孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ハマス、対イスラエル大規模攻撃 領内侵入で住民拉致の報道も 予想される「報復」

2023-10-07 22:59:12 | パレスチナ

(7日、パレスチナ自治区ガザからイスラエルに向け発射されたロケット弾(ロイター=共同)【10月7日 共同】)

【ハマス、イスラエル侵入の異例事態 住民拉致の報道も ネタニヤフ首相「戦争状態」】
各メディアが一斉に報じているいるように、中東パレスチナで激震が。
ガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに対し大規模ロケット弾攻撃(イスラエル軍発表で2500発 ハマス側情報で5000発)を仕掛けました。

(7日、パレスチナ自治区ガザからのロケット弾攻撃を受けたイスラエル中部アシュケロンの街並み(ロイター=共同)【10月7日 共同】)

ロケット弾攻撃は今までも度々行われていますが、今回はハマス戦闘員がイスラエル領内に侵入してイスラエル人を殺害・拉致しているとの異例の展開になっています。

イスラエル・ネタニヤフ首相は「戦争状態にある」として、報復のガザ空爆、予備役招集を行っています。

****ハマスが大規模攻撃、イスラエル人20人超死亡 首相「戦争状態」****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに対する大規模攻撃を行い、ガザから発射されたロケット弾のほか、イスラエル領内に侵入した武装集団の襲撃で20人以上が死亡した。

イスラエル軍はガザに近いイスラエルの町や軍基地で武装勢力との戦闘が行われていることを確認。ネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にあり、必ず勝利する」とし、「敵はこれまでにないような代償を払うことになる」として報復を表明した。

イスラエルの救急当局によると、この攻撃で少なくともイスラエル人22人が死亡、負傷者も250人以上に上ると明かしたが、犠牲者はさらに増える見込みだという。

一方、イスラエル軍はガザへの空爆を開始し、同地区で少なくとも2人が死亡。目撃者によると、激しい爆発音が聞こえたという。

ハマスがイスラエル領内に侵入して攻撃を行うのは異例で、紛争がここ数年で最も深刻な状態にエスカレートしたと言える。

イスラエルのテレビ局は、ハマスの戦闘員がガザ東方の町オファキムでイスラエル人を人質にしていると伝えた。また、スデロットではパレスチナ人武装勢力5人が殺害されたほか、家屋が放火されたという。

ハマスの司令官は自軍のメディアで作戦開始を表明し、ロケット弾5000発を発射したと説明。「地球上における最後の占領を終わらせるための最大の戦いの日だ」と述べ、パレスチナ人に戦闘を呼びかけた。

イスラエルのガラント国防相は「軍部隊はあらゆる場所で敵と戦っている」とし、予備役の招集も認めた。イスラエル軍はガザ内で活動していると明かしたが、詳細は明らかにしなかった。【10月7日 ロイター】
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地元紙ハアレツなどによると、ガザに近いイスラエル南部スデロットなど複数の町では、上空や陸上から境界を越えて侵入したハマスの戦闘員が銃撃を行い、市民らが多数死傷した。死傷者はさらに増える見込みだ。

インターネット上では、炎上するイスラエル軍の戦車や、ハマスが人質に取ったとみられる兵士や市民の映像が拡散している。イスラエル側ではロケット弾攻撃を受け、南部や中部だけでなく、エルサレムでも警報が鳴る緊張状態となっている。【10月7日 読売】
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イスラエルとハマスは2021年、エルサレムにあるユダヤ教とイスラム教の聖地「神殿の丘」での対立を契機に、大規模な戦闘を実施。双方合わせて270人以上が死亡しています。

イスラエルにとっては市民一人でも殺害されたり、拉致されたりするのは“おおごと”ですが、今回はすでに死者40名とも報じられており、“数十人のイスラエル人を人質としてガザに連行した模様”【同上】ということで大きな衝撃となっています。

****ハマスが対イスラエル大規模作戦=40人死亡、住民拉致か―「戦争状態」ロケット弾2000発****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは7日、イスラエルに対する大規模攻撃を実施し、同国のメディアによると、40人が死亡、740人が負傷した。イスラエル領内に2000発以上のロケット弾が撃ち込まれた。同時にガザの戦闘員が越境してイスラエルの住宅地に侵入し、銃撃戦が発生。住民がガザに連れ去られたとの情報もある。

今回の攻撃は、ハマスによる対イスラエル軍事作戦としては過去最大規模。武装勢力との衝突でイスラエル側にこれほどの被害が出るのは、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと交戦した2006年以来とみられる。

イスラエルのネタニヤフ首相は緊急のビデオ演説で「われわれは戦争状態にある。この戦争に勝つ」と語った。ハマス側の攻撃を受け、イスラエル軍はガザで空爆を実施。AFP通信によると、ガザでは少なくとも9人が死亡した。【10月7日 時事】
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【緊張を高めた「史上最も右寄り」政権の対パレスチナ強硬姿勢】
パレスチナをめぐる情勢は緊張状態にありましたので、いつ衝突が起きても不思議ではない状況ではありましたが、このタイミングでハマスが攻撃を仕掛けた理由としては以下のようにも報じられています。

“今月6日まで約1週間続いたユダヤ教の祭り期間中、5千人超のユダヤ人がエルサレムにあるイスラム教とユダヤ教双方の聖地「神殿の丘」(イスラム名ハラム・アッシャリーフ)を訪れた。ユダヤ人の訪問を「イスラム教聖地への攻撃」と捉えるハマスが反発した可能性がある。”【10月7日 共同】

“ハマスとイスラエルの大規模な戦闘は2021年以来で5度目となる。7日はユダヤ教の休日「シャバット」(安息日)で、ハマスが隙を突いて攻撃した模様だ。6日は、イスラエルがエジプトとシリアから奇襲攻撃を受けた第4次中東戦争から50年の節目だった。”【10月7日 読売】

ハマスは今回攻撃を「神殿の丘」に建つアルアクサモスクにちなんで「アルアクサの洪水」と名付けているようです。

より大きな流れとしては、上記の聖地「神殿の丘」に関する行動や西岸地区への入植活動強化など、イスラエルの「史上最も右寄り」政権の対パレスチナ強硬姿勢にパレスチナ側が反発を強めていたことがあるでしょう。

****イスラエル閣僚、入植者の権利主張し物議 首相は擁護****
イスラエルのイタマル・ベングビール公共治安相が占領地ヨルダン川西岸におけるユダヤ人入植者の権利を声高に主張し、物議を醸している。そうした中、25日にはベンヤミン・ネタニヤフ首相がベングビール氏に支持を表明し、火に油を注いだ格好となっている。

人種差別主義者のベングビール氏は23日、国営テレビで、「ユダヤ・サマリア地区(ヨルダン川西岸の意)の通りを私や妻子が行き来できる権利は、アラブ人の移動の自由よりも重要だ」と述べ、パレスチナ人を対象とした移動制限措置を正当化する立場を示した。

これを受け、パレスチナ系米国人のスーパーモデル、ベラ・ハディッドさんはインスタグラムに非難するコメントを投稿。ベングビール氏もXで、ハディッドさんは「イスラエル嫌い」だと反論した。

一方、ネタニヤフ首相は声明で「ユダヤ・サマリア地区における移動の自由についてはイスラエル人にもパレスチナ人にも最大限認めている」と指摘。「不幸なことにパレスチナ人テロリストがこうした移動の自由に付け込んでイスラエルの女性や子ども、その家族を殺害している」とし、ベングビール氏を擁護した。【8月27日 AFP】
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【イスラエルのサウジ・トルコなどとの関係正常化交渉へのハマスの反発も】
また、イスラエルがバーレーン、スーダン、モロッコのアラブ諸国との関係正常化に加え、サウジアラビアやトルコなどとも交渉を進めており、このままではパレスチナが埋没しかねないとの危機感がハマス側にあったことも想像できます。

****関係改善進むイスラエル・トルコ首脳が直接会談****
イスラエルのネタニヤフ首相とトルコのエルドアン大統領が初めて会談し、関係改善の進む両国を象徴する場となりました。

ネタニヤフ首相は国連総会へ出席するため訪れているニューヨークで19日、エルドアン大統領との会談を持ちました。双方とも長期間にわたって政権の座にありますが、イスラエルメディアによりますと、直接の会談は初めてだということです。

両国はパレスチナ問題などで長年、対立関係にありましたが、去年3月から要人が相互訪問するなど関係が改善していました。

会談では、アメリカが後押しするイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に加えてエネルギー、IT技術などでの協力が話し合われました。また、近い将来、両首脳が相互訪問することを調整することでも合意したということです。

エルドアン大統領はエルサレムにあるイスラム教の聖地、アルアクサ・モスクへできるだけ早く訪問することを希望しているというということです。【9月20日 テレ朝news】
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****ネタニヤフ首相がバイデン米大統領と会談、サウジアラビアとの和平合意に向け協議****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9月20日、国連総会が開催されている米国ニューヨークでジョー・バイデン米大統領と会談した。(中略)

会談では主に、イスラエルとサウジアラビアの間で歴史的な和平合意を結ぶ方法について話し合われたとしている。

ネタニヤフ首相は、中東全体や米国を脅かすことになるイランの核兵器開発を阻止できるのは確かな軍事的脅威だけとし、イランの核兵器開発阻止に向けたバイデン大統領の確固とした姿勢に謝意を表明した。

また「ともに協力することで、歴史を作り、この地域とその先のより良い未来を作ることができると信じている。また、ともに協力することで、その未来を脅かす勢力、とりわけイランに立ち向かうことができる」と述べた。

ホワイトハウスによると、ヨルダン川西岸地区で続いている緊張と暴力について、バイデン大統領は、イスラエル人とパレスチナ人の間の公正で永続的な和平を促進するための緊急措置を取る必要性を強調した。

また、ネタニヤフ政権が進める司法改革について、バイデン大統領は、できるだけ広範なコンセンサスがない限り、イスラエルの民主主義体制を根本的に変更することへの懸念をあらためて表明した。【9月22日 JETRO】
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パレスチナ情勢に決定的な影響を持つのは、特にアラブの盟主を自任するサウジラビアの動向ですが、サウジアラビアとしてもイスラエルとの関係正常化についてはパレスチナ問題でイスラエル側の譲歩を引き出し、パレスチナを置き去りにしたと言われないようにする必要があります。

こうした国際環境の変化を睨んで、ハマスとしてもサウジアラビアに圧力をかける姿勢を示していました。

****ハマスがイスラエルへの攻撃強化を発表 サウジの国交正常化に圧力か****
パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスと過激派組織「イスラム聖戦」などは24日、イスラエルに対する攻撃を強めることで一致したと発表した。米国が仲介するイスラエルとサウジアラビアの国交正常化交渉が進む中、パレスチナ側の主張を通すため、圧力をかける狙いなどがあるとみられる。

ガザではここ数日、ハマスを支持する若者らがイスラエルとガザの境界付近で抗議デモを実施。イスラエル側に向かって発火物付き風船を発射したり、即席爆破装置(IED)を投げ込んだりしており、イスラエル軍は対抗措置として若者らを銃撃、数十人の死傷者が出ている。また、イスラエル軍は22日以降、ガザにあるハマスの軍事拠点を無人機で空爆している。

ハマスなどは24日の声明で、イスラエルとアラブ諸国の「盟主」を自任するサウジの国交正常化は、イスラエルと戦い、殺害されたアラブ人への「明白な裏切り」と主張。両国の国交正常化交渉をけん制した。

また、ヨルダン川西岸を統治するパレスチナ自治政府のアッバス議長は21日、国連総会の一般討論演説で、パレスチナ問題を解決せず、中東に平和をもたらすことができると考えるのは間違いだと主張。国交正常化を巡り、パレスチナ人の権利を十分に考慮するよう求めた。

国交正常化を巡っては、サウジはイスラエルに対し、パレスチナ問題での譲歩を要求。イスラエルはパレスチナ問題についての態度を明確にしていない。【9月25日 毎日】
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今回攻撃はサウジアラビアへの「圧力」と言うにはやや大規模すぎる感もありますが・・・・。

【イスラエルの報復攻撃で、パレスチナ側にまた多大の犠牲も】
まだ双方の軍事行動が始まったばかりで、今後の展開を云々するには早すぎますが、少なくとも、エジプトやシリアが参戦したかつての中東戦争のような国家間の戦争にはならないでしょう。

エジプトはイスラエルとすでに関係正常化しており、シリアは国内問題で手一杯です。

サウジアラビアは上記のようにイスラエルとの関係正常化を模索していますので、紛争の当事者になることはありません。仲介役を買って出ることはあるかも。

イスラエルに対し明確な敵意を有しているのがイランですが、イランとしても国家としてイスラエルと事を構えることはしないでしょう。ただ、イランが支援するレバノンのヒズボラの動きは注目されます。

軍事的に見れば、イスラエルと単独で「戦争」を行うハマスに勝機はなく、今後、イスラエル軍地上部隊のガザ侵攻などの可能性も。また大きな犠牲が出そうです。

2014年のイスラエル軍ガザ侵攻では、パレスチナ側の死者はガザ地区のみで2158人、イスラエル側の死者は73人(兵士66人、民間人7人)とされています。

2021年のイスラエル・ハマスの衝突では、イスラエル軍は空爆を1,500回以上実施し、パレスチナ側で256人、イスラエル側で13人が死亡しています。

ハマスがそうした今後の展開をどのように考えているのかは知りませんが、拉致したとされるイスラエル住民を交渉材料に使うのでしょうか。

イスラエルの「史上最も右寄り」政権は、国内の司法改革問題で大きな批判に曝されて揺らいでいましたが、こうした事態になれば対ハマスで求心力をとりもどすことが想像されます。

