京都府に出されていた緊急事態宣言も終わるのか継続するのか、無意味な議論が続いている。感染の終息は、ワクチン接種だけである。従ってそれ以外の国や自治体の施策は無策といってよい。
新型コロナに関する報道やWEB情報が多数あり、国が文科系自治体職員のために感染状況5指標で、ステージ1感染ゼロ散発段階、ステージ2感染漸増段階、ステージ3感染急増段階、ステージ4感染爆発段階迄の4段階のカテゴリーを設けマトリックスで示したあの表がある。これに基づき緊急事態宣言やマンボーの発生判断に使っている。この表の指標には、入院率、重傷率、10万にあたりの両用患者数、PCR陽性率、10万人あたりの新規報告数、感染経路不明割合がある。全て感染者数に端を発する指標であり、私から見れば1カテゴリーに過ぎない。こうした指標は文科系役人が施策実施判断の玩具であるので、これらの指標を国民は無視してよいし、報道する必要を感じない。
感染症をみてゆく基本データは、二つしかない。感染者数とワクチン接種者数である。この二つのデータの推移構造は逆相関であり、COVID-19の収束はワクチン接種による社会的免疫の獲得によって収束する。それが出口だ。これら二つのデータを米国の例でみてみよう。
1.米国の全体状況
2020年1月〜2021年4月迄の米国の1日単位の感染者数推移をみたのが図1である。二つの山を経過し2020年末に30万人/日と最大値となり、以後ワクチン接種の効果があり、現在5万人/日まで低減してきたことがわかる。
図1. 米国の感染者数の推移
出典:厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について、20201月〜4月28日https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00254.html
2.米国のワクチン接種後の感染者数の推移
米国でワクチン接種が開始され、統計にデータがあがるのが2020年12月からである。そこで図1の1日感染者数最大値の12月〜現在までと、1回でもワクチン接種した人の米国民全体に占める割合-ワクチン摂取率の2軸グラフが図2である。左側縦軸が1日感染者数推移、右側縦軸が摂取率である。摂取率は現在43%まできたところである。感染者最大値から1/6に減少している摂取率は44%弱である。このグラフをみると、明らかに逆推移=負の相関がわかる。
図2. 米国の感染者数推移とワクチン摂取率
出典:厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について、202012月〜4月28日https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00254.html
Oxford Univ.Our World in Data、https://ourworldindata.org/covid-vaccinations
3.感染者数とワクチン摂取率の相関係数
感染者数とワクチン摂取率の関係をみるために半月ごとの相関係数を算出したのが図3である。絶対値±1の間で、マイナス側は負の相関が高い期間であり、感染者は低減し摂取率が向上している。プラス側は、感染者数と摂取率が正の相関であり、どちらのデータも増加傾向を示す。
2021年1月下旬から2月15日にかけて高い負の相関を示しており、ワクチン接種が感染者の増加を低減させている効果が高い期間である。2月下旬から4月15にかけては、正の相関であり、感染者数とワクチン摂取率にいずれもが増加傾向を示している。だが値は0.2以下と低い。これはもみ合っている状態といえる。さらにに4月中旬以降高い負の相関を示し、ワクチン摂取率の増加に伴い、感染者が低減していることがわかる。
総じてもみ合いはあるものの、全体として大きく低減傾向にむかっていることがわかる。
図3. 米国の1日感染者数とワクチン摂取率の相関係数の推移
出典:Oxford Univ.Our World in Data、https://ourworldindata.org/covid-vaccinations
4.各国のワクチン接種状況
4月28日迄におこなわれた各国のワクチン接種状況を示したのが図4である。トップから順にイスラエル、英国、米国、チリ、バーレーン、ハンガリー、ウルグアイ、セルビア、ドイツ、フランス、トルコ、ブラジル、インドと続く。日本はこのグラフにすら登場しない程度の摂取率である。また線形勾配が比較的類似している国が多いことも特徴だ。
図4. 世界のワクチン接種状況
出典:Oxford unv.Our World in Data、https://ourworldindata.org/covid-vaccinations
5.まとめ
米国は、全体としてみればワクチン接種により感染者数が激減している。感染者数は、人間の行動の多様性があるからバラツキが出てくる。それに対してワクチン摂取数は一定のテンポでおこなわれており、接種体勢が確立されている事がうかがえる。摂取率は直線方程式とみることができそうだ。そこで社会的免疫を獲得できるワクチン摂取率100%となるのは、何時かが算出できる。
Y=7.3x(1ヶ月7.3%の社会的免疫を獲得しつつある事が数値からわかる)
Y=100%で計算すると、xは13.6ヶ月と算出できる。
つまり米国は、2020年12月に接種が開始されたから、2022年2月に社会的免疫100%が達成されることになる。
参考までに、x=13.6ヶ月を我が国にあてはめると、2021年3月接種開始だから2022年5月に社会的免疫が100%になる。つまり感染の終息である。米国より人口が少ないから早まりそうだが、ワクチン輸入が遅れる事も予想されるから、これらは相殺とみた場合の話である。
6.追記
図4をみれば、我が国の対応は先進国としては大変遅い事がわかる。
その原因は、物事の進め方にある。問題が発生する、データを集めて分析する、みんなで今後の方針を議論する、方策をつくる、周知する、というのが政府・自治体の一連の手順である。こうした手順では、後手の対応しかできない。このような文科系的手法がすでに限界である事をCOVID-19は教えてくれている。やはり数理モデルで半年先を予測し、これに従って政策がつくれる理工学系トップをおく政府や自治体であるべきだろう。
何故、先を急ぐのか?。
それはウィルス変異である。昨年11月の段階で3,000種類のウィルスに変異していたとするNHKの特集があった。ウィルスは、環境障害を乗り越えて変異してゆく。ワクチンもウィルスにとっては環境障害の一つである。障害があればウィルスも変異してくる。だから今後ワクチンの効かないウィルス変異が起きる場合も考えられる。だから、ワクチン効果がある今だからこそ収束を急ぐべきなのである。文科系の議論をしている場合ではないと私は考えている。
こんな風に自分でデータを集めて解析したが、この程度のことなら今の中学生でも可能だ。大切な事は自分の頭と手で計算してみること。そうしてはじめて自分で適切な理解ができるし、緊急事態宣言があろうとなかろうと、ワクチン接種までは密をさけていたいと思うようになる。
最後に、COVID-19のデータを最初から収集してきた米国の名門医大ジョンズホプキンス大学データセンターのダッシュボードURLをアップさせた。またダウンロードデータの一部をスクリーンショットで撮影した。全部で3681行ある。これで世界の一日分の感染状況のデータである。これが日数分ダウンロードできる。先ずは自分の手でデータを編集し、解析してみることをお勧めする。というのも感染症の解析は、この程度までならば中学生レベルの知識で十分だからだ。
図5. ダウンロードデータの一部(Johns Hopkins Univ)
出典:Johns Hopkins Univ.
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
トップ画像
京都市
Nikon Df,CarlZeiss PlanarF1.4/50mmT*ZF2
ISO200,露出補正0,f/2.8,1/80