孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シェールガスのもたらすエネルギー事情変化

2013-02-18 23:42:45 | 原発

(欧州ではシェールガス採掘の環境面での問題が強く指摘されています。昨年12月、ロンドンでフラッキング(水圧破砕法)について、「環境汚染が否定できない、予測も規制も不可能なプロセス」と反対をアピールする活動家。イギリスでは、シェールガス生産の一時停止措置を解除し、シェールガス開発を本格化する方針がだされています。 “flickr”より By AdelaNistora http://www.flickr.com/photos/adelanistora/8236858444/

シェール革命で持ち直すアメリカ経済
“2008年のリーマンショックから4年が過ぎ、アメリカの経済には、注目すべき、明るい変化が見られるようになりました。第1に、住宅市場の持ち直し、第2に、製造業の国内回帰、そして第3に、シェール革命という動きです。いずれもアメリカ経済の根本的変化につながる動きです”【1月29日 NHK解説委員室】というように、与野党間で膠着している債務上限問題など、政治が足を引っ張らなければアメリカ経済は今後回復軌道に乗るのでは・・・というのが一般的な見方です。

アメリカ経済回復を支えている大きな要因である、シェールガス・オイルによる“シェール革命”については、このブログでも何回か取り上げてきました。

****シェールガスとは****
泥岩の一種で深さ2000メートル以上の頁岩(けつがん)層から採掘される天然ガス。掘削技術の確立で開発が可能になり、米国などで生産が急拡大。09年ごろから米国の天然ガス価格が下がり「シェールガス革命」と呼ばれる。日本に輸入する場合は液化天然ガス(LNG)にしたりするために費用がかかるが、現行のLNG価格よりも3割程度安く調達できる計算。【1月20日 毎日】
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アメリカは、天然ガス生産で3年以内にロシアを上回り、世界最大の生産国の座に着くとも予測されていますが、シェールオイル増産によって、原油においても2017年までにアメリカがサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国となるとの見通しが発表されています。

アメリカの原油産出増加は経済問題への影響だけでなく、これまで中東の原油を必要としてきたため、不可避的に政治的・軍事的に中東に関わらざるを得なかった訳ですが、今後はそうした中東の制約がはずれるという意味で、アメリカの世界戦略の大きな転換をもたらす可能性もあります。そのあたりの話は、また別の機会に。

日本への輸入に向けた動き
シェールガスについて、現在日本が利用している液化天然ガス(LNG)と比較すると、「100万BTU(英国熱量単位)」という単位当たりでみたとき、LNGは15ドルほど。これに対し、アメリカのガスは3~4ドル。仮にアメリカのガスを日本に輸入できれば、液化して船で運ぶ費用6ドルを加えても10ドルほどですむ・・・という大きな価格差があります。

したがって、日本にシェールガスを輸入して・・・という話になるのですが、そうした「シェール革命」の日本への影響については、12年11月15日ブログ「アメリカで拡大するシェールガス革命 日本への影響 国際関係・温暖化対策・原発政策にも影響」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121115)で取り上げました。

そのなかで事実誤認がありました。
“大阪ガスと中部電力は、米国産シェールガス(岩盤層にある天然ガス)を輸入する契約を米国企業と結んだ、と31日発表した。2017年からそれぞれ最大年220万トンを輸入する。”【12年7月31日 朝日】ということで、“アメリカ産天然ガス輸入が現在全く認められていない訳ではないようです”と書いたのですが、上記契約について、まだアメリカ政府の承認はおりていないようです。

アメリカはLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしています。
日本の各社がアメリカのシェールガス開発に相次いで参加していますが、日本への輸出にはアメリカ政府の個別承認が必要となります。その際、アメリカはFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い状況にあります。【12年2月24日 「化学業界の話題」より】

ただ、こうした厳しい状況も改善の動きが出ているようです。
2012年3月、来日したアメリカエネルギー省のチュー長官は、日本へのLNGの輸出について「輸出許可を出すかどうかは報告書が出てから判断したい。」とコメントしていました。
その「報告書」が昨年12月発表され、「シェールガスを含む天然ガスを輸出すればアメリカ経済にとってプラスになる」との内容でした。

こうした動きを受けて、具体的な輸入に向けた交渉が始まっているようです。
****関西電力:米国産シェールガスの輸入交渉開始****
関西電力が米国産の天然ガス「シェールガス」の輸入に向け、米エネルギー企業や国内の商社など複数社と交渉に入ったことが19日、分かった。将来的に米国でのシェールガスの権益取得も検討する。

関電は原発の停止で、火力発電向けの燃料費負担が高まり、4月に値上げに踏み切る。掘削技術の向上によるシェールガスの増産で、米国産天然ガスは低価格化が進んでおり、輸入できれば燃料費の圧縮にもつながりそうだ。

米国は原則、自由貿易協定(FTA)締結国にしか天然ガスの輸出を許可しておらず、非締結国の日本は輸入できない。だが、米エネルギー省は昨年12月、「輸出は米国経済に利益をもたらす」との報告書を公表。
早ければ今年前半にも米政府が天然ガスの日本への輸出を許可するとの見方が強まっており、関電が早期調達に踏み切る可能性もある。

原発停止の影響で火力発電の稼働率が高まっている関電は昨年度、例年より約200万トン多い約740万トンの液化天然ガス(LNG)を輸入。原油の輸入増などもあり、火力発電用の燃料費は約2倍の年約9000億円になり、4月に電気料金の値上げをする方針だ。

安い米国産LNGの輸入比率が上がれば、燃料費の抑制効果が期待できる。関電はシェールガスの権益の獲得や液化委託事業も検討しており、利益の上積みも目指す。北米のほか豪州や欧州からのLNGの権益取得も検討しており、コスト削減を追求する。

また、液化天然ガスの輸入価格は、アジアでは、原油価格に連動する仕組みで、このところ高止まりしている。これに対して、米国産天然ガスは安いだけでなく、原油価格に無関係な値動きをするため、「シェールガスの輸入で燃料調達を多様化させ、財務リスクの抑制と安定調達を進められる」(関電幹部)という。【1月20日 毎日】
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なお、アメリカのエネルギー多消費型の産業界(発電業界、化学、アルミ等)は、LNG輸出により国内ガス価格が上昇するのを懸念し、一定の制限を設けるべきとの主張しています。

エネルギー間、産出・消費国間での競合・調整
LNG取引は個別性の大きい長期契約という特殊性はありますが、仮に、直接のアメリカからのLNG輸入がすぐには進まなくても、安価なシェールガスが大量に産出され続けば、アメリカのシェールガス増産・価格下落でアメリカ国内の発電用石炭が天然ガスに変わり、余った石炭が安値で欧州に輸出され、欧州ではロシアからの高い天然ガス輸入を減らし、ロシアは欧州に変わる天然ガスの販路として日本にアプローチする・・・というように、競合するエネルギー資源、産出国、消費国を巻き込んだ世界規模の価格調整が機能しますので、少なからず日本の利用するLNGにも影響があると思われます。

そうしたすべてが競合関係にある状況でアメリカからのLNG輸入を実現させることは、日本にとっては、調達先の多様化によって、他の国からの輸入においても交渉力を高めることにもなります。

****シェールガスは日本を救うのか 期待高まるも他国頼みの現実****
・・・・このため大阪ガスなどは米国政府の許可が出れば、シェールガスをLNGにして2017年から日本に輸入する計画だ。大阪ガスで年間輸入量の2割超、中部電で2割近くに相当する年間220万トンの天然ガスの液化能力をそれぞれ確保することになる。

シェールガスは従来のLNGと比べて価格が割安で資源量も豊富とされ、米国が輸出を認めると、安価なガスの調達につながると期待が高まる。

その一方、購入費の圧縮という直接的な効果だけが目的ではないという。大阪ガス担当者がこう打ち明ける。
「もちろん競争力の高い安いLNGを期待できるが、もう一つの狙いは調達先の多様化だ」
火力発電への依存度が高くエネルギーの安定供給という重い課題を抱える日本の事情は、LNGなどの買い付け交渉で、圧倒的に売り手側に有利に働いている。そこでカギを握るのが、他とも交渉中だということを示す「見せ札となるカード」(経済アナリスト)を数多く持つことだという。

一方、原発再稼働が進まない中で、火力燃料費の負担急増で厳しい経営状況が続く関西電力。同社は東南アジアや中東を中心にLNGを輸入しているが、シェールガスや南部アフリカなど、新たなLNGの調達先を開拓中だ。

ただ、米国ではまだシェールガスの日本への輸出を政府として正式には判断していない。エネルギーに詳しい在阪大手商社幹部も「米政府が日本向けにどれくらい輸出してくれるか油断できない。政府に日米同盟のさらなる関係強化を働きかけてもらう必要がある」と求める。

「(燃料購入の)交渉中に『悔しいなら原発を動かせ』といわれたこともある」。関電の火力燃料の担当者がこう打ち明けるように、資源がなく、わずか4%という脆弱(ぜいじゃく)なエネルギー自給率の日本にとって、他国頼みのシェールガスなどが完全に補ってくれるのかどうかは未知数だ。

エネルギーがなければ、国は成り立たない。この問題を現実的に解決できるのは、今のところ安全が確認された原発の速やかな再稼働しかないのではないか。【2月17日 産経】
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シェール革命で原発廃炉も
シェールガスによる火力発電と原子力発電も競合関係にあり、実際アメリカでは、安価なシェールガスの出現により相対的にコスト高となった原発が廃炉になるという現象が多く起きています。

****米原発、相次ぎ閉鎖=電力業界、投資慎重に―シェール革命でガス優位****
米国で電力会社が老朽化した原子力発電所の閉鎖を決めるケースが増えている。「シェールガス」と呼ばれる天然ガスの生産拡大に伴い、安価なガスを使った火力発電が急増。原発のコスト競争力が相対的に下がり、電力会社が補修に必要な投資に二の足を踏んでいるためだ。

電力大手デューク・エナジーは5日、フロリダ州の原発を廃炉にすると発表。格納容器に入ったひびの補修に巨額の費用がかかり、採算が取れないと判断した。同じ大手のドミニオンも昨年10月、電力の卸売価格の下落を背景に、「純粋に経済性の観点」(ファレル最高経営責任者=CEO=)から、ウィスコンシン州にある原発の廃炉を決めた。原発で最大手のエクセロンは、ニュージャージー州の原発を10年前倒しで閉鎖する方針だ。

米国内の原発の数は世界最多の104基で日本(50基)の倍。これらの建設認可は全て1979年のスリーマイル島原発事故以前に行われた。原発の運転免許の有効期間は40年で、更新すれば20年の延長が可能。既に7割の原発が更新手続きを終えているが、老朽化に伴う補修費用が将来の利益に見合わなくなれば、原発の閉鎖は今後さらに増えるとみられる。【2月9日 時事】 
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オバマ政権の方針にも変更が見られます。
****米国で原発の廃炉相次ぐ 老朽化やシェール革命で採算悪化****
・・・・オバマ政権は当初、地球温暖化対策として「化石燃料の依存脱却」を旗印に原発推進を強調し、昨年はジョージア州で34年ぶりに原発建設を認可したが、最近は「海外産原油の依存脱却」に“軌道修正”。今年の一般教書演説では「天然ガスブームが米国をエネルギー自給に導いている」と力説したが、原発には言及すらしなかった。
現在米国内に20基以上の原発計画があるが、計画変更など先細りも懸念される状況で、米国の原発産業は岐路に立たされている【2月18日 産経】
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日本の原発に話を戻すと、LNGによる火力発電か原発かの二者択一ではなく、選択肢の範囲は広く持って、原発も稼働させることで、競合するエネルギーとしての安価なLNG獲得も有利になり、ひいては将来的な脱“原発依存”にもつながる・・・と考えるべきではないでしょうか。
エネルギー間の適切な競合によって、コストもエネルギー割合も妥当なところに落ち着くものであり、再稼働を認めないという制約は資源の効率利用を阻害します。

もちろん安全性は極めて重要ですが、空から隕石が降ってくることもある世の中で100%の安全性などあり得ません。福島の経験をオープンに、より安全な原発を実現するためには何を行うべきか・・・という議論を行うことが建設的だと考えます。
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タイ深南部  依然続く「ほほ笑みの国の忘れられた紛争」 大規模衝突も発生

2013-02-17 21:10:01 | 東南アジア

(タイ深南部ナラティワートの政府軍基地を襲撃し、軍や警察との銃撃戦で死亡した武装勢力メンバーの所持品を調べる警官たち【2月13日 AFP】http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2927849/10277654

04年4月以降で最大規模の衝突
タイ深南部と呼ばれるタイ最南端のマレーシアと国境を接する地域は、仏教国タイにあってイスラム教徒住民が大半を占め、宗教的・文化的・歴史的差異を背景に、経済開発の遅れなどもあって、政府側・仏教徒とイスラム過激派との間で、04年以降で2万件以上に及ぶテロ、死者数は5000人超という、およそ“微笑みの国”タイのイメージとはかけ離れた“泥沼”状態の紛争が続いていることは、これまでも何回か取り上げてきました。

そんなテロが日常化しているタイ深南部にあっても、まれにみる大規模衝突が13日発生しました。

****武装集団がタイ軍基地襲撃、銃撃戦で16人死亡****
分離独立を求めるイスラム過激派のテロが続くタイ南部ナラティワート県で13日、武装集団約50人が軍基地を襲撃し、銃撃戦の末、武装集団側の16人が死亡した。
1日で100人以上が死亡した2004年4月以降で最大規模の衝突となった。