それにしても、今回のようなハマスの大規模攻撃については組織的な準備も必要だったと思いますが、そうした動きを世界に冠たるイスラエルの情報機関が気付かなかったのか・・・は不思議なところ。

国内の政治的求心力を取り戻すために、気付いていながら敢えて攻撃させた・・・と妄想するのは、陰謀説の誹りを受けることにもなるでしょう。
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シリア  緊張を高める軍学校へのテロと米軍のトルコドローン撃墜 南部都市では長期の反政府デモ

2023-10-06 23:44:45 | 中東情勢

(シリア南部の都市スワイダーで抗議活動に参加し、ドゥルーズ派の旗を振る数千人のシリア人たち。2023年9月15日。【9月17日 ARAB NEWS】)

【軍学校へのドローン攻撃 政府軍は「報復」 現状変更の思惑の指摘も】
12年以上内戦が続く中東シリアでは、ロシアとイランの支援を受けたアサド政権が軍事的優位を確立しています。
ただ、トルコの支援を受ける反体制派(シャーム解放機構(シリアにおけるアルカーイダ)が中心勢力)は北西部イドリブ県周辺を最後の拠点として抵抗を続けています。

また、北部のクルド人勢力とアメリカが共同してイスラム過激派「イスラム国」掃討作戦を行っていますが、そのクルド人勢力をテロ組織とするトルコはシリア北部に軍事進攻し、クルド人勢力から支配地域を奪っており、クルド人勢力と共同するアメリカと敵対するトルコは同じNATO加盟国ながら対立する関係にあります。

また、シリアに展開するイランの拠点を狙ってイスラエルの攻撃も続いています。

上記のような政府軍・反体制派・イスラム過激派・関係国(ロシア・イラン・アメリカ・トルコ・イスラエル)入り乱れての複雑な関係の構図は、基本的に今も変わっていません。
別の言い方をすれば、そうした複雑な関係を維持したまま、ある種のバランス状態にもあります。

そんなシリアのアサド政権が支配する中部ホムスで5日、軍学校の卒業式がドローン攻撃を受けました。

****卒業式の最中にドローン攻撃 シリア軍学校で100人超死亡****
シリアの軍学校で卒業式の最中にドローン攻撃があり、少なくとも116人が死亡し、120人が負傷しました。

シリア中部の都市、ホムスにある軍学校で5日、ドローン攻撃があり、イギリスの人権団体「シリア人権監視団」によりますと、少なくとも116人が死亡し、120人が負傷しました。

軍学校ではこの日、卒業式が行われていて、ドローン攻撃による爆発で卒業生以外に家族や軍関係者も犠牲になったということです。

ロイター通信はシリア治安当局者らの話として、国防相も卒業式に出席していましたが、攻撃の数分前に退席したと伝えました。

シリア政府は声明で、攻撃を「アメリカに支援されたテロリストグループの犯行」とし、敵対するクルド人武装勢力が関与したとの見方を示しています。【10月6日 テレ朝news】
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シリア政府はアメリカに支援されたクルド人武装勢力が関与したとの声明を出しているとのことですが、犯行声明もなく、その根拠は知りません。

クルド人勢力が敢えて今、政府軍に対し大規模な攻撃を仕掛ける背景もわかりません。

一方、政府軍は「報復」と称してイドリブ県やアレッポ県で砲撃やミサイル攻撃を行っているとか。【10月6日 中東調査会】

“消息筋の中には今般の攻撃を契機に(特にイドリブ方面で)シリア軍が現状を変更するほどの攻勢に出る可能性を指摘するものもある。現時点で攻撃の実行者は不明だが、イドリブ方面での現状変更という政治的な反響を呼ぶ行動へと発展するならば、諸当事者にとって攻撃の実行者が何者かという問題はさしたる関心事ではなくなるだろう。”【同上】

つまり、今回の攻撃の犯人が誰であるかにかかわらず、政府軍はこれを機に、現在の“ある種のバランス状態”維持をやめて、イドリブ周辺(更には北部クルド人支配地域?)への攻勢を開始するつもりかも・・・という指摘です。

ただ、アサド政権がそうした現状変更に打って出るとしたら、“トルコ、ロシア、イランなどの諸当事者との間に事前に連絡や調整がついているか、事後に相応の合意が得られる確証がある場合に限られるだろう。”【同上】という条件をクリアする必要があります。 そこらの話がどうなっているのか・・・わかりません。

【クルド人勢力と協調するアメリカと、敵対するトルコの関係が緊張】
シリアでは、もうひとつ緊張を高める動きがありました。
クルド人勢力との関係をめぐって緊張関係にあるアメリカ・トルコですが、アメリカがNATO加盟国トルコのドローンをF16戦闘機で撃墜したとのこと。

****米軍、シリアでトルコ軍無人機を撃墜 NATO加盟国同士****
米国防総省は5日、シリアに駐留する米軍部隊に接近したトルコ軍の無人機を脅威とみなし撃墜したと発表した。米国とトルコはともに北大西洋条約機構加盟国で、両国間の緊張が高まる恐れがある。

トルコは首都アンカラで起きた反政府武装組織「クルド労働者党」による自爆テロを受け、シリア国内のクルド人勢力を攻撃していた。

米国防総省のパット・ライダー報道官によると同日未明、米軍の拠点が約1キロにあるシリア北東部ハサケ近郊の「運用制限区域」内外で空爆を実施していた複数の無人機を確認。

数時間後に再び、トルコ軍の無人機1機がROZに現れ、米軍拠点から0.5キロ以内にまで接近したため、潜在的脅威とみなしF16戦闘機で撃墜したと述べた。ある米軍高官は、トルコ側には繰り返し警告したと述べている。

ライダー氏によると、ロイド・オースティン米国防長官とトルコのヤサル・ギュレル国防相はこの事態を受けて、「シリア北部における緊張緩和、および確立されている両軍の対話チャンネルを通じた衝突回避プロトコルと意思疎通を厳守することの重要性」を再確認した。

米軍はイスラム過激派組織「イスラム国」との戦いの一環として、シリアに約900人規模の部隊を派遣。2019年にシリアからのIS追放に至る戦闘を主導したクルド人主導の民兵組織「シリア民主軍」と連携している。
だがトルコは、SDFの主力となっているクルド人部隊を、トルコの反政府組織であり西側諸国からもテロ集団とされるPKKの一派とみなしている。 【10月6日 AFP】
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トルコの今回のクルド人勢力拠点攻撃の直接の引き金になったのが、トルコ・アンカラでの自爆テロ。

****トルコ・アンカラ 内務省前で爆弾テロ、警察官2人ケガ 内相「テロリスト2人が爆弾による攻撃を実行」****
トルコの首都・アンカラの内務省前で1日朝、爆弾テロが発生しました。これまでに警察官2人がケガをしています。

地元メディアによりますと、1日午前9時半ごろ、首都アンカラにある内務省の入り口ゲート前で爆発がありました。

トルコのイェルリカヤ内相はSNS上で、「テロリスト2人が車で内務省にやってきて、爆弾による攻撃を実行した」と明らかにし、これまでに警察官2人が軽いケガをしたと述べました。さらに「テロリストの1人は自爆し、もう1人は殺害された」としています。

トルコでは去年11月にもイスタンブールで6人が死亡、81人がケガをする爆発事件が起きていて、トルコ政府はクルド人武装勢力が関与したとみています。【10月1日 日テレNEWS】
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少数民族クルド人の非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)に近いニュースサイトは同日、PKKの系列組織が実行したと伝えています。

これを受けてトルコ軍は大規模な報復攻撃に出ています。

****トルコ、PKK拠点20か所を空爆 首都の自爆攻撃受け****
トルコの首都アンカラで1日朝、自爆攻撃があったのを受け、国防省は同日、イラク北部クルディスタン地域で「クルド労働者党を無力化」する「空爆作戦」を実施し、「テロリストの拠点20か所」を破壊したと明らかにした。(中略)

レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は(アンカラでの)爆発から数時間後に議会で演説。「市民の平和と安全を脅かす悪党は目的を達成できなかった。今後も達成することは絶対にない」と強調した。 【10月2日 AFP】
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“トルコ政府は1日に首都アンカラの内務省付近で起きた爆発事件で「犯人はシリアから越境してきた」と主張し、1日からシリアやイラクでクルド人武装勢力への空爆を断続的に実施していた。”【10月6日 毎日】とのことで、米軍F16によるトルコドローン撃墜が起きたトルコのクルド人勢力拠点攻撃も、こうしたクルド人勢力への攻撃の一環でした。

駐留米軍が設定している「飛行制限区域」に侵入して、米軍の拠点から約500メートルまで接近するというトルコのドローン攻撃でしたが、「たとえ米軍と協力関係にあっても、トルコはクルド人勢力を容赦しない」というトルコ側の強い意思表示でしょう。

一方、トルコドローンを撃墜したアメリカも「アメリカへの手出しは絶対に許さない」という意思表示ですが、今後、アメリカにとって友軍でもあるクルド人勢力への攻撃を強めることも予想されるトルコに対し、米軍がどのように対応するのか・・・・これまでも“見捨てる”対応でしたので、今後も米軍への直接の攻撃がない限りは同様に“見捨てる”のでは・・・。

軍学校卒業式への攻撃の「報復」を行う政府軍、クルド人勢力への攻撃を強めるトルコ・・・“ある種のバランス”を崩す現状変更にまで至るのか・・・注目されます。

【南部スワイダーで異例の長期化する反政府デモ】
一方、シリア南部スワイダーでは、8月下旬から市民の反政府デモが続いており、異例の長期化となっています。

“デモは8月下旬、アサド氏が公務員の賃上げや燃料費の補助金打ち切りを決定した後に始まった。物価高や通貨暴落による生活苦への不満が背景にある。スワイダのデモに呼応し、首都ダマスカスや北部アレッポなどでも小規模ながら抗議活動が行われた。”【9月2日 共同】

****シリア南部の都市スワイダーの市民たちが全てを賭けて抗議活動を行う理由****
シリアの都市スワイダーにおける抗議活動は既に1ヶ月以上継続しており、市民は主として中心部のアル・カラマ広場に参集し、首都ダマスカスの中央政府に経済と政治の改革を実施するよう要求している。

15日金曜日には、3,500人から4,000人が南部都市スワイダーに結集した。この最大規模の反体制的抗議活動は、シリア国民が戦争の経済的影響への懸念を深める中、1ヶ月以上継続し、さらに激しさを増している。

2011年の蜂起の舞台となったスワイダーとその近郊のデラアにおける抗議活動は、バッシャール・アル・アサド大統領の政権が8月に燃料補助金を削減し、ガソリン価格を250%近く引き上げたことに端を発している。

超インフレは、シリア国民が日々の生活で対峙することを余儀なくされている数多くの試練の1つに過ぎない。とはいえ、政府支配地域のシリア国民の推定90%が貧困ライン未満で生活し、同国民の半数が食料不安に直面していることを考慮すると、この超インフレは凡庸な問題ではない。

悲惨な経済状況や劣悪な生活水準に加えて、シリア国民は一向に改善しない基本的権利の欠如に不満を募らせている。

「最近の経済的決定が抗議活動の発火点になったことは間違いありませんが、問題は単なる生活関連の要求に留まりません」と、スワイダーを拠点とする市民社会団体「ジュゾール」のアイハム・アッザム代表はアラブニュースに語った。

抗議活動の参加者らは、経済上の問題に留まらない、「政治的権利や社会的権利、公民権、及び、公共の自由、拘留者の解放」を含むより幅広い要求を掲げていると、アッザム代表は付け加えた。

15日金曜日、スワイダー24というメディアは、数千人の男女が反体制的なスローガンを唱え、ドゥルーズ派の旗を振る動画を公開した。抗議活動はシリア南部のいくつかの都市だけで留まっているものの、現況は全国に拡大している政治的心情を反映したものだと観測筋は指摘している。

「大規模デモは依然として少数ですが、シリアの一般大衆の姿勢には明確な変化があり、現体制や指導者層にたいして公然かつ大胆な批判の声を上げようとする意思が感じられます」と、シリア系カナダ人のアナリストであるカミーユ・オトラックジ氏はアラブニュースに語った。

(中略)シリア政府は、公共部門の給与を倍増し、最低月額給与を約22米ドルに相当する185,940シリア・ポンドにまで引き上げた。しかし、この措置は、政府支配地域で生活する人々が経験している困窮状況に対して効果が無く、彼らの生活水準に改善の兆しは現れなかった。

「シリア政府は、燃料補助金を撤廃し、貧困世帯や困窮世帯への支援からの撤退を継続し、経済的負担を市民社会や国外に居住するシリア人、人道支援団体に転嫁していこうとしています」と、ドイツを拠点とするシリア政策研究センターの経済を専門とする研究者であるモハメド・アル・アサディ氏はアラブニュースに語った。

シリア総人口の約70%が援助を必要としていると国連の統計データが指摘する一方で、現地の慈善団体は増大する需要への対応に苦闘している。

国連シリア担当特使のゲイル・ペデルセン氏は、最近、ダマスカスを訪問し、シリアの状況が「紛争のピーク時よりも経済的には悪化しています」との警告を発した。

シリアの首都ダマスカスで、ファイサル・ミクダード外相との会談後に、ペデルセン特使は、「人道的ニーズが高まる一方で、シリアへの資金援助が減少していることは受け入れられません」と付け加えた。

「シリアにおいて、この危機の政治的影響に対応しなければ、深刻な経済的危機と人道的苦難も継続することになるでしょう」

一家の稼ぎ手である50歳のフダ・アル・アフマド氏は、数か月前に職を失った。ダマスカスを拠点とする慈善団体のアル・マバラットが彼女の近隣地区への基本的な食料の配布を中止して以来、アル・アフマド氏の家族は1年間にわたって苦しみ抜いているのだという。

