先程、TVでアフガニスタンの現状報告を見ました。
「潜入!アフガン麻薬無法地帯」といったセンセーショナルなタイトルがつけられていましたが、実態ははるかに深刻で悲惨です。
アフガニスタンのアヘン生産は近年増加し過去最高を記録しているとのこと。
現在世界のアヘン生産の9割をアフガニスタンが占めていること。
アヘン生産、ヘロイン加工が武装勢力の資金源となっており、将来の戦闘に備えていること。
政権当時ケシ栽培を禁止したタリバン自身が現在このアヘン生産を資金源として、その勢力を急速に回復しつつあること。
このため現地で活動を続ける中村医師に言わせると「アフガンの戦乱は今更に拡大しつつある」とのこと。
このようなケシ栽培の背景には十分な灌漑施設もなく旱魃で他の作物を作ることができない貧困に苦しむ多数の農民達が存在していること。
政府は「ケシ栽培との戦い」を行ってはいるが、強権的にケシ栽培地を破壊しても、その後の農民への代替援助が実際にはなされていないこと。
よくある話ではあるが、このアヘン生産には警官・軍部・政府高官も一部加担している腐敗の構造があること。等々。
世界の関心はアフガン後のイラクへ移り、忘れ去られたアフガンでは復興ではなく戦乱が拡大し、麻薬が社会を蝕んでいるようです。
当然蝕まれるのは社会・治安だけでなく、人々の健康そのものも蝕まれていきます。
国連の国際麻薬統制委員会によると、アフガン国内の麻薬常習者は少なくとも100万人、そしてそのうち6万人が15歳以下の児童だそうです。
TVの映像で一番痛ましかったのは、ケシ栽培を行う農家で、食事もままならない貧困状態ですから当然薬なども手に入らず、むずがる乳児に父親が自分が吸ったアヘンの煙を顔に吹きかけている姿でした。
「害があるのはわかっている。でも他にどうすることもできない。こうすれば子供は落ち着き、ゆっくり寝てくれる・・・」父親はそのように語っていました。
かつてタリバン政権がバーミアン大仏を破壊しようとした際の国際世論の非難に対し、タリバンのある者が言ったそうです。
「今世界は、我々が大仏を破壊すると言ったとたんに大騒ぎを始めている。だが、わが国で旱魃で苦しんでいたとき彼らは何をしたか。我々を助けたか。彼らにとっては石の像の方が人間より大切なのだ。そんな国際社会の言うことなど聞いてはならない。」(「大仏破壊」 高木徹著)
著者の高木は「この理屈は正しくない。国際社会が何もしなかった訳ではけっしてない。・・・ただ、そうであるにしてもこの言い分にわずかではあるが説得力の断片を認めるのは私だけだろうか。」の述べている。
灌漑施設の整備、医療体制の確立などをとおして、農民達が苦しむ貧困と戦っていかない限りケシ栽培はなくならず、社会と人々の健康は脅かされ続けることでしょう。
国際的に注目を集める戦乱や事件がおきているときだけでなく、普段の苦境に国際社会がどれだけの救いをさしのべられるかが、アフガンの復興を可能にする鍵です。
そのような活動によってこそ、世界における日本への信頼もつくられていくものと考えます。
写真は昨年正月旅行したタイのチェンマイ郊外。少数民族の観光用ケシ栽培です。