軍によると、ライフル銃などで武装した集団は13日未明に基地を襲ったが、軍側は事前に武装集団の一員から資料を押収し、襲撃情報を把握、攻撃に備えていた。このため軍側に死傷者は出なかった。【2月13日 読売】
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“武装グループは軍服を着ており、AK47やM16などの攻撃用ライフルを持っていたという。 襲撃後、基地から逃走した武装グループ約60~70人の行方を、軍と警察計100人の合同部隊が激しく追跡している”【2月13日 AFP】

今日も、テロ事件が報じられています。
****タイ最南部で爆弾、2人死亡****
イスラム武装勢力によるテロ事件が頻発するタイ最南部のパタニ県で16日深夜から17日にかけて爆発事件が相次ぎ、2人が死亡、約10人が負傷した。
近隣のナラティワート県で13日、武装グループが国軍基地を襲撃し、武装グループ側の16人が死亡する事件が起きたばかり。【2月17日 時事】 
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麻薬密売の利権に絡んだケースも
昨年12月には、教師が銃撃で死亡するケースが相次ぎ、12月13日に現地の小学校など約1200校を臨時休校にして、インラック首相が現地で関係者と治安対策を協議したとのことでしたが、事態は改善していないようです。

****ほほ笑みの国の忘れられた紛争*****
ほほ笑みの国として、世界中から観光客を招き入れる東南アジアの楽園タイ。年間2200万人以上の外国人が、この世界屈指の観光国を訪れる。しかしそんなタイには、あまり知られていない別の顔がある。

タイ南部のリソート地プーケットからさらに南へ数時間ほど行くと、穏やかな仏教国のイメージを覆す世界が広がる。マレーシアとの国境に近い深南部と呼ばれる地域で、分離独立を目指すイスラム武装勢力と国軍が抗争を繰り広げているのだ。地元警察と自警団までが入り交じり、今この瞬間も暴力の応酬が続いている。

昨年だけでも、自動車爆弾テロや銃撃、放火がホテルや車のショールームなどで次々と発生した。さらに年末には、イスラム武装勢力による学校襲撃や教師を銃殺する事件が立て続けに起き、1200の学校が臨時休校する事態になった。今年に入ると今度は報復のように、イスラム教徒の教師を狙った銃撃事件が勃発。もはやこうした状況は、深南部で日常になっている。

泥沼の争いの病根は根深い。
ヤラ、パッタニ、ナラティワートの3県とソンクラー県の一部から成る深南部地域には、14世紀後半に独立した「パタニ王国」というイスラム国家が存在した。このマレー半島で最古のイスラム国家は、1909年に仏教国であるタイに併合された。

今も深南部に暮らす約220万人の住民のうち、マレー系イスラム教徒は9割に上る。彼らは国民の9割以上が仏教徒のタイで、政府からの迫害を受けていると感じながら暮らしてきた。
そう考えるのも無理はないほど、イスラム教徒はタイ政府から差別的な扱いを受けてきた。深南部ではマレー語に近いマラユ語が主要言語になっているが、かつては政府に使用を制限され、90年代までは、ムスリム女性が身に着けるスカーフさえ禁じられていた。

麻薬利権も火に油を注ぐ
いま深南部でテロ行為を行っているのは、分離独立を目指して60年代に生まれたイスラム系の組織だ。彼らは麻薬取引などを資金源として武装化し、仏教徒を狙った攻撃を続けてきた。

観光客が足を踏み入れられないほど状況が悪化した大きなきっかけは、04年4月に起きた「クルセ・モスク事件」。イスラム系武装勢力が政府関連施設11力所を襲撃し、一部がパッタニ県クルセ地区のモスク(イスラム礼拝所)に立て龍もった。結果、計100人以上の過激派が射殺された。

モスクで発生したこの事件以降、イスラム系武装勢力と政府・仏教徒との抗争は激しさを増し、今も暴力の応酬が続いている。04年以降に起きたテロはおよそ2万件に達し、死者数は5000人に上る。
地元の仏教徒たちは暴力行為から身を守るため、自警団を組織している。軍や警察から支援を得ながら、仏教施設を通じて治安対策を続けているが、こうした措置が逆に対立に拍車を掛けているとの指摘もある。

近年さらに状況を複雑にしているのが、麻薬の問題だ。深南部で起きるテロには、麻薬密売の利権に絡んだケースも少なくない。麻薬取引には分離独立派組織だけでなく、行政側の人間も関与していると噂される。

NGOのアジア財団による調査では、深南部の住民のうち3分の2が、紛争状態を脱するには民族的・宗数的な違いを克服する必要があるとみている。ただその一方で、政府が軍を撤退させれば、争いは減少するとも答えている。
紛争における最大の被害者は、その土地に暮らす一般住民にほかならない。世界で注目されることも少ない「忘れられた紛争地」で、住民たちが平和に暮らせる日は来るのだろうか。【2月19日 Newsweek日本版】
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和平を快く思わない集団
以前のブログでも取り上げたように、紛争が長期化している背景には、タイ国軍が和平に消極的なこと、武装勢力側の統制がとれていないことが指摘されています。

****忘れられた戦争〉和平の道 阻む内部対立****
・・・・最南部の情勢に詳しいプリンス・オブ・ソンクラー大学のシーソンポップ助教授は、紛争が長引く大きな要因として、(1)和平に消極的な国軍(2)分裂を繰り返し、統制がとれていない武装勢力の2点を挙げる。

インラック政権は今年1月以降、初めて陸軍将校を加え、隣国マレーシアなどで武装勢力との接触を始めている。複数の関係者によると、インラック首相の兄、タクシン元首相も3月にクアラルンプールでPULOと面会したという。

だが「国軍は、武装勢力に屈したという印象は避けたいし、和平が実現すれば予算は大幅に削られる。消極姿勢に変化はない」(消息筋)という。

2年前、事実上の停戦が限定的に試みられたこともあった。武装組織幹部の統率能力を示すため、1カ月間、ナラティワート県の一部でPULOなどが一方的に戦闘停止を表明した。
この経緯を慎重に見極めていた前政権の首脳は「事件は減ったが、皆無ではなかった。結局、PULOなどの影響力は検証できなかった」と明かす。
(武装組織の代表の一人)カストゥリ氏も「和平を快く思わない集団がいるのは事実。戦闘員の過半数は我々の指揮下にある」と述べ、一部では統制が利いていないことを暗に認める。・・・・【2012年6月7日 朝日】
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どの紛争もそうですが、りっぱな大義や正義を口にしながらも戦闘状態によって利益を得、また、存在価値が高まる、和平を望まない勢力が存在することが紛争を長引かせ、一般市民の犠牲を増大させる大きな原因です。
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韓国  高まる核武装論、先制攻撃論など対北朝鮮強硬論 

2013-02-16 21:11:48 | 東アジア

(韓国軍の駆逐艦から発射される巡航ミサイル “北朝鮮の核実験強行を受け、韓国軍は北朝鮮全域が射程に入るミサイルを実戦配備した。配備されたのは射程距離500キロ以上の巡航ミサイル”【2月16日 聯合ニュース】http://app.yonhapnews.co.kr/yna/basic/articleJapan/new_ArticlePhoto/YIBW_new_showArticlePhotoView.aspx?contents_id=PYH20130214080100882

独立した国家として最小限の核カードを
北朝鮮が国際批判を無視する形で長距離弾道ミサイル発射・核実験を繰り返す中で、対北朝鮮で融和的・抑制的な対応をとることも多かった韓国で、核武装論や先制攻撃論などの強硬論が高まっていると報じられています。

****韓国、高まる核武装論 対北、広がる無力感****
北朝鮮での相次ぐ核実験強行を受け、韓国で「わが国も核武装すべきだ」との議論が起きている。
主に保守陣営から出ているもので、与党セヌリ党では13日の幹部会で「最小限の自衛策として、北朝鮮の核問題が解決した場合に廃棄することを前提に、わが国も核武装宣言をすべきだ」との意見が堂々と示された。またソウル市内では、保守団体が核武装論を主張する集会を開いている。

韓国の核武装論は北朝鮮に対する独自の“交渉カード”としてしばしば登場しているが、米国との関係をはじめ国際的環境などから現実性は今のところはない。しかし、6カ国協議をはじめ北朝鮮の核問題解決に対して無力感が広がっており、その欲求不満が独自の核武装論を招いている。特に韓国の場合、1992年に北朝鮮との間で非核化宣言をしながら、これまで北朝鮮に全く無視されてきたという経緯がある。

保守派の論客として影響力を持つ金大中・朝鮮日報顧問は核武装論者として知られるが、これまでの寄稿文で「今すぐ核武装を宣言しようというのではない。われわれの核保有に関する足かせを解き、核を持つかどうかという問題を真剣に議論することを宣言しようというのだ。独立した国家として最小限の核カードを持とうということだ」(昨年7月10日付の朝鮮日報)と主張している。
また産経新聞の正論メンバーの一人である評論家の趙甲済氏は、独自核武装論の持ち主として、以前から韓国内で講演会や寄稿文を通じ論陣を張っている。

韓国の核開発は、朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の1970年代後半、米国のカーター政権に在韓米軍撤退の動きがあったことなどを背景に独自開発の計画があったが、米国の強い圧力で中止されたといわれている。また北朝鮮の核武装については、若い世代などの間には「南北統一すればわれわれの核になる」と民族主義感情から容認する声も聞かれる。【2月15日 産経】
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“若い世代などの間には「南北統一すればわれわれの核になる」と民族主義感情から容認する声も聞かれる”というのは、日本とは全く異なる韓国の事情を反映した声です。
“米国との関係をはじめ国際的環境などから現実性は今のところはない”とは言うものの、こうした主張が表面化すれば、おのずと日本でも「中国、北朝鮮、更に韓国も・・・」ということで、日本の核武装論が高まることも考えられます。

韓国国会においても、“米国の戦術核の韓国への配備や核保有について、政府の見解を問いただす質問が相次いだ”とのことです。

****韓国で高まる強硬論、核配備求める議員も 対北朝鮮****
北朝鮮の3回目の核実験を受け、韓国では一部から「核配備」を求める強硬な意見が噴き出し始めている。国防省も北朝鮮全域を射程に収める巡航ミサイルを公開し、韓国の「軍事的対応力」を強調するなど、北朝鮮との対決モードは高まるばかりだ。

14日、国会では与党議員らから、米国の戦術核の韓国への配備や核保有について、政府の見解を問いただす質問が相次いだ。
金滉植(キムファンシク)首相は「核不拡散条約(NPT)に加盟しており、韓(朝鮮)半島の非核化は国家戦略目標」「米国の『核の傘』の下で対応している」などと従来の見解を繰り返した。しかし、議員らからは、朝鮮半島非核化宣言が北朝鮮の「無効化宣言」で有名無実化し、核実験で北朝鮮の脅威が高まる中で、政府に再考を迫る声が上がった。

韓国軍は北朝鮮に対し、強硬なメッセージを出し続けている。金寛鎮(キムグァンジン)国防相は同日、視察先の部隊で「北は核実験に続き、今後も挑発をしてくる」と指摘。「挑発してきたら我々が持つミサイルで敵の脈を断ち、息の根を止められるよう準備せよ」と命じた。

さらに国防省はこの日、北朝鮮全域が射程に入る巡航ミサイルの映像も公開。韓国のテレビは、艦上などから発射されたミサイルが標的を突き破り、破壊する様子を繰り返し流した。
同省関係者は「北朝鮮のあらゆる施設を、必要な時に正確に打撃できる」と強調。公表の理由については「韓国も十分な対応能力があることを示すため」と説明した。【2月15日 朝日】
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先制攻撃も想定して、米韓の防衛戦略の本格的な見直し
上記記事にもあるように、国防省サイドの鼻息が荒いようです。韓国軍の制服組トップからは「先制攻撃も辞さない」という強気の発言もあったとか。

****韓国「先制攻撃も辞さない」発言は本気か****
「北朝鮮が核兵器を使用する意図が明確であれば、戦争の危険を冒してでも、まずはそれ(核兵器)を除去すべきだ」。北朝鮮が3度目の核実験の準備を進めるなか、韓国軍の制服組トップから「先制攻撃も辞さない」という強気の発言が飛び出した。

合同参謀本部の鄭承兆議長は先週、国会国防委員会の全体会議で北朝鮮への強硬姿勢を明言。「アメリカに相談する必要はない。これは自衛権の問題だ」と語った。
最大の後ろ盾である中国を含む国際社会から強く非難されても、北朝鮮が核開発を放棄する気配はない。対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会のサイトは鄭の発言を「愚か」と批判し、「本当の戦争を味わうことになる」と牽制した。

ただし現実には、韓国が先制攻撃に踏み切る可能性は低いと指摘する声もある。朝鮮半島で全面戦争が勃発すれば、韓国も戦場になる可能性が高い。だからこそアメリカは長年、軍事的挑発を自制するよう韓国に求めてきた。鄭も後に発言をトーンダウンさせたが、核戦争のシナリオがかつてないほど現実昧を帯びているのは間違いない。【2月19日号 Newsweek日本版】
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こうした先制攻撃発言との関連はわかりませんが、米韓は先制攻撃も想定した防衛戦略の本格的な見直しを始めています。

****北核ミサイル兆候で先制攻撃も…韓国防衛見直し****
北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射や3回目の核実験を強行し、核搭載ミサイルの実戦配備が現実味を増してきたのを受け、同盟関係にある米韓は、相互防衛条約に基づき韓国防衛戦略の本格的な見直しを始めた。
北朝鮮の核ミサイル発射の兆候を捉えた場合、先制攻撃で制圧することも想定する見通し。米韓は今年10月の米韓定例安保協議(SCM)までに新戦略の策定を目指す。

韓国国防省の林官彬国防政策室長は6日の国会で北朝鮮の核の脅威への対抗策に関し、「これまでは米国が核の傘を提供してくれるという程度の対応しかなかった」と認めた。その上で、米韓が「北朝鮮の(核)脅威に合わせた抑止戦略」を検討中だと明らかにした。

