笑いのツキ。

　はい、ツキです。

「かわらにィ、おつきさまァ、ひとォつッ！
　おそらがきれい、でスね、ネーさ！」

　そうですね、テディちゃ。
　夕暮れ刻の冬の河原に、白い月が冴え冴えと美しゅうございました。
　が、のんびり月見をしているヒマはありません。
　今夜は、見たいＴＶ番組の放送予定日です！

「あッ、テディちゃ、わかッたでスよッ！
　えむわん・ぐらんぷりッ、でスね！」

　そうなんです、去年のチュートリアルさんが面白かったから、
　今年のＭ-１も……と期待したんです。

　応援していたのは、キングコングさん。
　技術・スピード感・動き・構成・気迫といった点で
　決勝一回戦の舞台は頭抜けていたわ！
　最終決戦での出来も、
　優勝をさらったサンドウィッチマンさんに劣っていたとは
　思えないんだけど……残念です。
　
「みんな、じょうずだッたでス！」

　そうよね、決勝出場組は、
　敗者復活のサンドウィッチマンさんもですが、
　鍛えられているなあと感じました。
　三組ともに、トロフィーと賞金をあげられたらいいんですけどね。

　勝敗が決した後、ふと思い出したのは、
　ずっと昔にＴＶの特集で見た『やす・きよ』さんの、
　今は伝説となっている名作《自動車教習所》でした。
　ボケ＆ツッコミのバランスが、
　最終決戦に残った３組のそれに似ているように思ったのです。
　『やす・きよ』さんって、
　イマどきの漫才の基礎であり、
　古典だったんだなあと、
　認識を新たにしました。

「ぱいおにあ、なのでスねッ」

　ともあれ、サンドウィッチマンさん、
　優勝おめでとうございます！
　これからの御活躍を楽しみにしております！

「いッぱい、わらわせてねッ♪」

　皆さまの舞台に、ツキがありますように！　

もれなくゴーストな探偵ものがたり。

「ふひゃァ～、ネーさ、
　ふぁんたすてぃくゥな、ひょうしのえ、でスねッ！
　おはながァ、いッぱいィ……」

　その理由は、表題作にあるんですよ、テディちゃ。　
　こちらは、以前に御紹介しました『警視庁幽霊係』の第三作目、
　シリーズ最新作なんですね。　はい、どうぞ！



　　　　　――　少女漫画家が猫を飼う理由（わけ）　――


　
　著者は天野頌子さん、’０７年９月に発行されたものです。
　探偵さんは引き続き、シリーズの主人公である柏木くん。
　柏木くんの、なぜか幽霊が見えちゃう／幽霊と話せちゃう体質は
　本作でも健在です。
　おかげで、幽霊さん（被害者）に事情聴取する予定が
　今日も明日も明後日もどっさり――
　この先１０日間はスケジュール表が真っ黒になっているほど。

「ごくろうさまなのでス、かしわぎさんッ！
　でもォ、ちょッとォ、かわいそォ……」

　ですね。
　痛む胃を牛乳やヨーグルトでなだめつつ、
　彼も連日溜息をついているようです。
　そこへ、一本の電話が。

「いやなよかん、するでスよッ」

　電話は、上司の室長さんからの連絡でした。
　予定外の飛び込み仕事になりますが、
　明日、君に見てもらいたい物があるんです……それは。

「そ、それはッ？？」

　……呪いの指輪、らしいんですね。

「うぎゃッ！　ぱすッ！
　テディちゃはァ、ぱすッ、するでスゥッ！」　

　世にも恐ろしい指輪であろうと、
　パスできないのが、宮仕えの身の柏木くん。
　しかも指輪は盗難品と判明し、
　時効が一ヵ月後に迫っているんです。
　呪われた指輪を手に銀座で聞き込みを始めた柏木くんの、
　足元、頭上、背後には数々の災難が！

「やっぱりィ、かわいそでス……」

　指輪のダークフォースと格闘する
　『ハートの指輪に呪いをこめて』、
　『お盆注意報』、
　そして表題作の『少女漫画家が猫を飼う理由』、
　三篇から構成される連作短編集です。
　柏木くんの体質はホラーですけれど、
　物語は見事にミステリしています！
　本格派好きさんにもお奨めできますよ！

「かしわぎくん、うでききたんてい、なのでスッ♪」

　この世とあの世の怪しいキャラさんたちに囲まれて、
　柏木さんの受難は次巻へと続くようです。
　楽しみですが、心配でもありますね。
　胃薬と、厄除けのお守りを
　警視庁幽霊係宛にお送りするべきでしょうか……。

「すごォく、きょうりょくなァ、おまもりィじゃないとッ！」