定期的にチェックをしている、VOUGE Japanのサイトに興味深いインタビューが掲載されている。
VOUGE Japan:アルベール・エルバスが語る、「今のファッション界に必要なこと」
ファッション誌の中でも、一目置かれる存在がVOUGEである、ということはご存じの方も多いと思う。
仕事でファッションとは無縁!と思っている方でも、読まれている方は多いのではないだろうか?
なぜなら、「ファッション」そのものが、「社会を映す鏡」のような役目をしているからだ。
と言っても、別に「服飾が社会を映し出している」というわけではなく、その時々の社会の雰囲気のようなモノを「服飾」というカタチで表現をしている、という感覚でとらえることになると思う。
特に「女性のファッション」は、女性の生活志向などが反映されることも多い、と感じている。
とはいうものの、ここ何年も「トレンド」と呼ばれるような「流行」が、ファッションの世界から生まれていないようにも感じている。
「バブル景気」が始まる直前、アズディン・アライアが発表した「ボディ・コンシャス」で肩を強調したファッションは、日本では「ボディコン」と呼ばれ、時代に呼応するかのようにファッションの世界を席巻した。
その流れの反対ともいえるデザインで一躍「時の人」となったのは、「スラウチ」という肩を強調しないナチュラルなデザインのジョルジオ・アルマーニだった。
その後、ファッション業界でもブランドの再編が行われ、多くのブランドがLVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)の傘下に入るコトになり、ファッションそのものがLVMH社のコントロール下に置かれるようになってしまった感があり、同時にファッションの持つ自由さや多様さが、失われてしまったようにも感じている。
そのような状況の中で、ランバンのアーティスティックディレクターを長い間務めていたアルベール・エルバスの「『今』ではなく、『なぜ』にシフトした発想が必要」という言葉には、説得力を感じる。
そしてこの「『今』ではなく『なぜ』にシフトする発想」は、ファッション業界だけに限ったことではない、と思うのだ。
特にマーケティングという視点で考えた時、多くのマーケターは「なぜ?」という、疑問符をたくさんつけながら市場を見ているのではないだろうか?
そこに明快な答えがあるわけではないが、「なぜ?」という問いかけは「トレンド」のように、次々と来ては去るようなものではない。
生活者を見続ける中から生まれてくる「疑問」なのだ。
その代わりに「なぜ」という、疑問を持ち続けるということは、目先の売り上げを追いかけるには、やや効率が悪いかもしれない。
「なぜ」という疑問の解答は一つではないからだ。
ここ1,2年の社会全体に感じるある種の「閉塞感」というか、個人に対して厳しい全体主義的な社会的雰囲気の中では、「なぜ」という意識は難しいのかもしれない。
社会の雰囲気に沿って、データで検証をし、そのデータを基にする方が、効率的でそこそこの売り上げが見込めるからだ。
ただ、そんな思考から生まれた商品やサービスは、生活者からは忘れ去られ易いと考えている。