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天のしずく 辰巳芳子 いのちのスープ

2014年07月03日 12時33分26秒 | 邦画2012年

 ◎天のしずく 辰巳芳子 いのちのスープ (2012年 日本 113分)

 staff 監督・脚本/河邑厚徳 撮影/本田茂

     音楽/吉田潔 朗読/草笛光子、谷原章介

 cast 辰巳芳子

 

 ◎手仕事は気力だ

 料理家でもあり、随筆家でもある辰巳芳子さんの料理は、

 その食材を選ぶところから仕上げまで、ともかく丁寧だ。

 それはおそらく目黒長者丸に生まれて、祖父母からも可愛がられ、

 さらに鎌倉雪の下に移り住んで後まで、いっさい変わることがないんだろう。

 ただ、それもこれも、気力によるところは大きいんじゃないかしら。

 意見もしっかりしてる。

 一年半もかけた撮影の中途、東日本大震災が起こる。

 辰巳さんは、映画の中でこんなふうにいってる。

「あの原発の事故は未来を奪った」

 たしかにそうだ。

 ここで辰巳さんがいっているのは個人の未来ではなく、

 もっと漠然としてて、日本とか日本人とかの未来をいってる。

 しかも辰巳さんの家の庭では、いろんな花が狂い咲きしたという。

 鎌倉の自然までもがおかしくなってると。

 このあたりは、随筆家の辰巳さんが見えてくるんだけど、

 料理家として食材や自然を見つめているからいえることでもあるんだろう。

 それにくらべて、ていう話になるんだけど、

 ぼくの毎日は、実にさびしく、さもしい。

 料理に費やす時間がないんだよな~とかいうのは、自己弁護だ。

 気力も体力もなく、だらだらしてるだけなのを棚に上げて、

 そんなことをいってるんだから、あかんね。

 ただ、日本の料理は日本の食材で、というのはわかる。

 また、自然の素材のみで、というのもわかる。

 そうしたい。

 食材の自給率がどんどんと低下して、

 海外から農薬まみれかどうかは知らないがともかく格安の食材が入ってきて、

 スーパーでもそれを率先して売り、消費者もそれを求め、

 外食産業でも自宅でも海外の野菜が並び、それを食べる。

 それでいいじゃんか、という消費者に対しては、それでいいよね、とおもう。

 けど、

 ぼくはちょっとだけだけど、国産の食材にはこだわりたい性質だ。

 ただ、現実的な問題もある。

 お金持ちはいざ知らず、消費者の多くは、

 料理教室に通っていられる人達はさておき、

 みんな毎日朝から晩まで働いて、恋人とつきあったり、家族を養ったりしてる。

 当然、買物は簡単に済ませたいとおもうし、料理の時間は短くしたいし、

 とにもかくにも食材は安いに越したことはない。

 そんな状況の日本人にとっては、

 辰巳さんの命のスープは憧れの存在なんだろう。

 ほんとに、むつかしいところだ。

 誰でも気持ちとふところに余裕を持ちたいし、

 余裕をもった暮らしをして、余裕をもった食事をしたい。

 でも、日々の生活に疲れ果てて、そんな余裕のよの字も考えられなくなる。

 だからって、命のスープを物販するとかなったら本末転倒だ。

 ぼくたちはいったいどうしたらいいんだろう?

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