テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

“ダークサイド”の迷路へ。

2015-05-19 21:48:36 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 う~むゥ? いないィでスねッ?」
「がるる!ぐるるるがる!」(←訳:虎です!静かな夜です!)

 こんにちは、ネーさです。
 コノハズクのポゥポゥちゃん(仮名)、昨夜はやって来ませんでしたね……。
 今日は来るかな?
 でも、ネーさ家の庭の樹に営巣してニュースになっちゃったらどうしよう?
 いや、ちびちびな仔コノハズクはきっと可愛いぞ♪
 と、相反する感情に揺れつつ、
 さあ、本日も読書タイムです~!

  



             ―― ナチスと精神分析官 ――



 著者はじゃっく・エル=ハイさん、原著は2013年に、
 画像の日本語版は2015年4月に発行されました。
 英語原題は『THE NAZI AND THE PHYCHIATRIST』、
 米国のジャーナリスト・エル=ハイさんによるノンフィクション作品は
 ……重い!

「てーまがァ、おもいィ?」
「ぐるるがる?」(←訳:内容が重い?)

 テーマも内容も、重たいです。

 御本の題名から推察できますように、
 著者エル=ハイさんが追うのは、
 第二次世界大戦直後、
 ニュルンベルン裁判の被告となったナチスドイツの高官たち、
 そして、
 彼らの精神状態を調査する任に就いた
 ひとりの医師。

 戦争末期のドイツで、
 ナチスの幹部たちを拘束する収容所で、
 緊迫する裁判の現場で、
 さらには判決が出た後、
 彼らの心に何事が起ったのか――

「それはァ、おもたいィでス~…」
「がっるる~…」(←訳:ずっしり~…)

 敗戦国の指導者を裁くことは、珍しくありません
 (その正否は別として)。
 古代から続く慣習であるとすら言えますが、
 勝者・連合国側のリーダー米国は
 そこに精神鑑定を持ち込みました。

 彼らは、正気なのか?
 彼らを犯罪行為に走らせた特別な精神疾患があるのだろうか?

 米国陸軍の病院で顧問精神医として働いていた医師が、
 被告たちが寝起きする収容所へ赴任してきます。

「じゅうだいなァ、にんむゥ!」
「ぐるるがるがるぅ~…」(←訳:重たい任務だよぅ~…)

 ひとの、こころの内側を探る。

 それがいかに陥穽に満ちたものであるか、
 医師と、裁判に臨んだ者たちは
 思い知らされる事態になります。

「なにがァ、ほんとうゥなのかッ?」
「がるるるるぐるるるる?」(←訳:被告自身にも分からない?)

   ―― 深淵を覗きこむ者は、深淵から見詰められてもいるのだ ――

 そんな言葉を想い起こさせる、
 悲劇が静かに押し寄せてきます。
 まるで、
 人びとのこころを操り、
 こころの深淵を覗いた罰であるかのように。

「やぱりィ~…」
「ぐる!」(←訳:重い!)

 暗黒の、出口のない迷路。

 冷静に読もうと努めながらも、
 嘆息せざるを得ない、戦争の闇。

 重い、どこまでも重い内容ではありますが、
 皆さま、どうか一読を。




 
コメント
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