首脳が大統領公邸のよく手入れされた芝生の間をゴルフカートで走る写真を公開した。
モディ氏は次の日、非公式会談に先立ちテレビ放映された発言の中で、「罪のない子供たちが殺され、罪のない子供たちが死んでいくのを見るのは、心が痛む」と述べ、今回のウクライナ攻撃を巡りプーチン氏を公然と非難した。
モディ氏は「解決策は戦場では見つからない」と続け、戦争終結に向けて対話を求めた。同氏は「解決と和平交渉は、爆弾や銃弾が飛び交う中では成功しない」と述べた。
5年ぶりとなったモディ氏の訪ロは、ウクライナでの戦争に対して完全に中立とは言えない、インドの微妙な姿勢を示す最新の事例だ。
モディ氏は、先月イタリアで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の際、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談したが、今回のモスクワ入りは、ウクライナへの軍事支援が焦点となる北大西洋条約機構(NATO)の会合を米政府が主催するのと同じタイミングだった。
ゼレンスキー大統領は9日、ソーシャルメディア・プラットフォームのXに「このような日に世界最大の民主主義国家の指導者が世界で最も血塗られたモスクワの犯罪者とハグしたことは大きな失望であり、平和への取り組みに対する破壊的な打撃だ」と投稿した。(中略)
モディ首相は公の場で、戦争が不安定をもたらすとして、それを終わらせるための外交的解決を呼び掛けているが、ロシアによる侵攻を公然と批判したことはない。
インドはまた、何百億ドル相当ものロシア産原油を輸入しており、その輸入量は中国に次いで2番目の多さだ。西側諸国の一部はそれについて、ロシアが戦争資金を調達する支援になっていると指摘する。
また、欧州連合(EU)の議長国を現在務めるハンガリーのビクトル・オルバン首相がモスクワを訪問した直後にモディ氏が同地を訪れたため、ロシアが事実上孤立していると主張することも困難な状況になった。ロシアを孤立させることは、西側諸国の主な狙いの一つだ。
西側諸国、とりわけ米国との距離を縮めながら、同時にロシアとの関係も緊密に保つという姿勢は、「戦略的自律」という、時に不可解なインドの外交原則の一つだ。
インドの外交政策見通しは、「多極的」な世界で国益を追求することを前提としており、プーチン氏や中国の習近平国家主席が米国中心の世界秩序を批判する際に頻繁に発する言葉と似たものに見える場合がある。
しかし、インドの政治専門家は、インドが言う「多極性」と中国が言う「多極性」は意味が異なると述べる。
ニューデリーを拠点とするシンクタンク、インド政策研究センター(CPR)の戦略問題専門家ブラーマ・チェラニー氏は「ロシアと中国も、多極的世界を求めているが、それは米国の主導的地位を排除するものだ。米国の世界的優位に終止符を打つことをインドは目指していない」と語った。
例えば、既存の多国間の枠組みに対抗する狙いから2001年にロシアと中国によって創設された上海協力機構(SCO)に、インドは正式加盟したものの、同国はしばしば中国と対立している。そしてモディ首相が今年のSCO首脳会議を欠席したことは、注目を集めた。
全米アジア研究所(NBR)の上級研究員ベーツ・ジル氏によれば、インドのSCOへの関心が薄れている背景には、ロシアと西側諸国との間でバランスを取ろうとしているインド政府が、SCOの方向性に違和感を抱いていることがある。
その一方でインドは、今も同国への軍事物資の主要な供給国であり続けているロシアとの関係強化が、中国に対抗する上で必要不可欠だと考えている。中国への対抗は、インドと米国に共通する目標だ。インドと中国は、2020年にヒマラヤの国境地帯で死者を出す武力衝突を起こしており、それ以来インドにとっては、中国の脅威が一段と大きな懸念材料となっている。
こうした複雑な背景があるため、米国など西側諸国は、インドのロシアとの友好関係に対する批判をおおむね避けてきた。NATO首脳会議で、中国の対ロ支援が主要トピックの一つになる可能性が高いにもかかわらず、そうした状況は変わっていない。(後略)【7月10日 WSJ】
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【クアッドによる過度の中国刺激は避ける】
“中国への対抗は、インドと米国に共通する目標だ”というのは事実であり、インドにとって国境の領有権問題を抱える中国との関係は極めて重要な問題です。
それゆえクアッドの一員にもなっている訳ですが、ただ、クアッドの枠組みで過度に中国と対立することも警戒しています。
****中国・インド外相会談 国境の係争地について協議、早期解決図り関係を安定させること確認****
中国とインドの外相は25日、たびたび衝突が起きている国境の係争地について協議し、早期解決を図って、両国の関係を安定させることを確認しました。
中国の王毅政治局員兼外相とインドのジャイシャンカル外相は25日、外遊先のラオスで会談しました。両国の国境が定まっていない係争地では断続的に衝突が起きていて、2020年には双方に死傷者も出ています。
インド外務省によりますと、両外相は会談で、問題の早期解決を図り、両国の関係を安定させることを確認。軍を完全に撤退させるため、早急に取り組む必要があるとの認識で一致しました。(後略)【7月26日 TBS NEWS DIG】
