浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

家永三郎

2014-05-11 19:43:28 | 読書
 尊敬する人物を挙げよ、といわれたら、ボクはまず田中正造と答える。では二番目はと問われたら、迷うことなく家永三郎と答える。

 浜松市図書館が新刊として購入した本は、すぐに誰かに貸し出され、読みたいと思ってもすぐには読めない。先に予約した人が読み終わったあとにまわってくる、だから待たなければならない。

 浜松市の図書館にアクセスして新刊を見た。すると『家永三郎生誕100年 憲法・歴史学・教科書裁判』(日本評論社、2014年3月30日発行)が目についた。誰も借りていない。家永三郎先生に関する本を誰も借りないというのは、大いに問題だと思い、ボクが借り出し、今日それを読み始めた。

 そこには懐かしい名前が並んでいた。

 まず巻頭は鹿野政直先生。ボクは法学部生であったが、文学部の鹿野先生の「日本史研究」という講義に潜り込んでいたことがある。鹿野先生も高齢となられたが、今もお元気で活躍されている。またここに記された文も、鋭い問題意識と現実認識をもとに、広範な知的蓄積を背景にした名文である。

 そしてその他、永井憲一先生。ボクは大学の講義はほとんど出席せず、サークル活動その他に邁進していた。4月にすべての講義を聴き、これは聴くべきだと判断した講義だけを聴くようにしていた。その中の一つが、永井先生の教育法の講義である。情熱的な講義で、この講義で先生が紹介された本は、すべて購入して読んだ。まだお元気のようだ。

 浪本勝年氏。大学では、裁判問題研究会に参加していた。研究テーマに、家永教科書裁判をとりあげたことがあり、浪本氏に来ていただいたこともある。
 なお6月にはその研究会のOBOG会が行われる。今大学にその研究会はないが、「卒業生」は各界で活躍している。

 ボクはこの教科書訴訟については、「教科書検定訴訟を支援する全国連絡会」に参加し、裁判の傍聴を行っていた。法廷では、決して丈夫そうでない家永先生、その傍らには、いつも大江志乃夫先生がついていたことを思い出す。

 さて家永氏が書かれた本は、たくさん読んだ。それらは今も所持している。一つだけ紹介すると、岩波書店から刊行された『太平洋戦争』、戦時中のみずからのあり方(「傍観者であった」)を深く深く反省し、なぜあのような無謀な戦争を起こしたのか、なぜそれを阻止できなかったのかという鋭い問題意識をもって書かれたものだ。

 鹿野先生は、短い文ではありながら、家永先生の学問のありかたをきちんとまとめられているのだが、この『太平洋戦争』の紹介のところまで読み進んできたところで、ボクは活字を追うのをやめざるを得なかった。なぜか。先生が渾身の力を振り絞って書かれたにもかかわらず、今また戦争の足音が聞こえてきているからである。

 歴史家としての責任を痛感し、当該期の歴史的課題をみずからの学問に組み込み、その学問的真実のために教科書を書き、検定に抵抗し、時代の闇と闘い続けた家永先生。

 鹿野先生は、文の末尾で「家永が没して11年、私たちは、彼の闘いの成果が崩されようとする状況のなかにいる。良心・思想・表現の自由への圧迫が、日増しに強化され、戦争のできる国への転換が、急ピッチで進められている」とし、家永先生の『太平洋戦争』の英訳本の書名が、Japan's Last Warであったことを紹介して、太平洋戦争が「はたしてLast Warとして止まるかどうかが、脅かされている段階にある。それをどう乗り越えるか、家永三郎の眼は、私たちを厳しく見つめているにちがいない。」と結ぶ。

 重い言葉である。家永先生の謦咳に接したり、著書を読み薫陶を受けたすべての人は、この鹿野先生の末尾を銘記する必要がある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

低線量被曝がどういう結果を招くか

2014-05-11 08:25:52 | 社会
 チェルノブイリの事故後、その地域にどういうことが起きているかを知っておく必要がある。普通だったら、すでに先例があってどういう事態が起こるかが予測されるわけであるから、否定すべき事態を引き起こさないためにどうすればよいのかは、わかる。しかし福島では、そうした対策はとられない。そうではなくて、チェルノブイリ周辺よりも悪い環境の下、住民を生活させている。モルモットにしようとしているのかもしれない。

 下記には、チェルノブイリの今が映されている。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1765
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どんな体制でも、それを支えようとする人びとがいる