新戦略の立案に着手した背景には、米韓が現在運用する兵器体系では北朝鮮の核ミサイルの飛来を防ぎきれないという厳しい現状認識がある。韓国メディアによると北朝鮮は、韓国を射程に収めるスカッドミサイル(射程300~1000キロ・メートル)を約640基保有。米韓は、北朝鮮のミサイル基地をリストアップしているが、北朝鮮全土を24時間監視できる軍事偵察衛星や偵察機はない。【2月15日 読売】
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中国:北朝鮮への独自の圧力を強める可能性
一方、北朝鮮には再度の核実験実施の兆候もあるようです。
****北朝鮮:追加核実験の準備か 南側坑道で活発な動き****
16日付の韓国紙、中央日報は、北朝鮮が3度目の核実験を実施した北東部咸鏡北道(ハムギョンプクド)豊渓里(プンゲリ)の核実験場で、追加の核実験の準備とみられる活発な動きが確認されたと報じた。韓国政府当局者の話として伝えた。

これまで使われていないとみられる南側坑道周辺の動きが特に活発で、先週坑道を埋め戻す土砂を載せたとみられる車両が頻繁に往来していたのに続き、最近、幹部用とみられる高級車やシャトルバスが訪れたという。当局者は「(核実験が行われたと推定される)西側坑道の最終準備段階の様子と似ている」と説明した。【2月16日 毎日】
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こうした北朝鮮の動きを抑えられるのは中国だけですが、2月14日ブログ「中国 北朝鮮を追い込むような制裁には今も消極的 ただし“血盟”関係変化を窺わせる動きも」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130214)で取り上げたように、欧米と協調した北朝鮮制裁の可能性は薄いのが現状です。

ただ、中国としても、朝鮮半島の緊張を高めるような北朝鮮の勝手な行動を放任することもできないのではないでしょうか。
****核で安全は「幼稚な考え」=中国紙****
中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は16日の社説で、核実験などで危機を高める北朝鮮について「あまりにも小国で、核による戦略的なリスクをコントロールできない。核爆弾を持っていれば安全と考えるなら幼稚だ」と非難した。その上で中国政府は放射性物質の漏えいなどで東北地方の安全や安定が損なわれる場合、強硬に対応すべきだと訴えた。

一方、社説は中国が北朝鮮に「懲罰」を与える場合でも、「超えてはならないラインを友好国に知らしめる警告であるべきだ」と主張。「米国が主導する対北朝鮮制裁に積極的に協力することはできない。北朝鮮を中国の敵にしてしまうことになり、戦略的には愚の骨頂だ」と強調した。【2月16日 時事】 
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韓国での核武装論の高まり、米軍の戦術核配備や米韓の戦略見直しなどの動きは中国としても警戒すべきところで、そうした動きを加速させないために、北朝鮮への独自の圧力を今後一定に強めることもあるのではないでしょうか。

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G20財務相・中銀総裁会議今夜開催  予想される日本「アベノミクス」の円安誘導批判

2013-02-15 22:19:00 | 国際情勢

http://lets-gold.net/chart_gallery/chart.php?chart=7
急速に進行する円安


http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5070.html
もう少し長期的に推移を見ると、相場は大きな変動を繰り返していることもわかります。問題は人為的・意図的な為替操作があったのか・・・というところですが、金融緩和を行えば通貨安につながりますので、何を持って“意図的”とするのかも判然としません。

【「為替レートを政策目標にしない」】
デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを基本方針とする経済政策で臨むという「アベノミクス」を受けて、“日経平均株価は、昨年11月半ばから今週まで12週間連続で値上がりした。59年以来、これほど長期の上昇は実に半世紀ぶりだ。昨年11月以降、米ドルは対円で約16%値上がりし、長らく円高に苦しめられてきた日本企業はようやく一息ついた”【2月12日 Newsweek】と、急速な株価上昇・円安が進行し、景気回復への期待感が強まっています。

2012年10~12月期の国内総生産(GDP)の伸び率(実質)は前期比年率0・4%減と、前期の同3・8%減からマイナス幅が大きく縮み、日銀は国内景気について14日、「下げ止まりつつある」との判断を示しています。

当然ながら、円安は輸出企業にとっては福音ですが、輸入に依存する産業にとっては大きな問題となります。
また、貿易相手国には不利な条件変更ともなります。
従って、自国通貨を安くして自国の輸出企業に有利にしようとする「通貨安競争」は国際的には“禁じ手”となっており、意図的な通貨安誘導があったかどうかが問題となります。

日本の「アベノミクス」についても、意図的な円安誘導を行っているのではないか・・・との批判・懸念が国際的にありますが、12日のG7では「為替レートを目標にしない」ことが改めて確認されています。

****為替レート「政策の目標にしない」…G7が声明****
日米欧の先進7か国(G7)の財務相・中央銀行総裁は12日夜、「為替レートは市場において決定されるべきで、為替レートを(財政・金融政策の)目標にしない」などとする共同声明を発表した。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が、円安誘導を意図したものではないかとの懸念が欧米の一部で出ていたため、G7各国で認識を再確認した。

G7は2011年9月に同様の声明を発表し、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を与えることなどを明記した。今回は、〈1〉財政・金融政策は、それぞれの国内目的を達成することに向ける〈2〉為替レートを目標にしないことを再確認する――との文言を新たに付け加えた。

日本は、アベノミクスが、自国通貨を安くして自国の輸出企業に有利にしようとする「通貨安競争」には当たらないと主張しており、声明も日本の主張にもある程度配慮する形となった。【2月12日 読売】
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ただ、アベノミクスが「通貨安競争」には当たらないとの日本の主張がG7で認められたのかどうかは判然としません。
“声明をめぐって、麻生太郎財務相は「デフレ対策が為替に使われたのではないことが正しく認識された」と発言したものの、G7高官が「円の過度な動きに対する懸念を示すつもりだった」と述べ、G7の足並みの乱れが露呈する形となり、為替相場が乱高下した”【2月15日 時事】

新興国:「主要国側が通貨安政策をとっている」】
いずれにしても、日本の円安問題は今夜から始まるG20で論議を呼びそうです。
アメリカは日本の政策を一定に支持していますが、欧州には批判も多く、新興国も為替の問題には敏感です。
特に、日本の貿易相手国になる中国・韓国は厳しい批判を行うことが想定されます。

****円安で日本批判も―G20財務相・中銀総裁会議が15日開幕****
日本は15、16日にモスクワで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、自国の為替政策への不満が噴出する恐れがあるなど、厳しい立場に置かれそうだ。

G20に先立ち、先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は12日、最近の急激な円安に端を発した為替操作をけん制する共同声明を発表。日本の声明への署名は不本意ともみられた一方、施策がG7から事実上容認されたとの認識も示した。

声明では各国の財政・金融政策について、「国内目標を達成することに向けられ、為替レートを目標にしないことを再確認する」と明記された。麻生太郎副総 理・財務・金融相は記者団に対し、声明の取りまとめについて「一般的にみんなでこの話を協議し合ったというのが実態だ」と述べた。

ただ、麻生財務相など日本政府関係者は共同声明について、特に円安をもたらした最近の大胆な金融政策など、日本の施策を擁護するものとの見方を示した。さらに財務相は、G20会合で外国為替をめぐる非難合戦が生じるのを阻止することが声明発表の狙いという見方を肯定した。G20 には韓国や中国など、日本の経済政策を公然と批判している参加国もある。

共同声明が日本の政策を容認したのか、あるいは批判したのか、その解釈をめぐってアナリストやトレーダーの間で意見が分かれるなか、円相場は上下に振れる展開となった。

市場が混乱したのは、日本の政策への見解についてG7内で足並みが乱れていることも要因となっている。ドイツとフランスが批判的な一方で、米国はある程度支持しているもようだ。
G7の指導者は概して、円高の是正を目指すことを示唆した日本政府関係者の発言に不快感を示しているものの、日本の金融政策については、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の政策と類似していることもあり、これまで支持してきた。

カナダ銀行(中央銀行)のマーク・カーニー総裁は今週、「マクロ政策に大幅で非常に明白な動きがあったことをめぐり、日本当局が一定の為替相場を目標にしていると懸念する向きがある。G7ではこうした問題も協議した。今週末のG20会議でも議論に上ることは間違いないだろう」と述べた(後略)【The Wall Street Journal】
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G20で日本が批判の矢面に立たされる事態は覚悟したほうがよさそうです。
****通貨高に悩む新興国 主要国の為替政策批判****
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が15、16日にモスクワで開かれるのを前に、自国通貨の上昇に悩む新興国から「主要国側が通貨安政策をとっている」と批判が強まっている。G20では、為替を動かす政策のあり方が議論の中心になる見込みだ。

「欧州が通貨安競争に加わったら、もっとひどいことになる」。ブラジルのマンテガ財務相は先週、英メディアのインタビューでこう警告した。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」で、円安が進んでいることを念頭に、欧州が日本に対抗してユーロ安を促す政策をとり、自国通貨レアルがさらに値上がりすることをおそれている。

円安が進むのとは対照的に、レアルは年明けから上昇基調が続く。同じように、メキシコやチリ、コロンビアなど中南米の有力新興国の通貨もそろって値上がりしている。
チリのラライン財務相は先週、「通貨安競争が進めば、新たな貿易保護主義につながる」と先進国を非難した。

韓国も神経をとがらせている。通貨ウォンの上昇で、輸出企業の業績に悪影響が出始めた。
韓国銀行(中央銀行)の金仲秀(キムチュンス)総裁は「特定の国にとっては失うものが多い。韓国がまさにそうだ。国際規範を逸脱しなければ自身を守る努力が必要だ」と対抗措置をとることも示唆した。ウォンは1月、大企業が採算割れとなる1ドル=1059ウォン(韓国貿易保険公社)を一時上回り、すれすれの状態が続く。

批判を高める新興国に対して、日本など主要国はどう説明するのか。G20での対応が注目される。 【2月15日 朝日】
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【“悪巧みは知らぬ顔で通せばよい”】
各国とも「本音では通貨安に期待している」状況、また、為替操作は多くの国が行っている状況で、日本だけが批判の矢面に立たされるのは・・・という不満もあるようです。

****世界は“為替操作国”だらけ…日本政府は素直すぎる****
・・・・実のところ、世界は“為替操作国”だらけだ。金融危機以降、5回の金融緩和を実施した米国やユーロ圏など、30カ国以上が自国の通貨安につながる超低金利策をとっており、実質金利がマイナスまたはゼロ近辺に張り付いている。

なのに、なぜ日本ばかりがたたかれるのだろうか?
理由は国際金融のプロトコル(儀礼)違反。国際金融筋には情報漏洩(ろうえい)など数々のご法度があるが、細心の注意を払うべきは為替に対するコメントだ。為替は当該国が得すれば相手国が損するゼロサムゲームなので、相手国を刺激する発言は国家戦略的にタブーである。

為替は世界で最も合理的と見なされている巨大金融市場だが、金融緩和は結果的に通貨安につながる。通貨安となった当該国は輸出に拍車がかかるが、競合する輸出品を売る国や輸入国の貿易収支には負の影響を与える。
その暗黙のルールに日本の閣僚や政権幹部が相次いで違反した。希望する円レートの目標レンジを具体的に指摘した政権幹部もおり、日本政府として為替水準に関与できる、または操作できる立場にあることを世界に宣言してしまった。

そもそも「通貨戦争」なる言葉を言い始めたのはブラジルの財務相で、10年に米国の量的緩和策を批判したのがきっかけだった。この量的緩和策はオバマ政権の掲げる輸出拡大計画を援護射撃する意味合いがあり、米国への輸出競争力が落ちたブラジルが怒った。
米国こそ「火付け役」なのだ。だが、FRBやオバマ政権の幹部は為替にかかわる発言を一切避け、揚げ足を取られなかった。

日本政府は素直すぎる。悪巧みは知らぬ顔で通せばよい。「為替は市場が決めることですから」と。【2月12日 産経】
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麻生太郎財務相は、日本政府の“無作為”について、彼独特の言い回しを行っています。

****円安「おれたちは何もしていない」 麻生財務相****
「おれたちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」。麻生太郎財務相(副総理)は14日の麻生派の会合で、自らのアゴを突き出しながら日本政府による「円安誘導」との指摘を打ち消した。

「輸出企業はえらい利益が出ている。各国の大臣は『どうしたらできるか聞きたい』というが、勝手に世の中が上がっている」とも強調。15日からの主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議への出席を前に、「日本だけトリックしているように思われるとかなわん」と予防線を張った。【2月14日 朝日】
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“ちょっとアゴで”何をするのか? この人がしゃべると、余計に事態が混乱するのは以前からのことです。

なお、次期日銀総裁候補の1人とされる岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は、1ドル=95円程度が妥当だとの見解を示しています。

****1ドル=95円が「妥当」、岩田元日銀副総裁が自民議連で表明****
岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は14日午前、 現在の円相場は割高であるとの見方を示したうえで、交易条件からみれば1ドル=95円程度が妥当だと述べた。
日銀法改正を目指す自民党議連「デフレ・円高解消を確実にする会」(山本幸三会長)で述べた。出席した自民党関係者が明らかにした。

次期日銀総裁候補の1人とされる岩田氏は会合で、実質実効為替レートを基にした「均衡レート」の試算を披露。15─30%のかい離があるとして、対ドルでは90円から100円程度までが「均衡への回帰」だと指摘し、その中間点となる95円付近が妥当との考えを示した。「円高是正はどうしても必要だ」と述べたという。 (後略)【2月14日 朝日】
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最近の為替相場をめぐる「騒ぎ」は無益
こうしたなか、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、為替相場を巡る論争が過熱することを憂慮する発言を行っています。
****為替めぐる「騒ぎ」は無益=議論過熱に警鐘―ECB総裁***
モスクワで開催されている20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に参加している欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は15日、最近の為替相場をめぐる「騒ぎ」は無益だと語り、議論の過熱に警鐘を鳴らした。ロシア中銀との会合後の記者会見で語った。