「コーヒーはダマスカスの各家庭で日々の必需品でした。現在では、コーヒーは贅沢品です」と、アル・アフマド氏はアラブニュースに語った。購入する前に躊躇ったことなど昔はありませんでしたが、現在では1ヶ月に1オンス買う余裕すらありません。小さなカップ3杯分のコーヒーを淹れるだけで、現在は、5,000シリア・ポンドかかってしまうのです」

一方、アル・アフマド氏の住むダマスカス郊外県のセット・ゼイナブからダマスカスまでの日々の通勤には、少なくとも4,000シリア・ポンドが必要である。

「娘と私は1週間近く体調不良ですが鎮痛薬を買う余裕さえありません」と、アフマド氏は語った。「私たち家族は、どんな種類の果物も、肉もデザートも1年近く買えないでいます。米と麦を食べないで2ヶ月過ごさない限り、とても買えないのです」

経済活動の促進や脱税の防止、汚職の撲滅、軍事費の削減といった政策には、政治的な意思や意思決定プロセスにおける市民社会の関与、代議制が必要であるためシリアでは実行不可能であると、アナリストらは考えている。

「現行の社会経済的、政治的構造では、こうした前提条件を満たすことは不可能です」と、シリア政策研究センターのアル・アサディ氏は述べた。

それどころか、現行の政策は、「貧困ギャップを深化させ、何万もの貧しい世帯を、全体の貧困ラインをずっと下回る極端な貧困にまで押し下げてしまうことでしょう。燃料補助金の撤廃は、財政赤字削減のための最も容易で手っ取り早い手段ではあります」

生活水準の急速な低下にも関わらず、複数の非政府組織とダマスカス当局は、首都の公共スペースの改装のためにに協力した。

中央銀行近傍の「サバ・バーラート(七つの泉)広場」の改装後の写真がソーシャルメディアで拡散され、国内でこれほど数多くの人々が電力不足や食料と燃料の欠乏に苦しんでいる時に都市の美化に散財をするのは不快なことだと評論家らが批判的なコメントを述べた。(中略)

現地ソーシャルメディアのコメンテーターの数多くは、この資金は貧困層への食料支援やシリア国内の他の都市同様頻繁に停電の発生するダマスカスの街路照明のための太陽エネルギー利用設備に充てられるべきだったと語っている。

「シリアのGDP(国民総生産)と年間予算はアラブの春以前の水準から大きく減少しました」と、シリア系カナダ人のアナリストであるオトラックジ氏は語った。「シリア政府は現在極めて限定された財源で運営されており、長期的に維持可能とは言い得ない状況にあります」

「この不安定な財政状態故に、シリア政権は、協力的なアラブ諸国から、またはイランへの依存を深めて、支援を得ようとする構えです」(中略)

市民社会団体「ジュゾール」のアッザム代表は、何らかの政治的な進展無しにシリア政権が瀕死のシリア経済を再生させることは出来ないと確信している。

「シリアは廃墟となってしまいました。経済的にも、社会的にも、文化的にも、そして、知的にも荒廃してしまっているのです」と、アッザム代表は語った。「この現状は、シリアが全国民のためのものとなり、国際社会の不可欠な一部となる重要な段階を示す新たな社会的合意の形成が切実に必要であることを意味しています」

「現況を勘案すると、経済状況の改善のためのどのような試みも失敗してしまう可能性が非常に高いです。たとえ成果を挙げたとしても、一時的なものに留まり、維持できるような成功とはならないでしょう」【9月17日 ARAB NEWS】
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南部スワイダーの住民の多くはドゥルーズ派を信仰しているそうです。
ドゥルーズ派は、レバノンを中心に、シリア・イスラエル・ヨルダンなどに存在するイスラム教系の宗教共同体で、シリアでは人口の3%ほどとか。

“(9月)1日に広場を埋め尽くした参加者は「シリアは自由だ。アサドは出て行け」などと訴えた。”【9月3日 時事】

抗議はシリアにおける市民生活の窮状を示すもので、10月に入っても続いているようですが、ダマスカスやアレッポに拡大しない限りは、内戦を生き抜いたアサド政権を揺るがすには至らないと思われます。
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パキスタン  イスラム過激派対応でタリバン政権に不満 国境銃撃戦に続きアフガン人不法滞在者追放

2023-10-05 22:46:56 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタンとパキスタンの国境=2月2日、トーカム【9月6日 時事】 9月6日に迫撃砲を含む銃撃戦が発生、国境は一時的に閉鎖された)

【パキスタン アフガニスタン・タリバン政権にイスラム過激派取締りを要請】
パキスタンではイスラム過激派(「パキスタン・ターリバーン運動」(TTP)、「イスラーム国ホラーサーン州」(ISKP)など)によるテロが頻発しています。

****パキスタンで爆発57人死亡 自爆テロ、2カ所のモスク****
パキスタン南西部バルチスタン州のモスク(イスラム教礼拝所)近くで29日、爆発があり、少なくとも52人が死亡、約50人が負傷した。

北西部カイバル・パクトゥンクワ州のモスクでも同日、爆発があり、少なくとも5人が死亡、12人が負傷した。警察はいずれも自爆テロとみている。犯行声明は確認されていない。地元メディアが報じた。
 
この日はイスラム教の預言者ムハンマドの生誕祭だった。バルチスタン州の爆発では、数百人の教徒らがモスクから行進していたところ、男が付近の警察車両に近づき、爆発物を起爆させたとみられる。【9月29日 共同】
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TTPやISKPなどのイスラム過激派は隣国アフガニスタン内に拠点があり、武器調達などもアフガニスタンで行っていると思われます。

パキスタン政府は増加するテロ対策としてとして、アフガニスタン・タリバン政権にイスラム過激派対策を要請しています。

****アフガニスタン:パキスタン国防相がカーブルを訪問しテロ対策について協議****
2023年2月22日、パキスタンのアーシフ国防相率いる代表団がカーブルを訪問し、ターリバーンのバラーダル副首相代行らと会談した。

パキスタン代表団には、軍統合情報局(ISI)長官、アフガニスタン特使らも同行した。ターリバーンのムジャーヒド報道官によれば、会談では、治安、アフガニスタンに飛来するドローン、敵対的勢力の活動、貿易関係、国境管理等が協議された。

また、バラーダル副首相代行は、パキスタン国内で拘束されるアフガン難民の処遇、及び、トルハム国境等での円滑な通行について改善を要望した模様だ。

一方、22日付パキスタン外務省声明によれば、パキスタン・ターリバーン運動(TTP)、及び、「イスラーム国ホラーサーン州」(ISKP)を筆頭に、地域で増大するテロの脅威への対処が会談で議論された。

評価
今次訪問の主要な議題は、テロが両国に与える脅威を如何に抑えるかであったと考えられる。パキスタンでのイスラーム統治実現を標榜するTTPは、パキスタンにとって治安上の脅威である。

2022年6月にはパキスタン政府とTTPは一時停戦に合意したものの、11月にTTPは停戦を延長しない旨発表、12月頃からパキスタン治安部隊への攻撃再開を指示した。

2023年1月30日、パキスタン北西部のペシャーワル市のモスクの爆発では、昼の礼拝のために集った市民100名超が死亡した(注:TTPは公式には無関係と主張)。

目下、パキスタン治安機関にとってTTPの活動を抑え込むことが焦眉の急であり、過去には水面下で協議を仲介したこともあるなど、TTPと密接な関係を有するターリバーンから協力を得たいものと見られる。

そして、ISKPへの対策も両国にとって重要である。ISKPはアフガニスタン国内で、シーア派教徒への攻撃のみならず、最近では、ロシア大使館(2022年9月)、中国人客の利用が多いホテル、パキスタン大使館(ともに12月)を標的に治安事案を引き起こしてきた。実害を被ったパキスタンは、ISKPの活動が自国に波及・拡大することは避けたいはずであり、実効支配勢力ターリバーンにテロ対策面での活躍を期待しているのだろう。

この他、両国関係においては、国境管理、アフガン難民の処遇を巡る問題等、課題が山積している。今次訪問にISI長官が同行していることから見ても、パキスタンとしてはターリバーンをしっかり制御しつつ、自国にとっての利益を確保したい意向がうかがえる。

一方のターリバーンは、現在の状況を外国による「占領」から解放されたと認識しており、パキスタンからの過度な介入や干渉には強く反対すると考えられる。(後略)【2月24日 中東調査会】
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【もともとタリバンはパキスタンの軍情報機関ISIが育てた組織ではあるが、復権後はタリバン側は独自性主張も】
もともとタリバンはパキスタンの軍情報機関ISIが中心になって(初期はアメリカのCIAの意向を受けて)資金・軍事訓練・武器などを供与し育成した組織です。

****タリバンの「生みの親」はパキスタンのスパイ組織****
(中略)ISIは「国家の中の国家」と呼ばれる組織で、パキスタンの国家運営を裏で牛耳っていると言われる。内政、安全保障、外交に至るまで、ISIの発言力は高い。大統領も首相も、ISIから許可なく物事を決められないほどだという。

ISIがそれほどまでに力を付けた背景には、アメリカの存在がある。創立以降どんどん大きくなってきたISIだが、特に1979年、隣国アフガニスタンにソビエト連邦が侵攻したことが大きな転機となった。

当時ソ連と冷戦状態にあったアメリカは、ソ連侵攻でアフガニスタンが共産化するのを阻止しようとした。そこでアフガニスタンとも近い関係だったパキスタンのISIと、緊密な関係を築くようになる。

アメリカは軍事的な支援や戦闘資金などをISIに提供し、ISIはそれを元にアフガニスタンでソ連軍と戦うムジャヒディン(イスラム戦士)を支援。戦闘訓練も施した。ムジャヒディンはその後、イスラム原理主義勢力、タリバンとなった。

つまり、ISIは諜報機関として、アメリカなどの後ろ盾を得てテロ組織を運営するようになっていったのである。結局、ソ連はタリバンなどの攻勢によってアフガニスタンから撤退を余儀なくされるのだが、その後にアフガニスタンを支配したのはタリバンだった。そして内戦の末、1996年にはタリバン政権が誕生する。

ただそれも長くは続かなかった。アメリカで911米同時多発テロが発生し、首謀者とされたイスラムテロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビン・ラディンを匿っていたとして、米軍はタリバン政権率いるアフガニスタンを軍事攻撃。あっという間に、自分たちが誕生の手助けをしたタリバンの政権を崩壊させる。

以降、米軍はアフガニスタンに駐留し、引き続きISIに軍事支援や資金提供をして、タリバンやアルカイダと戦ってきた。一方、ISIはタリバンとの関係を維持し続けてきた。(中略)

お隣のアフガニスタンが安定するか混乱するかは、パキスタンの利害問題でもある。そのためISIは、いまだにタリバンを使って情勢をコントロールしようとしているのだ。【2021年7月15日 COURRIER JAPON】
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上記はタリバン復権以前の記事で、パキスタン軍情報機関がタリバンを生み育て、旧政権崩壊後もタリバンを支援し、コントロールしてきたことは事実でしょう。ただ、その力関係に次第に変化はあったかも。

タリバンの攻勢が強まるにつれ、パキスタンはアメリカなどからタリバン抑制を再三求められていましたが、パキスタンはタリバンをコントロールする力はないといった旨の主張をしていました。

実際のところタリバン復権前の頃のパキスタン(ISI)・タリバン関係がどのようなものだったのかはよくわかりませんが、ISIとの関係が切れた訳でもないでしょう。

こうした経緯からパキスタン側にはアフガニスタン・タリバン政権に対し、上から目線的な、パキスタンの要請に応じて当然・・・といった発想もあるのかも。想像ですが。

一方のタリバン側は、“外国による「占領」から解放されたと認識しており、パキスタンからの過度な介入や干渉には強く反対すると考えられる”【前出 中東調査会】と、独自性を強めていると推測されます。

【パキスタン側の不満爆発 国境での銃撃戦 国境封鎖】
そうした「関係変化」を背景に、冒頭のようなテロ頻発でタリバン政権の生ぬるい対応へのパキスタン側の不満の高まりもあって、パキスタン・アフガニスタンの国境では緊張状態にありました。

****アフガニスタン:パキスタンとのトルハム国境が封鎖、両国間の緊張が高まる****
2023年9月6日、アフガニスタン・パキスタン両国を隔てるトルハム国境において、両国国境警備隊による銃撃戦が発生した。これを受けて、同国境は一時的に封鎖された。

国境封鎖の継続を受けて、アフガニスタン外務省は9日に声明を発出し、パキスタンによる国境封鎖措置に反対の意を表明するとともに、収穫期を迎えたアフガニスタン農産物の輸出を妨げるパキスタン政府の対応を強く非難した。また、ターリバーンは同声明で、6日の国境付近での治安事案において先に攻撃を仕掛けたのはパキスタン軍だと主張した。

これに対し、パキスタン外務省は11日、アフガニスタン暫定政権(注:ターリバーンを指す)が、パキスタン領内に人工建造物を建設したと述べ、ターリバーンが先に発砲したと主張した。

評価
アフガニスタンにとり、パキスタンは輸出第1位、輸入第3位の重要な貿易パートナーであり、トルハム国境封鎖の経済的影響は大きい。パキスタンが今次措置を講じた背景には、近年、ターリバーンに対する不満を強めていたことがある。

パキスタン国内では、パキスタン・ターリバーン運動(TTP)による攻撃が増加傾向にあり、パキスタン当局はTTPがアフガニスタン領内に聖域を得て、米軍が残した兵器を入手し攻撃していると見ている(注:米政府は兵器の流出を否定)。

