◇宇宙大戦争(1959年 日本 93分)
英題 Battle in Outer Space
staff 監督/本多猪四郎 特技監督/円谷英二 原作/丘美丈二郎
脚本/関沢新一 撮影/小泉一 美術/安倍輝明
コンセプトデザイン/小松崎茂 音楽/伊福部昭
cast 池部良 安西郷子 千田是也 土屋嘉男 伊藤久哉 沢村いき雄 桐野洋雄 高田稔
◇特撮とボク、その7
劇中の設定は1965年となってる。
てことは撮影時のたった6年後で、
いくらなんでも国際宇宙ステーションはできてないだろうって、
誰もおもわなかったんだろうか?
あるいは、それほどこの時代の経済成長は高度だったんだろうか?
ただ、たしかに1965年、日本人は未来と宇宙を夢見てた。
ごま粒のようながきんちょだったぼくも、多少ながらそんな夢を見てた。
絵を描けばかならずロケットは登場してたし、たいがい小松崎茂の絵がお手本だった。
宇宙人が地球に大襲来してきて、これを迎撃するっていう物語の定番は、
いったいいつからできていたんだろう。
やっぱり『火星人襲来』とかからだろうか?
ただ、ナタール星人っていう名称がなんかしっくりこない。
いったい、かれらは地球を征服してどうしたかったんだろう。
なんで、大襲来をしてこなくちゃいけなかったんだろう。
そのあたりの深みがないのはまあ当時らしくていいんだけど、
ま、そんなことはさておき、
演技陣がいい。
千田是也のきわめて自然な演技はたいしたもので、
大仰な芝居の多いこの時代に、よくもまあこんなに素朴な喋りができたもんだ。
土屋嘉男はちからいっぱいの芝居だけど、でも、月面の歩き方が実にいい。
三宅島の溶岩地帯で撮影したらしいんだけど、いや~リアルだ。
たったひとりだけ、月の重力を表現できてる。
とはいえ、月面探検車に全員で戻るときには、みんな、土屋歩きになってるけどね。
でも、なんといってもいいのが、安西郷子だ。
演技というんじゃなくて、そのエキゾチックな存在感だ。
もともと日本人ばなれした顔立ちながら、この時期はきわだって美しい。
こういうインターナショナルな作品にはよくはまるよね。
でも、なにより凄いな~とおもったのは、伊福部昭だ。
ラスト20分の戦闘場面は、もはや特撮の当時の限界をおぎなって余りある。
いやもうブラスの連中の息が続かなくなっても、
「かきならせ!」
とばかりに延々吹奏されつづけるんだから、凄まじい。
実際、胸を躍らせないわけにはいかない。
いや~堪能したわ。