土曜日は、明菜姉ちゃんの高校のお昼のお食事会に呼ばれていた。
だからケーキを携えて美術準備室に入ると、「ハイ消毒!」と生徒達から声かけられ、スマホで体温を測定され、机の上に荷物を置くと歓声が上がり、というのもケーキの包装紙でわかるのだが、キーマカレーとサラダの美和さんの手料理にありつくことができた。
カミヤカーン先生が、にこにこ顔でやってきた。
「例年ですと毎月一度、ここでお昼のお食事会をしているんです。最近は、新型コロナの影響で自粛してましたが、新入生も入ってきたしマスクしながら開催することにしました。小学校でも給食が毎日出されているので、それを思えば学校はクラスターの発生もないし、大丈夫でしょう。生徒達の楽しみまで奪われたくないもんね」
(笑)
「お説ごもっとも。休み中も生徒達は、ここ?」
カミヤカーン「実は生徒達は、休み中もずーっとここに隠って作品制作に励んでいました。ここにいれば感染の心配がない、という信仰みたいなモノができていて・・・・。だからこの部屋と自宅との往復で、まれに画材屋に足を運ぶぐらいで外に出るぐらいかな」
「絵のモチーフは、どうするの?」
美和「全部WEBですぅー。画像からデッサンを起こして描いてゆきます」
「なるほど、それで海外の風景の絵があるんだ」
美和「ここにいても、世界を眺めた気分になるんです」
カミヤカーン「やっぱ、クリエイションしていると、それで十分満足感というのかな、そういうのがあって、どこかへゆきたいという気分にはならないみたいなんです。ここにいながらイメージは世界に広がってゆくのが、現代っ子ね。緊急事態宣言というのは、素晴らしいイマジネーションの時間をタップリくれたみたい」
「あっ、野菜入りキーマカーが旨いじゃん」
カミヤカーン「でしょう。うちの生徒は料理が日増しに旨くなってゆくんですよ」
「どうやってつくったの?」
美和「お家の台所から持ってきたスパイスかなぁー、ママに配合量を教えてもらって、カーダモン、クミン、コリアンダー、ターメリック、それにレッドペッパーを加えたの。あとは玉葱をよく炒めたの」
「玉葱が決め手かぁー」
美和「うん!、みじん切りにして十分過ぎるぐらいに炒めたよ」
キャンバスに描かれた海岸の風景を見ながら、みんなで集まりお昼をいただく幸せな時間。
新入部員もいる。
来年は明菜姉ちゃんみたいになっているだろうか。この部屋で製作しながら、みんなそれぞれなりの大人になってゆく。
聚食の景も素晴らしい光景だ・・・。
・・・
小樽は、青い空だ。空気は冷たいが、やっと冬がいっちまった。