こうした経緯から、パキスタンはターリバーンに対し、アフガニスタン領をTTPに使用させないよう再三要求してきた。

こうした中、今次事案と同日(6日)発生した、北西部ハイバル・パフトゥンフワー州のチトラールでの治安事件も影響を与えていると考えられる。国境での衝突が発生したその日、チトラールでも、複数のTTP戦闘員がパキスタン軍の哨戒所を襲撃し、交戦の末、パキスタン兵士4人が死亡、武装勢力12人以上が死亡する事件が発生した。

同事件によって、パキスタン側の不満が爆発したと考えられる。なお並行して、パキスタン領内でのアフガニスタン難民に対する取締りも強化されている模様である。

一方のターリバーンは、同国の領土を他国に危害を加えるために使用させることはないと主張し続けている。2021年8月の政権奪取を経て、ターリバーンは外国軍の占領から解放されようやく自由と独立を手に入れたと認識しており、次第に独自路線を強めてもいる。こうした事情から、アフガニスタン側も独自の主張を押し通そうとするだろう。

このように両国間には課題が多い一方で、強固な経済・貿易関係もあり人の往来も活発であるため、対話を通じて国境を再開させることが重要である。TTPの活動抑え込みにおいて、ターリバーンが如何にパキスタンと協力できるかが一つの焦点となるだろう。

他方、実際のところ、ターリバーンとTTPは長年共闘してきた間柄であり関係断絶は困難であるため、両国関係の完全修復には時間を要する可能性がある。【9月12日 中東調査会】
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“TTPがアフガニスタン領内に聖域を得て、米軍が残した兵器を入手し攻撃している”というパキスタン当局の主張は事実のようです。

****死んだ父を探す幼い妹 命を奪った武器の正体****
(中略)
タリバン復権の前から、アフガニスタンの政府や軍関係者がアメリカ製の武器を横流しするケースはあったといいます。ただ、扱う量が増えたのは、タリバンの復権後。

武器庫が開けられ、そこからタリバンの戦闘員が機関銃やロケット弾などを持ち去り、一部をタリバンに提出して、残りを自宅に保管しているのだといいます。

そして戦闘員たちは、ガソリンを入れる時など生活費が必要になるとブローカーに武器を売りに来ていたのだそうです。

以前はアフガニスタン国内で1万ドルほどの価格で取り引きされていたM4ですが、闇市場に出回るようになると取引価格が下落。タリバンの復権直後は、1000ドル以下、10分の1以下まで値下がりしたといいます。
(過去にアフガニスタンで武器のブローカーをしていたという)男性は、こうした闇市場でアメリカ製の武器を調達し、取り扱った武器が国境を越え、パキスタンのイスラム過激派組織TTPに渡ったこともあったということです。

「タリバン自身が武器を取り引きするのは自由だ。武器は、イランや中国にも流出している。誰も、流出を止めることができない」

実際に、隣国パキスタンの治安当局はTTPがこの武器を入手し、テロ活動を活発化させているとみています。
2023年の上半期にパキスタンで発生したテロは、2022年の同時期より79%も増えているというシンクタンクの調査も明らかになっています。

さらに国連が2023年7月にまとめた報告書では、TTPだけでなく過激派組織IS=イスラミックステートにまで武器が流出している疑いがあるとしています。(後略)【9月14日 NHK】
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【止まないテロ パキスタン当局はアフガン不法滞在者を国外退去に タリバン政権報復から逃れてきた人々も】
“パキスタン側の不満が爆発で国境での銃撃戦”とのことですが、更に冒頭に紹介した9月29日の2か所のモスクでのテロ事件・・・いよいよパキスタン側の不満は大爆発の様相。

****パキスタン、アフガン不法滞在者を国外退去に****
パキスタン内相は3日、国内に不法滞在している数十万人のアフガニスタン人について、11月1日までに自主的に出国しなければ国外退去を命じると発表した。

パキスタン政府は、アフガニスタンから活動する過激派の攻撃が増加しているとして取り締まりを強めている。一方、アフガニスタン政府はこうした攻撃について否定している。

国連の最新の統計によると、パキスタン国内には難民登録をしているアフガニスタン人が約130万人いるほか、88万人が滞在許可を得て暮らしている。

だが、移民問題を担当するシャーゼーン・ブグティ内相は、これに加え170万人のアフガニスタン人が不法に滞在していると主張した。

アフガニスタンでは、イスラム主義組織タリバンが復権した2021年8月以降、推定60万人がパキスタンに避難した。

国営通信APPは、ブグティ氏が会見で「パキスタンに居住する不法移民と不法滞在者に与えられた期限は11月1日だ」「出国しないのなら、州や連邦政府の法執行機関を総動員して強制退去させる」と述べたと伝えた。

政府筋がAFPに語ったところによると、政府は全アフガニスタン人の国外退去を望んでいる。「第一段階では不法滞在者、第二段階ではアフガニスタン国籍の人、第三段階では滞在許可証を持っている人が追放される」という。

在パキスタン・アフガニスタン大使館は3日、過去2週間で1000人以上のアフガン人が拘束されたとXに投稿した。うち半数がパキスタンに合法的に滞在しており、警察によるアフガニスタン難民に対する嫌がらせだと非難した。

ブグティ内相はまた、11月1日からは有効なパスポートを持ったアフガニスタン人のみ入国を許可するとしている。
アフガニスタン人は長年、パスポート代わりに同国の身分証明書で入国が認められていた。アフガニスタンでは現在、パスポートの発行申請が殺到しており、取得までに長期間かかる。パキスタンの入国ビザ取得にはさらに数か月かかることもある。

ブグティ氏は取り締まりを実施し、アフガニスタン人の不法滞在者が所有する不動産や企業を没収すると警告している。 【10月4日 AFP】
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ブグティ内相は会見で、今年国内で発生した大規模なテロ24件のうち、14件はアフガニスタン人が実行したと指摘し、「証拠はある」と強調しています。

パキスタン側がどこまで徹底するのかはわかりませんが、不法滞在者に加えて滞在許可証を持っている者もということになれば対象者は百万人を超える膨大な数になります。

そのなかには40年にわたりパキスタンに住み続けてきたような人々も含まれます。今更アフガニスタンに戻れと言われても生活が成り立ちません。

更に、タリバン政権復権で報復を恐れて逃れてきたような人々も多数います。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは2日、タリバンの迫害を恐れてパキスタンへ逃げた多くのアフガニスタン人が、同国で恣意的な拘束や追放の脅威にさらされているとして、深い懸念を示す声明を出しています。
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米中関係  濃密に続く両国協議 進むバイデン・習近平会談の実現に向けての地ならし

2023-10-04 23:21:31 | 国際情勢

(サリバン米大統領補佐官(左)と握手する中国の王毅共産党政治局員兼外相=17日、マルタ(中国外務省のホームページより、共同)【9月17日 共同】)

【相次ぐ米高官訪中 中国も米へ秋波 サリバン・王毅両氏 マルタ島で12時間に及ぶ協議】
互いに対抗姿勢を強めながら安全保障・外交戦略を展開しているアメリカと中国ですが、一方で対話を求める動きも頻繁に行われています。

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米中関係は2月に発覚した中国の偵察気球の米本土飛行を契機に冷却化したが、バイデン政権は6月以降、ブリンケン国務長官、イエレン財務長官、ケリー大統領特使(気候変動問題担当)、レモンド商務長官を相次ぎ訪中させた。

バイデン氏は11月のAPEC開催に合わせ習氏と会談する強い意向を持っている。

習氏自身はインドで今月開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に欠席。経済問題の対処に苦慮しているとみられ、APEC出席の見通しも現時点では不透明だ。

一方で中国の対外的な威圧行為に緩む気配はなく、米高官の派遣にも実質的な成果は乏しく、「対話ありき」の姿勢には野党共和党から批判が上っている。【9月18日 産経】
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当面のイベントとしては、G20では実現しなかったバイデン大統領と習近平国家主席の会談をどのようにセットするかが焦点となっています。

****中国首相「米中は交流を密にすべき」とバイデン氏に訴え****
中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は11日の記者会見で、李強(り・きょう)首相がインドでバイデン米大統領と「短く交流した」と明らかにした。

毛氏によると、李氏はバイデン氏に「中国の発展は米国にとって挑戦ではなくチャンスだ」と述べた上で「中米両国は交流を密にすべきだ」と訴えた。

李氏とバイデン氏は、インドで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の会場で会った。毛氏は、李氏が会場で「バイデン氏ら多くの国の指導者と簡単で短い交流を行った」と説明した。

これまで中国はG20サミットにはトップである国家主席が出席し続けてきたが、習近平国家主席は初めて参加を見送った。今回のG20サミットに合わせて習氏とバイデン氏による米中首脳会談の開催が取り沙汰されていた。

11月に米サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で習氏とバイデン氏による米中首脳会談が実現するかが次の焦点となる。【9月11日 産経】
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アメリカのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国の王毅外相が地中海の島国マルタで9月16日から17日にかけて12時間に及ぶ会談を行ったことも両国サイドから発表されています。

ホワイトハウスと中国外務省の声明によると、双方は「率直で実質的かつ建設的」な話し合いを行ったとのこと。

****米中高官が協議、首脳会談探る マルタで12時間****
バイデン米政権は17日、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と王毅共産党政治局員兼外相が16、17日に地中海マルタで会談したと発表した。高官級の意思疎通を深め、11月に米国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせたバイデン大統領と習近平国家主席との会談実現につなげる考えとみられる。

ホワイトハウスの声明は「率直かつ実質的、建設的な議論が行われた」としている。米高官によると、2日間で約12時間に及んだ。

サリバン氏は、台湾周辺で中国軍用機や艦船の動きが活発化していることに懸念を示し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調。ウクライナに侵略を続けるロシアに中国が軍事支援を行わないようくぎを刺した。

両者は米中間の重要課題に対処するため戦略的な対話チャンネルを維持することで一致。英紙フィナンシャル・タイムズによると、王毅氏は来月にもワシントンを訪問する見通しという。(後略)【9月18日 産経】
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中国からはアメリカとの対話に“秋波を送る”ようにも思える反応も。

****習主席「米中は平和的共存実現を」、元米義勇軍隊員の書簡に返信****
中国の習近平国家主席は第2次世界大戦中に中国を支援した米義勇航空部隊「フライング・タイガース」の退役軍人に対し、中国と米国は平和的共存を実現しなければならないとの考えを示した。国営メディアが19日報じた。

退役軍人2人からの書簡に返信し、中米両国民は旧日本軍との戦いで同じ敵を共有し「深い」友情を築いてきたと述べた。

「中国と米国は将来に向けて世界の平和、安定、発展により重要な責任を負っている」と指摘。「両国は相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力を実現しなければならない」と強調した。

フライング・タイガースは1941年から42年にかけて日中戦争で蒋介石が率いる中国国民党軍を支援した米国の義勇軍。【9月19日 ロイター】
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****中国副主席「米と共に繁栄」 首脳会談へ具体的行動も要求****
中国の韓正国家副主席は18日、ブリンケン米国務長官とのニューヨークでの会談で「両国は互いに成功し、共に繁栄できる」と強調した。首脳会談を実現するため「具体的な行動を取り、有利な条件をつくり出す」ことを米側に要求した。中国外務省が19日発表した。台湾問題や米主導の対中包囲網を巡り、中国側の対米不信は根強い。

中国外務省によると、韓氏は「中国の発展は米国にとってチャンスだ。利益であり、リスクではない」と主張。同盟・友好国を巻き込んで「デカップリング(経済切り離し)」や「デリスク(リスク回避)」を進めようとするバイデン政権をけん制した。【9月19日 共同】
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「中国の発展は米国にとってチャンスだ」というのは事実です。中国にとってアメリカも同様。両国は現在でも経済的には深く結びついており「デカップリング(経済切り離し)」などできない関係にあります。

対抗する米中両国・・・とは言っても、そうした相互依存関係が存在することがかつてのアメリカ・ソ連の「冷戦」とは全く異なるところです。

単発の高官レベルの会談だけでなく、定期的な会合の枠組み作りも進んでいます。

****米中、経済・金融作業部会を発足 高官レベルの対話ラインに****
米財務省は22日、中国との間で経済・金融作業部会を発足させたと発表した。次官レベルで定期的に会合を開き、米国側はイエレン財務長官、中国側は経済政策を担当する何立峰副首相に結果を報告する。

バイデン政権による先端半導体の対中輸出規制などで米中関係は悪化しており、高官レベルの対話のラインを設置することで対立激化を避ける狙い。

米財務省は「経済・金融政策に関し率直に議論し、マクロ情勢に関して情報交換するための継続的な対話チャンネルを設ける」と説明した。

イエレン氏は7月、北京を訪問して李強首相や何氏ら中国政府高官と会談。「より頻繁に意思疎通を図るようになると確信している」と対話の継続に意欲を示していた。【9月22日 毎日】
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【北朝鮮の越境米兵追放にも中国の働きかけが】
9月27日に、北朝鮮は越境米兵の亡命を認めず追放したことが報じられ、米兵はアメリカの保護下に置かれました。

****北朝鮮、拘束米兵を追放=米国が保護下に****
北朝鮮は、拘束していた米軍のトラビス・キング2等兵の調査を終え、「領内に不法侵入した」として追放した。米政府高官は27日、キング氏を米国の保護下に置いたと明らかにした。

朝鮮中央通信によると、キング氏は北朝鮮の調査に対し、「米軍内での非人間的な虐待と人種差別に対する反感、不平等な米国社会への幻滅」を理由に、北朝鮮側に渡ったと説明した。キング氏は亡命を希望していたとされるが、北朝鮮は認めなかった。

