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記憶の棘

2007年03月18日 15時29分15秒 | 洋画2004年

 ◇記憶の棘(2004年 アメリカ 100分)

 原題/Birth

 監督/ジョナサン・グレイザー 音楽/アレクサンドル・デスプラ

 出演/ニコール・キッドマン ローレン・バコール ピーター・ストーメア

 

 ◇期待と裏切り

 転生を扱った神秘的な恋愛讃歌かと思いきや、それなりの推理劇で、少年と三十代寡婦の思い込みの恐怖と自己崩壊を扱ったエキセントリックな物語だった。

 ただ、なんていうのかな~、もうすこし上手に作れなかったんだろうか…。

 ニコール・キッドマンの夫が死ぬ。10年後、キッドマンはダニー・ヒューストンから結婚をせがまれている。ところが、ある日、夫の生まれ変わりだと主張する少年キャメロン・ブライトが現れる。キッドマンはキャメロンの言葉を信じ、夫が生まれ変わったとおもう。

 恐ろしいのは、このふたりが恋をし始めることだ。

 けど、これには裏があって、夫は、彼の花婿付添人だった親友ピーター・ストーメアの妻アン・ヘッシュと浮気をしていた。まあ、ややこしい関係なんだけど、この夫の愛人アンはやや異常なところがあって、キッドマンが夫に出していた手紙を全部持っていた。愛人であるキッドマンの夫のすべてを知っていたいという願望からだろう。

 このアンの持っていた手紙を、キャメロンは読んでおり、自分の憧れている未亡人に近づく手段として、誰も知らないはずのキッドマンと夫の過去を口にするわけだ。

 まあ、いびつながらも、キャメロンの純粋な恋心の為せる嘘っぱちだったわけだけど、このキャメロンの嘘に、おとなたちはみんな、狼狽する。ていうより、10年経って現れてしまった夫の亡霊に悩まされることになるんだね。

 それにしても夫はまったく罪な男で、死んでからもキッドマンを10年間束縛していたし、愛人のアンも同じように束縛し、親友のピーターを裏切らせていた。それどころか、キャメロンに詐欺罪にあたるような嘘までつかせたわけだし、ピーターが疑い始めなければ、キッドマンはキャメロンと結婚したかもしれない。

 そんなことになったら空恐ろしい嘘っぱちの将来になってしまうわけだけど、さすがにキッドマンの母ローレン・バコールが、押さえるところは押さえてる。

「わたしは、あの人が好きじゃなかった」

 キッドマンの夫のいかがわしさを見抜いていたってことになるんだけど、こうした関係をつづるだけでもややこしい。

 ただ、映画は、キッドマンの揺れ動きつつ崩れてゆく精神を描いているわけで、そういう点だけでいえば、いかにもキッドマンの演じたがる役どころだったのかもしれないね。

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