孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  教育・仕事を奪われ、家庭に閉じ込められ、DV夫に対し離婚も認められない女性

2023-03-26 23:02:51 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタン東部ガズニ州の裁判所で被告の主張を聞く判事(左から2人目、2022年11月28日撮影)【3月6日 AFP】 

2001年に旧タリバン政権が崩壊した後、アフガニスタンには新しい司法制度が構築され、多くの女性が活躍の場を得ました。しかしタリバン復権後、その制度は廃止され、裁判や量刑などはすべて男性が取り仕切るようになり、裁判の判断基準はシャリア(イスラム法)となっています。

この写真1枚からも、女性の権利を擁護するような判断がなされるとは思えない実態がうかがえます。)

【「アフガニスタンを見捨てない」・・・とは言うものの】
****アフガン支援団、1年延長=国連総長に評価求める―安保理****
国連安保理は16日、イスラム主義組織タリバン暫定政権下で混乱が続くアフガニスタンで活動する国連アフガン支援団(UNAMA)について、派遣期間を来年3月まで1年間延長する決議を全会一致で採択した。
また、国際社会が「総合的で一貫した」対応を取るため、グテレス事務総長に対し、11月中旬までに現状の評価を行い、安保理に提言するよう求める決議も全会一致で採択した。【3月17日 時事】 
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この決議は日本とアラブ首長国連邦(UAE)が議論を主導する「ペンホルダー」としてまとめたもので、UAEのヌサイベ国連大使は「これはアフガニスタンとその国民に対して、安保理が見捨てていないという強いメッセージだ」と語っています。

「見捨てていない」・・・アフガニスタンに暮らす人々のことを思えば見捨てることは出来ませんが、ただ、“現地の状況は悪化の一途をたどっている”なかで、タリバン政権の在り様は改善の期待を抱かせるようなものではありません。

【人道犯罪レベルの女性の人権状況】
常々指摘されるように、特に女性の人権状況は人道犯罪レベルにあります。

****タリバンの女性処遇は「人道犯罪の恐れ」、国連が報告書*****
国連は6日、人権理事会で発表した報告で、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンによる女性と少女の処遇が人道犯罪の領域に達している恐れがあると警告した。

2021年8月に実権を掌握したタリバンは、高校や大学通学の阻止など、女性の権利と自由を極度に制限している。

22年7─12月の期間を対象にした報告で、アフガンの人権状況に関する国連特別報告者のリチャード・ベネット氏は、タリバンによる女性と少女の扱いは「ジェンダー迫害であり、人道犯罪の領域に達している恐れがある」と分析。

人権理事会で「タリバンの意図的かつ計算された政策は、女性と少女の人権を剥奪し、一般生活から抹殺することを目的とするもの」とし、「当局の責任によるジェンダー迫害という国際犯罪に当たる恐れがある」と指摘した。

タリバン側情報当局の広報担当者はコメント要請に応じていない。

ベネット氏は、人権理事会が「女性と少女に対する悪辣な扱いは、宗教を含むいかなる背景の上においても容認も正当化もされない」という強いメッセージをタリバンに送るべきと訴えた。【3月7日 ロイター】
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アフガニスタンはアフリカと並んで飢餓が懸念される地域ですが、タリバンの頑なな姿勢は、本来必要とされる国際社会からの人道支援を縮小させるものにもなっています。

****タリバンの女性権利侵害、アフガン支援減少につながる恐れ=国連****
国連アフガニスタン支援団(UNAMA)トップのローザ・オトゥンバエワ氏は8日、イスラム主義組織タリバン暫定政権による女性の権利侵害を受け、同国への支援や開発の資金が縮小する可能性が高いとの見方を示した。

アフガンでは国民の3分の2に当たる2800万人に支援が必要とされ、同氏は安全保障理事会で、国連が今年、単独国家として最大となる46億ドル相当の支援を要請していると説明。しかし、タリバンが女性の高等教育や援助団体での勤務などを禁止しており、支援実施が脅かされていると指摘した。