ドラギ総裁は「為替相場は金融政策の目標ではないが、経済成長や物価安定には重要」と指摘。あくまでもこうした視点の範囲内で、為替動向を観察するとした。その上で、「ここ数週間の為替をめぐる騒ぎは、不適切、あるいは無益で、自己破滅的だ」と表明。構造改革などの議論の重要性を強調した。【2月15日 時事】 
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中国 北朝鮮を追い込むような制裁には今も消極的 ただし“血盟”関係変化を窺わせる動きも

2013-02-14 22:20:45 | 東アジア

(核実験成功を喜ぶ平壌市民 【2月12日 テレ朝news】http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/230212070.html

適切な制裁は必要との認識。ただ、日米韓と同じ側に立つことはあり得ない
国際世論を無視して長距離弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮を制御するには、経済的にも、国際関係においても後ろ盾・生命線となっている中国がどこまで本気になるかにかかっていることは、昔から言われていることで、今回核実験についても基本的には同様です。

その中国の北朝鮮への対応は、若干の変化の兆しもなくはないところですが、アメリカの影響下にある韓国の勢力が自国国境に達するのを避け、緩衝地帯としての北朝鮮を維持したいこと、また、北朝鮮政権崩壊に伴う自国内の朝鮮民族問題の表面化を避けたいことから、中国としては北朝鮮現政権が崩壊するような混乱は望んでおらず、「相次ぐミサイル発射と核実験で、中国も北朝鮮への適切な制裁は必要との認識だ。ただ、日米韓と同じ側に立つことはあり得ない」と一般的には見られています。

****北朝鮮制裁、切り札盛るか 国連憲章第7章、焦点 刺激恐れて中国慎重****
国連安全保障理事会は12日、北朝鮮の核実験を非難する報道声明を発表。オバマ米大統領も、一般教書演説で北朝鮮に厳しく対処する姿勢を明確にした。国際社会は今後、国連安保理を舞台に北朝鮮への追加制裁を議論するが、決議に強制力をもたせる国連憲章第7章への言及が盛り込まれるかどうかが焦点になる。

「相次ぐミサイル発射と核実験で、中国も北朝鮮への適切な制裁は必要との認識だ。ただ、日米韓と同じ側に立つことはあり得ない」。中国の外交政策にかかわる研究者は13日、こう話した。

中国は、昨年12月の事実上の長距離弾道ミサイル発射に対する1月の安保理決議で、北朝鮮が核実験などに踏み切った場合は「重大な行動を取る」との文言に同意した。
一方で、今回の核実験後の安保理緊急会合では、経済制裁などの強制措置を定めた「国連憲章第7章に基づく決議」に言及した報道声明の原案を拒否した。

その背景を外交筋は「金正恩(キムジョンウン)政権の強硬姿勢が中国の予測を超え、圧力を強めすぎることへの懸念が出ている」と見る。首脳外交のパイプがあった故金正日(キムジョンイル)総書記の時代と違い、金正恩第1書記の出方を読み切れないがゆえに、慎重になっているとの分析だ。
これに対し、米国などは安保理で、北朝鮮にこれ以上の「暴走」を許さないための実効性の高い追加制裁を求める方針だ。

安保理は2006年、09年の核実験、昨年末のミサイル発射を受けた決議で、大量破壊兵器関連物資・技術の輸出入禁止▽ぜいたく品の輸出禁止▽団体・個人の資産凍結――など、広範な制裁を科している。複数の安保理関係者によると、新たな決議案に米国は、特に実効性が高いとされる金融制裁強化を盛り込みたい意向だが、中国との間でせめぎ合いが予想される。

今月の議長国を務める韓国は中国への「包囲網」を敷き、何とかして制裁決議をまとめたい考えだ。1月から非常任理事国となった韓国は当初から北朝鮮問題への積極関与を表明。ニューヨーク入りしている金星煥(キムソンファン)外交通商相も今月中の決議採択に意欲を示した。
ただ、中国は北朝鮮を刺激しすぎないぎりぎりの線を探り続けるとみられ、交渉には時間がかかるとの見方が出ている。(後略)【2月14日 朝日】
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なお、国連憲章第7章に基づく安保理決議は全国連加盟国に対して法的拘束力を持ちます。

殆んどその動向がわからない北朝鮮指導部と、これまた情報が限定されている中国指導部の関係という話になると、よくわからないとしか言いようがありませんが、今回核実験に関しては、中国も圧力強化の姿勢は見せています。ただ、体制崩壊につながらない範囲内で・・・ということです。

****北朝鮮核実験:中国、圧力強化へ****
北朝鮮の3回目の核実験について伝統的な友好国の中国は12日、外務省が「断固として反対する」との声明を発表した。再三の自制要求が無視され、中国人が最も重視する春節(旧正月)の連休中に実施をぶつけられたことは、最近の中朝関係のきしみを象徴しており、中国としても北朝鮮への圧力強化に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれている。

中国中央テレビは12日、春節で華やぐ各地の様子を伝えていたが、北朝鮮での核実験実施の可能性が伝えられると韓国メディアの報道を引用しながら速報し、北朝鮮と国境を接する吉林省で住民が1分ほどの揺れを感じたと報じた。

中国外務省の声明では北朝鮮に対し、「非核化の承諾を守り、情勢を悪化させる行動を停止するように」と要求。一方で、関係国に対し、対話と協議を通じ、6カ国協議の枠組みで朝鮮半島非核化の問題を解決するように呼びかけた。
09年の核実験の際に出した声明では、北朝鮮に「6カ国協議の軌道に戻るよう強く要求する」と訴えていたが、今回は関係国への呼びかけで6カ国協議の重要性を主張するにとどめた。北朝鮮が1月23日に国連安保理での制裁決議採択を受けて「6カ国協議の共同声明(05年9月)は死滅した」と表明したことを考慮した可能性もある。

当初は決議採択に難色を示していた中国が最終的に賛成したことに北朝鮮は強く反発した。今月に入ってからも中国側の働きかけが難航しているとの見方が強まるなか、中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)副報道局長が定例会見で「中朝の対話ルートは滞りない」と強調する一幕もあった。

だが、北朝鮮への影響力低下が指摘されるなか、中国国内でも強硬な対応を求める声が強まっているのも事実だ。1月25日付の国際情報紙「環球時報」は社説で「(北)朝鮮が新たな核実験を行ったり、再び衛星を打ち上げたりすれば、中国は援助を減らすべきだ」と主張。同紙は今月6日にも「3回目の核実験に踏み切れば重大な代価を支払うことになる」として改めて援助削減を訴えた。

中国の楊潔※(よう・けつち、※は竹かんむりに褫のつくり)外相はケリー米国務長官との電話協議で3回目の核実験があった場合に追加措置を取ることで一致している。遼寧社会科学院の呂超研究員は「安保理で中国は新たな決議に賛成することになるだろう」とみる。ただ、北朝鮮の体制崩壊につながるような事態は中国としても望んでおらず、呂研究員は「あくまでも対話を通じて抑制的な対応を取るべきだ」と主張する。【2月12日 毎日】
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中国の北朝鮮に対する最近の“強硬姿勢”は国際社会からの批判をかわすポーズにすぎず、北朝鮮と関係の深い軍と保守派を主な支持基盤とする習近平指導部は、基本的に北朝鮮との良好な関係を維持するとも指摘されています。

****北核実験 中国、悩める制裁と配慮 習指導部、支持基盤に親北の軍****
北朝鮮の核実験を受けて中国外務省は12日、「断固とした反対を表明する」などとする声明を出した。自制を促したが無視され、北朝鮮にメンツをつぶされた形の中国は当面の間、国際社会と歩調を合わせて一定の範囲内での追加制裁に同意するとみられる。ただ、こうした“強硬姿勢”は国際社会からの批判をかわすポーズにすぎない。
北朝鮮と関係の深い軍と保守派を主な支持基盤とする習近平指導部は、基本的に北朝鮮との良好な関係を維持するとみられるからだ。

2006年と09年に北朝鮮が核実験を行った際、中国の胡錦濤指導部は今回と同じように批判的な声明を発表。中朝国境に検問所を設け、ぜいたく品や軍需品などの輸出を禁止するなど経済制裁を実施した。
しかし、軍や国内の親北朝鮮派などの反対でいずれも長く続かなかった。その後、中国の北朝鮮への援助や貿易は以前と比べてむしろ拡大。中国税関当局の統計では12年の中朝貿易総額は初めて60億ドル(約5700億円)を突破、08年の2倍以上となった。

習近平指導部は、胡錦濤政権より北朝鮮との関係を重視しているといわれる。欧米や日本など国際社会との協調路線を推進した温家宝首相が中枢から去り、北朝鮮通といわれる張徳江副首相が最高指導部の序列3位に入ったことも背景にあるといわれる。
北朝鮮の金日成総合大学への留学経験がある張氏は金正恩(キム・ジョンウン)家族と太いパイプがあり、厳しい対北制裁に強く反対しているとの情報もある。

習近平政権は沖縄県・尖閣諸島や南シナ海の離島の領有権などをめぐり、日本や東南アジアとの対決姿勢を強めている。
ある共産党筋は「この時期に北朝鮮と対立したくないのが本音だが、核保有を支持することもできない。とりあえず前政権と同じような対応で時間稼ぎするしかないだろう」と予測した。【3月13日 産経】
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北朝鮮一辺倒であることを許さない圧力が国内外で強まっているのも事実
結局のところ、中国は北朝鮮を追い込むような対応はとらないということですが、ただ、「血で固めた友情」と言われた両国関係に変化もみられることも事実です。

****血盟変調? ミサイル制裁決議で北朝鮮、中国に反発****
朝鮮戦争をともに戦い、「血で固めた友情」ともいわれる中朝関係が、変調の兆しをみせている。両国の微妙な間合いは北朝鮮の3度目の核実験を受けた今後の国連安全保障理事会の論議にも、影響を与える可能性がある。

 ◆「すでに友人でない」の声
・・・・中朝を行き来する中国人商人によると、「中国はすでに友人ではない」といった見方が最近、北朝鮮で広まっているという。
北朝鮮が昨年12月、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に踏み切ったことに対して安保理が1月22日に制裁強化決議を採択すると、北朝鮮は中国への不快感を示していた。

決議が出た後の1月23日の朝鮮中央通信は、金正恩(キムジョンウン)・第1書記の「整形手術疑惑」を伝えた中国メディアを名指しして、「恥を知れ」と厳しく糾弾。翌24日に北朝鮮の国防委員会が出した声明は、米国などへの反発と同時に「世界の公平な秩序維持の先頭に立つべき大国まで、米国の専横と強権に押されている」として、暗に中国やロシアを批判した。いずれもこれまでにはない異例のことだ。(中略)
 
昨年11月に発足した習近平(シーチンピン)指導部は、尖閣諸島や南シナ海の問題が深刻さを増す中、アジア回帰を進める米国とどう向き合うかという課題と直面する。北朝鮮を特別視すべきでないとの世論の高まりも無視できない。中国政府は制裁で北朝鮮を追い込むことには今も消極的だが、北朝鮮一辺倒であることを許さない圧力が国内外で強まっているのも事実だ。 【2月14日 朝日】
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北朝鮮に反発する中国国内世論には、生意気にも中国の言うことをきかないことへの苛立ちのほか、核実験の環境への影響も関係しているとも報じられています。

****北の核実験、中国住民にも抗議の声広がる****
北朝鮮の核実験に対し、北朝鮮の後ろ盾とされる中国の住民の間にも抗議の声が広がっている。

安徽省合肥市では13日、男性(41)が市中心部で北朝鮮による核実験反対を訴える紙を掲げ、当局に一時拘束された。男性は読売新聞の取材に「中国との国境地帯で核実験をする北朝鮮に対し、見て見ぬふりをする政府に抗議したかった」と話した。
中国版ツイッター・微博には、北朝鮮と隣接する中国東北部・遼寧省瀋陽市の北朝鮮総領事館前で抗議の紙を掲げる男女の写真が公開された。

黒竜江省ハルビン市の大通りでも、「我々の人、土地、水、空気、食糧を守れ」「中国政府は自国民を守る義務と責任がある」と書かれた布が掲げられたという。
環境汚染を心配し、全国規模のデモを呼びかける書き込みもあった。

こうした書き込みの一部はすでに削除された。北朝鮮と関係の深い中国政府に批判が向かわないよう当局が目を光らせているとみられる。
中国にとって、1950年代に朝鮮戦争を共に戦った北朝鮮は「血盟」関係にあり、左派(保守系)の間では親近感を抱く人が多い。

だが、核問題では中国の説得を受け入れず挑発行為を繰り返すため、特に若い世代を中心に反発も高まっている。中国国内での環境意識の高まりも、核実験を強行した北朝鮮へのいらだちにつながっている模様だ。【2月14日 読売】
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中国政府の動きとしては、韓国紙・中央日報が14日、中国政府が、3度目の核実験を強行した北朝鮮に対する独自制裁として、北朝鮮北東部羅先(ラソン)などの経済特区の共同開発計画の「全面的見直し」を検討していると報じています。【2月14日 読売より】
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欧州  馬肉混入問題で大騒動

2013-02-13 21:50:37 | 欧州情勢

(英米文化では馬は愛すべき存在であり、決して食べるものではないようです。 “flickr”より By Tahneelynn  http://www.flickr.com/photos/tahneelynn/8467242982/

