☆約束(1972年 日本 88分)
監督/斎藤耕一 音楽/宮川泰
出演/岸惠子 萩原健一 中山仁 三國連太郎 南美江 姫ゆり子 殿山泰司
☆70年代の傑作
高校生のとき、ほぼ偶然にこの映画を観た。
なにもかもすっ飛んじゃうくらい、ぼくはこの作品に嵌まった。映像も脚本も役者も胸に沁み入るくらい好かった。なんといっても音楽は生涯忘れることはないんじゃないかってくらい好かった。
映画はときとして奇跡的な出来栄えになることがあるんだけど、この映画もたぶん、そういう作品のひとつなんだろう。
ストーリーは、なんのことはない。列車に乗り合わせた男と女が恋に落ちるんだけど、事情があって別れるっていうだけの話だ。
けれど、男はチンピラで、やがて強盗傷害をひきおこして逃亡し、逮捕される運命にある。女は服役している模範囚で、墓参のために外出し、囚人仲間の手紙を渡す使命にある。このふたりが列車に乗り合わせるんだから、最後には、男は逮捕されるから出獄した女が約束した場所で待っていても、もちろん、来るはずもない。
なんとも胸の奥が痛くなるような悲しみに包まれる作品で、うらさびしさに包まれた日本海沿岸のさびれた町というロケーションも好く、多感な時期の僕は、もうたまんなくなって、旅の出会いに憧れたものだ。
ところが、これ、1966年の韓国の李晩煕監督作『晩秋』のリメイクだってことを知った。
「え~!オリジナルじゃなかったんだ~!」
ちからが抜けた。
どうやら、斎藤耕一が韓国で『晩秋』を観、正式に再映画化を頼み、権利を日本へ持ち帰って、オールロケーションで撮り上げたものらしい。しかも、2010年には、今度は米韓合作でふたたびリメイクされる。監督はキム・テヨン、舞台はシアトル、さらに列車ではなくバスらしい。
でも、ぼくはこの2本の『晩秋』を観るんだろうか?