私の父は昭和16年3月に慶応大学を卒業し、8月に故郷の会津若松第65連隊に入隊した。田舎のこと、学士上がりの一兵卒は、上官からにらまれた。
父の『従軍記』の中に、上官に呼び出され、「貴様は慶応か。福沢諭吉は国賊だ。許せん」との理由で、往復ピンタどころか、顔が腫れあがるまで、さんざんに殴られた」という記述がある。
「福沢諭吉・国賊」で検索して、一件だけみつけた。
2009年の「福沢諭吉展」に関連するサイトです。
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福澤が「国賊」と言われた時代がありました。昭和戦前・戦中の時期です。慶應義塾は「国賊福澤諭吉」の創立した「自由主義者の巣窟」といわれた。自粛自粛、統制統制という波の中で、自由主義などというのは禁句という空気が満ちていました。
そのことと関連して、特攻隊で亡くなった上原良司という慶應の学生が書き残した「所感」と題する手記を展示しています。
上原良司の「所感」と題する手記は、上原が特攻隊員として鹿児島県の知覧から出撃する前夜に書かれたもので、
『新版・きけわだつみのこえ』(岩波文庫)の巻頭を飾っていることで有名です。
この文章の中では「自由」あるいは「自由主義」という言葉がたびたび記されています。最後の一節「明日は自由主義者が一人この世から去って行きます。彼の後姿は淋しいですが、心中満足で一杯です」という部分は、涙を禁じ得ない。信ずるところを臆せず述べる。悲しいながらも凛とした態度には感服させられます。
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