テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

なつかしのしらべ。

2015-05-26 21:48:47 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きょうはァ、かきごおりィをォ~…」
「がるる!ぐるるる!」(←訳:虎です!大盛りで!)

 こんにちは、ネーさです。
 ホントにね~、今日は初夏から夏へ
 季節がスピードアップしちゃった天候でしたが、
 読書タイムは安全運転で参りましょう。
 さあ、本日は、こちらの小説作品を、どうぞ~!

  



              ―― 睦月童 ――



 著者は西條奈加(さいじょう・なか)さん、2015年3月に発行されました。
 『睦月童』は『むつきわらし』とお読みください。

「わらしッていうのはァ~…」
「ぐるるるがるぐる!」(←訳:子どものことだね!)

 童子、と書いて『わらし』と読む例もあるでしょうか。

 その童っ子ちゃんが誰を指しているのか、
 御本の冒頭を読めばすぐに分かります。

 七つくらいに見える、女の子。
 ひどくやせている上に、どうにも垢抜けない。
 色だけは生っ白いが。

 と描写されている、
 彼女の名は、イオちゃん。

「ふァ?? めずらしィおなまえェ、でスゥ?」
「がるるるぐるぐる?」(←訳:どういう意味だろ?)

 イオちゃんに集まる好奇の視線。
 しかし、彼女の隣りに座る国見屋(くにみや)の主人、
 平右衛門(へいえもん)さんは
 奉公人さんたちにピシリと釘を刺します。

   こちらの御方は、国見屋の大事な客人と心得てもらいましょう。

 そう、これは、お江戸の時代のものがたり。
 国見屋さんは、日本橋にお店と蔵を持ち、
 たいそう繁盛している大店なんですね。
 となれば、
 主人の平右衛門さんの一言に
 奉公人さんは皆、逆らえないわけで。

「でもォ、ちっちゃなァこどもをォ?」
「ぐるがるるる?」(←訳:この御方扱い?)

 小さなイオちゃんを丁重にもてなしている理由を知るのは、
 平右衛門さんと、妻のお久さんだけ。
 お店の大番頭さんも首を傾げています。

 けれど、程なく理由は知れました。

 イオちゃんの眼が光る!

 金色に光って、まともに目を合わせられない!

「えッ? そうなのでスかァ?」
「がっる……るるるる?」(←訳:光って……ないよね?)

 金色の瞳に、心臓が縮み上がる思い……をするのは、
 悪事を働いた者のみ。

 潔白の身ならば、イオちゃんの眼に怯えることもないんです。

「ふァ~、ほッとしたでスゥ!」
「ぐるぐる!」(←訳:うんうん!)

 その能力ゆえに、国見屋に招かれたイオちゃん。

 平右衛門さんに頼まれて
 イオちゃんがこれから顔を合わせねばならぬのは、
 国見屋の跡取り息子・央介(おうすけ)さん、なのでした。

 央介さんに、イオちゃんの瞳は何色に映るのだろうか――
 国見屋の主人夫妻は
 固唾を呑んで見守りますが……?

「ううわァ~、どうしようッ??」
「がるるっ!」(←訳:冷や汗っ!)

 イオちゃんの不可思議などこから来るのか。
 イオちゃんはいったい何者なのか。

 問われてイオちゃんは答えます。

   ―― おらたちは睦月神さまの子どもだ ――

「それッてェ~??」
「ぐるるるる!」(←訳:ますます謎!)

 著者・西條さんの『六花落々』を
 先日ご紹介したばかりですが、
 正統派時代小説のジャンルに入る『六花落々』に比較すると、
 こちらの御本は江戸を舞台にした
 ファンタジー小説、でしょうか。

 物語の主役は、
 決闘しまくる剣豪さんたちでも、
 江戸城内で陰謀を巡らせるお殿さまたちでもなく、
 非力な、小さな女の子。

「でもォ、ただものじゃないィ、のでス!」
「がるるるぐるる!」(←訳:見かけは二の次!)

 天下分け目の大決戦!とはちょっと違い
 派手さはないかもしれませんが、
 時代モノ好きな御方に、
 ファンタジーやSF好きな活字マニアさんに
 おすすめしたい一冊です。

 イオちゃんと、そして央介さんの運命を紡ぐ
 古歌のような、なつかしく美しい物語、
 ぜひ探してみてくださいね♪♪




 
 
 
コメント
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