孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ・ガザ地区 イスラエルのUNRWA活動禁止法でガザ支援は著しく困難に

2025-02-04 23:33:05 | パレスチナ

(UNRWAが届けた食糧を運ぶパレスチナの人々(1月29日、ガザ地区)【2月3日 Newsweek】)

【ガザ停戦は続いているものの先は見通せない状況】
アメリカの圧倒的力を背景に関税という棍棒を振り回すトランプ大統領がもたらす世界への影響、アメリカ国内で急速に進むトランプ革命、そこで絶大な影響力を発揮して連邦政府解体を進める大富豪マスク氏・・・そうしたことに世界の注目は集まっていますが、パレスチナではイスラエルとハマスの停戦合意が何とか持続しているものの、先はまったく見通せない状況です。

****ハマスが人質3人を解放…イスラエルは183人を釈放し、ラファ検問所も開放****
イスラム主義組織ハマスは1日、イスラエルとの停戦合意に基づき、人質の男性3人を解放した。ロイター通信によると、イスラエルはパレスチナ人収監者ら183人を釈放した。

停戦合意に基づく身柄交換は今回で4回目。ハマスはパレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスでイスラエルとフランスの二重国籍の1人を含む2人、北部ガザ市でイスラエルと米国の二重国籍の1人を、赤十字国際委員会を通じてイスラエル側に引き渡した。

1月30日の3回目の人質の解放は、大勢の戦闘員や観衆が人質を取り囲み、騒然とするなかで引き渡しが実施され、これにイスラエルが反発した。今回は、安全確保の求めを受けて仲介国が調整に入り、戦闘員や観衆が人質と距離を置く中で引き渡された。

エジプトとの境界にあるガザ南部のラファ検問所は1日、域外での治療を受けるガザのパレスチナ人負傷者らのため開放された。負傷者らのエジプトへの通行は、昨年5月にイスラエル軍が検問所を制圧して以来だ。

1月19日に始まった42日間(6週間)の停戦第1段階はおおむね合意が履行されており、数日内に第2段階以降の実施に向けた協議が始まる見込みだ。【2月1日 読売】
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恒久停戦の実現を念頭に置いた第2段階の措置には、ハマスが拘束中の人質全員の解放やイスラエル軍のガザ完全撤退が含まれます。これは第1段階(6週間の停戦 一部の人質交換)より遥かに困難。

現在訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相は4日、トランプ大統領と会談するとされていますので、そこでイスラエル側のシナリオ、トランプ大統領の計画が議論されるのでしょう。

ただ、ネタニヤフ首相とトランプ大統領主導で進むと、1月26日ブログ“トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」”で取り上げたパレスチナ住民のガザからの追放みたいな、国際常識的には受け入れがたい話に突き進む危険も。

****ガザ復興に「15年」=米特使、居住不可能と強調****
中東問題を担当するウィトコフ米特使は30日、パレスチナ自治区ガザの現状について「居住不可能だ」と述べ、復興に10〜15年を要するとの見方を示した。米ネットメディア「アクシオス」が同氏とのインタビュー内容を伝えた。

ウィトコフ氏は29日、ガザを訪問し、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦状況を視察していた。
 ウィトコフ氏は、イスラエルの攻撃により「ガザにはほとんど何も残っていない」と強調。「不発弾が多くあり、とても危険だ」と指摘した。

その上で、損傷を受けた建物やがれきの撤去に5年、ハマスの地下トンネルが張り巡らされたガザの地盤調査に数年、建物の再建に数年かかるとの見解を明らかにした。【1月31日 時事】
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一方、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍の攻撃が続いており、不安定な状況です。

****イスラエル軍がヨルダン川西岸で軍事作戦…50人以上を殺害、100人以上を拘束****
イスラエル軍は2日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の北部ジェニンや周辺で軍事作戦を行ったと発表した。発表によると、これまでに50人以上の武装勢力を殺害し、100人以上を拘束した。作戦は今後少なくとも数週間続くと見込んでいる。
 
