グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

命のバトンタッチ(キイロスズメとヤドリバエ)

2009年11月12日 | 
数日前のある朝、グローバルでスタッフ全員が呆然となる事件が起きました。

事の発端は、海スタッフが拾ってきた上の写真の幼虫です。
薄緑の芋虫で「何だろうね?」と話しているうちに何だかあまり美しくない色に変身してしまいました。
変身後の写真がこれです。


いったい何の幼虫なのか、いくら調べてもさっぱりわからないので、
拾ってきたスタッフが幼虫図鑑というWEB上の図鑑に問い合わせをしてみました。すると
「キイロスズメの幼虫でしょう。でもこのような体色は初めて見るので幼虫図鑑に掲載できるのでは?」
というコメントが返ってきました。

「なるほど~珍しいんだ。地域変異かな?」
そんな話をしている間に幼虫はサナギになりました。
でも本来は土に潜ってサナギになるはずなのに、ちっとも潜らず土の上にドテーっと寝たままです。

さらにサナギはどんどん黒っぽくなっていきました。

「来年の春、無事に成虫になれるのかな?体調悪いんじゃないの?」
「いや~黒いサナギなんじゃないですか?」そんな会話を何度となく繰り返したある日の朝…。

スタッフの一人が叫びました。
「あ!サナギから虫が出て来てる!」
「エーッ?!!」
(虫の苦手な方は、この先は読まない方が良いかもしれません・笑)

ウジ虫のような白い虫がサナギの体の一部に穴を開け、次々に出てきてはすぐに土に潜っていきます。
キイロスズメの羽化を楽しみにしていただけに、あまりの惨状に朝の店内は大騒ぎとなりました。


よくよく見ると、白い虫には黒い眼らしきものがあって結構可愛いのですが、
場面全体が悲惨すぎて(スタッフ全員キイロスズメに情が移っているので)可愛さを観賞する余裕はありません。


ショックから少し回復して知的好奇心(?)にかられたスタッフから「中身がどうなっているのか調べよう。」
という声が上がり、解体してみることになりました。

その結果…。


サナギの中身はドロドロに溶け、その中にまだ白い虫が這っていたのでした…。

調べた結果、白い虫はヤドリバエの幼虫であることがわかりました。
日本には450種ものヤドリバエがいて、全ての種が他の昆虫の内部に寄生して過ごすのだそうです。

ヤドリバエは寄生する虫の体に直接卵を産みつけたり、ごく小さな卵を産んで葉ごと食べさせたり、
じっと待ち構えていて相手が通った時に体に取り付いたり、という様々な戦略を持っているようです。
すごいですね~。

キイロスズメはヤドリバエに寄生されていたから、元気がなく体色もおかしかったのですね。
食うか食われるかの世界って、本当に厳しいです…。

この報告を陸ガイドスタッフ間のMLにのせたところ、下記のコメントが届きました。

「ウジ虫はどこにでもいて驚かされますね。カメの産卵巣の孵化調査で、深い土の中で
死んだ子ガメから出てくることもあります。これも、生まれ変わりでしょうか。」

なるほど~、生まれ変わりですね!
ひとつの命が別の命を支えていくのですね。
確かに!

そう思ってみれば、今回の惨状も価値ある瞬間のように思えてきます。
命のバトンタッチの瞬間に出会えたのですから。

(カナ)
コメント (11)
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