日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

福祉作業品と一般商品の価格

2021-11-18 20:12:25 | マーケティング

先週末から、独居老人の父の「ご機嫌伺い」という名の、様子見の為に帰省をしていた。
実家の父は、強力なご近所力支援などで元気な様子だった。
そして、今年のお盆が雨続きでお墓参りができていなかったので、お墓参りもしてきた。
その帰り、いつものようにお土産を買いに、駅構内のお土産店が並ぶショッピングモールで買い物をしていると、見慣れないコーナーがあった。

「朝食コーナー」と銘打った売り場なのだが、「ご飯派の方はこれ!」「パン派の方へのおすすめ!」とそれぞれ、お勧め商品があり、地元の食材を使った瓶詰やジャムなどが、小さな売り場ながら分かりやすく、手に取れるようになっていた。

その中で特に目を引いたのが、「トマトのジャム」だった。
そもそも「トマトのジャム」という商品を見たことが無かった、というのが大きな理由なのだが、このトマトを作っているのが、就労支援を行っている「アグリプラント甲斐の木」という農業団体で、ジャムを作っているのが県外の同じく社会福祉法人だったからだ。
ちなみに販売者が、江津市のコンクリート工業だったことも、衝撃的だった。

この「トマトのジャム」だが、値段としては決して安価ではない。
これまで福祉施設などでつくられた商品というのは、通常よりも安価であることがほとんどだった。
それは、「障害者が働く=一般商品と同等ではない」という、社会通念のようなモノがあったからだ。
そのような価値観が、変わろうとしているのだな~という気がしたのだ。

そのような動きは、この就労支援を行っている農業団体だけではない。
愛知県豊橋市に本社を置く、チョコレート専門店「久遠(QUON)」も、生きづらさを抱えた障害者たちが、美味しいく特徴的なチョコレートを作っているが、決して安価な値段で販売をしていない。

これらの企業に共通しているのは、「障害者が一般流通商品と同等もしくはそれ以上のモノをつくっている」という思いがあり、それが価格に反映しているのだ。
確かに、どちらも美味しい商品であるコトには変わりなく、購入する生活者からすれば、つくっている人たちが障害を持っている人か否かということは関係が無い。
生活者が「適正価格である」と判断できる商品である、ということが何よりも重要なのだ。

今後、このような福祉型就労支援が全国に広がっていく可能性は高い。
その時、これまでの社会通念で「福祉作業所の商品」という目で見るのではなく、目の前にある商品そのものの価値が分かるような生活者となっていく必要があるだろうし、そのような市場の仕組みを作っていく必要があるのでは?と、感じている。