キング氏は7月18日、板門店の共同警備区域(JSA)のツアーに参加していた最中に軍事境界線を越えて北朝鮮側に渡った。韓国に駐留していたが、米韓のメディアによると、韓国で暴行の疑いで拘束された後、米国への移送中に空港から抜け出していた。【9月27日 時事】
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北朝鮮の今回措置の背景には、北朝鮮との国交がないアメリカに代わって、北朝鮮と国交を持ち、平壌に大使館も有するスウェーデンが窓口になったと報じられています。

また、アメリカ政府高官は米兵移送に関して、引き渡し場所となった中国が「建設的な役割」を担ったとしています。

中国は単に引き渡しルートに協力しただけでなく、北朝鮮への働きかけも行ったようです。
北朝鮮の対応は、越境米兵を政治的に利用することなく、不思議なぐらいに淡々としたものでしたが、その背後にそうしたアメリカとの関係改善を念頭に置いた中国の思惑もあったようです。

そうしたこともあって、バイデン・習近平会談に向けて気運が高まっているようです。

****米中、首脳会談実現へ協議に弾み=関係者****
中国の習近平国家主席の訪米およびジョー・バイデン米大統領との首脳会談の実現向けた両国間のハイレベル協議に弾みがついている。

複数の関係者によると、習氏の側近で経済政策トップの何立峰・中国副首相がワシントンを訪問する方向で協議が進められている。実現すれば、バイデン政権発足以来で最も高位の中国当局者の訪米になる。米中首脳会議の準備のため王毅外相が10月にワシントンを訪問する計画も進められている。

北朝鮮は今週、韓国から越境した米兵を国外に追放したが、米当局者によると、背後には中国の働きかけがあった。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は10日前の王氏との会談で、米兵の越境問題を取り上げていたという。

米中の間で緊張が高まる中、両国は関係の安定化を図っている。両政府の動きを踏まえると、11月にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に習氏が出席する可能性が高まったようだ。

バイデン氏と習氏は直近では昨年11月、インドネシア・バリ島での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて会談した。

中国政府は米国とその同盟国に対抗しようと、ロシアとの連携を強化している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は来月北京を訪問し、習氏の推進する広域経済圏構想「一帯一路」の首脳会議に合わせて習氏との会談に臨む予定だ。複数の関係者によれば、一帯一路の会議は10月17、18の両日に開催される。

ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所の中国センターのディレクターでオバマ政権時代に国家安全保障会議(NSC)中国部長を務めたライアン・ハス氏は「中国高官によるこうした訪問が実現すれば、首脳級会合の確率は高まり続ける」と話した。

王氏は26日、北京での記者会見で今年のAPEC首脳会議について「対立を招く争いの場ではなく、協調を促す大舞台にするべきだ」とした上で「米国は開催国としての責任を認識し、開放性、公平性、寛容、責任感を示し、円滑な会議運営に向けて環境を整える必要がある」と語っていた。

中国大使館は、米中両政府が「二国間の取り組みとやり取りについて連絡を取り合っている」と述べた。米財務省はコメントを避けた。米国務省のマット・ミラー報道官は27日、米中首脳会談実現の可能性についてのコメントを避けつつ、「首脳同士の対話に代わるものはない」と語った。【9月29日 WSJ】
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【アメリカの超党派訪中議員団も】
その後も「建設的協議」が続いています。

****米中外交官がワシントンで会談、対話維持へ「建設的協議」=米政府***
米国務省は28日、ダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)と中国の孫衛東外務次官がワシントンで会談し、「率直で綿密かつ建設的な協議」を行ったと発表した。

ここ数カ月、米高官が相次いで訪中し、対話維持に向けた取り組みを続けている。

最近では、ブリンケン国務長官がニューヨークで中国の韓正副主席と会談、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)がマルタで中国の王毅外相と会談した。

国務省は「米中双方は、オープンな連絡手段を維持するための継続的な取り組みの一環として、地域問題に関して率直で綿密かつ建設的な協議を行った」と発表。

クリテンブリンク氏が「台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を再確認した」ほか、ミャンマーや北朝鮮、海洋を含む他の地域問題についても協議が行われたと説明した。【9月29日 ロイター】
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更には、アメリカからの超党派の議員団訪中も。

****中国が歓迎 アメリカ超党派議員団が訪中へ****
中国政府は4日、アメリカの超党派議員団が近く中国を訪問することを認めたうえで「歓迎する」とのコメントを発表しました。

アメリカのブルームバーグ通信は2日、与党・民主党の議会上院トップのシューマー院内総務が来週、超党派議員団を率いて中国を訪問し、習近平国家主席との面会も模索していると伝えていましたが、中国外務省は4日、コメントを発表し「訪問を歓迎する」としました。

コメントでは、「今回の訪問がアメリカ議会の中国に対する客観的な理解を深め、両国の立法機関の対話と交流を促進し、両国関係の発展にプラスとなる要素をもたらすことを望む」としています。

アメリカと中国は対立する一方で、6月のブリンケン国務長官訪中など対話を活発化させつつあり、中国としても今回の訪問歓迎で対話への意欲を示した形です。

米中をめぐっては、来月、アメリカで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議にあわせて、バイデン大統領と習主席の会談が実現するかが焦点となっていて、今回の議員団の訪中が米中首脳会談の地ならしとなるか注目されます。【10月4日 TBS NEWS DIG】
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このように最近の両国の動きを並べると、随分に親密なようにも思えます。
表向きの「言うべきことを言う」関係も重要ですが、同時に、こうした関係維持に向けた動きも重要です。

日本は処理水をめぐって中国とやりあっていますが、中国側にはそろそろ落としどころを探すような雰囲気も。水面下で日中間での協議・接触が行われている・・・のでしょうか? 米中関係を見れば、日中間でももっと高官レベルの接触があってもいいようにも思えます。
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グリーンランド、アマゾン、オーストラリア・・・土地もアイデンティティも奪われた先住民

2023-10-03 23:26:39 | 人権 児童

(【Netflix(ネットフリックス)配信のデンマークTVドラマ「コペンハーゲン/首相の決断」】 左女性がデンマーク首相、右男性がグリーンランド自治政府首相)

【グリーンランド 「若者の自殺は何も誇れないせいだ」】
Netflix(ネットフリックス)で配信されているデンマークのTVドラマに「コペンハーゲン/首相の決断」という作品があります。

予想外の展開でデンマーク初の女性首相となった架空の政治家とその周囲の人々の政治的駆け引きや私生活の葛藤を描くもので、“全世界70か国以上で放送されている大人気ドラマとなり、デンマークを代表する政治ドラマとなった。様々な国々でリメイクが予定されている。”【ウイキペディア】と世界的に好評のようです。

連立政権を支える与党、野党、外国政府、更にマスメディアの間で繰り広げられる生々しい政治的駆け引き、主人公の信念を貫きたい思いと現実の葛藤など、また、多忙な女性首相と家庭内の妻・母親という立場の両立に苦しむ主人公・・・といったあたりがメインテーマになりますが、その中にグリーンランドにある米軍基地を舞台にしたアメリカとの間の政治問題が発生し、その状況をグリーンランド自治政府首相に説明する場面があります。

多忙の中、デンマーク首相のグリーンランド訪問、彼女としては最大限の誠意を示したつもり。しかし自治政府首相との会談は1時間。

周知のようにグリーンランドはデンマーク領です。
“かつてはデンマークの植民地で、現在はデンマーク本土やフェロー諸島と対等の立場でデンマーク王国を構成しており、独自の自治政府が置かれている”【ウィキペディア】

しかし、政治的現実にあってはグリーンランド自治政府・住民の声はあまりデンマーク中央には届いていない・・・というのは容易に想像できるところです。

グリーンランドを訪れた主人公のデンマーク女性首相とグリーンランド自治政府首相がグリーンランドの現状をめぐって言い争いになります。

デンマーク首相「あなたたちに非はないの?」
グリーンランド自治政府首相「支配されている方が悪いと?」

デンマーク首相「状況を悪化させているのはあなたがた。縁故採用、汚職、初等教育が十分に行われず、高校中退率が4割を超える・・・」
グリーンランド首相「改善を試みている」
デンマーク首相は「本当? 氷が融けて石油が出るのを待っているだけじゃないの?」

「何様のつもりだ!」 怒りを爆発せたグリーンランド自治政府首相は「せめて1日あれば状況を見せられるのに・・・」と悔やむ。そこで主人公は1時間の会談予定を急遽変更し、1日かけて島内を視察することに。

グリーンランド自治政府首相は住民の暮らしぶりを見せた最後に墓地に首相を案内する。そこには自殺した若者が眠っている。

グリーンランド自治政府首相「一番の問題は住民の苦しみだ。 出生率は減少、若者は出ていく。更に自殺率が増える一方だ。特に若者が命を立つ。5人に一人が自殺を試みる。最悪の世界記録だ。」
デンマーク首相「理由は何だと?」
グリーンランド自治政府首相「若者の自殺は何も誇れないせいだ」

中央政府とグリーンランドの関係性、氷と雪に覆われた島の暮らしの現状、温暖化で石油・資源活用の可能性も・・・印象的な場面でした。私はまだ観ていませんが、グリーンランドの石油採掘はドラマ後半で再び問題になるようです。

【失われつつあるコミュニティで生き延びようと必死に悲鳴をあげる先住民】
****北欧で先住民は未だに抑圧されている サーミとイヌイットの尊厳を取り戻せ****
「先住民」を主題とした映画の公開が北欧で相次いでいる。デンマーク・グリーンランド・カナダ合作の『Twice Colonized』(2023)はイヌイットの基本的な人権を求めて闘う活動家のドキュメンタリー映画だ。

アーユ・ピーターはグリーンランドで遊牧民のイヌイット一家で育った弁護士・活動家だ。幼い頃にグリーンランドの家族から引き離されデンマークに送られ、言葉も文化的帰属も失った。成人後はカナダの北極圏に移り住み、イヌイットの植民地化を経験した。

映画タイトルにもあるように「二度、植民地化された」自らの体験に基づき、孫や未来の世代のためにより良い世界を作りたいと彼女は活動している。

植民地主義的な構造は今も先住民の暮らしやメンタルヘルスに影響を与えており、彼女の息子も突然命を絶った。自ら命を絶つ若者が絶えない背景には抑圧されてきた歴史がある。

苦しみの連鎖が孫の世代で減るように、アーユ・ピーターは先住民の権利と可視性のために闘うことに人生を捧げている。本作では先住民のための常設のEUフォーラムを作ろうと奮闘する姿を見ることになる。これは先住民の権利を取り戻そうと闘いながら、白人社会と同化されたことによって傷ついたピーター自身の傷を癒す旅でもあるのだ。

エッラ・マリエ・ヘッタ・イサクセンは環境保護とサーミの権利のための闘いにおけるノルウェーでは有名な女性だ。筆者は彼女を「ノルウェーのグレタ」と讃えたいほど、今革命を起こしている。

サーミ人はノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの先住民族だ。ノルウェーでは「劣った民族」として再教育が必要だとされ、1800年代の同化政策により、子どもは親から引き離され、寄宿学校で強制的にノルウェー語を勉強させられた。

サーミ語を話すことを禁じられ、サーミ人であることは「恥」であると教えられ、アイデンティティを奪った抑圧政策。その影響ともたらされた低い自己肯定感は、現代のサーミ人にも受け継がれている。低い身長などの「外見差別」も受け、カラフルな民族衣装を着ていると冷たい眼差しを浴びせられ続けた。

ノルウェーのドキュメンタリー映画『RAHCAN - Ellas oppror』(2022)では、フィンマルクのレッパルフィヨルドでの鉱山投棄に反対するサーミ人と地元の環境団体の活動を追っている。音楽、愛、連帯がどこまで人や自然を救えるかという物語でもある。(

自国の抑圧の歴史を反省する動き
ノルウェーの映画祭Oslo Pixには「北欧映画」「ドキュメンタリー」などの複数のカテゴリーがあり、両作品とも「先住民族」というカテゴリーに振り分けられている。そもそも、日本では映画祭などで「先住民族」や自国の歴史の反省にフォーカスすることがあるだろうか。

グリーン・コロニアリズム という現代の植民地支配
両作品にはいくつもの共通点がある。サーミ人はトナカイ放牧やサーモン漁業を生活の糧としてきたが、ノルウェー政府によるトナカイの放牧数の規制、養殖サーモンの発展で生態系が変わり、野生サーモンが減少するなど、サーミの従来の仕事の場は失われつつある。

石油・ガス採掘の国から再生可能エネルギーの国に移行したい政府の意向に対して、風力発電の促進による風車の増加はトナカイ放牧を難しくさせている。

再生可能エネルギーなどの活動によって、すでに社会から疎外されている先住民のようなコミュニティが犠牲になる「グリーン・コロニアリズム」は大きな問題となっている。

イヌイットの経済は、毛皮の取引で長い間支えられてきた。しかし欧州による規制とアザラシの殺害が残酷だとする環境活動家たちの反対により、漁師の歴史とコミュニティの維持ができなくなっている。

欧州と環境活動家の規制と反対運動が、いかにイヌイットの生きる手段を奪っているかをアーユ・ピーターが国際社会で訴え続ける姿が本作では描かれている。

「あなたたちは私たちの土地もアイデンティティも可能な限り全てを奪ってきた。身勝手な理由の押し付けで、収入源や土地をさらに奪おうというのか。いい加減にして」という怒りが両作品からは伝わってくる。

親子の時間と言葉を奪うという残酷な「おせっかい」
両方の先住民に対して、ノルウェーやデンマークがしてきたことは「劣った民族のあなたたちを教育してあげる」というおせっかいと傲慢さの押し付けだ。

かつて親と子どもを引き離し、白人の言葉を無理やり教え、母国語を奪った歴史は、今の世代のアイデンティティにも大きな影響を与えている。

「言葉を奪われることはアイデンティティを失う」ことだとエッラ・マリエ・ヘッタ・イサクセンは言い続けており、彼女のバンドISAKでもサーミ語で歌っている。

アーユ・ピーターもデンマーク語を話すことを嫌がり、英語に切り替える場面が映画には登場する。デンマーク語を話すことで自らを失っているようなアイデンティティ・クライシスに陥っていた。

北欧の福祉制度の網から抜け落ちる先住民
北欧社会はかつて親から子どもを引き離して子どもを再教育した。先住民として背負う抑圧のルーツ、恥として教えられた血筋、社会に見つけられない自分の居場所。

北欧では福祉制度が豊かと言われているが、先住民の言葉や悩みを理解する医療従事者やカウンセラーは少ない。そのため先住民は現地の人と同じようには福祉制度を利用できておらず、若い世代ではメンタルヘルスの悪化で特に男性の自殺が絶えない。アーユ・ピーターのように子どもの死を嘆く親は今もおり、抑圧の歴史は今も親と子を引き離しているのだ。

北欧で先住民が受けてきた抑圧の歴史、そして今も続いている抑圧の遺産を知れば知るほど、人間と言うのはいかに残酷で身勝手なのかを再認識させられる。過去の反省から対話で歩み寄ろうとする現代社会と、同時に経済発展や動物愛護の観点でぶつかる両者の主張。

共存の道を今も悩みながら探っているが、失われつつあるコミュニティで生き延びようと必死に悲鳴をあげる先住民の姿を見ていると、人類はいったい何をやっているのだと、困惑と悲しみを筆者は感じるのだ。【9月4日  鐙麻樹氏 YAHOO!ニュース】
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【グリーンランド議会 独自憲法制定の動き】
かつてはグリーンランドはデンマークにとっては単なる氷と雪に覆われた島に過ぎなかったでしょうが、温暖化で石油などの資源活用が現実になってきていますし、ロシアをめぐる地政学的重要性も高まっています。

そうした状況でグリーンランド自身はどこを目指すのか?

