◇ヒットラー(2003年 アメリカ、カナダ 179分)
原題 Hitler: The Rise of Evil
staff 監督/クリスチャン・デュゲイ
製作総指揮/エド・ガーノン、ピーター・サスマン、クリスチャン・デュゲイ
脚本/ジョン・ピールマイアー、G・ロス・パーカー
撮影/ピエール・ギル 音楽/ノーマンド・コーベイル
cast ロバート・カーライル ピーター・オトゥール リーヴ・シュレイバー ジェナ・マローン
◇悪を繁栄させる最も有効な手段
それは、善を行わないこと、だそうな。
言いえて妙だが、善を行わないのは誰だったんだろう?
ヒットラーていうかナチスは、
この作品の中では狂言回しにすぎないんじゃいか?
ワイマール共和国が成立し、やがて崩壊していく過程の中で、
いったい誰が善をおこなったんだろう?
そんな問いかけがなされてるような印象を受けたのは、ぼくだけかしら?
そういう疑問を投げかける役割を果たしているのが、
記者というより語り部に近いマシュー・モディーンだったような気もする。
まあ、そのあたりは意見の分かれるところなんだろうけど、
凄まじい気迫と神経症ぎりぎりの演技をみせたカーライルはたいしだもんだ。
それと、
ピーター・ストーメアがまたいい。
かれが演じたのはエルンスト・レームなんだけど、
ほんとうにホモだったのかどうかは、ぼくは知らない。
でも、かつては自分の子分だとおもっていた男に、
顎でこきつかわれなくてはいけないような立場へと追いやられていくとき、
人はどうしようもない無念さを感じるだろうし、
そうしたときに縋りつくのは、愛人なんだろう。
それが、かれの場合は男だったっていうだけのことだ。
ピーター・ストーメアにかぎらず、
リーヴ・シュレイバーも、
ヒトラーとたもとをわかつことになるエルンスト・ハンフシュテングルの、
祖国を離れなければならない複雑な心情をきちんと演じてる。
ともかく、この作品は長い。
テレビ映画だったせいもあるんだろうけど、
第1部の「我が闘争」と第2部の「独裁者の台頭」に分かれてるとはいえ、
一気に観るのは相当な根性がいったのもたしかだ。