また、女性は男性親族を伴わずに自宅から外出することを禁止され、顔を覆うことを義務付けられている。

オトゥンバエワ氏は「女性の労働が認められなければアフガン支援の資金は減少するだろう」などと述べた。【3月9日 ロイター】
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【教育でも、仕事でも】
最近のアフガニスタンに関するニュースは“相変わらず”ではありますが、“相変わらず”でスルーしてしまうと「見捨てる」ことにもなりかねませんので、その“相変わらず”のニュースをいくつか。

教育でも、就業でも、女性は大きな制約に直面しています。

****アフガンで大学始業 女子は依然禁止****
アフガニスタンでは6日、大学の冬休みが終わり新学期が始まったが、イスラム主義勢力タリバンは依然、女子の大学教育を禁じている。

中部ゴール州出身のラヘラさんは「私たちは家にいなければならないのに、男子が大学に行っているのを見るのはつらい」と話した。「これは女性に対する差別だ。イスラム教は女性の高等教育を認めているのに。私たちの学びを止める権利は誰にもないはずだ」

タリバンは昨年12月、女子学生が新たに導入された厳格な服装規定や、登下校に男性親族の同伴を求める規則に従っていなかったとして、大学での女子教育の無期限停止を命じた。

禁止令以前でも、ほとんどの大学ではタリバン復権以降、すでに入り口や教室を男女別に分けていた。また、女子学生の授業は、女性教員もしくは高齢の男性教員しか担当できないようになっていた。 【3月6日 AFP】
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****アフガンの女性就業者25%減少、タリバン実権掌握以後=ILO****
国際労働機関(ILO)が発表したアフガニスタンの調査によると、2021年8月にイスラム主義組織タリバンが実権を掌握して以後、女性の就業者数が25%減少した。女性の労働や教育に対する規制で状況が悪化したという。

調査は21年第2・四半期から昨年第4・四半期までを対象に実施。この間の男性就業者数の減少は7%だった。

ILOのアフガン担当シニアコーディネーターは声明で「女性と少女に対する規制は、教育とともに労働市場の展望に深刻な影響を及ぼしている」と指摘した。

タリバンは、大半の女子生徒や学生の高校・大学通学を禁止したほか、非政府組織(NGO)の大部分の女性職員に就労を禁止した。

一方、タリバンの実権掌握を受けて外国政府が開発支援から撤退し、同国中銀の資産を凍結。経済危機で雇用が壊滅している。

ILOは、アフガンの21/22年国内総生産(GDP)が30─35%減少したと推計している。【3月8日 ロイター】
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「女性専用」図書館であっても、女性が家庭外で読書や勉強することも認められないようです。

****「女性専用図書館」閉鎖=タリバンが圧力、開設から半年余―アフガン****
アフガニスタンの首都カブールにある女性専用の図書館が開設から半年余りで閉鎖を余儀なくされた。女性の権利に厳しい制限を課すイスラム主義組織タリバン暫定政権からの圧力が理由という。開設した活動家の女性が13日、明らかにした。

図書館は、通学を禁じられた女性に安心して読書や勉強ができる場を提供するため、昨年8月下旬に開設。ロイター通信によれば、教師らから寄贈された小説や学術書など1000冊以上をそろえていた。【3月14日 時事】 
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【閉じ込められた家庭では、夫のDVによる離婚も許されない】
女性が閉じ込められる「家庭」にあっては、夫のDVも耐えなければならず、離婚も許されないようです。

:****タリバン復権で離婚無効、夫から再びDV被害 アフガン****
アフガニスタンに住むマルワさん(仮名、40)は、元夫にすべての歯を折られるなどの虐待を受けてきた。いったんは離婚が認められたものの、復権したイスラム主義勢力タリバンに無効とされ、夫の元に戻った。現在は夫から逃れて8人の子どもと暮らしている。