****グリーンランド議会、憲法草案めぐり第1読会****
デンマーク領グリーンランドの自治議会は28日、憲法草案をめぐる第1読会を開いた。独自憲法の制定は、将来の独立交渉に際し、よりどころとなるものだ。

憲法草案は、憲法制定委員会が4年かけて起草。グリーンランド語で書かれており、49段落で構成されている。

グリーンランドの人口は約5万5000人。1979年に広範な自治権を獲得した。独自の旗、言語、文化、自治政府機関を有する。ただ、域内総生産の4分の1、予算の半分以上をデンマークからの補助金に依存している。

2009年に施行された自治政府法の下、権限はさらに拡大したが、通貨の発行、司法制度、外交・安全保障などの分野は依然、デンマークが担っている。地元メディアによると、憲法草案には、グリーンランド独自のパスポートの発給、司法権限をどうするかといった点については明記されていない。

王室に関する言及もなかった。デンマークの元首である女王もしくは王を引き続き元首としていただくのか、未解決の問題として残されている。

デンマーク国際問題研究所のウルリック・プラム・ガド研究員はAFPに、「(憲法草案は)現時点ではグリーンランド内の問題を扱っている。デンマークとの交渉が始まり、それを担当する政治家が決まった段階で、デンマークとの関係も浮上してくるだろう」と語った。 【4月29日 AFP】
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【過去に対する謝罪はあるものの・・・】
最近になってカナダやオーストラリア政府は先住民に対して過去の歴史を謝罪するようになっています。
教会も。

****ローマ教皇が謝罪=先住民虐待問題―カナダ****
フランシスコ・ローマ教皇は25日、訪問先のカナダで演説し、カトリック教会が運営していた寄宿学校で先住民の子供が虐待を受けていた問題をめぐり「先住民の人々に対する多くのキリスト教徒による悪行について、謙虚に許しを請う」と述べ、謝罪した。

教皇はこの日、カナダ国内で最大級の寄宿学校があった西部アルバータ州エドモントン南方の跡地を訪問。先住民の墓地で祈りをささげた後、演説会場に移動し、寄宿学校の元生徒や羽根の頭飾りなど伝統衣装を身にまとった多くの先住民らから、歌や踊りでの歓迎を受けた。

教皇はその後の演説で「許しを請い、後悔の念を伝える『悔悟の巡礼』の第一歩としてここにいる」と宣言。寄宿学校での「文化の破壊と強制的な同化計画」に関与したとして「深くおわびする」と語ると、会場に集まった人々から拍手が湧き起こった。

カナダでは19〜20世紀、政府による同化政策の一環として、15万人以上の先住民の子供が親元から引き離され、寄宿学校に送られた。現地の言葉を話して暴行を受けるなど、学校では暴力や病気がまん延し、数千人が亡くなったとされる。寄宿学校の約7割をカトリック教会が運営していた。【2022年7月26日 時事】 
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ただ、現在の先住民の暮らしはなかなか好転していないようにも見えます。

ブラジルでは・・・

****ブラジル最高裁 アマゾン先住民の土地の権利を保護する判決 違法採掘や開発相次ぎ****
ブラジルのアマゾンで暮らす先住民などが昔からの土地の所有を認めるよう訴えていた裁判で、最高裁判所が訴えを認め、先住民の権利を保護する判決を下しました。

ブラジルのボルソナロ前大統領はアマゾン先住民の土地の所有権について、1988年の新憲法公布までに申告したものに制限しようとしていました。

アマゾンの土地開発や農業ビジネスなどを擁護する一方で、先住民の権利が制限される内容だったため、裁判となっていました。

最高裁は21日、判事11人が投票を行い、うち9人が「憲法が保障する先住民の権利に反する」と違憲の判決を下しました。

画期的な判決に、先住民は昔ながらの格好で踊ったり、涙を流して抱き合ったりと喜びを分かち合いました。

アマゾン地域ではブラジルの発展に伴い、土地の収奪や水銀汚染をもたらす違法な採掘などが先住民の暮らしを脅かしています。【9月24日 テレ朝news】
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【オーストラリア 先住民の地位を憲法に明記する改憲案の国民投票 反対派が優勢】
一方、オーストラリアでは6月21日ブログ“オーストラリア 先住民アボリジニの地位を憲法に明記する改憲案を発議 野党は反対”で取り上げた、先住民アボリジニの地位を憲法に明記する改憲案の国民投票が14日に行われますが、当初は賛成が多かったのですが、時間を追うごとに反対が増加しています。

****改憲巡り期日前投票開始=先住民地位、反対が優勢―豪****
オーストラリアで2日、先住民の地位確立に向けた憲法改正の是非を問う国民投票の期日前投票が一部地域で始まった。14日に投開票が迫る中、世論調査では反対が優勢となっている。

改憲案は、アボリジニなど先住民を「最初の豪州人」と明記し、議会や政府に意見具申できる代表機関を創設するという内容。期日前投票はビクトリアなど3州と北部準州で2日に始まり、ニューサウスウェールズなど残る3州と首都キャンベラでも3日から行われる。【10月2日 時事】 
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改憲案は先住民アボリジニとトレス海峡諸島民を「最初の豪州人」と認め、議会や政府に意見具申できる代表機関を創設するという内容。

野党・自由党など反対勢力は「一部国民に特権を与え、分断を招く」と批判しており、反対意見の伸長につながったもようです。
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ロシア  制裁下でも“抜け道”利用もあって経済堅調 来年3月大統領選挙はプーチン圧勝を“演出”

2023-10-02 23:16:55 | ロシア

(投票箱を見下ろす位置に掲げられたプーチン大統領の肖像[ロシア占領下のウクライナ東部ドネツク州の投票所にて=2023年9月9日]【9月21日 Foresight】)

【制裁をかいくぐり予想以上に堅調なロシア経済】
ロシア経済が欧米諸国からの制裁下にあるにもかかわらず、軍事支出拡大によって膨らんでいるという側面はあるものの、「戦時下の好景気」とも一部で言われるほどに予想外に堅調なことは9月7日ブログ「ロシア 経済は“欧米が期待するほどは弱くない” “あの手この手”で兵員増強 キューバ異例の対応」でも取り上げました。

****ロシア経済、今年は1.5%成長 欧州開銀がマイナス予想から大幅上方修正****
欧州復興開発銀行は27日、2023年のロシアの経済成長率は原油価格上昇を受けて1.5%になるとの見通しを公表した。5月時点では1.5%のマイナス成長を予測していた。

EBRDはAFPの問い合わせに対し、5月時点では、ロシア経済は西側諸国による制裁、特に石油上限価格の導入の打撃を受けると予想していたと回答。「しかし原油価格が上昇したのに加え、ロシアが制裁の影響を回避するため新たな輸出市場を開拓したことで石油収入が拡大した」と説明した。

新たな市場としては中国とインドを挙げた。また、ロシアの経済活動は引き続き活発だと指摘。特に家計消費に加え、ウクライナ侵攻に伴う軍事支出が高水準で推移していると分析した。

EBRDは、「2024年の成長率についてはウクライナでの戦争およびそれに関連する経済制裁の動向次第だが、現時点では1.0%の見通し」としている。 【9月27日 AFP】
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“原油価格が上昇したのに加え・・・” 船舶保険を利用した制裁で1バレル60ドルの石油上限価格が導入されているはずですが、どうして?

****ロシア産原油の輸送、無保険の「闇タンカー」船団が大半を担う…500隻に上ると英紙報道****
ロシアがウクライナ侵略に伴う米欧の対露制裁を回避して原油を高値で輸出するため、船舶保険をかけずに原油を輸送する「闇タンカー」と呼ばれる船団を多用しているとの指摘が相次いでいる。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は24日、8月に輸送されたロシア産原油の約4分の3は無保険の船舶が使われたとの分析結果を報じた。

先進7か国(G7)は昨年12月、上限価格(1バレル=60ドル)を超える原油の取引に、船舶保険を引き受けないよう保険会社に義務づけた。原油流出などの事故をカバーする船舶保険は米欧日の企業に集中している。制裁が完全に機能すれば、ロシアは60ドル超での原油輸出が困難となり、戦費調達に打撃となるはずだった。

ただ、ロシアは国際市場価格に近い値での取引を可能にするため、制裁の発動前から闇タンカーの船団を用意していた。英紙ガーディアンによると、船舶数は老朽化した船舶を中心に約500隻に上るという。

露産原油の代表的な指標となるウラル原油は、7月にG7が上限に設定した60ドルを突破し、最近は80ドル付近で取引されている。FTはロシアの今年の原油輸出収入は前年より150億ドル(約2兆2300億円)増加するとの推計を報じた。

一方、ロシアに協力的な国もあるようだ。アフリカ中部ガボンは船籍登録の規則を緩和した。ガボン籍の船は倍増し、積載量1万トン超の船の98%が闇タンカーとしてロシアの原油輸送に関わっているとの情報がある。ガボンは国連安全保障理事会の非常任理事国を務めている。【9月28日 読売】
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保険が付保されていないので、いったん事故を起こせば大変なことになりますが・・・
ウラル原油が80ドル・・・代表的な原油価格指標であるWTI原油先物が1バレル91ドル前後ですから、あまり制裁が効いてないようです。

また、“新たな市場としては中国とインド”・・・・こうした国が“抜け道”にもなっているようです。

****独、インドからの石油製品輸入が急増 ロシア産原油由来****
ドイツ連邦統計局が12日に公表した統計によると、今年1〜7月のインドからの石油製品輸入額は4億5100万ユーロ(約711億円)と、前年同期の3700万ユーロ(約58億円)から急増した。率では1100%超の大幅増となる。大半はロシア産原油由来とみられる。

統計局は、インドから輸入された精製品のうち「大部分はディーゼル油やヒーティングオイルの生産に使われるガスオイル」だとしている。

国連のデータベース「UNコムトレード」によると、ロシアが昨年2月にウクライナ侵攻を開始して以降、インドはロシア産原油を活発に買い付けている。

欧州連合諸国など西側は侵攻を受けて海上輸送経由でのロシア産原油を対象に禁輸措置を導入。また、先進7か国やEUなどはロシア産原油の取引価格に1バレル=60ドル(約8800円)の上限を設定することで合意している。

インドはロシアから割安価格で原油を購入し、精製して生産された石油製品を欧州諸国に輸出している。 【9月13日 AFP】
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これでは“制裁”の意味がないようにも思えます。表向きのロシア批判・ウクライナ支援とは随分異なる実際の行動です。

【不安材料はインフレ 大統領選挙を控えて燃料価格抑制に躍起のプーチン政権】
上記のように制裁をかいくぐって予想外に堅調なロシア経済ですが、目下の不安材料はインフレ。

****ロシア、インフレ見通し引き上げ ルーブル安見込む=経済省****
ロシア経済省は今後2年間のインフレ見通しを大幅に引き上げ、ルーブルの対ドル相場がかなり弱含むと予想していることを明らかにした。

同省がまとめたマクロ経済予測の草案によると、2023年のインフレ率見通しは7.5%で、4月時点の5.3%から引き上げた。24年の見通しも4.0%から引き上げ4.5%とした。(中略)

ルーブルの23年平均レートについては1ドル=85.2ルーブルと予想。4月時点の予想は76.5ルーブルだった。24年は90.1ルーブルと予想。4月時点は76.8ルーブルだった。

ルーブルは8月に1ドル=100ルーブルを超えて下落した。12日の水準は95ルーブル近辺。

同省はまた、23年と24年の成長率見通しを引き上げる一方、25年と26年を引き下げた。
23年の予想は2.8%。4月時点の1.2%から倍以上に引き上げた。24年は2.0%から2.3%に引き上げた。【9月13日 ロイター】
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****ロシアのプーチン大統領、政府に小売り燃料価格の安定化を命令****
ロシアのプーチン大統領は27日、政府に対して小売り燃料価格を確実に安定させるよう命じ、国内燃料市場を落ち着かせる追加措置を導入するよう求めた。