軍は2日、ジェニン難民キャンプで建物23棟を爆破した。建物は「テロリストの施設」だと主張した。作戦で数十個の武器を押収し、数百の爆発物を破壊したと説明している。
 
パレスチナ通信によると、ジェニン難民キャンプや周辺では住民約1万5000人が避難を強いられた。水道管が破壊され、病院では水不足が深刻化している。
 
パレスチナ自治区ガザで停戦が1月19日に始まった後、イスラエル軍は同21日から西岸のジェニンやトゥルカレムなどで「対テロ対策」を名目に作戦を続けている。【2月3日 読売】
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【“今”の生活に困窮するガザ住民】
そうした“先”の話はまったく目途がたっていませんが、ガザ住民は“今”をどう生きるかで精一杯でしょう。
トランプ大統領に「パレスチナ人を混乱や革命、暴力のない地域に住まわせたい」と言われようが、「居住不能」と言われようが、今まで暮らしてきた土地で命と生活をつないでいくしかありません。

しかし、救援はあまりにも少なく、遅い。

****「一体どこへ戻れば?」「新しいテントに?」ガザ地区の避難民、廃墟と化した故郷へ****
パレスチナ自治区ガザ地区にある海岸沿いの道路。1月29日、これまで避難していたパレスチナ人の帰還が始まった。戦争で荒廃した自宅へ向かうパレスチナ人は、3日連続で数千人に上るという。

数カ月にわたるイスラエルによる集中的な砲撃や銃撃戦によって、ガザ北部は廃墟と化した。帰る人の表情も冴えない。「私たちの苦しみは大変なものです。誰にも想像がつかない」(パレスチナ人、以下同)

砲撃を受けてガザを脱出した後、彼女は家族と一緒に安全を追い求め、北から南まであちこちを移動し続けたという。

「停戦の日に、自分の家が破壊されたことを知りました。私は一体どこへ戻ればいいのでしょう? テントからテントに……さらに新しいテントにですか?」(『ABEMAヒルズ』より)【1月31日 ABEMA Times】
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【イスラエルのUNRWA活動禁止法でガザ支援は著しく困難に】
そうしたガザ住民支援の中核を担うのが国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA アンルワ)ですが、ハマスと通じているとしてイスラエルが国内での活動を禁止したことで、ガザ地区での支援活動が極めて困難になっています。

****イスラエル、UNRWA禁止法施行へ 国連に48時間以内の退去要求****
イスラエルのダノン国連大使は28日、イスラエルは48時間以内に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)との協力や接触を断つと発表した。ニューヨークの国連本部で記者団に語った。

30日に施行を控えるイスラエル国内でのUNRWAの活動を禁じる新法をふまえた措置。パレスチナ自治区ガザ地区やヨルダン川西岸でUNRWAの活動は大幅に制限され、国連は他の専門機関の活動拡大など対応を迫られる。

ダノン氏は「政治的な決定ではなく、単に必要な決定だ」と語り、「(イスラム組織)ハマスやその他のテロ組織が、UNRWAに広く浸透している問題に目を背けてきたことが原因だ」と従来からの主張を繰り返した。

ガザにおける人道支援については「UNRWAの汚職とは無縁である他の国連機関と協力する用意がある」と述べ、UNRWAにはイスラエルで運営する施設から30日までに退去するよう求めた。

UNRWAのラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会に出席し、イスラエル新法の完全実施は「ガザ地区に悲惨な結果をもたらす」と指摘。「人道支援を大幅に拡大しなければならない時期に、国連の能力を低下させることは、既に壊滅的な状況にあるパレスチナの人々の生活をさらに悪化させる」と警告した。【1月29日 毎日】
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グテレス国連事務総長がイスラエルに撤回を要請していますが、もちろんイスラエルには聞く耳はありません。

イスラエルのUNRWA活動禁止法は、イスラエル国内での活動を禁じたものですが、実質的にはガザ・ヨルダン川西岸での活動を著しく阻害します。ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じています。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になります。

****UNRWA活動禁止法、イスラエルで施行…ガザやヨルダン川西岸で物資配布や医療に影響必至****
イスラエルで30日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する新法が施行された。イスラエルは支援に向けた代替案を示しておらず、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸で人道物資の配布や医療に影響が出るのは必至だ。

UNRWAによると、30日朝もガザや西岸、東エルサレムでの診療所や学校は通常通り運営を始めた。ただ、東エルサレムではイスラエル当局の妨害を懸念し、出勤しない職員もいた。西岸の職員は「どんな制約が出るのか」と気をもんだ。