2014-05-11 07:34:10 | 社会
 漫画『美味しんぼ』をめぐって、いろいろな情報が乱れ飛んでいる。まずこれ。福島は今も放射線量が高い。しかしそれでも健康被害は出ないと、政府は強弁している。住民の不安はどうでもよいというわけだ。これに関しては、ウクライナの住民対策よりも低水準で推移していることは周知の事実だ。

残念で悲しい…「福島鼻血」漫画で環境政務官
読売新聞5月8日(木)20時2分

 漫画雑誌「ビッグコミックスピリッツ」の4月28日発売号に掲載された「美味(おい)しんぼ」(作・雁屋哲、画・花咲アキラ)で、福島県を取材してきた登場人物が鼻血を出すなどの表現があった件について、環境省の浮島智子政務官は8日の記者会見で、「とても残念で悲しいことだ」と述べ、遺憾の意を示した。

 浮島政務官は、「福島の人も一生懸命頑張っている。言論の自由もあると思うが、風評被害対策の観点から影響を考えていただきたい」と述べた。

 環境省も同日、福島第一原発事故に関し、「被曝(ひばく)が原因で住民に鼻血が多発しているとは考えられない」という見解を同省のホームページに公表した。この事故で、住民に鼻血といった急性障害などの影響は認められない、とした国連の報告書を引用した。

 同省は、福島県が実施している県民健康調査を通じて、放射線の住民への影響を調査している。


 ところが、それに対して前双葉町長が批判する。

<「美味しんぼ」問題>前双葉町長が批判 石原環境相発言
毎日新聞5月10日(土)0時2分

 東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが鼻血を出す漫画「美味しんぼ」の描写で小学館に抗議が寄せられている問題を巡り、作品に実名で登場した前福島県双葉町長の井戸川克隆さん(67)が9日、東京都内で記者会見し、「実際、鼻血が出る人の話を多く聞いている。私自身、毎日鼻血が出て、特に朝がひどい。発言の撤回はありえない」と述べた。石原伸晃環境相が同日作品に不快感を示したことについて「なぜあの大臣が私の体についてうんぬんできるのか」と批判した。

 一方、作者の雁屋哲さんは同日、自身のブログで「書いた内容についての責任は全て私にあります」とし、小学館の編集部に抗議しないよう求めた。【野島康祐】



 そしてこの『毎日新聞』の記事に対するネット上のコメント。左側の数字はその意見に「同感」した人の数。政府の意見に同調するものが多いことが分かる。この傾向は、変わらない。根拠なく体制を支える熱意を持った人びとが多いようなのだ。

168点 悪意に満ちた風評被害を煽る描写、廃刊にしてもいい

144点 子供が見たら本気にする。好きだったけど、悪書になったね

98点 捏造鼻血漫画家

88点 福島在住の物だが、頻繁に鼻血出してるやつ見たことないけど。

80点 遅々として問題解決が進まんのも残念だけどね

67点 風評被害と言って、真実や事実を隠ぺいするのも・・どうかと思う

52点 残念 残念 国民には真実を知る権利がある ごまかすな

45点 鼻血出るほど被曝したら100%死ぬよ放射能なめんなよアホ作家

44点 そんなに封印したいんか。怪しい

30点 友人が事故後何回も鼻血を出し去年心筋梗塞で死亡した
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「母の日」

2014-05-11 07:17:15 | 社会
 今日は「母の日」だそうだが、ボクの場合は、だから何?という感じである。

 しかし、下記のニュースをみると、さもありなん、と思う。だって、日本ほど庶民に冷たい政策を行っている国はない、「母」であろうとなかろうと、庶民に対しては教育に係る経費でも、日本ほど私費に依存している「先進国」はないし、いずれにしても庶民を大切にしない国のトップを走っている。

 生活保護費でも日本の支給は全く不十分なのに、それを問題にせずして、生活保護家庭の生活を庶民に監視させるようなことをする。お互いに足を引っ張らせて、庶民の生活を下へ下へと下降させていく。

 先日のNHKのドキュメント、女性の貧困をとりあげていたが、一家3人(母、高校生、中学生)がネットカフェで生活していた、すべての生活は貧困そのものを映し出していて(もちろん母も、高校生も働いていたのに・・)、中学生はほとんど登校していないようだったが、そういう家族にも援助の手は差し伸べられない。そういう家族がフツーの生活すらできないような国なのである。

 時事通信の配信記事。

「母に優しい国」、日本32位

時事通信5月10日(土)15時44分

国際NGOのセーブ・ザ・チルドレンは「母の日」の11日を前に、「母親に優しい国」(母親指標)の最新ランキングを発表。日本は先進7カ国中で最下位の32位で、「最も優しくない国」はソマリア(写真)だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする