孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州経済安定に向けて  キプロスは「緊縮派」勝利で金融支援前進へ、イタリアは?

2013-02-25 23:16:03 | 難民・移民

(ミラノ市内で投票するイタリア・ベルルスコーニ前首相 【2月25日 時事】 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130225-00000015-jijp-int.view-000

キプロス金融支援で、飛び火を防止
地中海の島国キプロスの大統領選挙は今月17日に行われましたが、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請している保守系野党・民主運動党(DISY)のニコス・アナスタシアデス党首(66)が得票率45・5%で1位となったものの、過半数には届かず、得票率26・9%で2位だった与党・労働者進歩党(AKEL)のスタブロス・マラス前保健相(45)との決選投票が24日に行われました。

マラス前保健相は、支援と引き換えにEUなどが求める財政緊縮策に反発も示しており、結果次第ではキプロス金融支援が遅滞する可能性もある選挙でしたが、決選投票において「EU・IMF金融支援容認・緊縮財政派」のアナスタシアデス候補が勝利し、こえによりキプロス金融支援に向けて動き出すことになりました。

****キプロス大統領選:「緊縮派」が当選 金融支援交渉前進へ****
地中海のキプロス共和国(ギリシャ系)で24日、任期満了に伴う大統領選の決選投票が実施され、即日開票の結果、最大野党の右派・民主運動党のアナスタシアディス党首(66)が当選した。債務危機に直面するキプロスは欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請している。支援の前提となる緊縮財政を公約した新大統領の誕生で、交渉は前進する見通しとなった。

得票率はアナスタシアディス氏の57.48%に対し、与党の左派・労働人民進歩党が推す無所属のマラス元保健相(45)が42.52%だった。

キプロスは経済的に依存するギリシャ危機のあおりを受け、EUなどに支援を要請。昨年末、財政支援を受けることでほぼ合意したが、経済再生計画など支援条件の最終決定は持ち越された。EUのバローゾ欧州委員長は「経済改革への強い信任だ」と歓迎した。

フリストフィアス大統領(66)の後継を狙ったマラス氏は、支援受け入れに賛成しつつ、公営企業の民営化反対などを掲げていた。
ロイター通信によると、アナスタシアディス氏は勝利集会で「欧州を味方につけなければならず、私たちは(経済改革などの)約束を守らなければならない」と演説した。3月1日に就任する。任期5年。投票率は81.58%だった。【2月25日 毎日】
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キプロス自体は経済規模も小さな国ですが、キプロスの破綻は火種を抱える南欧各国に飛び火する危険もあって、キプロス支援の行方は欧州経済の安定の観点から注目されていました。

****小国キプロスをEUが救うべき理由****
地中海の島国キプロスがEUなどに金融支援を求めている。
支援額は170億7とみられ、ギリシャやスペインヘの大型融資に比べれば「はした金」。だが「経済が小規模だから救済してもしなくてもユーロの安定性に関係ない」との油断は、新たな危機の呼び水になりかねない。

ギリシャも当初はユーロ圏に占めるGDPの割合がわずか2・6%の小国だ、という理由で軽視されていた。だがギリシャ財政への懸念はスペインやポルトガルにも飛び火し、欧州全域に債務危機を引き起こした。
同じ意味でキプロスの動向も重要な意味を持つ。EUがキプロスを救済し、危機の連鎖を食い止めるべきなのは間違いない。

ただし支援の方法には一考の余地がある。膨大な政府債務が元凶だったギリシャに対し、キプロスは銀行の不良債権問題が根底にある点でアイルランドに似ている。破綻寸前の銀行に公的資金を注入して財政難に陥ったアイルランドに、EUは巨額の支援を提供した。
だが同国の公的債務は膨れ上がり、国民は長期の緊縮財政に苦しんでいる。やみくもな銀行救済を支えたために痛みを長引かせた失敗を、キプロスで繰り返すべきではない。【2月19日号 Newsweek日本版】
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イタリア総選挙の行方は?】
ただ、欧州経済・ユーロ安定のカギとなるのは、24・25日に投票が行われた欧州有数の経済大国イタリアの総選挙の行方です。