東エルサレムのUNRWA本部に勤務する日本人2人を含む国際職員の約30人は、イスラエルが滞在ビザを29日までしか認めなかったため国外へ退去した。

本部前には30日、新法の施行を祝う極右の支持者数十人が集まり、看板に落書きした。その一人、シャイ・グリック氏(38)は「UNRWAはテロを支援してきた。この土地はイスラエルに戻すべきだ」と主張した。

イスラエル国会が昨年10月に可決した法律は、2023年のイスラム主義組織ハマスによるイスラエル奇襲で職員9人の関与が判明したUNRWAに対し、イスラエルでの活動を禁止する内容だ。

ガザや西岸での物資搬入に際し調整が不可欠となるイスラエル当局との接触も禁じる。住民への支援は困難になるとみられる。イスラエル外務省の報道官は30日、取材に「UNRWAはハマスと同様の組織であり、イスラエルは接触を持たない」と述べた。

UNRWAによると、ガザでの食料や医薬品などの支援物資は当面、備蓄で賄う予定。その後は他の関係機関を通じて物資を搬入し、活動の継続を模索する。

現在、ガザでは職員約1万3000人が働き、診療所で約1500人が治療にあたる。職員の雇用は維持する方針だ。清田せいた明宏保健局長は取材に「UNRWAに代わる組織はない。活動継続の道を探りたい」と強調した。

UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会で「法の施行は、パレスチナ人の生活状況をさらに悪化させるだけだ」と訴えた。

◆UNRWA=1948年のイスラエル建国とその後の戦争などで故郷を追われたパレスチナ難民への支援のために49年に設立された。ガザやヨルダン川西岸のほか、ヨルダン、レバノン、シリアで約590万人に教育や医療の支援を行っている。ガザと西岸で運営する難民キャンプは27か所、学校は384校、診療所は65か所に上る。【1月30日 読売】
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パレスチナ難民への支援という事業の性格上、職員になかにハマスと心情を同じくする者が入り込むことは十分に想像できますが、「UNRWAはハマスと同様の組織」として禁止するというのもバランスを欠いているように思えます。

****UNRWA活動是非で応酬=イスラエルとパレスチナの駐日大使****
現在停戦下にあるパレスチナ自治区ガザで人道支援を行う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)による今後の活動継続の是非を巡り、イスラエルとパレスチナの駐日大使が31日、東京都内で相次いで記者会見し、主張の応酬を繰り広げた。

2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲にUNRWA職員が参加したというのがイスラエル政府の見解。

コーヘン駐日大使は「UNRWAは信頼を裏切った」と述べ、「他の国際機関で代替可能だ」と訴えた。日本政府に対しては「ハマスが支配しないガザ」の実現に向けた関与を呼び掛けた。

これに対し、駐日パレスチナ常駐総代表部のシアム大使は「UNRWAは難民の生命線だ」と語り、日本に財政支援継続を要望。「問題の核心は、イスラエルが継続する軍事占領だ」と主張し、同国による長年にわたるパレスチナ人抑圧がハマスによる奇襲の背景にあるという認識を示した。

(中略)また、トランプ米大統領が荒廃したガザの住民をヨルダンやエジプトに移住させる提案を行ったことに関し、シアム氏は「パレスチナ人はゲームの駒ではない」と批判。コーヘン氏は「米側が答える質問だ」と明言を避けた。【1月31日 時事】 
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今のところはUNRWAの活動は続いているようですが・・・・

****UNRWA、ガザ支援活動継続 イスラエルの活動禁止法施行後も*****
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の広報担当者は31日、ジュネーブで記者会見し、イスラエルによるUNRWAの国内活動を禁止する新法が施行された30日以降も「われわれは引き続き活動を継続している。(パレスチナ自治区)ガザでの国際人道支援の要となっている」と述べた。

新法は2024年10月に可決され、今月30日からはUNRWAはイスラエル当局との接触が禁止され、活動に制限を受けることになった。UNRWAの広報担当者は「われわれは引き続きスタッフをガザに派遣し、必需物資を積んだトラックを運び込んでいる。物資の搬入と配布の継続が認められなければ、脆弱な停戦が危険にさらされる」と強調した。

ヨルダン川西岸地区と東エルサレムのパレスチナ人スタッフが投石や検問所での妨害など困難に直面していると言及。「UNRWAにまつわる誤情報が流布されており、敵対的な環境に直面している。厳しい状況に置かれており、スタッフは保護されていない」とも指摘した。