アフガニスタンでは女性の権利がほとんど認められておらず、ドメスティックバイオレンスが横行している。米国が後ろ盾となっていた前政権下では、少数ながら離婚が認められた。マルワさんもその一人だった。

だが、2021年にタリバンが再び実権を握ると、元夫は離婚を強要されたと主張し、マルワさんはタリバンに復縁を命じられた。

複数の弁護士がAFPに語ったところによると、タリバンに離婚を無効とされた女性が再び夫から虐待を受けるようになったという報告がある。

夫の元に戻ったマルワさんは数か月間、家から出ることを許されず、殴打に耐え続けた。手や指の骨も折られた。
「気を失ったことも何度かあり、娘たちに食事を口に運んでもらった」とマルワさん。「夫にしょっちゅう髪を強く引っ張られ、円形脱毛症になった。歯も全部へし折られるほど殴られた」と話す。

その後マルワさんは、娘6人、息子2人と共に数百キロ離れた親戚の家に逃げ込んだ。
「子どもたちは、『お母さん、ひもじいくらいどうってことないよ。今は暴力から逃げられたんだから』と言ってくれる」

夫に見つかるのを恐れ、近隣住民にも存在を知られないように身を潜めて暮らしているという。

国連のアフガニスタン支援ミッションによると、同国ではパートナーから肉体的・性的・精神的暴力を受ける女性は10人中9人に上る。しかし、離婚は虐待以上にタブーとされることが多く、離婚した女性は白眼視される。

米国が支援していた前政権下では、一部の都市で離婚率が徐々に上昇。教育と雇用面を中心に女性の権利もわずかに向上した。

■DVによる離婚は認められない
虐待を受けた女性による離婚の訴えを100件前後成立させた女性弁護士は、「イスラム教でも離婚は認められている」と説明した。だが現在は、国内での弁護士活動は許されていない。

前政権下では、女性の判事と弁護士が離婚訴訟を扱う特別な家庭裁判所が設立されていたが、タリバン復権後は裁判や量刑などはすべて男性が取り仕切るようになった。

別の女性弁護士は、タリバン政権下で離婚が認められるのは、夫が薬物依存症の診断を受けるか国を離れた場合のみで、「DVや、夫が同意しないケースでは裁判所は離婚を認めない」と指摘した。

タリバン高官はAFPに対し、離婚した女性が復縁を強制されているケースについては調査を行うと述べた。

最高裁の広報担当者は「申し立てがあれば、シャリア(イスラム法)に従って調査する」と主張。前政権下で成立した離婚を認めるかどうかについては「重要で複雑な問題」だとして、イスラム教最高権威機関のダール・アル・イフタによる統一見解が待たれるとした。

縫製で生計を立てているマルワさんと娘たちの心には深い傷が残っている。
マルワさんは娘たちを見やりながら、「この子たちを結婚させられないのではないかと心配している」と話した。
「娘たちは、『お母さんのひどい結婚生活を見ていたので、夫という言葉が嫌でたまらない』と言うんです」と続けた。 【3月25日 AFP】AFPBB News
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【出口がまったく見えない現状】
もちろん、こうした状況を生み出しているのはタリバンだけの問題ではなく、女性差別を当然視するような、あるいは、離婚した女性は白眼視されるような、社会全体の認識が根底にあってのことです。

タリバンは、そうした社会の考え・認識を現実的な規制・ルールに具現化しているに過ぎない面もあるでしょう。

それで皆が納得しているなら、よその人間がとやかく言うこともないのでしょうが、教育を、仕事を、安全な家庭生活を求める多くの女性も存在している以上、この状況を看過できません。

しかし、改善の方法が見当たりません。

書いているだけで息苦しくなる現状ですが、アフガニスタンの人々は、その中で今日も、そして明日も暮らしています。
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