◇フェイス/オフ(1997年 アメリカ 138分)
原題/Face/Off
監督/ジョン・ウー 音楽/ジョン・パウエル
主題歌/INXS『Don't loose your head』
挿入曲/オリヴィア・ニュートン=ジョン『Over the Rainbow』
出演/ジョン・トラボルタ ニコラス・ケイジ ジョアン・アレン ジーナ・ガーション
◇マイケル・ダグラスは何で出ないの?
制作総指揮を買って出たにしては、なんで?とはおもうんだけど、ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジが霞んじゃうかもしれないしね。
ま、それは仕方のないこととして、悪玉と刑事の顔が入れ替わり、追う者と追われる者の立場が逆転してしまうという発想はなんとも斬新だ。ていうか、ぼくがそのほかの映画をおもいつかないだけで、こういう入れ替わりの妙を持った作品はほかにどんなのがあるんだろう?
発案したのがジョン・ウーかどうかはわからないけど、映像の展開とスローモーションのカッティングはやっぱり見事だ。これでもかというアクション繋ぎもいうことなし。流石ですわ。
ただ、他人の顔をつけて他人の家族を騙さなければならなくなると、人はどうしても好い人であろうとするから当然やさしい人格に豹変するというのは、この脚本が生み出したおもわぬ真実で、他人の妻を他人のふりをして寝盗るという異常な昂揚もまた同じだ。
でも、そもそもの設定になってる刑事が悪玉を憎悪する理由が、幼い息子を殺されたということで、これが味噌のひとつになってるんだけど、佳境、悪玉の息子を刑事がひきとって帰宅するのは理屈としては好いとして、問題は、フェイスだ。悪玉は刑事に殺されるんだけど、その遺児はふたりの関係をどう理解するんだろ?
母親は悪玉の顔をした刑事に息子を託すが、息子は父親の顔をした刑事を父親とおもっているわけで、最後に父親が死んでしまったあと、自分をひきとるのは父親の顔から刑事の顔に戻ってしまった刑事となる。
つまり、父親の顔をした刑事は、刑事の顔をした父親を殺したわけだけど、息子にとって、刑事の顔にもどった刑事は、刑事の顔で死んだ父親の仇なんだよね。こいつぁ、なかなか、この先の息子の心模様が大変だぜ。父親同士の関係を理解するっていうより、こちゃまぜになった感情のやり場として。