赤信号やバス停などで止まろうとした時に席を立つ人がいたら、優秀な運転士さんたちは「扉が開くまで席をお立ちにならないで下さい」と言うらしい。が、無理無理無理無理… 超低性能の私には言えないのだ。子供の頃から、ちょっとでも何かに集中すると無口になってしまうから…
勘違いか何か分からないけれど、赤信号で止まろうとした時に立って来られた場合… その交差点の大きさや道幅、バスが左車線にいるのか右折レーンにいるのか、既に横断歩道に人がいるのか否か…
それらの状況と、立って来た人の年齢などを見比べながら「停止線を越えても良いか否か、どこまで超えて良いか」を考え、ブレーキに全神経を集中させている。その時に「ポカッ!」と殴られても気付かないくらいに…
降車ボタンが押されて、バス停で止まろうとした時に席を立って来られた場合… バス停に乗客がいるかいないか、ガードレール等があるかないか、あるならば切れ目の位置を確認…
それと同時に、立って来た人の動向を見ながら「乗車扉の位置にこだわる必要があるかないか、どこまで通過させて良いか」を考え、ブレーキに全神経を集中させている。その時に「ブスッ!」と刺されても気付かないくらいに…
正直なところ、バスを停止させる時に立って来られるというのは… 目に見えない刃物で、胃をチクチクと刺されているようなものである。さらに、そこで乗客が転ぼうものならば… 乗客&上司&警察&弁護士等々、みんなで寄ってたかって運転士を“袋叩き”にするのである。変なの…
では、冒頭のように「扉が開くまで席をお立ちにならないで下さい」と言った優秀な運転士さんは無罪になるのかというと… そうではないらしい。様々な面での“軽減”はあるだろうが、有罪に変わりはないのだとか… ふ~ん… そんなゴマスリっぽい台詞なんて、死んでも言えないなぁ… もっとも、言いたくても言えないんだけどね。常に一杯一杯だから…
さて、今月から担当コースが変わり… と言っても、走ったことがない路線があるわけではない。ただし、走ったことがない時間帯というのはある。例えば、これまでにA駅発B駅行きの朝は何度も走ってきたけれど、夜は初めて走ったというような… そんな感じである。
先日の朝、あるバス停で… 私には初対面となる一人のビジネスマンと車椅子の人が待っていた。一応、基本的には“中扉だけを開けて車椅子の人の乗車、その後、前扉を開けてビジネスマンの乗車扱いをする”ということになっているのだが… 運転席と中扉を結ぶ通路には既に数名の乗客が立っている状況だったので、私は両扉を同時に開けてビジネスマンの乗車扱い後、前扉から降りて行って車椅子の人の乗車扱いをした。
昼食タイムに、そんな話をしていたら… ある運転士が「以前、基本通りに車椅子の人の乗車を先にやっていたら、前扉の外で待っていた女に“さっさと扉を開けなさいよ!”と怒鳴られたことがあって… それからは、常に諜報の扉を開けるようになっっちゃった」と言っていた。さらに「その時、車椅子の人に気を遣って話し掛けた」とも言っていた。そんなことがあったら、そうなってしまうよなぁ…
車椅子の人も、他の乗客も、運転士自身も… その思いは同じで「時間がかかってしまうから~」である。要するに、もっと素早く簡単に車椅子の乗降ができれば、みんなが“幸せ”になれるのだが… 固定用ベルトを4本も使わなければならない今の方法は、とても“ワンマンの路線バス”で使うことを想定しているとは思えない。それとも… やろうと思えばすぐに出来るのだが、ただ単にお金の問題なのかなぁ…
何年前だったか… ある夜、終点の某駅から営業所へ回送で帰る時に、バスが動かなくなってしまった(原因はギアが入らなくなったと記憶しているが…???)。そこから営業所までは僅か500~600mだったが、自転車じゃないので押して行けるわけもなく… 私は営業所へ電話をして助けを求めた。
しばらくすると、2人の先輩運転士が1台のバスに乗ってきて、私のバスをロープでつないで… 1人は私のバスに乗るのかと思いきや、私のバスには私だけだった。そして、バスはゆっくりと動き出したのだが… 前のバスとの距離がとても近いため、反射する自分のバスのヘッドライトが眩しくて眩しくて… 私はヘッドライトを消して、フォグランプ点灯とハザードランプ点滅だけで牽引してもらっていた。
私には前のバスの“お尻”しか見えない状態だったので、目の前のブレーキランプに神経を集中させ続け、移動開始から約5分で営業所の前までやって来て… あとは片側二車線の道路の右側にある営業所へ入るだけとなったところで前のバスが止まり… 数秒後に「ブ~ン」と一台の対向車が走って行った。
その後、前のバスがゆっくりと動き出し、私のバスも引かれて前進し始めたのだが… その時! そこまで目の前にいたバスが右へ曲がったことにより、パッと開けた私の視界に“1台の対向車”が飛び込んできたのである。私のバスと前のバスの間を「突破するぞ!」という勢いで… しかし、そこには牽引用のロープが… そして「バリバリバリィ~ン!!!」と対向車のフロントガラスが割れてしまったのである。
その後、警察が来て… 私は何も聞かれなかったけれど… ある上司からは「松井くんがヘッドライトを点けていれば…」と何度も何度も言われてしまった。が、私は「フォグランプとハザードは点けていたし… それは大きな問題ではないだろう」と思ったので、ただ「はぁ…」と生返事をしていたのだが… あの時の“結末が分かっていながら何もできない気持ち”というのは、何とも言えないモノであった。
今更ですが… 用語解説っぽいものを書いてみました。(ホント、今更だな!)