偽りのラベル表示に怒る消費者
日本でも2007年にミートホープによる食品偽装問題が話題になりましたが、イギリス、アイルランド、フランスなど欧州では、牛肉と偽って馬肉が加工食品に使用されていた食品偽装問題で持ちきりです。
対象商品、関係国が拡大するなかで、欧州各国のTVニュースは連日トップニュース扱いで報じています。

****欧州で馬肉混入スキャンダル 食品のラベル表示に不信高まる****
牛肉と偽ってラベル表示された馬肉が食品に混入されていた問題が、一大スキャンダルとして欧州全域に広がっている。ラベル表示がどの程度正確なのか、食品が複雑な経路をたどって消費者に届けられているのではないかなど、疑念が高まっている。

問題は、アイルランドの食品基準監督当局が先月、テスコなど英国の大手スーパーで販売されていた牛肉バーガーに馬肉が混入していたと発表したことが発端だ。しかし最近数日間、他の食品にも同様の懸念が浮上した。例えば、牛肉とラベル表示された冷凍ラザニアに馬肉が最大100%使用されていたことを当局が突き止め、他の諸国にも波及した。

英国とフランスのスーパーは何百万個もの製品を撤去し、騒ぎはアイルランドからスウェーデン、ルーマニアに広がっている。また一部の国では当局が食肉業界関係者と会い、偽ったラベル表示をした食品がどのように店舗の棚に並べられたのかを見極めようとしている。

消費者たちは、偽りのラベル表示に怒っており、食肉処理場と、食品を消費者に届ける供給業者との間の複雑なネットワークや、国境を越えて輸送される食品がどう管理されているかをめぐり懸念が強まっている。【2月13日 The Wall Street Journal】
******************

イギリスでは警察による食肉処理場等への強制捜査も実施されています。

****英警察、馬肉問題で国内2工場を強制捜査****
ケバブやハンバーガーに使われていた牛肉に馬肉が混入していた問題を捜査している英警察は12日、イングランド北部の食肉処理場とウェールズの食肉工場の強制捜査を行い、施設内にあった全ての肉を押収した。欧州各国に広まっている今回の馬肉騒動で、このような捜査が行われるのは初めて。

この問題をめぐっては、組織犯罪の関与や健康被害を懸念する声が上がっており、13日には欧州連合(EU)が緊急会議を開く予定だ。

フランスでは、食品小売業者ピカール(Picard)が、検査の結果、同国の食品会社Comigelが製造した「ビーフ」ラザニアから馬肉が検出されたと発表した。

Comigelは先週、スウェーデンの冷凍食品大手フィンダス(Findus)に対し、自社が製造した食品に馬肉が混入していたことを知らせた。以来、英国、スウェーデン、フランス、スイス、オランダの小売業者らは、Comigelの食品を店頭から回収している。【2月13日 AFP】
*********************
日本では“馬刺し”などを食べますので、偽装はともかく、「馬肉だっていいじゃないか・・・」なんて思ってもしまいますが、この馬肉混入あるいは偽装の問題が欧州で大きく取り上げられている背景には、イギリスなどでは馬肉を食べる習慣がないことがあります。
日本でも牛肉と豚肉の偽装ならともかく、もし犬の肉などが混入していたら大騒動になるでしょう。

【食文化の問題も】
欧州全体が馬肉の食習慣がないのだろうか?・・・とも、気になっていたのですが、下記記事によれば、フランスやオランダなどでは馬肉の食習慣も存在しているようです。

****馬肉偽装問題、食文化を考える契機に*****
ヨーロッパは今、馬肉の話題で持ち切りのようだ。先頃、牛肉100%と表示された加工食品の一部に、さまざまな比率で馬肉が混入していることが発覚して、一大スキャンダルとなっている。馬肉混入の疑いのある食品には、バーガーキング社のハンバーガーや、市販の冷凍ラザニアも含まれている。
中には、牛肉として売られているのに、中身は100%馬肉だった事例まである。

ベジタリアンにとっても肉食系の人々にも、このスキャンダルはショッキングだったようだ。バーガーキング社は渦中の食肉加工業者との取引を停止したと報じられた。冷凍食品のフィンダス社も、イギリスとフランスで冷凍ラザニアを小売店から回収した。シェパーズパイやムサカも同様に姿を消した。

豚、鶏、牛は当たり前に食べるという人でも、馬を食べるのには言いようのない抵抗感がある。
ただ、この感覚はアメリカやイギリスなど、世界の一部の地域でしか通じないものらしい。

馬肉が牛肉に偽装された問題が最初に表面化したイギリスでは、馬は一般に、人類の穏やかな友で、気高いアスリートだと考えられている。多くのアメリカ人にとっても、おそらくこの感覚は共通している。ケンタッキー・ダービーの熱狂や、馬を題材にした映画や小説を思い起こしてほしい。小説『黒馬物語』や映画『シービスケット』の主人公たちを食べるなんて考えられない、と感じる人がほとんどと言って間違いないだろう。

だが、世界の多くの地域では、馬肉は当たり前に口にされている。そこに後ろめたさはない。

◆馬肉を食べる文化圏
例えば、地中海に浮かぶサルデーニャ島の郷土料理には、広く馬肉が使われている。ロバの肉も同様だ。
馬肉を好むのは、ヨーロッパでサルデーニャ島だけではない。オランダでは一部の精肉店で馬肉が購入可能だし、フランスでも口にされている。一般的に普及した食習慣ではないものの、馬肉の通販サイトも存在し、グリル、ロースト、煮込みといった目的別にカットされた馬肉を購入できる。

国連食糧農業機関(FAO)の試算によると、世界で最も多くの馬肉を消費している国は中国だ。
中国では馬肉を乾燥させてソーセージにする。馬肉食が特に一般的なのは南部の広西チワン族自治区で、米粉の麺とともに供される。

世界第2位の馬肉の消費国は、FAOの試算によるとカザフスタンだ。ここでは馬肉は食生活に欠かせないものとなっている。さまざまなソーセージが作られているほか、マントゥという餃子のようなものにも使われる。
ロシア、メキシコ、モンゴル、アルゼンチン、日本などの国々も、馬肉の消費量が多い。

◆何の肉かではなく、偽装自体が問題?
そもそも、馬肉はどんな味がするのだろうか。フードライターのウェイバリー・ルート(Waverley Root)氏はかつて、「甘さが口の中に残る。口に合わないわけではないが、肉だと思うと戸惑う」と評している。
「人類による馬肉食を推進する」という目的を掲げたブログ「Eat Horse」では、この食材の健康上のメリットが喧伝されている。低脂肪、低コレステロールで、鉄分を豊富に含むのだとか。

ロサンゼルス生まれで食の歴史を研究しているアンドリュー・F・スミス(Andrew F. Smith)氏は、アメリカ人としては珍しく、一方的な判断を避ける立場だ。
「馬肉を食べることの何が問題なのか?」とスミス氏は問いかける。スミス氏によれば、ヨーロッパでの今回の騒動の真の問題は、原材料について消費者に嘘の情報が伝えられたことだ。

馬肉食の是非についてのスミス氏の立場はこうだ。「どの動物を食べていいかは、私たちが決めたことだ。私たちの決めた(食べていい)条件は、ほかの国では通用しない場合がある」。 【2月13日 National Geographic】
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食習慣の違いから話がこじれるのは、クジラでも同じです。

【 “犯人扱い”される供給国の怒り
それはともかく、今回は“偽装”が当然ながら問題となります。
馬肉の供給元として“犯人扱い”されているルーマニアは、ひどく怒っています。

****欧州の馬肉混入問題、「ルーマニア産」の疑いを同国政府が否定****
欧州で「牛肉100%」をうたっていた冷凍食品に馬肉が使われていた問題で、英国とフランスの両政府は11日、馬肉を牛肉と偽った「犯罪者たち」の特定を急ぐよう呼びかけた。一方、問題の「牛肉」の輸出元である疑いが出ているルーマニアの首相は同日、自国にかけられている嫌疑を怒りをあらわに否定した。

英国のオーウェン・パターソン食料相は、このスキャンダルの背景には「大規模な」共同謀議があるとし、問題が波及している可能性がある16か国には警告の通達が送られたはずだと述べた。
「表示と異なるものが混入した製品が英国の消費者に売られていたという事実は受け入れがたく、法的措置により犯罪者たちが一掃されることを強く願う」(パターソン食料相)

フランスのフランソワ・オランド大統領も、責任がある者には「制裁が科されるべきだ」と語り、フランス国民に対し、国産の肉だけ食べるよう呼びかけた。

このスキャンダルでは、英国やフランス、スウェーデンで販売されていた数百万個の冷凍食品が回収されている。
欧州冷凍食品大手フィンダスに問題の「牛肉」を供給したフランスの食品会社Comigelは、肉はフランスの食肉加工業者Spangheroがルーマニアの食肉処理場から輸入したものだと発表した。

これに対し、ルーマニアのビクトル・ポンタ首相は、自国にかけられている嫌疑を怒りをあらわに否定。疑われている2つの食肉処理場が「欧州の基準に違反していなかったことは確認済みだ」と記者団に語った。同国の農業相もまた、これら食肉処理場は虚偽の表示をしていないと述べている。

ポンタ首相は、Spanghero社が「ルーマニアの企業と直接コンタクトしたことはない」と指摘し、欧州連合(EU)に対し、責任の所在を明らかにするよう要請した。「ルーマニアが悪者と決めつけられるのは許容できない。率直に言って、本当に腹を立てている」【2月12日 AFP】
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ルーマニアと並んで、ポーランドも同様の扱いを受けています。
****欧州で馬肉混入の波紋広がる、「国際的陰謀説」も****
アイルランド当局は11日、牛肉食品の一部に馬肉が混入しているのが見つかった問題で、国内の食肉加工施設にDNA検査を命じる方針を示した。また欧州連合(EU)議長国でもある同国は、この問題を話し合うための閣僚級会合の開催も各国に呼び掛けた。

アイルランドで冷凍ビーフバーガーから馬のDNAが検出されたことが発端となった「馬肉スキャンダル」では、英小売りテスコ[TSCO.L]や米バーガー・キング[BKW.N]がアイルランドの食肉加工業者との取引を中止した一方、アイルランド当局は問題の「牛肉」は元をたどればポーランド産だと非難し、ポーランド側がこれに異議を唱えるなど、波紋が広がっている。

アイルランドのコベニー農業相は、13日にブリュッセルで開催されるEU会合で「この問題に対するEUレベルでの包括的な対策」を協議したいとしている。会合には、ボルジ欧州委員(保健・消費者保護担当)のほか、関係各国の農相らが参加する見通し。

英国では馬肉を食べるのはタブー視されており、パターソン環境・食料・農村相は、問題の背後に「国際的な犯罪的陰謀」があると指摘。英政府と仏政府は、責任者を罰する構えを示している。

自国産牛肉に馬肉混入が指摘されたルーマニアのポンタ首相は11日、記者会見で「これまでの調査の結果、ルーマニア企業や国内で欧州の規制が違反されたケースはない」と述べ、不快感をあらわにした。【2月12日 毎日】
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TV報道を観ていると、食肉の流通経路は随分と複雑なようです。多分、日本などでも同様なのでしょうが、最終段階に至るまでに、いろんな国の企業の間の中間取引が介在しているようです。
したがって、どの段階で混入・偽装されたのかを確認する必要があります。それなしに、いきなり「供給元は・・・・」と犯人扱いされたのではたまらない・・・といった怒りです。

ところで、「国際的な犯罪的陰謀」とは何でしょうか?よくわかりません。

日本でも、中国産食品の安全性などが問題になると、「やはり国産が安心・・・」という話になりますが、TVでは自国産品のラベル表示を行っているオーストラリアが紹介されていました。オーストラリアでは食品だけでなく広く自国産ラベルが適用されているようですが、その主眼は国内雇用を守るという点にあるようです。

共同体の深化を目指すEUにおいて“国産”へのこだわりは逆の流れにもなります。
自国生産食品の需要が増すのは、畜産・農業大国フランスの生産者などは喜ぶ話でしょうが。
先ずは、どこの国の産品でも信頼できるルール・チェック体制づくりが基本でしょう。
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フィリピン  ミンダナオ島和平で政府側は“楽観的見通し” 怒りをかう米軍掃海艇座礁事件

2013-02-12 21:33:27 | 東南アジア

(2月11日、フィリピン南部ミンダナオ島で、反政府武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)のムラド議長(左)と会談するアキノ大統領(右) 【livedoor News】http://news.livedoor.com/article/image_detail/7400455/

包括合意に向けて「3月中にまとめられるだろう」】
イスラム系反政府武装勢力の活動が続いているフィリピン・ミンダナオ島の情勢については、昨年12月6日ブログ「フィリピン・ミンダナオ  台風被害で死者470名超、更に拡大も 難航する和平交渉」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121206)で、自治政府設立に向けた「枠組み合意」が成立したこと、ただし、具体策については今後の交渉次第で難航もよそうされることを取り上げました。
その後の交渉は進展しているのか、政府側からは3月の「包括合意」の見通しが報じられています。

****3月にも包括合意 ミンダナオ和平で政府側見通し****
フィリピン南部ミンダナオ島を拠点とするイスラム系武装組織と政府の和平交渉で、政府側団長を務めるミリアム・フェレール氏が7日夕、マニラで朝日新聞記者と会見し、武装解除のプロセスなどを定めた「包括合意」を3月までに実現できるとの見通しを示した。

政府と武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)は昨年10月、イスラム系住民が自治政府を設置する枠組み和平案に合意。和平の次の段階として、天然資源の開発や税の配分、MILFの武装解除の進め方など具体的な内容については、別途明記した四つの付属文書に基づく包括的な合意を目指している。