英国、フランス、ドイツは31日、新法の施行への懸念を改めて表明した。複数の人道支援組織は、物資やスタッフはイスラエルを経由するため、荒廃したガザ地区への新法の影響は大きいと指摘している。

イスラエル占領下の東エルサレムに暮らすパレスチナ難民も、UNRWAから教育、医療などのサービスを受けている。

イスラエルのサール外相は、ガザ地区への人道支援に尽力していると主張。支援は他の国際機関や非政府組織(NGO)を通じて行われるべきだと述べた。イスラエルは、UNRWAスタッフが2023年10月のイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃に関与したとしている。【2月1日 ロイター】
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****「UNRWA(アンルワ)」とは何か?...イスラエルによる追放で新たな危機が始まる****
<パレスチナ人にとって重要な命綱となっている国際組織をイスラエルが活動禁止にしたが、代替組織はあるのか?>

イスラエル国内で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法律が1月30日に施行された。
イスラエルとイスラム組織ハマスの脆弱な停戦合意が1月19日に発効したばかりの今、既に不安定な状況をさらに不安定にする恐れがある。

■UNRWAとは?
パレスチナ自治区ガザ、ヨルダン川西岸のイスラエル占領地域、東エルサレム、レバノン、ヨルダン、シリアに暮らす数百万人のパレスチナ人に食糧、教育、医療、住居などあらゆる支援を提供している。

1948年の第1次中東戦争により故郷を追われたパレスチナ難民を支援するために、49年に設立された。

ガザでは現在約1万3000人が働いている。フィリップ・ラザリーニ事務局長によると、2023年10月のイスラエルとハマスの戦闘開始以降にガザの食糧支援の約3分の2を、停戦以降も食糧支援の約60%を担っており、パレスチナ人にとって重要な命綱と見なされている。

■なぜ活動禁止に?
国連と長年、対立してきたイスラエルは、UNRWAにハマスの関係者が数多く潜入していると非難。昨年10月に今回の法律を可決した。

イスラエルはハマスが主導した23年10月の襲撃にもUNRWAの職員12人が加担したと主張。国連の調査で9人が関わった可能性があるとされ解雇された。

■今後はどうなる?
イスラエルはUNRWAに対し、占領下の東エルサレムにある全ての施設を明け渡し活動を停止するように命じた。ビザの取得や延長が困難になり、一部の外国人職員は退去を余儀なくされている。

ただし、具体的にどのような措置が取られるかについては不透明な部分が多い。
「東エルサレムを含む占領下のヨルダン川西岸地区では私たちの診療所は開いている。ガザでの人道的活動は継続中だ」と、UNRWAは1月29日にX(旧ツイッター)に投稿した。「私たちはとどまって支援を続けると約束する」

同日にイスラエルの最高裁は、活動禁止に異議を唱えたパレスチナの人権団体の申し立てを却下。「イスラエル国家の主権地域でのみUNRWAの活動を禁止する」もので、ガザやヨルダン川西岸地区では禁止していないと指摘した。

ただし、ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じている。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になりそうだ。

イスラエル外務省の報道官は、「国連機関、国際NGO、諸外国など、UNRWAの代わりとなる複数の組織が既にガザで人道支援活動を進めるために活動している」と述べている。

これに対し、その任務の範囲と、UNRWAが命を救う人道支援を日々提供し、ガザのパレスチナ人への医療と教育の主な提供者であることを考えれば、「国連のシステム内を含め、他の機関や組織がUNRWAの代替として機能できるというのは完全に間違っている」と、有力シンクタンク、国際危機グループの上級アナリスト、ダニエル・フォルティは言う。
「その空白を迅速かつ持続的に埋める組織があるとは、到底考えられない」【2月3日 Newsweek】
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“トランプ大統領は、国連人権理事会へのアメリカの関与を断ち切り、パレスチナ難民のための国連機関、UNRWAへの資金提供禁止を延長する計画だと、匿名のホワイトハウス高官がアメリカ・マスコミに語った。
(中略)
米国はUNRWAの最大の寄付国であり、年間3億ドルから4億ドルを提供していたが、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの致命的な攻撃に12人のUNRWA職員が参加したとイスラエルが根拠のない非難をした後、バイデンは2024年1月に資金提供を一時停止した。”【2月4日 アルジャジーラ】
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