テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 小石の孤島 ~

2015-12-24 21:49:46 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 めりィーくりすますゥなのでス!」
「がるる!ぐる・がるーる!」(←訳:虎です!ボン・ナターレ!)

 こんにちは、ネーさです。
 国境も信教も言語もぴょーんとひとっ飛びして、
 あらゆるイノチの上に穏やかな聖夜が訪れることを願いつつ、
 さあ、読書タイムです♪
 本日は、こちらの御本を、どうぞ~!

  



          ―― 琥珀のまたたき ――



 著者は小川洋子(おがわ・ようこ)さん、2015年9月に発行されました。
 ええ、もう!
 この作品を御紹介しないことには
 2015年を締めくくれませんよね!
 待望の、小川洋子さんの最新刊ですよ♪

「だいめいィがァ、うつくしいィでス!」
「ぐるるぅ~…!」(←訳:琥珀かぁ~…!)

 昔むかし、或るところに
 三人のきょうだいがおりました。

 それぞれ、
 オパール、琥珀(こはく)、瑪瑙(めのう)と
 鉱物や化石の名を戴いた三人が暮らすのは、
 平和な森の中の、
 小さなお城――

 であったなら、どんなに良かったことでしょう。

「むゥ? ここはァ、おしろじゃァないのでスゥ!」
「がるるるぐる?」(←訳:平和でもない?)

 姉の“オパール”、
 弟の“琥珀”、
 末弟の“瑪瑙”。

 三人には、別の名前がありました。
 いえ、前の名前、というべきでしょうか。

  《今日を限り、前の名前は忘れましょうね》

 そうママに言われなければ、
 今でも、その名で呼び合っていたのでしょうか。

「えッ? なまえをォ、わすれるゥ??」
「ぐるがる?」(←訳:なぜまた?)

 三人きょうだいには、もうひとり、
 妹がいたのです。
 しかし、その生命は、
 “魔犬の呪い”により失われてしまいました。
 
 嘆き悲しんだママが向かうのは、
 パパが残した別荘。

 呪いなどない、そこは平和な、閉ざされた世界。

「……なんだかァ、じわじわァ~とォ~…」
「がるるっるるる……!」(←訳:怖くなってきた……!)

 閉ざされた世界の内側にも、
 外の世界と同じように時は流れます。

 静止しているようで静止していない世界で、
 オパールの、琥珀の、瑪瑙の、
 そしてママの上にも
 時間は流れ、
 歪みを貯め込んでゆきます。

 外と内を隔てる頑丈な塀も、
 歪みは確実に切り崩してゆく……

「どんどんッ、こわくなるゥ~!」
「ぐるがるるる!」(←訳:怪談みたいに!)

 三人のきょうだいを見舞う、
 これは怪談なのか、
 たとえようもなく温かく貴いお伽噺なのか――

 琥珀の目線を中心に語られる、
 美しい言葉の宇宙は、
 題名が示すように、
 鉱物と化石が縁取る深闇のようでもありますが。

「ながくてェ、みじかいィ~…」
「がるるぐるがる!」(←訳:遠くて近い宇宙!)

 小さな石たちを、
 ひとつ積み、ひとつ重ねては、
 天上へ届く高さにまで
 磨きあげてゆく。

 読み終えてすぐ、よりも、
 読んで何日か経ってから、
 何ヶ月も経ってから、
 なぜかしら文章や場面が頻りと思い出されてしようがない、
 そんな強いチカラを持った作品です。

 未読の御方は、
 この冬休みの読書リストにぜひ、加えてみてくださいね。
 全活字マニアさんにおすすめの一冊です!



 追記!
 次回からは2016年のBEST BOOKを探す特別編です。
 年末でバタバタなんですけど~!
「ひろォ~いィこころでッ!」
「ぐるるるるがるるる!」(←訳:おつきあいください!)

コメント
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