フェレール氏は、交渉を仲介するマレーシアで昨年11月以降3回開かれた交渉を経て、付属文書のうち、自治政府への移行方法などを定めた文書の原案がまとまったことを明らかにした。
また二つの文書(「権限移譲」と「財の移譲」)で定める自治政府への予算割り当てや天然資源の利益配分などで意見の相違があるものの、「今月の協議で歩み寄りできるだろう」との楽観的な見通しを示した。

一方、「正常化」と題する第4の文書では、武装解除や兵士の警察への編入、紛争被害者や兵士への補償、私兵の扱いなど、多くの懸案が残っていることを認めた。フェレール氏は「双方とも和平に向けてこの機会を逃してはいけないとの思いが強い。移行スケジュールやロードマップを含め、3月中にまとめられるだろう」と自信を見せた。【2月9日 朝日】
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自治政府への予算割り当て、天然資源の利益配分、武装解除や兵士の警察への編入、紛争被害者や兵士への補償、私兵の扱い・・・・どれひとつとっても難題で、アキノ政権側の“楽観見通し”にはやや疑問も残ります。
前回ブログでも取り上げたように、最終的には改憲が必要ではないかとの問題もあり、そのあたりがどのようにクリアされたのか定かではありません。アロヨ前政権でも、最高裁の“違憲判断”で合意が破綻した経緯があります。

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・・・・アキノ政権は細部を詰めないままに和平合意としていて、特に2016年までに創設される予定の自治政府『バンサモロ』に関して、円滑な自治政府設立には改憲が必要とMILF和平交渉団長のイクバルから指摘がなされている。
しかし前アロヨ政権時代に一度は認めた自治政府設立がその後の最高裁で現行憲法に『違反』するとの判決が下された経緯があって、MILFの望むような形では、再び最高裁による違憲判決が出る可能性がある。

改憲に対しては根強い反対論が議会、カトリック宗教界、世論の中にあって1992年~1998年のラモス政権以来、議論は止まったままである。
これに対してアキノ政権は柔軟に対応すれば改憲をしなくても合意履行は可能と当てのない楽観論を展開するのみで実現性の薄さに危惧を持たれている。・・・・【2012年11月12日 フィリピン・インサイドニュース】
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アキノ大統領は、合意に向けた流れを加速させるべく、ミンダナオを訪問しています。

****和平交渉加速呼び掛け=ミンダナオ訪問―比大統領****
フィリピンのアキノ大統領は11日、反政府武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)の勢力圏である南部ミンダナオ島マギンダナオ州を訪問し、最終和平に向けた交渉の加速を呼び掛けた。

フィリピン政府とMILFは2012年10月、イスラム系住民による自治政府を16年に設立することを目指す和平の「枠組み合意」文書に署名。しかし、天然資源の開発に伴う利益配分やMILFの武装解除などについては協議が続いている。

AFP通信によれば、アキノ大統領は自治政府設立まで3年余りしかないと指摘した上で「恒久的な平和をもたらすために、今行っている全てを加速しなければならない」と語った。【2月11日 時事】 
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“楽観見通し”が現実となるように期待します。
なお、ミンダナオ島などフィリピン南部には、モロ・イスラム解放戦線(MILF)以外に、アルカイダと連携する過激イスラム武装組織アブ・サヤフが存在しています。

警告を無視してサンゴ礁海域に進入、座礁
フィリピンの対外的な面での話題としては、アメリカ掃海艇の座礁事件が注目されています。
あろうことか、アメリカ掃海艇がフィリピン側警告を無視して世界遺産のサンゴ礁に突っ込んだあげく座礁、フィリピン側の怒りをかっている・・・というものです。
かねてより、中国の南シナ海での領有権主張に対し、フィリピンはアメリカを後ろ盾とする形で、ベトナムと並んで強硬な姿勢をとっていますが、そのアメリカとの関係に影響しかねない事件です。

****世界遺産のサンゴ礁に米軍艦が座礁、「警告を無視」とフィリピン激怒****
世界遺産に登録されているフィリピン沖のトゥバタハ岩礁海洋公園内で、米海軍の掃海艦がサンゴ礁に乗り上げ、前週から身動きが取れなくなっている。フィリピン当局は21日の記者会見で、座礁した掃海艦が公園側の警告を無視してサンゴ礁のある海域に進入したことを明らかにした。

座礁したのは、米海軍第7艦隊に所属する掃海艦ガーディアン(全長68メートル)。米海軍によると事故当時、マニラ北部を出航しインドネシアに向かっていた。

トゥバタハ岩礁海洋公園を管轄するフィリピン政府のアンジェリク・ソンコ担当官によると、公園保護官らは17日、ガーディアンに無線で同艦がトゥバタハのサンゴ礁に接近していると知らせた。ところが、ガーディアンの艦長は米大使館に苦情を申し立てると反発。ほどなくガーディアンはサンゴ礁の一部に乗り上げ座礁したという。この事故について米海軍は謝罪したが、フィリピン国民は怒りを募らせているという。

フィリピン西部パラワン島の南西130キロ沖のスル海に広がるトゥバタハ岩礁海洋公園は、ユネスコの世界遺産に登録されており、フィリピン政府は当局が承認した研究および観光を除いて立ち入りを法律で禁止し、サンゴの礁の保護に努めてきた。

ソンコ担当官によると米海軍には罰金が科せられる見通しだが、座礁したままのガーディアンは大波を受けて揺れており、サンゴ礁への損傷がどの程度になるか、罰金が幾らになるかは現時点では不明という。【1月21日 AFP】
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フィリピン大統領報道官は、この問題でアメリカ政府に損害賠償を請求したことを発表していますが、基本的には“事態を静観”しています。

フィリピンとアメリカは合同軍事訓練を行い、南シナ海問題でも共同歩調をとっていますが、冷戦終結後、ナショナリストを中心とする反米感情の高まりもあってフィリピン国内のクラーク空軍基地とスービック湾の海軍施設が撤去されたように、アメリカに対する感情は微妙なものがあります。
今回事件は、反米的なナショナリストだけでなく、環境保護団体・一般市民・地元政治家を含んだ広範な層の怒りをかっているとのことです。【2月12日号 Newsweek日本版より】

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シンガポール  日本の現状を教訓に、国内批判も多い外国人受け入れ拡大路線に回帰

2013-02-11 21:39:52 | 東南アジア

(“19世紀のシンガポールは中国大陸からの出稼ぎが集まる巨大なタコ部屋で、秘密結社の募集で海を渡ってきた男たちは、農園で稼いだカネを阿片と博打で巻き上げられた。その利益を、イギリス人と華僑の商人が山分けしていたのだ”【12年12月6日 DIAMONDonline】というように、そもそもが移民労働者の国であるシンガポールと日本では移民政策に関して異なる事情もあるでしょう。 写真は“flickr”より By chooyutshing http://www.flickr.com/photos/25802865@N08/6955254259/

強い経済 競争社会 事実上の一党独裁

シンガポールは、面積は東京都とほぼ同じ広さ(世界175位)の小さな国ですが、人口約500万人で、人口密度は世界第2位だそうです。

民族的には華人(中華系)を中心とした複合民族国家で、“住民は、華人が76.7%、マレー系が14%、インド系(印僑)が7.9%、その他が1.4%となっている。華人、マレー系、インド系からなる複合民族国家のため、公共メディア、文化一般に3系統の文化が共存するが、共生しながらもそれぞれ異なるコミュニティーを形成している”【ウィキペディア】 
マレーシアのマレー系と華人を逆転させたような構成・民族関係にも思えます。

経済的には国際金融の中心都市であり、“2011年の一人当たりのGDPは49,270ドルであり、世界でも上位に位置する。国際競争力が非常に強い国であり、2011年の世界経済フォーラムの研究報告書において、世界第2位の国と評価された。富裕世帯の割合が世界で最も高く、およそ6世帯に1世帯が金融資産100万ドル以上を保有しているとされる。(中略)2011年7月、アメリカのダウ・ジョーンズなどが公表した国際金融センターランキングにおいて、ニューヨーク、ロンドン、東京、香港に次ぐ、世界第5位と評価された。”【ウィキペディア】と、一人当たりのGDPで見れば日本を凌ぐ水準にあります。

資源もないシンガポールでこのような経済を支えるためには人材だけが頼りということで、シンガポールは厳しい競争社会であることでも知られています。

****シンガポール 止まらない競争****
仕事帰りの地下鉄駅で、会社員風の中年男性が突然、携帯電話に大声で叫ぶのを見た。「どうしてそうなった!?」
男性は、怒りの表情で走り去った。あっけにとられていると、一緒にいた友人が教えてくれた。「きっと、子供のPSLEの結果が悪かったと妻が電話してきたんだよ」

PSLEとは、シンガポールの小学校6年生全員が受ける卒業認定試験。結果次第で進学できる先が決まる。その日は成績の発表日だった。親が結果を聞いて歓喜したり取り乱したりする姿は、この時期の風物詩でもある。

この国は小学校からの2カ国語教育や成績別クラス分けで、世界的に高い教育水準を保つ。他方、テスト成績重視の風潮は子供には重圧だとの批判もある。政府は「成績がすべてじゃない」と今年から優秀者の公表をやめた。だが、生徒への成績告知の翌日には、ネット上で親たちが匿名で成績を公表しあった。

一度始まった競争は止まらない。国の競争力を保つためとはいえ、わずか12歳でそんな関門を通らねばならない子供たちのことを思うと、胸がざわつく。【12月4日 朝日】
********************

一方、政治的には、“人民行動党の事実上の一党独裁制(ヘゲモニー政党制)。このため、シンガポールはいわゆる「開発独裁」型国家であるといわれ、典型的な「国家資本主義」体制であるともいわれる。労働者党などの野党の存在は認められているが、その言論は大きく制限され、投獄や国外追放などの厳しい弾圧に晒されている。21歳以上の全国民が選挙権・被選挙権を持つ普通選挙だが、野党候補を当選させた選挙区民は、徴税面、公団住宅の改装が後回しにされるなどの“懲罰”をうける。このように独裁政治、強権政治が行われている一方、経済的に豊かで表向きには華やかなことから、「明るい北朝鮮」と呼ばれることがある。”【ウィキペディア】と、問題も少なくない国でもあります。

与党主導の成長重視路線への批判
その“事実上の一党独裁”に変化が生じ始めたとして注目されたのが、2011年の総選挙でした。
“2011年5月の総選挙で、野党・労働者党が1965年の建国以来最多の6議席を獲得。一方、与党・人民行動党は得票率が6割に落ち込み、現職閣僚2人が落選するなど苦戦。選挙後、リー・シェンロン首相は「シンガポールの歴史的な分水嶺だ」と評した。 【2012年4月4日 朝日】”

政治的変化を求める動きの背景には、経済格差の拡大、移民増加による軋轢があると指摘されています。

****シンガポール、政治意識の芽 与党大苦戦総選挙から1年*****
・・・・人口も資源も乏しい小国が経済成長を遂げ、1人あたりの国内総生産(GDP)で日本を超えるほど豊かになった背景には、外資や競争原理の導入、徹底したエリート主義など、与党主導の成長重視路線があった。

しかし、所得格差を示すジニ係数は2000年の0.442から11年の0.473まで高まり、格差は広がった。物価高や住宅価格も高騰を続けるなか、成長の果実を得ていないと考える国民は少なくない。
海外から人材を集めて発展してきた国だが、総労働人口約320万人のうち、外国人は約110万人。外国人労働者や新移民の急増で就職難や感情的な反発も強まった。・・・・【同上】
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選挙結果を受けて政府・与党は不人気な外国人受け入れを制限しましたが、その後も、与党苦戦の政治状況は続いています。
****シンガポール議会補選で野党候補が勝利****
シンガポール議会(一院制)の補欠選挙が北東部の選挙区(定数1)で26日行われ、野党・労働者党(WP)の候補が、与党・人民行動党(PAP)の候補を破って当選した。

PAPは昨年5月の総選挙で過去最低の得票率を記録した。今回の補選でも、WPが62%の得票で快勝した。経済成長の一方で拡大する所得格差への国民の不満が、改めて浮き彫りになった形だ。
補選では、昨年の総選挙に続いて移民政策も焦点となった。外国人労働力受け入れを進めてきたリー・シェンロン政権には厳しい選挙結果となった。【2012年5月28 読売】
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社会のきしみを反映した現象も報じられています。
****26年ぶり、シンガポールでスト 中国人バス運転手ら****
シンガポールで11月26、27の両日、公共交通大手SMRTの中国人バス運転手らによるストライキがあった。政府は12月1日、首謀者ら5人を起訴、29人を中国へ送還すると発表した。政府の統制が厳しいシンガポールでストが実施されたのは26年ぶり。

ストは、社内のマレーシア人運転手との間の給与格差の解消を訴えて行われた。刑法で定める14日前までの通告がなく、政府は「違法なスト」と認定。起訴された5人が有罪となれば2千シンガポールドル(約13万5千円)以下の罰金や1年以下の禁錮刑となる。(後略)【12年12月2日 朝日】
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少子化の中で「アジアのハブ」として生き残るために、拡大路線に回帰
政府は“急速に進む少子高齢化による生産年齢人口の減少と労働力不足を移民で補い、経済成長を維持する”方向に最近回帰したことが報じられています。
政権与党が移民受け入れに固執する背景には、シンガポールの少子化があります。
日本をも下回る出生率で、外国から労働力を受け入れないと現在の経済を支えられないとの判断です。

