小樽市内を歩いていると、文化財ではないが近代建築がビルの隙間から見え隠れしている。街の景観の中から発掘するように撮影していた。
こうした建築は、主が変わり、亡くなり、そして後を引き継ぐ人がいなければ廃墟となり、ほっておけば雪の重みで潰され、だからそんなことが起きる前に取り壊される運命にある。もちろん再生利活用の道はあるが、住宅街の奥にあってアクセスも容易ではなく、そしてこれらに社会の着目がなされることは先ずないといってよい。
私にとって発掘できる被写体が、まだ街の中に存在していた。およそ大概の近代建築がなくなってきた日本の都市にあって、まだそうした経験ができるということは幸運だった。
こういうとき焦点距離100mmのレンズが意外に役に立った。というのも持論としては135mmが使いやすいのだが、そんなレンズは少なく、やむなく使っている。来る時に迷ったのだが28-300mmのズームレンズにすれば万能だが、撮れりゃよいというものでもない。画角に不自由はあっても固定焦点の方が使いやすいし、絞りを設定しピントを合わせる必要があるが。
だから今回25mm、50mm、100mmと焦点距離が倍々になる高画質単焦点マニュアル・レンズのシステムだった。特にDistagon25mmは、図書館でA0サイズの地図を複写するときに活躍した。
今は、学会論文の投稿も全て電子投稿なのでコピー不用だ。だから地図データをUSBメモリーにコピーすりゃ簡単だろうと考えていたが・・・、地図のデジタル化はしていない。だからA3コピー機でとれだって!。1枚の地図をA3だと8枚撮る必要がある。そのたび毎に地図を折り返すなんて面倒だし地図も痛む。そんな地図が全部で12枚ある。感染症対策で許された1時間の滞在時間制限の中で無理でしょう。
そこで17cmまで接写できるDistagon25mmが使える。感染対策用のアクリルガートが大型デスクの上に固定され、その隙間に表装と一体となったA0地図を置き、曲尺で紙の膨らみを除き、デスクに登って上から撮影する。この高画質超広角レンズをもってきてよかったぜ。
精密な文献を複写する機会が今でも多々ある。そのため高画質レンズ・システムが必要となる。画質の低いズームレンズで精密な地図の複写は無理だ。要はデジタル化されていれば万事簡単なのだが、公共施設はいまだにデジタルと無関係なのだ。
小さな地図は、こんな風にして撮影する。デスクの端に乗っても傾かない丈夫なデスクで助かった。
地図を押さえるために曲尺を借りたりフィルムを重しにしたりと悪戦苦闘。
もちろん図書館司書の許可をいただいた。
小樽市
NikonDf,Carl Zeiss Macro Planar 100mm/F2.0T*ZF、Carl Zeiss Distagon 25mm/F2.8T*ZF
1)ISO200,露出補正0,f/8,1/500
2)ISO200,露出補正0,f/8,1/320
3)ISO200,露出補正0,f/8,1/640
4)ISO200,露出補正0,f/8,1/500
5)ISO3600,露出補正0,f/4,1/30