2月8日に実施された有権者投票意向調査は以下のとおりで、緊縮財政を維持する方向の中道左派連合、中道連合が勢いを欠き、緊縮策を批判するベルルスコーニ前首相派、既成政治を否定する五つ星運動が勢いを得ていることは各種メディアが報じているところです。
・中道左派連合民主党ベルサニ書記長 35.2%
・中道右派連合自由国民(PDL)党ベルルスコーニ前首相 28.3%
・ポピュリスト五つ星運動グリッロ氏 15.9%
・中道連合 マリオ・モンティ首相 14.8%

“先行する中道左派連合を反緊縮派が猛追しており、モンティ暫定首相(69)の構造改革路線が継承されるかどうかが焦点。専門家は「中道左派主導政権が樹立される公算が大きい」と予測しつつ、中道右派連合のベルルスコーニ前首相(76)らが勝利すれば「イタリアの信用が低下する」と警戒する。”【2月24日 毎日】

金銭・セックスのスキャンダルまみれながらも、まさかの復活の勢いを見せているベルルスコーニ前首相に対しては、無責任なばら撒き政策・人気とり政策でイタリア、ひいては欧州経済を混乱に導きかねないとの批判が関係国には根強くあります。

****ベルルスコーニ氏に投票しないで=伊選挙に介入―欧州議会議長****
ドイツからの報道によると、欧州連合(EU)欧州議会のシュルツ議長(独出身)は21日、イタリア国民に対し、24、25両日の伊総選挙では、中道右派連合を率いるベルルスコーニ元首相を支持しないよう呼び掛けた。

ベルルスコーニ氏は首相だった2003年当時、欧州議員のシュルツ氏をナチス・ドイツの強制収容所の監視役に適任だと発言し、独伊間で外交問題になった経緯がある。
報道によれば、シュルツ議長は「ベルルスコーニは無責任な言動でイタリアを混乱に陥れた。有権者は必ずや(総選挙で)正しい選択を行うだろう」と述べた。【2月21日 時事】 
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世界が注目する選挙ですが、投票率は低かったようで、政治不信の表れとの指摘もあります。
イタリアの失業率は昨年12月時点で11・2%。25歳未満だと、36・6%という状況ですから、政治への信頼を期待するのが無理とも言えます。

****イタリア総選挙、投票率が大幅低下 政治不信の表れか ****
財政再建などモンティ政権による改革路線の是非を問うイタリア総選挙は24日、初日の投票を終えた。内務省によると午後10時(日本時間25日午前6時)現在の下院の投票率は55.2%で、前回2008年4月の総選挙の同時点より7.4ポイントも下がった。

今回は欧州債務危機後で初の総選挙となったが、選挙日が近づくにつれて二大勢力である中道右派と中道左派の両陣営に関連するスキャンダルが続出。政治への不信感が投票率の低下につながった可能性がある。

投票は25日午後に締め切り、同日夜(日本時間26日未明)に大勢が判明する見通し。下院で勝利する公算が大きい中道左派が、上院でも過半数を獲得できるかが焦点だ。改革路線の継承をうたう左派が安定政権を確立できなければ、同国の財政再建が後退するとの不安から、金融市場で欧州債務危機が再燃することが懸念されている。【2月25日 日経】
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あと1時間もすれば、投票締め切り後の出口調査が発表されると思われますが、どうなることやら・・・。
下院は追い込まれながらも中道左派連合が過半数を獲得すると予想されていますが、上院は不透明です。結果次第では、いくつかの連立の組み合わせも予想されています。

【追記】
“投票終了直後に公表された投票当日の支持率調査では、モンティ政権の財政再建・緊縮策を大枠で支持する中道左派連合(民主党など)が35~38%で首位となり、緊縮策大幅緩和を掲げるベルルスコーニ前首相の中道右派連合(自由の人民など)が29~32%で続いた。反緊縮・反既成政党の「五つ星運動」は17~21%、緊縮策堅持を訴えるモンティ首相の中道連合(キリスト教中道民主連合など)は7~10%だった。”【2月25日 読売】
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