政府は21日、国内の燃料価格上昇を抑えるため、旧ソ連を構成していた4カ国以外へのガソリンおよび軽油の輸出を一時禁止。国内の燃料価格は当初は下落したが、先週末に禁輸措置の緩和が発表されると、再びじりじりと上昇し始めた。

プーチン氏は、政府は迅速に行動する必要があり、石油産業税の見直しも選択肢の1つだと指摘。「対策は講じられたが、燃料価格は上昇している。消費者は結果を必要としている」と追加的な措置を求めた。

ノバク副首相はプーチン氏に政府が追加措置を検討していると説明。国内向けとして購入した後で輸出する「グレーな」燃料輸出に対する規制、転売業者に対する燃料輸出関税の引き上げ、輸出の完全な禁止といった提案が俎上(そじょう)に上っていることを明らかにした。【9月28日 ロイター】
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プーチン政権が燃料価格抑制に躍起になっているのは、来年3月に大統領選挙を控えているからでしょう。
燃料価格上昇は、ウクライナ情勢以上に広範な国民の不満に直結します。

【9月の統一地方選でも与党は圧勝 来年3月大統領選挙は「官製選挙」でプーチン圧勝を“演出”】
プーチン大統領としては、単に再選(通算5選)されるだけでなく、圧勝することでその権威が揺らいでいないことを欧米に見せつける必要があります。

ウクライナでの犠牲者も増え続けています。

****ロシア軍の死者、侵略開始以降「27万人超」…直近1日でも340人死亡とウクライナ軍発表****
ウクライナ軍参謀本部は29日、ロシアの侵略開始以降、露軍の死者が27万7660人に上ったと発表した。ウクライナ軍は東・南部やロシアに併合されたクリミアで反転攻勢を強めており、直近の1日でも露軍の340人が死亡したとしている。(後略)【5月30日 読売】
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ウクライナ側発表ですから数字の信頼性はともかく、本来であればウクライナ戦争の犠牲者増加で政権に揺らぎがあっても不思議ではないのですが、そうはならないところがロシアのロシアたる所以でしょうか。

政権批判・ウクライナ侵攻批判を許さない体制もありますし、地方を中心にウクライナ侵攻が一定に支持されていることもあるのでしょう。

大統領選の前哨戦となった9月の統一地方選でも与党は圧勝しました。

****プーチン氏、通算5選へ基盤整う ロシア地方選で与党圧勝****
来年3月の次期ロシア大統領選の前哨戦となった統一地方選の投票が10日締め切られ、即日開票された。プーチン政権与党「統一ロシア」は首都モスクワの市長選やモスクワ州知事選をはじめ各地で軒並み圧勝。

ロシアが併合を宣言したウクライナ東部・南部4州の議会選でも多数を占め、侵攻が長期化する中でプーチン大統領の通算5選に向けた基盤が整った。

プーチン氏は次期選挙への態度を表明していないが、他に有力候補は見当たらない。4州併合を成果として年内に立候補を表明する見込みで、当選は確実とみられている。(後略)【9月11日 共同】
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もちろん、ロシアの選挙の実態は突っ込みどころ満載です。とても“公正な選挙”とは言い難いところ。
“統一地方選挙はプーチン与党圧勝も…ロシアの“ヤバい選挙システム”徹底研究! 透明な投票箱、オンライン投票は「何度でも投票先を変更可能」で車やアパートが“ボーナス”で貰えちゃう”【9月11日 文春オンライン】

そうであるにしても、前回までのような“番狂わせ”もなく圧勝したことは、プーチン5選に向けて準備が整っていることを示すものでしょう。

****来年3月のロシア大統領選、プーチン圧勝で「無風選挙」の怪****
ロシア統一地方選は与党系候補が全勝、昨年までの番狂わせや混乱は皆無だった。電子投票を選挙結果の偽造に使い、選挙監視システムを解体し、戦争を選挙の争点から徹底して排除するなどで「官製選挙」化は一層進んだと、ロシアのリベラル系メディアや政治学者は指摘する。来年の大統領選挙も政権による対立候補の吟味が進み、「プーチン圧勝」の環境は整いつつあるようだ。

2024年3月17日のロシア大統領選まで半年を切り、ロシア政局の焦点は大統領選の動向に移る。ウラジーミル・プーチン大統領は5選を目指す構えで、年内に出馬表明し、クレムリンは過去最高の得票率で圧勝を狙うと伝えられる。

8月23日の航空機事故でエフゲニー・プリゴジン氏ら民間軍事会社「ワグネル」幹部らが殺害され、不測の事態につながる「ワイルド・カード」が一掃された。9月8〜10日の統一地方選も、与党が勝利する「無風選挙」だった。

プーチン氏は大統領選勝利を経て、ロシア・ウクライナ戦争を長期戦に持ち込み、ウクライナや欧米諸国の疲弊を待つ構えだ。内政や戦況でサプライズがない限り、プーチン続投は揺らぎそうにない。

「官製選挙」徹底に電子投票システムを利用
(中略)昨年までの統一地方選では、大都市部や極東で与党候補が敗北することもあり、昨年は地方議員が反戦を訴える共同アピールを発表したが、今回は番狂わせや混乱はなかった。

リベラル系の「モスクワ・タイムズ」紙(9月13日)は、「クレムリンは選挙結果を操作し、投票率を上げるため、電子投票システムを使用した。投票用紙の水増しや企業・組織の投票強要など、より粗暴な手段を混在させた。

例年、与党候補は無所属で出馬するケースがあったが、今回はモスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長らも与党から出馬した」と指摘した。

政権側はロシア・ウクライナ戦争を統一地方選の争点にしなかった。独立系メディア「メドゥーザ」(9月13日)は、「候補者らは選挙戦を通じ、ウクライナ侵攻にほとんど触れなかった。与党の知事や議員の大半は演説やSNSで戦争に言及せず、経済の安定や開発問題を取り上げた。モスクワは反戦意識が最も強い都市だが、ソビャーニン市長は戦争の話題を極力避けた」と伝えた。

ロシアの選挙専門家、フョードル・クラシェニンニコフ氏は、独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ欧州」で、「今回の統一地方選が、従来に比べてインパクトが薄かったのは驚くべきことではない。開戦後、多くの野党活動家や記者は国外に脱出し、数少ない野党は解散した。批判的なメディアは潰され、選挙監視システムも解体された。選挙はあらかじめ設計されたシナリオ通りに進み、何事も起きなかった」

「来年の大統領選がどうなるかを知るには、今回のモスクワ市長選を見るのがいい。主要な候補者はいるが、対立候補は真剣に挑戦するそぶりも見せない。選挙を監視する者もいなければ、関心を持つ者もいない。ネット投票でボタンををクリックしても、誰が誰に投票したかは分からない」とコメントした。

選挙監視団体「ゴロス」のスタニスラフ・アンドレイチュク共同議長は「ロシアではどのレベルでも、選挙を望む人の数が激減している。最近では、署名を集める必要のない人や、政権と合意した人だけが候補者になり、無所属で立候補するのは不可能だ。候補者や活動家、有権者への圧力も強まった。

すべての野党議員らは逮捕、拘留、裁判の危険にさらされている。検閲が蔓延し、政党が禁じられた話題を避け、有権者との対話も難しい。投票所の管理者は選挙結果を改竄したが、システム全体が透明性を欠いているため、何が問題なのか分からない。選挙管理委員会の独立性が根本的に損なわれている」と批判した。

不正の多い「官製選挙」で、政権の厳しい統制下、選挙がすっかり儀式になったとの見立てだ。【9月21日 Foresight】
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本来なら大統領選挙で最大のプーチン批判候補となるはずの反政府活動家ナワリヌイ氏は刑務所の中で、懲役19年の判決が確定しています。

大統領選挙は「官製選挙」ですから勝利は当然ですが、さりとて注目される対立候補なしでは恰好がつかないというか、欧米に向けてアピールも出来ませんので、「民主選挙」偽装のために敢えて政権側が対立候補を出馬させることも行われます。

****「高齢問題」隠しでジュガーノフ氏に出馬要請****
現状では、来年3月の大統領選もプーチン氏の当選を確認する「無風選挙」となりそうだ。「メドゥーザ」(7月19日)によれば、クレムリンはプーチン氏が少なくとも80%の得票率で勝利することを目指しているという。

過去4回の大統領選で、プーチン氏の得票率は50〜70%台だった。大統領府のセルゲイ・キリエンコ第一副長官が選挙戦略を指揮し、支持者の組織化や行政・企業を動員、電子投票を有効に活用する方針という。(中略)

政権側は着々と5選の準備を整えている。
この夏、プリゴジン氏だけでなく、左右両派の反プーチン勢力が弾圧された。服役中の活動家、アレクセイ・ナワリヌイ氏に対して新たな裁判で19年の刑が言い渡されたほか、多くのリベラル派が拘束された。続投に反対した極右活動家、イーゴリ・ギルキン氏も過激行動の容疑で逮捕された。

下院は8月、選挙監視団体の活動を大幅に規制する法律を制定した。従来の選挙では、民間選挙監視団体が不正や混乱の実態を動画で撮影して公表したが、今後は投票所や開票所の監視活動が制限される。最大の監視団体「ゴロス」の幹部らも逮捕された。

政権側は対立候補の人選も進めており、野党第一党の共産党に対しては、79歳のゲンナジ・ジュガーノフ委員長に出馬を要請したという。これは、10月で71歳になるプーチン氏の高齢問題が争点になるのを防ぐためで、対立候補は高齢者やアピール度の低い候補で固める意向という。

「スパーリング・パートナー」と呼ばれる対立候補は、下院に議席を持つ政党が無条件に擁立できるが、野党第2党「公正ロシア」のセルゲイ・ミロノフ党首はプーチン氏を支持し、候補者を出さない方針だ。(中略)

無所属での立候補には30万人の署名が必要で、ハードルが高い。ただし、「民主選挙」を装うため、クレムリンが承認した中立系、リベラル系候補が参加する可能性もある。

投票日翌日の3月18日は、クリミア併合記念日であり、政権は社会にユーフォリア(多幸感)が広がった2014年のクリミア併合の記憶をプレーアップして選挙に臨みそうだ。

政権は戦争長期化への国民の反発を防ぐため、「安全運転」を進めるとみられる。プーチン氏は最近の演説や発言で、戦争にあまり触れず、もっぱら経済の安定や地方の開発に言及している。総動員令や戒厳令は避け、年金や公務員給与増などバラマキ政策も進めそうだ。

当選すれば、6年のフリーハンドを手にし、民意を気にせず、戦争継続が可能になる。

「プーチン氏の信任投票」に広がる悲観
(中略)カーネギー国際平和財団モスクワセンターのアンドレイ・コレスニコフ研究員は大統領選について、(中略)「戦争長期化の中で、プーチンは社会が正常であることを国民に錯覚させようとしている。国民は戦場に動員されない限り、体制に我慢するだろう。経済が悪化し、我慢の限界になるレッドラインがどこかは見えない。戦争が長期化すれば、体制は侵食されるが、社会には耐久力がある」と語った。(中略)

レバダ・センターのレフ・グドコフ副所長は、「6月の調査でプーチン続投を望む人は68%だった。ロシア人は二重思考で、公の発言と内心は異なることがあるが、ロシアの安全を保証する守護者としてプーチンを支持する人も多い。戦争に反対しても、国家の危機に直面して体制に抵抗したくない意識も働く。しかし、軍事的に敗北すれば、プーチンの権威が揺らぎ、安定の保証者ではなくなる」とし、プーチン政権の存続は戦争の行方次第と述べていた。

グドコフ氏によれば、中堅官僚や地方幹部の中には早期終戦を望み、汚職・腐敗まみれの現体制一掃を望む人々が多く、将来的な体制転換の中核になり得るという。一方で、新生ロシア32年の歴史において、3分の2はチェチェン、ジョージア、ウクライナ、シリアで戦争をしており、戦争が常態となったことが国民の危機感を失わせていると指摘していた。(後略)【9月21日 Foresight】
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無風選挙にサプライズがあるとすれば、プーチン氏の健康問題かもしれない・・・・との指摘もありますが、影武者の存在が云々されるものの、「プーチンは元気で健康問題はない。影武者は安全対策以外に使う意味がない」(上記コレスニコフ研究員)とのことです。
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石炭消費量が再び過去最高水準に 11月末から中東ドバイでCOP28 議論となる「unabeted」

2023-10-01 23:40:03 | 資源・エネルギー

(G7において1kWhの発電に伴い排出されるCO2の量は、昨年、フランスが最も少なく85グラムだった。一方、石炭比率の高い日本は495グラムに達している。

もっとも、脱化石燃料で優等生とされるドイツは385グラムであり、米国やイタリアの後塵を拝する結果となっている。

隣国のフランスは原子力比率が62.7%に達し、26.3%の再エネと合わせてクリーンエネルギーが総発電量の89.0%を占めた。ベースロードに原子力を活用、供給の不安定な再エネとの相互補完関係を重視するフランスは、コスト、効果の面で明らかに先進的と言えるだろう。

ドイツは、再エネの活用を拡大すると同時に、良好な関係にあったロシアからの天然ガス調達をエネルギー政策の基本としてきた。その戦略は、ロシアによるウクライナ侵攻でシナリオが大きく狂っている。

再エネの優等生として注目を集めてきたドイツだが、(エネルギー価格高騰が経済の足かせとなっているだけでなく、CO2排出量も高く)抜本的なエネルギー戦略の見直しを迫られているのではないか。【9月8日 市川眞一氏 「エネルギー政策で躓くドイツ経済」 PICTET】)

