◇美女と液体人間(1958年 日本 86分)
英題 The H-Man(Beauty and Liquid Men)
staff 監督/本多猪四郎 特技監督/円谷英二
原作/海上日出男 脚色/木村武(馬淵薫)
撮影/小泉一 美術/北猛夫 音楽/佐藤勝
cast 佐原健二 平田昭彦 白川由美 小沢栄太郎 土屋嘉男 中丸忠雄 千田是也 佐藤允
◇特撮とボク、その6
水爆実験ていうか、放射能の恐怖はこの時代の寵児のようだ。
いろんな映画の主題にされてる。
この映画もそうで、南洋で放射能を浴びた第二竜神丸の船乗りにその恐怖が始まる。
つまり「強烈な放射線を浴びた生物は液体状になり、液体生物に変化する」というもので、
この液体生物に触れた生物もまた液体生物になり、しかもこの生物は意識を持っている。
なんとも破天荒な設定なんだけど、そこはそれ、東宝特撮のすごいところだ。
日劇ダンシングチームが全盛の頃で、
園田あゆみの踊りがまたいい。
もうヌードも同然のビキニで踊りまくってるんだけど、いや~、アダルトな映画だったわ。
佳境に入って、下水道に連れ込まれた白川由美が「脱げ」といわれて、
液体人間に触れて死んだことにしろと強制されるわけなんだけど、
そこはやっぱりシミーズになるのが精一杯とはいえ、
そのまま下水道を逃げてゆくってのは、この時代の邦画の中ではかなり挑戦的だ。
ちなみに、
1872年12月5日の午後、
アゾレス諸島 のサンタ・マリア港近くでマリー・セレステ号事件ってのが起こり、
船内からすべての乗組員が消え去ってしまったっていうやつなんだけど、
コナン・ドイルが『J・ハバカク・ジェフスンの遺言』っていう短編にしたりして、
以来、世界中で評判になった幽霊船の話がある。
第二竜神丸は、第五福竜丸とマリー・セレステ号が二十写しになった感じだね。
問題の液体人間なんだけど、
これは最初に襲われるのが白川由美の愛人で、三崎って男だ。
けど、役者のあらかたが三崎って名前を五音階のラソミで発音する。
佐原健二だけが正確なソソラで発音する。
この間違った訛りのような発音がどうにも耳についちゃって、いかん。
それはともかく、液体人間だ。
怪物が液体のため、なかなか恐怖に感情移入できないとおもったのか、
ときおり、緑色の幽霊のような気体とも個体ともつかない形に変じてはくれるものの、
いまひとつ、凄さがない。
なんだか『怪奇大作戦』でも見てるような錯覚すら受けちゃうんだな、これが。
ただ、下水道で退治するとき、油を流して水面をぼうぼう燃やすんだけど、
これはすごい。
下水道中が炎につつまれ、下水が流れ出る港湾一帯が火の海になってゆくラストは、
いやまじ、これからどうすんのって感じのラストカットでした。