19世紀の琉球王国を舞台にした小説「テンペスト」、2008年のベストセラーの文庫本です。
作者の池上永一さんは石垣市出身の40歳。早大在学中に作家活動を開始した。
なかなか、面白い…。
文庫は4冊セットなので、まだ4分の一しか読んでませんが、この本は期待できます。
テンペストは「嵐」の意味だと思いますが、時代背景は琉球王国の「嵐」の時代。
アヘン戦争で英国に敗れた清(中国)が鎖国を解除。
鎖国があったからこそ朝貢貿易で栄えた琉球王国にも、暗雲が。
さらに、中国と日本の両方の属国として、微妙なバランスで生き抜き繁栄していた琉球王国に、フランス、英国、米国(ペリー)の船が次々に訪れ、開港を迫る激動の時代。
その頃の日本は、まだ鎖国中で、江戸末期。
日本より早く、新たな激動の時代の外交政策が展開された琉球。
作者は、そうした困難な時代を生き抜く官僚を描こうとしているのでしょうか。
主人公は、弱冠13歳で、難関試験を突破して首里城の役人に登用された人物。
その試験問題は、「清の国内混乱を踏まえつつ、今後琉球が取るべき対清政策について論ぜよ。」というもの。
独立国としての琉球のあるべき姿を主張したうえで、大国である清に弱みを見せず、かつ対立を起こさないような巧みな外交政策を問うもので、現代にも、十分通じる問題です。
激動の時代には、冷静な状況判断を行える羅針盤と、周囲を惹きつけ嵐の中を的確に進む崇高な思想とリーダーシップを持つ人間が必要。
沖縄では、正殿、北殿、南殿だけでなく、物語に出てくる奥書院や淑順門などの復元も少しずつ進められています。
この本をきっかけに、沖縄への関心と理解が深まるとともに、首里城観光の楽しみが増えるといいですね。
作者と、この本を紹介してプレゼントしてくださった方に、厚く御礼申し上げます。
*****テンペスト関係記事一覧*****