◎タイマグラばあちゃん(2004年 日本 110分)
staff 監督/澄川嘉彦 プロデューサー/菅原淳一、伊勢真一
撮影/澄川嘉彦、太田信明 音楽/三上憲夫 音響構成/米山靖
語り/小室等 テーマ曲・編曲/ 吉田俊光『大地の祈り』
cast 向田久米蔵 向田マサヨ 奥畑充幸 山代陽子
◎岩手県、早池峰山
東京オリンピックが催されたのは、昭和39年だった。
そのとき、この早池峰山に10軒の農家が入植した。
けれど、その後20年経ったときには、
たった1軒しか残っていなかった。
それが、向田家のじいちゃんとばあちゃんだ。
この作品は、このばあちゃんちを15年間追い続けた記録だ。
まあ、当初はNHKのドキュメンタリーから始まったとはいえ、
15年間もひとつの家族を追い続けるのは大変なことだ。
海外各地でさまざまな賞を受賞したのは、よくわかる。
この村は日本でいちばん最後に電気が通った村らしいんだけど、
そんなことは、
この早池峰の自然と一緒に生きてるばあちゃんには、
あんまり関係ないのかもしれない。
タイマグラにはその後、昭和60年になって、
大阪から若夫婦が入植して、やがて子供も生まれた。
みんながまるで家族のように静かにつきあって暮らしてる。
映画が完成したときにはじいちゃんはいなくなっちゃってるし、
ばあちゃんもそれからまもなくいなくなったそうだ。
でも、じいちゃんやばあちゃんの暮らしぶりを観てると、
ばあちゃんの口癖の「極楽だあ」っていうのが、しみじみわかる。
ぼくが早池峰山のふもとにいったのは、かれこれ、30年ちかく前だ。
早池峰山を眺めたとき、この向田さんちは、すでに入植してた。
そのときはなんにも知らずにいたんだけど、
あらためてこの映画を観ると、
今でも「お農神さま」などの神々が、
そこかしこにいそうな気のする山におもえた。
岩手県下閉伊郡川井村江繋タイマグラはそんなところである。