****シンガポール 人口政策承認 移民拡大、くすぶる不満****
「仕事失う」「不動産が高騰」
シンガポール議会は8日、政府が先月末に発表した移民の大幅な受け入れを柱とする「人口白書」を承認した。白書で示された新人口政策の狙いは、急速に進む少子高齢化による生産年齢人口の減少と労働力不足を移民で補い、経済成長を維持することにある。だが、国民の反発を誘発し、与党内からも異論が出るなど社会を揺るがしている。
                   ◇
「労働力確保」狙い
合計特殊出生率は1・2と低く、生産年齢人口は2020年以降、減少の一途をたどる。これを食い止めるため政府は30年までに、現在531万人の総人口を最大で約3割増の690万人とし、現状では年間1万8500人の国籍取得枠を、最大で35%増の2万5千人に拡大するとした。

この結果、総人口に占める永住者を含む外国人の割合は38%から45%に増え、逆に国民の比率は62%から55%に低下する。民族構成比は中国系74・2%、マレー系13・3%、インド系9・2%(12年)で、政府はこの比率を将来も維持するとみられ、今後の移民は中国人が主体だとみていい。
白書に合わせ政府は出産奨励策と、人口増に備え70万戸の住宅を建設する開発計画も打ち出した。

だが、ネット上には「白書はシンガポールで生まれたシンガポール人に対する背信行為だ」など、批判と反発の書き込みがあふれている。
議会では与党・人民行動党の複数の議員が、白書に疑義を呈し、結婚・育児支援策を強化し出生率を上げる対策を主張した。白書に反対する野党・労働者党は、30年の総人口を590万人とする対案を示した。

反対論の核を成しているのは、移民の拡大で「仕事が奪われ、不動産価格の高騰も招く」「シンガポール人のアイデンティティーの喪失につながる」という懸念だ。中国系の間には、中国本土からの中国人に対する潜在的な嫌悪感と、一種の差別意識も存在する。

これに対し、リー・イシャン上級国務相(通産・国家開発担当)は「シンガポールは日本を教訓に対策を講じる必要がある。日本は外国人に門戸を閉ざし、そのつけが今、回っている」と、白書を正当化した。

白書は与党が圧倒的多数を占める議会で賛成77、反対13で承認された。だが、集会などが厳しく規制されているこの国にあって、16日に市内の公園内の演説ができる「スピーカーズ・コーナー」に、約千人を集め反対の気勢を上げる動きもあり、不満はくすぶる。

政府は11年の総選挙で国民の不満を背景に与党が敗北して以降、外国人受け入れ拡大路線を転換、流入を厳しく規制する段階的な措置をとってきた。それでも先月の補欠選挙では与党が労働者党に敗北している。
にもかかわらず今回、拡大路線に回帰したことは、少子化の中で「アジアのハブ」として生き残るために、背に腹は代えられないという危機感の表れだろう。
規制による外国人労働力の確保難から、外国企業の一部には撤退の動きも出ている。同時に、国民の統制も難しい局面を迎えた。【2月10日 産経】
******************

移民の多くが中国本土からなら文化的摩擦も少ないのでは・・・とも思われるのですが、“中国系の間には、中国本土からの中国人に対する潜在的な嫌悪感と、一種の差別意識も存在する”というのも面白いところです。
それはともかく、日本としては「シンガポールは日本を教訓に対策を講じる必要がある。日本は外国人に門戸を閉ざし、そのつけが今、回っている」(リー・イシャン上級国務相)という指摘を問題とすべきでしょう。

日本の現状が “失われた20年”とか言われるほど、“つけが回った”状況かどうかについては、異論もあるところでしょう。かつてのような勢いはないものの、そこそこうまくやっているのでは・・・との見方もできるように思われます。まだ“そこそこの国”として生きていく自覚はできていないようにも見えますが。

ただ、将来的に見て労働人口が減少していくのは避けられない現実です。
これに対処するための方策のひとつが移民受け入れですが、純血主義(あるいは閉鎖的)日本社会には高いハードルです。
移民なしに、どのように少子高齢化に対応していくのか、以前から最重要課題とされていますが、あまり議論がなされているようにも思えません。
30年後、50年後、とりかえしのつかない段階になって、「あの頃、ああしていれば・・・」と悔やまれることのないように、日本としてもシンガポールを教訓に対策を講じる必要があります。
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インド  “潜在的脅威”中国に備え軍備拡張  社会問題の深刻さでも中国に負けず劣らず

2013-02-10 22:16:28 | 南アジア(インド)

(1月26日のパレードでお披露目された新型の長距離弾道ミサイル「アグニ5」 この共和国記念日パレードは兵器だけでなく、オートバイのアクロバット走行とか、お釈迦様の山車とかいろいろあって、なかなか面白そうです。 “flickr”より By emkaytsg1 http://www.flickr.com/photos/emkaytsg/8442422922/

世界最大の武器輸入国
インドでは1月26日は共和国記念日ということで、毎年盛大な軍事パレードが行われるようです。

****インド首都で軍事パレード、長距離ミサイル「アグニ5」初公開****
インドの憲法が施行されたことを記念する共和国記念日の26日、首都ニューデリーで大規模な軍事パレードが行われた。軍の近代化のために導入された装備に混じって新型の長距離弾道ミサイル「アグニ5」が初めて公開された。

2012年4月に発射実験に成功したアグニ5の射程距離は5000キロメートルで、中国本土はもとより、欧州の目標にも到達できる。
アグニ5より射程距離の短いアグニ1とアグニ2はパキスタンを念頭に開発されたものだが、その後に作られたミサイルは中国も念頭に置いていた。中国とインドは短期間の国境紛争があった1962年以降、互いへの不信感を抱え、とげのある関係が続いている。【1月28日 AFP】
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インドは建国時よりパキスタンとは因縁の仲で、過去3回の戦争を経験し、今年1月もカシミールで衝突を繰り返しています。
したがって、核兵器開発もパキスタンを仮想敵国としたものでしたが、上記記事にあるように、近年はもっぱら台頭著しい中国を潜在的脅威と意識しているようです。

インドと中国は長い国境線で接し、直接の衝突もありますが、中国がインドを囲い込むようにパキスタン、スリランカ、バングラデシュ、モルジブ、ソマリアなどに戦略拠点を築く「真珠の首飾り」戦略を展開していることに、新興国ライバルとして強い警戒感を抱いています。

最近も、パキスタンの戦略的に重要な港湾都市での中国の権益拡大が報じられています。
****要衝の港湾管理権、中国企業へ=周辺国危惧―パキスタン南西部****
パキスタン政府は1月30日、アラビア海に面する南西部の戦略的要衝グワダルの港湾管理権をシンガポール企業から中国企業に移転することを閣議決定した。
建設当時から多額の投資を行った中国は管理権獲得により、友好国パキスタンへの影響力拡大を狙う。一方、インドなど周辺国は中国による将来の軍港化を危惧、安全保障上の新たな脅威と捉えている。(後略)【2月2日 時事】
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中国の脅威に対抗する形で、インドは軍備拡張に余念がなく、近年では世界最大の武器輸入国となっています。
一方の、中国の方は武器の国内生産も軌道に乗って、輸入から輸出に転じているようです。

****トップ5、すべてアジア=世界の武器輸入国―SIPRI****
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は19日、2007~11年の5年間の武器取引量について、その前の5年間(02~06年)との比較で24%増となり、武器輸入国のトップ5にはインドをはじめいずれもアジアの国が入ったと発表した。

それによると、インドは世界最大の輸入国で全体の10%を占める。2位以下は韓国(6%)、パキスタンと中国(それぞれ5%)、シンガポール(4%)となっている。地域別ではアジア・オセアニアが44%、欧州が19%、中東が17%を記録した。

中国に関してSIPRIは、前の5年間は世界最大の輸入国だったものの、国内軍需産業が力をつけてきたことや武器輸出が増加したことと相まって輸入量が減少していると指摘した。中国の武器輸出量は前の5年と比べて95%増となり、英国に次いで世界6位の輸出国になったという。【2012年3月19日 時事】
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進行する核兵器開発
核兵器開発においても、冒頭記事にもある中国全土を射程に収める長距離弾道ミサイル「アグニ5」から、更に多弾頭の新型長距離弾道ミサイル「アグニ6」開発へと向かっています。
なお、“アグニ”とは、インド神話の火神です。

****インド 多弾頭長距離弾道ミサイルを開発****
インドのPTI通信によると、インドのミサイル開発を行う防衛研究開発機構のサラスワット所長は8日、南部バンガロールで記者団に対し、多弾頭の新型長距離弾道ミサイル「アグニ6」を開発中であると明らかにした。所長は、「設計図は完成した。現在、機械設備の具現段階にある」と述べた。

複数の核弾頭を搭載できるアグニ6は、昨年4月に発射実験に成功した中国全土を射程に収める長距離弾道ミサイル「アグニ5」(射程約5千キロ)よりも射程は長いとみられる。
複数の小型核弾頭を小さいロケットのようなものに搭載し、次々にミサイル本体から分離させることで複数の目標への同時攻撃を可能にするMIRV能力を持つという。実際に発射した場合、攻撃力が増すことに加え、迎撃も難しくなる。【2月9日 MSN産経】
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また、原子力潜水艦を想定した海中からのミサイル発射実験も報じられています。
****インド 海中から弾道ミサイル発射に成功*****
インドのPTI通信によると、インド軍は27日、東部ベンガル湾海中から核搭載可能な中距離弾道ミサイルK-5を発射する実験に成功した。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発を進めているインドは、ミサイルそのものの開発はすでに終えていて、年内にも就役予定の国産原子力潜水艦への搭載を待つばかりとされる。K-5の発射実験はすでに10回を超えているという。【1月28日 産経】
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一方、中国の方も“中国国営新華社通信は1月28日、中国国防省が27日に地上配備型の弾道ミサイル迎撃システムの技術実験を国内で行ったと伝えた。詳細は不明だが「所期の目標を達成した」と成功をアピールした。10年以来2回目の実験。昨年12月には独自開発した衛星測位システム「北斗」の運用を始めており、迎撃システムの能力向上も想定される”【1月28日 毎日】

大気汚染では中国を圧倒?】
このように中国を想定した軍備拡張に邁進するインドですが、社会の抱える問題の多さ、根深さにおいても、中国に負けず劣らずといったところです。
中国は経済成長を優先し、環境対策をおざなりにしてきた結果としての、健康被害にも及ぶ深刻な大気汚染が話題となっていますが、インドの大気汚染はその中国以上だとの報告もあるようです。

****大気汚染、インドが世界最悪=米エール大など132カ国調査****
米エール大などがこのほど、132カ国を対象に行った大気汚染調査で、インドが最下位にランク付けされた。地元有力紙ヒンズーは「わが国の空気は世界で最も有害だ」と1面で報道。国民にも衝撃を与えている。

エール大などは水資源や大気、森林、農業など環境に関連する計10分野を総合的に調査し、国別番付を発表した。インドは総合ランキングでは125位だったが、大気は100点満点中3.73点で最下位。大都市の大気汚染が深刻化しているとされる中国は19.7点で128位だった。【2月6日 時事】
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WHOの調査「Exposure to outdoor air pollution」で都市別に「PM10」エアロゾル粒子の濃度を見ると、インドの最高は北部パンジャーブ州のルディアナ「251」(単位は1立方メートル当たりのマイクログラム)で、首都デリーが「198」、最大の都市ムンバイは「132」。これに対して中国では最高が蘭州の「150」で、首都北京は「121」、上海は「81」ということで、インドの“圧勝”のようです。
(【2月6日 Blog vs. Media 時評(http://blog.dandoweb.com/?pid=1094) 団藤保晴氏】より)

人権意識の希薄さでもいい勝負
また、中国の人権問題については枚挙にいとまがないところですが、この方面でもインドは負けていません。

****避妊手術した女性を次々野外に放置、インドの病院****
インド・西ベンガル州で、一斉に避妊手術を受けた多数の女性たちが、病室の空きがないとの理由で意識のないまま野外に放置される事件が発生した。同州保健当局が7日、明らかにした。

女性たちは全員、同州マルダ県にある1か所の病院で避妊手術を受けたが、この病院には多数の患者を収容する施設がなかったという。
事件は、インドのニュース専門局NDTVが放映した視聴者の撮影映像で発覚した。5日に撮影されたこの映像には、意識のない女性が男性数人によって病院から運び出され、野外に横たえられる様子が写っていた。

AFPの取材に応じた同州保健当局のランジャーン・サトパティ局長は「貧困層を中心とする100人を超える女性が避妊手術のために訪れたが、医師らは手術が終わった女性から直ちに隣の野原に移動するよう助手たちに命じた」と語った。

地元の保健当局者たちは揃って、患者の扱いとして許しがたい行為であり調査を行うと約束した。また、106人もの女性の避妊手術を4人の医師が1日で行った病院のあり方に対し、医療関係者の間には衝撃が広がっている。

中国と異なり、インドには1家族の子供の数を制限する法律はない。しかし国民人口が10億人を超す中、自動車や電化製品といった「報奨品」と引き換えに、避妊手術を自発的に受けるよう地方自治体が各家庭に促す例が少なくない。【2月8日 AFP】
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「報奨品」と引き換えに貧困層女性を避妊手術に集め、処置後に次々に野原に移動して放置・・・、本当に“自発的”だったのかも怪しいところです。
こうした問題は別にインドや中国に限ったことではなく、多くの国々でもっと悲惨な話は多々あります。ただ、両国が“大国”として世界をリードしたいのであれば、“よくある話”ではすまされません。

軍備拡張、核兵器開発、世界戦略でしのぎを削るインド・中国ですが、社会の抱える問題点の改善においてこそ競って欲しいものです。まあ、いくら言っても聞く耳は持たないでしょうが。
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イタリア総選挙  支持を伸ばすベルルスコーニ前首相派と「五つ星運動」 大衆迎合の批判も

