Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

鍵泥棒のメソッド

2014年07月15日 13時15分43秒 | 邦画2012年

 ◇鍵泥棒のメソッド(2012年 日本 128分)

 staff 監督・脚本/内田けんじ 撮影/佐光朗

     美術/金勝浩一 音楽/田中ユウスケ 主題歌/吉井和哉 『点描のしくみ』

 cast 堺雅人 香川照之 広末涼子 森口瑤子 荒川良々 小野武彦 木野花 柊瑠美

 

 ◇多重構造

 売れない役者と謎の殺し屋と婚活中の女性編集長とくれば、

 まあ、それだけで複層的な話だってことは見えてくる。

 しかも、殺し屋が銭湯で滑って転んで記憶喪失になってしまったという、

 とてつもないちから技によって事態が急展開し始めれば、

 これはもはや人物の職業だけではなく、

 人格そのものが複層的になるわけで、

 かといって難解にしていないあたりは、

 内田けんじという才能ある監督の性格みたいなものなんだろう。

 そもそも銭湯に行く殺し屋というのはどういう人間なのかって話で、

 ここに物語の鍵があるわけで、一般的な殺し屋なら行かないはずだ。

 にもかかわらず銭湯に入ってきたという考えられないような庶民的行動が、

 最後のどんでん返しに生きてくるわけなんだろね、たぶん。

 ともかく、

 売れない役者が殺し屋になってしまったことで人を殺すことのできない殺し屋になり、

 謎の殺し屋が役者になってしまったことで銃火器を絶妙に扱う役者となるわけだ。

 でもそれは、

 役者があたかも自分が殺し屋であるように依頼人に見せるという演技をするんだけど、

 殺し屋の場合はもうちょっと複雑で、

 そもそも殺し屋としての演技をしていたために、

 記憶を失う前の自分はたぶん役者だったんだろうと信じて役者稼業を続けることができ、

 記憶を取り戻してからはふたたび殺し屋であるという演技を続けるというわけで、

 まあ、なんというか、多重構造が幾層にも絡み合ってるものだから、

 ひとことでは説明しにくいんだけど、

 そういうところがおもしろく感じられたんだとおもうんだよね。

 でも、それぞれを演じてた役者さんたちは、

 みんな大仰ながらも喜劇をちゃんと演じてました。

コメント