ある交差点を右折するために、対向車が途切れるのを待っていた。すると、中扉の後ろあたりに座っていたおじいさんが席を立ち、運転席の横までやってきた。私は「ひょっとして… この交差点をまっすぐ行くバスと乗り間違えたのかな?」と思ったのだが、おじいさんは「バスの中が寒くて、風邪を引きそうだ!」と言ったのである。
私は「そこまでハッキリと言ってくれれば分かりやすい」と思って、「すいません…」と言いながらエアコンのスイッチを切って“送風”だけにした。とにかく、一刻も早く車内温度を上げたかったからである。座席に戻りかけたおじいさんは足を止めて“助手席”に座った。
その後、徐々に車内温度は上がり… 私は「今度も“暑い!”とハッキリ言ってくれれば分かりやすいのだが…」と思っていた。が、おじいさんが何か言う気配はなかった。しかし、車内でパタパタと何かを扇ぐ人が現れたのである。私は「さすがに暑いよなぁ…」と思って、再びエアコンのスイッチを入れた。
終点の某駅に到着すると、おじいさんが「今回のように“寒い”と言われた場合、どのように対処しているのかね?」と言った。私は「とりあえず車内温度を上げたいので、エアコンを切って送風だけにしました。その後、再び暑く感じたので、途中からエアコンを入れましたけど…」と答えた。
すると、おじいさんは「何度の設定にしとるんだ?」と言ったので、私はスイッチを見ながら「え~っと… 25度です(以前、会社側から“設定は24度”と言われたことがあるのだが、それよりも1度高く設定しておいたのだが… それでも寒かったらしい)」と答えた。
おじいさんは「アンタらは体を動かしとるからいいけど、ワシらは座っとるだけだもんで寒いでかんわ」と言い残して行った… もっとガミガミと怒られるのかと思ったが、意外とスンナリというか何というか… その後、今日一日… ずぅ~っと車内温度がいつも以上に気になってしまった私である。