2013-02-09 21:48:50 | 欧州情勢

(1月26日 イタリア・ラヴェンナで支持を訴える「五つ星運動」ベッペ・グリッロ氏 “flickr”より By Matteo Pezzi http://www.flickr.com/photos/matteopezzi/8429027795/in/photostream/

不良債権と「ゾンビ企業」が急増
イタリアでは2月24~25日の総選挙に向けて激しい選挙戦が行われていますが、選挙の話の前に、現在の経済状況について。
ひところイタリアやスペインなどの経済危機が注目を集めていましたが、EU・ユーロ圏の必死の救済策もあって、最近は「小康状態」的な感じです。

ただ、経済構造の根幹が改善した訳ではないことは言うまでもないことですが、救済策で破綻を先送りした結果、日本のバブル崩壊後にも似た「不良債権問題」が進行しているとの指摘もあります。

****欧州の時限爆弾「不良債権問題」 債務超過「ゾンビ企業」が急増中****
債務危機が続くユーロ圏に、新たな火種が広がっている。本来なら倒産している企業が、国と金融機関の助けで生き延びる「死に体企業」の急増だ。特にイタリア、スペインなど重債務国で増えており、欧州経済再生の深刻な障害になっている。

2月24~25日に迫ったイタリア総選挙は、マリオ・モンティ首相の参戦で熱気を増した。1月半ば、テレビのインタビューに登場したモンティ首相は、シルビオ・ベルルスコーニ前首相を「ハーメルンの笛吹き」にたとえ、デタラメな公約でイタリアを破滅に導いたと酷評した。「イタリア人は彼に三度も騙された。最初は私も騙された」と、ふだんは学者然としたモンティ氏が、容赦なく続けた。

ベルルスコーニ氏は「やつこそ偽物だ」と、別のテレビ局で反撃した。外国でこそ「イタリア経済の救済者」などと称賛されているが、実際は財政再建に何の貢献もしなかったというのだ。

イタリアにとって不幸なことに、二人の批判はどちらも正鵠を射ている。保守政権時代のバブルを、子供を魔術のように連れ去った中世寓話になぞらえたのは巧みな比喩であり、モンティ政権が何もしなかったというのも真実だ。

大半の企業が「借金漬け」
イタリアとスペインの危機は、昨年後半に国債市場が落ち着いたことで「小康状態」にたとえられているものの、実態はどちらも劣化が進んでいる。それを端的に示すのは、両国の不良債権の増加である。イタリアの不良債権は2012年9月時点で1160億ユーロ、スペインは同年8月時点で1780億ユーロに達し、いずれも貸出残高の10%を超えて、なおも急増中だ。(中略)

「奇妙なのは、重債務国はマイナス成長なのに、企業倒産のペースが鈍いことだ。英国では本来は倒産すべき『ゾンビ(生き返った死体)会社』が問題になっているが、ユーロ圏でも深刻なのは間違いない」と、在ロンドン金融筋は言う。(中略)

事情はイタリアでも(スペインと)ほとんど同じである。
昨年は中小企業経営者の自殺が社会問題化したため、モンティ政権は昨春以降、財政再建を完全にあきらめて、企業防衛に奔走した。それ以前には、「年金受給年齢の67歳への引き上げ」など、一定の成果をあげていたものの、労働組合が「それなら既定のリストラ計画を見直すべきだ」と、経営陣に再交渉を迫ったため、イタリア企業の合理化が結果的に遅れることになった。

イタリアの場合、金融機関自体がユーロバブルの恩恵に浴していた。過去二十年間でイタリア各行は支店数を倍増し、「黄金時代」を享受した。現在は人口十万人当たりで56の銀行支店があり、銀行の密度では欧州屈指である。
それが今では、不良債権の急増、収益悪化が顕著なのに、ゾンビ企業を整理できず、自らのコスト削減も進まないという、多重危機に陥っている。(中略)

日本が陥った泥沼にはまりこむ
重債務の南欧諸国で「死に体企業」が延命できるのも、欧州中央銀行(ECB)の低金利政策(政策金利〇・七五%)のおかげである。マリオ・ドラギ総裁は昨年、「救済のため何でもやる」と公約して、国債、外為市場を落ち着かせて、英ファイナンシャル・タイムズ紙から「今年の人」に選ばれた。「市場安定」は今年もECBの最重要課題で、特に南欧の金融機関救済には細心の注意を注ぐ。スペイン、イタリアの各行、さらにその融資で食いつなぐ「死に体企業」は綱渡りが続くだろう。

ただ、こんな状態では、欧州経済の再建はさらに遠のくことになる。時代から取り残され、利益の出ない企業に、人工的な延命措置を施しても、国際的競争力は低下するばかりだ。イタリア、スペイン、ギリシャ三国は当面、マイナスまたは超低成長が続き、失業とゾンビ企業の増加、政府の負担増という悪循環が続く。

コンサルタントの「デロイト」チーフ・エコノミスト、イアン・スチュワート氏は週報「マンデー・ブリーフィング」の中で、欧州のゾンビ企業増加現象を、バブル崩壊後の日本と比較して、「日本の銀行各行が、不採算・重債務企業を整理できなかったことが、低成長の二十年を招いたという見方もある」として、欧州の企業延命策が続けば、欧州経済も日本が陥った泥沼にはまりこむと指摘した。

企業延命は、重債務危機国ばかりか、英国やフランスにも広がっている。経済学者シュンペーターが唱えた「創造的破壊」は、欧州ではもはや死語。表面的な小康の下で、構造的な劣化が続くという欧州の危機は、今年も不安だらけである。【選択 2月号】
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【「改革疲れ」した国民からの支持でベルルスコーニ派急追
それで、選挙戦の方は、先行する中道左派連合をベルルスコーニ前首相率いる中道右派連合が激しく追い上げる展開で、モンティ首相率いる中道連合は勢いが見られず、既成政党批判で支持を広げた「五つ星運動」が3位を窺う勢い・・・といったところのようです。

****イタリア総選挙:ベルルスコーニ派が猛追****
24、25両日に実施されるイタリア総選挙で、8日付の主要各紙の世論調査結果によると、ベルルスコーニ前首相率いる中道右派連合は、支持率トップの民主党を中心とする中道左派連合との差を5ポイント近くまで縮め、猛追している。1月の時点で、両者の差は10ポイント以上あった。
9日以降は法律で世論調査結果が公表できなくなる。

レプブリカ紙によると、中道左派の支持率は34.1%、中道右派は28.6%だった。コリエレ・デラ・セラ紙の調査では、両者の差は7.5ポイントだった。モンティ首相率いる中道連合は各紙の調査で、支持率15%以下で3〜4位と低迷。【2月8日 毎日】
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中道左派連合の民主党・ベルサーニ氏は「責任政党」をうたい、支持基盤の労組に反対されつつも、労働市場改革などのモンティ路線を続けると主張しています。ただ、支持基盤が労組ですから、おのずと改革への制約・ためらいも出てきます。
また、経営不振に陥って公的資金投入を受けた大手銀行の金融スキャンダルが拡大し、問題銀行と関係の深い中道左派・民主党の支持率に陰りが見えています。

スキャンダルまみれのベルルスコーニ前首相ですが、「モンティ批判」を繰り返し、増税や失業率の上昇に不満を抱く人々の支持を集めて巻き返しつつあります。特に、ベルルスコーニ氏が住宅課税分の現金払い戻しを表明して以降、中道左派連合との差が急ピッチで狭まっているとも報じられています。

****増税見直し、キャッシュバックも=ベルルスコーニ氏―伊****
2月24、25日のイタリア総選挙で、中道右派連合を率いるベルルスコーニ元首相(76)は3日、北部ミラノで演説し、政権を握ればモンティ政権が金融危機対策として導入した住宅課税を廃止し、納税分を現金で払い戻すと表明した。

ベルルスコーニ氏は、住宅課税の廃止を「最初の閣議で決める」と明言。既に決まっている付加価値税(消費税に相当)引き上げや富裕層への増税も見直すとも述べた。減税を訴えることで「改革疲れ」した国民からの支持獲得に弾みを付ける考えだ。【2月4日 時事】 
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政権交代を狙った日本・民主党の選挙公約のようでもありますが、そんなことして財政は大丈夫なの?という感もあります。

なお、“前首相は1月27日、ミラノでホロコースト(ユダヤ人虐殺)犠牲者の追悼式に出席し、報道陣にムソリーニについて、「(ユダヤ人を差別した)人種法制定は最悪だが、良いことも多く行った」と、持論を展開。ナチス・ドイツと同盟を組んだことも「ドイツの勝利」が見込まれた中、やむを得なかったとの認識を示した”【2月1日 読売】という、お騒がせぶりは相変わらずです。

【「五つ星運動」既成政党の金権体質批判
一方、人気お笑い芸人が率いる「五つ星運動」は「ポピュリズム」との批判もつきまといますが、徹底した既成政治家・大メディア批判で政治不信が強い層を取り込んでいます。

****コメディアン新団体「五つ星運動」旋風 ネット主体の政治「金権体質を打破****
◇若者中心、支持率が急伸
イタリア総選挙(2月24〜25日投票)まで1カ月を切った。中道左派連合、中道右派連合と、モンティ暫定首相の中道勢力連合が三つどもえの選挙戦を繰り広げる中で、コメディアンのベッペ・グリッロ氏(64)の創設した政治団体「五つ星運動」が15%前後の支持率を維持し、主要勢力を脅かす「台風の目」になっている。

ブログで情報を発信し、候補者をインターネット投票で選ぶなど、ネット中心の活動が特徴だ。「カネのかからない選挙・政治」を訴えて既成政党に対する国民の不満を吸収し、若年層を中心に支持を広げている。

ローマの南約15キロに位置する人口約6万人のベッドタウン・ポメツィア。中心部の「独立広場」の特設ステージに登ったグリッロ氏は、こげ茶のカジュアルコートに白いマフラー姿。歯に衣(きぬ)着せぬ演説に、約1000人の支持者が沸いた。
「この国(イタリア)は破産し、ないも同然だ」「指示を出す連中(政治家)をテレビで見ていても未来はない。国を立て直そう」。まくしたてるグリッロ氏に群衆が「そうだ」と応える。選挙集会というよりも、歌手と聴衆が一体化するコンサート会場のようだ。

五つ星運動は、グリッロ氏と参謀役にあたるジャンロベルト・カサレッジオ氏の、04年の出会いがきっかけだ。グリッロ氏のブログに集うファンをカサレッジオ氏が政治集団に育て上げ、09年に旗揚げした。昨年5月のイタリア北部パルマ市長選で勝利、昨年10月のシチリア州議会選でも第1勢力となるなど地方選で快進撃を続けた。

総選挙の候補者は支持者によるネット投票で選んだ。「これこそが真の民主主義だ」。グリッロ氏の口調が熱を帯びる。「スポーツのチャンピオンも、政治家の息子も、著名な判事もいない。いるのは普通の人たちだ」。集会での発言はネットで中継され、全国の支持者が視聴する。

最大の武器は「既成政党の金権体質批判」だ。イタリアではベルルスコーニ前首相ら政治家のスキャンダルが相次ぎ、国民の政治不信が深刻化している。五つ星運動は「議員報酬は月額5000ユーロ(約60万円)まで」を公約に掲げている。

集会に参加したエレオノラさん(24)は、大学卒業後も定職に就けずアルバイト暮らしだ。「月1000ユーロの失業手当」を約束するグリッロ氏に期待している。財政緊縮策の影響で若者の失業率は37・1%。「政権党が左右で交代しても何も変わらない。五つ星運動は『何をしたいか』が分かりやすい」と支持理由を語る。

経済危機に乗じて政党政治批判を繰り広げるグリッロ氏を他陣営は「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」と批判する。だが、本人は「市民代表」としてのポピュリストを自任し、既成政党とは一線を画する戦術を取っている。

◇銀行巨額損失、既成政党に逆風
イタリア政府の支援を受ける国内3位の銀行が無謀なデリバティブ(金融派生商品)取引で巨額損失を出したことが明るみに出て、スキャンダルに発展している。銀行と関係の深い中道左派・民主党や、公的資金注入を認めたモンティ暫定首相にとっては「逆風」となっている。

問題となっているのはイタリア中北部シエナに本店のあるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行。1472年に創設され、「世界最古の銀行」と呼ばれている。シエナは民主党の地盤で、銀行の最大株主は民主党関係者が仕切る団体だ。

銀行は経営不振で資金不足に陥り、昨年、約39億ユーロ(約4800億円)の公的資金注入を政府に申請し、承認された。だが、デリバティブ取引などで最大7億2000万ユーロ(約880億円)の損失を計上する可能性があることが今月、明らかになった。

中道右派・自由国民のレオーネ議員は「我々のポケットから救済資金を出した」とモンティ氏を批判。「五つ星運動」のグリッロ氏は「政党と銀行を一体化させた」と民主党を攻撃し、シエナ銀行国営化を主張している。

スキャンダル発覚後の支持率世論調査によると、中道左派連合(33・8%)、中道右派連合(27・6%)、中道勢力連合(14・1%)が支持を減らし、「五つ星運動」(15・8%)が伸ばしている。【1月31日 毎日】
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“「五つ星」の台頭を「極めて強い政治不信を表している」と憂え、欧州の現状をナチスが台頭した1920年代に重ねる。「自暴自棄な雰囲気が広がれば社会そのものが壊れる」”(国立ラサピエンツァ大のランチェスター教授)【2012年6月14日 朝日】

“「五つ星運動」はきちんとした政策は持っておらず、ポピュリスト(大衆迎合主義者)的なメッセージを送るだけだが、彼らが展開している政党批判は正しい。五つ星運動はイタリア政党政治の旧弊の産物なのだ”(ミラノ大学のアルベルト・マルティネッリ名誉教授)【2月4日 毎日】

ひところの「維新の会」のようでもあります。


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