中国の王毅政治局員兼外相とインドのジャイシャンカル外相は25日、外遊先のラオスで会談しました。両国の国境が定まっていない係争地では断続的に衝突が起きていて、2020年には双方に死傷者も出ています。
インド外務省によりますと、両外相は会談で、問題の早期解決を図り、両国の関係を安定させることを確認。軍を完全に撤退させるため、早急に取り組む必要があるとの認識で一致しました。(後略)【7月26日 TBS NEWS DIG】
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****インド外相、対中問題は2国間で解決=クアッドで過度の刺激避ける****
インドのジャイシャンカル外相は29日、2020年に中国との国境地帯で起きた武力衝突以降、中国と緊張関係が続いていると述べた上で、問題は「中印2国間で解決する」と語った。東京都内の日本記者クラブで会見した。
ジャイシャンカル氏は日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の枠組み「クアッド」の外相会合出席のため来日。対中けん制を念頭に置いたクアッドの連携強化が、中国を過度に刺激しないよう配慮した形だ。【7月29日 時事】
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【ウクライナ訪問発表 対話の仲介役を名乗り出る可能性も】
ロシア・ウクライナの問題に話を戻すと、モディ首相は今月23日にウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談するとのこと。
インドはロシアに宥和的というイメージの払拭の狙いもあると。また、対話の仲介役を名乗り出る可能性もあると指摘されています。
****インドのモディ首相、23日にウクライナ初訪問 親ロシアのイメージ一掃へ「演出」の見方も****
ウクライナ大統領府は19日、インドのモディ首相が23日にウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談すると発表した。両国が1992年に外交関係を樹立して以降、インドの首相がウクライナを訪れるのは初めて。
モディ氏は7月にロシアを訪問してプーチン大統領と会談しており、ウクライナ戦争の終結をにらんだ対話の仲介役を名乗り出る可能性もある。
モディ氏は、ロシアがウクライナの首都キーウの小児病院などをミサイルで攻撃した直後となる7月の訪露でプーチン氏と抱擁するなど親密な様子を見せ、ゼレンスキー氏や国際社会から批判を浴びた。
このため外交専門家などの間では、モディ氏がウクライナ問題でプーチン氏と一体化しているとの印象を打ち消す演出としてウクライナ訪問に踏み切った、との指摘も出ている。
これに対し、インド外務省高官は首都ニューデリーで記者団に、ウクライナとロシアのどちらか一方に肩入れする「ゼロサム・ゲーム」を展開しているわけではないと説明した上で、「インドとして平和の追求に向けた支援を惜しまない」と強調した。
インドによる対話の仲介は3月に同国のジャイシャンカル外相が意欲を示したほか、インドとウクライナの外交当局者が過去数カ月間に接触を重ねたとされるなど、実現の可能性が取り沙汰されてきた。
ただ、インドは欧米が経済制裁の対象にしているロシア産原油の輸入を続けるなどしてロシアの戦費調達を実質的に支えており、公正な仲介役としての役割を果たせるかどうかが疑問視されている。【8月20日 産経】
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ロシア・ウクライナ仲介はモディ首相だけでなく、中国・習近平国家主席も狙っています。
****中国の仲介外交 和平実現へ本気度が問われる****
中国が、ロシアによるウクライナ侵略や中東での紛争に関し、仲介外交を活発化させている。
本気で政治的解決を目指すのであれば歓迎すべきだが、中国自身がウクライナや中東でどんな立場を取ろうとしているのかが見えない。
自国の影響力拡大が目的ということでは、期待よりも警戒感を抱かせかねない。
ウクライナ問題について、中国は、ロシアとウクライナが共に参加する和平会議の開催を主張している。5月にはブラジルと連名でこうした考えを盛り込んだ提案をまとめ、7月末から南アフリカなどに特使を派遣した。
米欧の対露制裁とは距離を置く「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国との連携を強め、米国などをけん制する狙いがあるのだろう。中国政府は、110か国以上が提案に前向きな反応を示したとしている。
だが、提案は、ウクライナが求めているロシア軍の撤退に触れていない。ウクライナの提唱で6月に開かれた平和サミットも、ロシアの不参加を理由に欠席した。
そもそも中国の習近平国家主席は、ロシアのプーチン大統領と会談を重ねる一方で、ウクライナ侵略への非難を控えている。
中露は共に国連安全保障理事会の常任理事国である。中国がロシアの蛮行を容認したまま和平を呼びかけても、説得力を持たないのではないか。
中国は、パレスチナ自治区ガザの紛争についても関与を強めようとしている。(後略)【8月20日 読売】
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ロシア非難を控えているのはインドも同じですが、そいう国だからこそ仲介が可能になるとも言えます。
ロシアとともにアメリカと対抗する姿勢の中国に比べれば、インドの方がまだ“中立的”な仲介ができるかも。