【完全弊社(完全弊社の営業所)】
私は(自分の記憶が正しければ)2001年に某バス会社(当時は鉄道会社の一部)へ入社した。身分も、制服も、バスも… 当然のことながら弊社のものである。私が最初に配属された営業所(正確には管理所)と、その次の営業所はこの類であった。
【半弊社(半弊社の営業所)】
2007年から、弊社が市営バスの一営業所を委託されるようになり、そこで働く人間は弊社社員となった。しかし、制服やバスなどは市営バスのものなので、事情を知らない人たちからは「市の職員だ」と思われている。私も、2009年にココへ転勤した。そして2012年にもう一つの営業所を委託され、私もソコへ転勤した。
【伏字(○○、××、A駅、B駅、某住宅地など)】
基本的には、伏せてある文字数に関係なく「○○」のようの二つで統一するようになった。たまに気が向いてヒントのように文字数に合わせることも… あるかもしれない。また、A駅などのアルファベットも、実際の頭文字とは関係ない。が、たまに偶然の一致はある。文中に一か所しか出てこない場合に、某駅を使うことが多い。
【助手席】
左側の一番前の席。老若男女問わず、かなり人気が高い。ここで携帯通話などをやられると、「私に喧嘩を売ってるのか?」と思ったりして…
【背後席】
運転席の背後の席。こちらも助手席と同じくらい人気が高い。ここで咳などを連発されると、「私に風邪をうつしたいのか?」と不機嫌になることも…
【車掌席】
中扉のすぐ後ろの席。助手席や背後席と比べると、特にお年寄りが好む傾向がある。昔、私がバス通学をしていた頃、その位置に“車掌が立っていたと思われるスペース”のあるバスが走っていたので…
【車内観覧席】
遠足や修学旅行などでバスに乗った場合、ワンパクな子供が占拠していた印象がある… 一番後ろの席。特に、今のノンステップバスは車内全体を見渡せるようになっているので…
また、他にも意味不明な用語(?)があれば、お気軽にお問い合わせ下さい。意味不明な“発言”については… 私自身にも分からない場合がありますので、予めご了承ください。なんちゃって…
まずは昨日の訂正… 私が生まれて初めて(?)気付いたモニターさんは、2時間前に“バスに乗った”のであって… 正しくは「降りた地点から“1時間半”くらいで5kmを移動した」です。ま、どうでもいいことですけど…
さて、朝6時台の営業所前ターミナル発A駅行き… 出発してから4つ目のバス停で一人のお爺さんが待っていた。数分後にはB駅行きも来るので、私は「おはようございます」とは言わずに「A駅行きです」と言いながら扉を開けた。
お爺さんは、多くのお年寄りがフリーパスを入れている緑色のケースを提示したのだが… 残念ながら、そこにはフリーパスが入っていなかったのである。私は一瞬「きっとカバンの中にでもあるだろうから… ま、いっか!」と思ったけれど、「もしも自宅に忘れてきたとしたら… 地下鉄にも乗れないなぁ~!」と思い直して、ケースを指差しながら「大丈夫ですか?」と言った。
すると、お爺さんが「今、見せたがや!」と怒ったように叫んだので、私は努めて冷静に「カードがありませんけど…」と言った。そこで、お爺さんは改めてケースを確認して、カードがないことに気が付いて「あ、ポケットに入っとるで!」と言った。
が、ポケットの中には何もなかったようで… 背後席にカバンを置いて、立ったままゴソゴソとやり始めた。「いつまでも待ってられない」と思った私は「座ってもらっていいですか? 発車しますよ」と言って、お爺さんが座るのを確認してから発車した。
しばらくして、お爺さんが「やっぱりないみたいだで200円払うわ」と言いながら席を立ってきたので、私は運転に集中して「はぁ…」としか返答できず… またしばらくして、今度は「あぁ、あったあった!」と言いながら再び席を立ってきて、フリーパスを見せてくれた。
「これで落ち着いたなぁ~」と思いながら、大きな交差点の右折レーンで止まっていたら、またまたお爺さんが席を立ってきて、「このバスはB駅に行かんの?」と言ったので、私は「えぇ、A駅行きですね」と答え… お爺さんは「ほんじゃ~降りないかん!」と言った。
交差点を右折したところにあるバス停で止まると、お爺さんは「降りんよ! A駅まで行くで!」と言った。よく分からん… 結局、早朝にもかかわらず3分遅れで終点のA駅に到着したのだが、そこで降りた十数名の乗客は、遅れた理由をなんとなく… 分かってくれたかなぁ~???