【世界の石炭消費量が再び過去最高水準に】
国際社会の大きな流れとして、地球温暖化防止のために脱化石燃料の動きがありますが、化石燃料のなかでも石油・天然ガスに比べてCO2排出が多い石炭について、その使用削減を求める声があります。

****ブルームバーグ氏、米国の石炭火力全廃活動に5億ドル追加拠出****
元ニューヨーク市長の米実業家マイケル・ブルームバーグ氏は20日、2030年までに全米の石炭火力発電所を閉鎖し、ガス火力発電施設を半減させる目標に向けた次の取り組みとして5億ドルを投じると表明した。

これは同氏が10年来取り組んでいる「ビヨンド・カーボン」事業で、今回の拠出は稼働を続けている150の石炭火力発電所の閉鎖、ガス発電の半減とガス火力発電所の新設禁止に向け自治体などの組織と協力することが目的。

同氏は既に、2020年までに米国の石炭火力発電所の30%を引退させることを目指した環境保護団体シエラ・クラブの「ビヨンド・コール」事業に5億ドル以上を投じている。

この事業では結局、20年までに60%超の引退が実現。石油化学工場拡大を抑制する活動にも8500万ドルを投じた。【9月21日 ロイター】
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しかし一方で、各国のエネルギー事情から石炭に対する需要は減っていない、むしろ増えている現実もあります。
特に、世界最大の石炭消費・輸入国である中国の動きが目立ちます。

****石炭4カ月ぶり高値圏 中国が調達拡大、渇水で火力依存****
石炭価格が4カ月ぶりの高値圏で推移している。猛暑による渇水に見舞われた中国が火力発電への依存を強め、石炭を積極的に購入している。

石炭をエネルギー源とする他の消費国にとり、燃料コストを抑える財政の負担が重くなったり産業活動が停滞したりする要因となる。(後略)【9月14日 日経】
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****インドネシアの石炭国際会議、中国の需要強く売買契約が続々成立****
インドネシアのバリ島で24─26日に開催された世界最大の石炭国際会議「コールトランス」では、火力発電用に大量の石炭を求める中国と、最大輸出国インドネシアとの間で石炭の売買契約が次々と成立した。

会議を協賛したコールシャストラによると、今年は中国からの参加者が過去最多だった。中国と取引を結ぼうとするインドネシアの商社や鉱山企業の代表らが群れを成して会議に出席した。

インドネシアの石炭企業オムビリン・エネルジのラムリ・アーマド社長は「今回のコールトランスでは既に多くの取引が成立している。『うちは契約を結べるだろうか』という質問が寄せられているからだ」と語った。

調査会社ノーブル・リサーチが会議に提出した資料によると、中国の石炭輸入は今年、前年比1億トン増えて過去最大の3億2900万トンに達し、来年はさらに4900万トン増える見通しだ。

中国は昨今、不動産市場が低迷し経済成長が鈍いが、異常気象や他業界の経済活動によって電力および石炭の需要は増えている。

ロイターが取材した中国の業者6社は、気象の悪化により今年10─12月期に石炭輸入が増えると予想。うち5社は、来年は今年より輸入が増えるが、ノーブルの予想よりは少なくなるとの見方を示した。1社は、来年の方が今年より輸入が減ると予想した。

世界最大の石炭消費・輸入国である中国の需要が底堅く推移すれば、気候変動目標の下で予想されている世界の石炭利用のピークが後ずれしかねない、と業者らは語った。【9月27日 ロイター】
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ただ、石炭への依存は中国だけでなく、日本も原発再稼働が遅れる状況で石炭火力に依存していますし、脱原発を進めたドイツもウクライナ戦争の影響で一時的に石炭火力を再開するといった動きも。

****世界の石炭消費量が再び過去最高水準に、CO2排出削減に影****
2022年に石炭は一次エネルギー消費量の26.7%を占めた。これは石油(31.6%)を下回るが、天然ガス(23.5%)より多い。だがこれらの中で最も多くの二酸化炭素(CO2)を排出したのは石炭だ。

その理由を説明しよう。化石燃料の主成分は炭素と水素、つまり炭化水素だ。炭化水素が燃焼すると、炭素はCO2を、水素は水蒸気を生み出す。石炭は石油や天然ガスよりも炭素の割合が高い。そのため、石炭を燃焼させると、石油や天然ガスよりもエネルギー単位あたりのCO2発生量が多くなる。(中略)

これら3つの化石燃料のCO2排出量に対する相対的な累積寄与率は、石炭43%、石油37%、天然ガス20%だ。

石炭はまた、発電所で燃やされる際に多くの有害物質を排出する。過去を振り返ると、石炭発電所は酸性雨の原因となる二酸化硫黄を大量に排出していた。規制によりこの問題は最終的に解決されたが、石炭火力発電所はいまだに水銀などの有害物質を排出している。

また、環境に放出される放射性元素は原子力発電所より多い。そのため、石炭が環境に与える影響を抑制しようと多くの規制が可決されてきた。

石炭はさまざまな公害問題を引き起こすことから、ほとんどの先進国は石炭火力発電から脱却してきた。だが石炭は安価なため、発展途上国は電力源として石炭に大きく依存し続けている。発展途上国における石炭消費は現在、世界のCO2排出量増加の最大要因となっている。

石炭の消費量に目をむけると、過去10年間に先進国では減少した一方で、発展途上国で増加した。

経済協力開発機構(OECD)を構成する38カ国の石炭消費量は過去10年間で年平均3.9%減少。非OECD諸国では年平均1.4%増加した。

欧州連合(EU)の石炭消費量はOECDと同様に減少傾向にある。過去10年間、年平均4.2%の割合で減少した。だが2022年には増加に転じ、2%増となった。これは、ロシアのウクライナ侵攻を受けてEU諸国がロシア産の天然ガスを石炭に置き換えたためだ。

その結果、同年の世界の石炭消費量は過去2番目に多くなり、2014年の水準を0.01%しか下回っていない。世界中でCO2排出量を削減する取り組みが展開されているにもかかわらず、石炭消費量は過去最高水準にある。

石炭消費が最も多い10カ国のうち6カ国がアジア太平洋地域の国だ。中国は依然として世界の石炭消費量(および生産量)の大半を占めており、この傾向は今後も長年にわたって続く可能性が高い。次いで消費が多いのはインドだ。以下、米国、日本、インドネシアと続く。

石炭を大量に消費する大方の国は多くの石炭を生産してもいる。最大の例外はオーストラリアで、主要な石炭生産国でありながら消費量は14番目となっている。コロンビアもトップ10に入る生産国だが、消費に関しては50位に入る程度だ。【9月6日 Forbes】
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【COP28で議論される「unabeted」(排出削減策が採られていない)という言葉 立場によって異なる対応】
2021年末にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26では、「(CCS等の)対策をしていない石炭火発の段階的削減」という文言が決定文書に入りました。 CCSとは日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれ、 発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです

2022年11月6日〜11月18日にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では、更に進めて化石燃料全体の段階的削減が議論されましたが、合意には至りませんでした。

****(COP27)化石燃料全体の「段階的削減」は入らず****
前回COP26において出た例外的な成果の一つが、決定文書の中に「(CCS等の)対策をしていない石炭火発の段階的削減」についての言及が入ったことでした。

国連の気候変動枠組条約の交渉では、特定の技術や燃料について方針を出すことは非常に合意が難しいため、避けられることがこれまでは多かったのです。

しかし、近年形成されつつある「電力部門の脱炭素化は先行しなければならない」という国際的なコンセンサスを受け、昨年のCOP26では議長国がこの問題を重視したこともあり、石炭火発の段階的削減への言及が入りました。

今回のCOP27では、そのCOP26での文言から、さらに踏み込んだ発信ができるのかどうかが注目されました。特にエネルギー危機を受けて、各国中でエネルギー安全保障への不安が高まる中、それでも移行を強く打ち出せるかがカギでした。

交渉の中では、この点を強く推す国々はいました。島嶼国や、EUや、コロンビア、チリなどを含むAILACと呼ばれるグループなど。最後の局面ではアメリカですら、「(対策のされていない)化石燃料の段階的廃止」を支持していました。

しかし、その他の国々の強い支持は得られず、議長国もこれを重視しませんでした。サウジアラビアは、エネルギーに関して言及したセクションを丸ごと削除することを要求しました。結果として、合意が得られなかったため、最終的にはCOP26の時と同じ表現にとどまりました。

深刻化する気候危機の中で、今一歩、化石燃料からの移行について強いメッセージを打ち出すことに、COP27は失敗したことになります。【2022年11月21日 WWFジャパン】
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今年11月末からUAEのドバイで開かれる国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)においては、石炭を含む化石燃料の段階的削減が再度議論されると思われますが、段階的な廃止を求める国々と役割を維持するべきだと主張する国々の溝は埋まっていません。

議論になるのは「unabeted」(排出削減策が採られていない)という言葉。

****COP28、見えない化石燃料廃止への道筋 止まらぬ温暖化****
第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の開催が2カ月後に迫ったが、化石燃料の段階的な廃止を求める国々と、石炭や石油、天然ガスの役割を維持するべきだと主張する国々の溝を埋めるには程遠い状況だ。

COP28は11月30日から12月12日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催される。

先週の国連総会では、長年の議論が再燃した。グテレス国連事務総長は、総会と並行して開催された気候関連サミットで、化石燃料利権者の「むき出しの強欲さ」を嘆き、地球を温暖化することにより「人類は地獄への門を開いてしまった」と語った。

化石燃料を生産、あるいはそれに依存している国々は、化石燃料の使用を完全に止めるのではなく、温室効果ガス排出を「削減」する、つまり回収する技術を活用すべきだと強調した。

COP28の議長を務めるUAEのスルタン・アル・ジャベール氏はサミットで「化石燃料の段階的な削減は避けられない」と述べた。

世界最大の化石燃料消費国である中国は、今後何十年間も化石燃料を使い続ける意向を示している。

米国は、短期的に化石燃料に投資する一部途上国の計画を認めつつも「排出削減策が採られていない」化石燃料の段階的な廃止に支持を表明してきた。しかし、ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は、そもそも排出削減策、すなわちガス回収技術を十分なスピードで拡大できるかが疑問だとしている。

<言葉の戦争>
昨年のCOP27サミットで段階的削減の合意に失敗して以来、各国間の亀裂が埋まっていないため、交渉担当者らは妥協点を探るために新たな用語に目を向けている。

主要7カ国(G7)は今年4月に「排出削減策が採られていない(unabated)化石燃料の段階的廃止」を加速させることに合意した。

化石燃料の前に「unabated」という語句を挿入することで、排出ガスの回収技術を使わずに燃やされる燃料のみを対象としたのだ。

だが、7月にはサウジアラビアやロシアなどの石油・ガス生産国も参加した20カ国・地域(G20)会議では合意できず、この案は頓挫した。

アイルランドのライアン環境・気候変動相は、全ての化石燃料を段階的に廃止するのか、それとも排出量だけを削減するのかが、COP28で最も厄介な問題になるだろうと述べた。

ライアン氏は排出ガス回収技術を巡る議論について、ロイターに対し「石油や天然ガス、石炭の探査を続けるための単なる白紙委任状になるのではないかと懸念する声も、当然ながらある」と語った。

フランス、ケニア、チリ、コロンビア、そして太平洋の島国ツバルとバヌアツを含む17カ国からなるグループは先週、回収技術の使用を制限する形の化石燃料の段階的廃止を求めた。

共同声明では「化石燃料の拡大にゴーサインを出すために、この技術を使うことはできない」と明言している。

これに対し、米国石油協会(API)など石油・ガス業界団体は「より少ない排出量でより多くのエネルギー」を供給するために、世界は排出削減技術を必要としていると主張している。

また、一部の途上国は、日本や米国がやってきたように、経済を発展させ発電能力を拡大するために化石燃料が必要だとして、段階的廃止に抵抗している。

アフリカ連合(AU)内の一部諸国は、自国で天然ガスを燃やし続けながら、気候変動論を盾に途上国のガスプロジェクトへの融資を拒否する先進国の偽善を非難している。

<1.5度を守れるか>
エクセター大学の気候科学者ピーター・コックス氏は、化石燃料の使用を急速に減らさなければ、10─15年以内に、産業革命前と比較して1.5度という世界的目標を超えて地球温暖化が進むと予想している。

「両立はできない。1.5℃(以上の温暖化)を避けたいと言いながら、化石燃料の段階的廃止について口を閉ざすことはできない」と言う。

国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は今月、再生可能エネルギーが増加するにつれて、石炭、ガス、石油の需要は2030年までにピークに達するとの見通しを示し、各国に化石燃料への新規投資をやめるよう呼びかけた。

この発言は、石油輸出国機構(OPEC)の怒りを買った。OPECは、ビロル氏の予測には排出権回収の可能性が含まれていないと異議を唱え、新規投資の中止を求める呼びかけを「危険」と表現した。

一方、小島嶼国連合(AOSIS)は、気候変動に起因する暴風雨や海面上昇による国土の喪失に直面しており、化石燃料の段階的廃止と、各国政府による年間7兆ドルの化石燃料補助金の停止を求めている。【9月30日 ロイター】
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排出削減技術を活用して「より少ない排出量でより多くのエネルギー」が得られるなら問題ないではないか・・・というのは理屈ではありますが、現実には「それではいつまでたっても化石燃料依存から抜け出せない」「石油や天然ガス、石炭の探査を続けるための単なる白紙委任状になるのではないか」という懸念も。

先進国、島しょ国のように温暖化の危機に直面している国、成長の可能性を求める途上国、中東など化石燃料産出国、さらには中国や欧州など温暖化対策を戦略的に位置づける国・・・・それぞれの立場が絡み合った複雑・困難な議論になると予想されます。
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