日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「Go To Travel」よりも、効果がありそうな小田急線の子ども運賃改定という施策

2021-11-08 19:43:53 | ビジネス

ネットニュースなどで「小田急線の子ども運賃改定」が、話題になっている。
朝日新聞:子ども運賃一律50円に 小田急電鉄「沿線に長く住んで」

私自身は、東京および東京近郊で生活をしたコトが無いので、今回の小田急電鉄の施策にあれこれという立場ではないかもしれない。
ただ、アイディアとしてとても面白い試みなのでは?という気がしている。

その理由は、鉄道会社として「家族で利用してもらいたい」という考えであれば、それなりの効果があるのでは?と考えるからだ。
自家用車で移動することが当たり前になっている背景には、「家族で出かける時の交通費」という問題がある。
大人2人に子ども2人で鉄道を使って移動するよりも、自家用車で移動したほうがガソリン代と高速代を含めても安い、という理由があると思う。
確かに家族そろってチョッと遠出をするとなると、いくら子ども運賃が大人の半額だからと言っても、それなりの費用が掛かってしまう。
この運賃=移動費の高さが、公共交通機関である鉄道を利用する、というハードルを上げてしまう理由の一つなのでは?

それだけではなく、お子さんが小さいと電車の中でじっと座っていることが中々難しく、じっとしていない子どもに苛立つ大人が嫌な顔をする、ということもあるだろう。
子どもが電車内で騒ぐことを心配する親御さんもいるだろう。
それが電車移動のストレスとなってしまい、利用することに躊躇させる一因となっているのでは?

かつての様に、自家用車そのものがほとんどの家庭に無かった時代は、公共交通機関で移動するしか方法が無かったため、大人は電車内ではしゃぐ子どもの見ても「あ~電車に乗るのが、うれしいんだな~」と、微笑ましく見ていたような気がしている。
もちろん、度を過ぎた騒ぎ方をすれば「静かにしなさい」と注意されることはあったはずだが、そのような経験を通して「色々な人がいる場所では、騒いではいけない」ということを体験してきたような気がする。
今ほど、直情的な言葉遣いや態度を示す人が少ない、のんびりした時代でもあったかもしれないが、子どもの頃から「公共の場での振舞」ということを学ぶ場所でもあったような気がするのだ。

今回の小田急電鉄の子供運賃の引き下げは、「家族で出かける」というきっかけづくりになるのでは?と、思うのだ。
以前から拙ブログに書いているのだが、鉄道会社はもっと積極的に「家族利用」をし易いプランの提案をすべきだと思う。
そうすれば、電車での家族旅行が身近になり、家族そろって顔を合わせて話をしながら出かける楽しさを知ることにもなるし、そのような思い出が積み重なることで、沿線そのものが活気づくとのではないだろうか?

小田急電鉄の狙いは、親から子へ孫へと世代を超えて沿線に住んでもらい、電車を利用してもらいたい、ということもあるようだが、子どもの頃の楽しかった思い出の積み重ねは「小田急電車」というブランドに親しみを持たせ、特別なブランドへと特化する仕掛けでもあるのでは?

それらは国が再び始めようとしている、「Go To Travelキャンペーン」よりも遥かに継続性があり、沿線地域に経済効果をもたらせる可能性があるように感じるのだ。


データを見ることについて

2021-11-07 21:58:06 | マーケティング

Yahoo!のトピックスに、「どうなのかな?」という記事が、取り上げられていた。
取り上げられていたのは、先日婚姻届けを出された小室夫妻の「結婚」についてだ。
bizble: 「眞子さんの結婚に賛成」と考えるZ世代女性のの理由は?既成概念より大切な「多様性」

最初に気になったのが、マーケティングなどの市場調査で使われる「Z世代」についてだ。
この「Z世代」と呼ばれるのは、「ミレニアム世代」の次の世代で、日本では「1998年頃~2012年頃生まれ」を指している、と言われている。
年齢の幅が広すぎて、フンワリとしたイメージすら浮かばない方もいらっしゃるのでは?という気がしている。
何故なら「小学生から社会人まで」を対象としているからだ。
ボリュームゾーンと言われる中心年齢は、おそらく高校生~20代前半なのではないだろうか?
この世代に「結婚観」について、リサーチをしても「結婚への憧れ」はあっても、「結婚そのものへの現実味」という点では、疑問に感じる。

今回の「小室夫妻の結婚」に関して、その過程において疑問を呈していた人たちというのは、「Z世代の親以上」だと考えれば、「Z世代の意見(=結婚への憧れ)」と「Z世代の親の意見(=結婚という現実を知っている)」とでは、その意見が大きく違って当たり前なのだ。
当然のことながら「Z世代の親」は、経済的な厳しさはもちろん、社会の規範などを知っており、今回問題だと感じている人たちの多くが、その「経済的な厳しさや社会の規範」という点で疑問を呈していたからだ。
確かに、「自分の思いを貫き通した恋愛結婚」は、「結婚に対しての憧れ」の要素の一つとなるかもしれない。
その点で「Z世代」が、「初志貫徹」のような思いでの恋愛結婚は、素晴らしいと感じると想像することはできる。
だが、それが「Z世代の考えや意見なのか?」というと、疑問でもあるのだ。

というのは、この筆者が「自分の周囲では」ということを話している点と、「初志貫徹の恋愛結婚に共感する」とした参考データだ。
「自分の周囲」というのは、自分と価値観が近い人たちが集まりやすい、という傾向がある。
言い換えれば、自分と同じような意見や共感が得やすい、ということなのだ。
この後筆者が「多様性」ということを書いているが、「多様性」を論じるのであれば、自分の周囲からの情報は排除する必要がある。
そして「参考データ」として取り上げているのが、女性週刊誌のデータという点だ。
ご存じの方もいらっしゃると思うのだが、参考データとしている「女性自身」の姉妹誌は、「JJ」だった。
「女子大生~女子高校生のファッションのお手本」と言われ、10年ほど前は「赤文字雑誌」と呼ばれた、若い女性向けファッション誌だ。
そして「JJ」の特集などには、「女性の幸せ=結婚」のようなところがあった。
とすると、調査対象者そのものが「結婚に対して憧れが強い」読者と考えられる。
もしこれが、「anann」や「WithやMORE」のような、違う価値観を持って編集をされている雑誌のアンケート結果であれば、違うデータとなっていた可能性もある。

今回のような調査を基に「Z世代に聞く小室夫妻の結婚」を論じることに、ある種の危険性を感じるのだ。
何故なら、メディアなどの媒体を通してこのような「データの素」を知ることなく、あたかも「Z世代の意識調査」のような書かれ方をすると、多くの生活者は「そうなんだ~(という疑問を持ちながら納得する)」とか「これだから、今の若者は」等という、単純な論調を創り出してしまう危険性があるからだ。

その後の「多様性」や「#ME TOO」についても、「Z世代の価値観」なのだろうか?と、個人的に感じる点が多々ある。
少なくとも「意見の一つ」だと見たほうが良いようだ。


「コロナ禍」で女性の自殺者が増加、女性だけの問題なのか?自己責任で済ませられる問題なのか?

2021-11-03 12:36:47 | アラカルト

日曜日の衆議院選挙の結果、自民党が安定過半数を獲得したことで、当面の間は自民党総裁である岸田さんが首相として、「日本の政治の顔」となる。
今回の選挙で、岸田さんは「新しい資本主義」という言葉を掲げ、「成長と分配」という話をしていた。
この「分配」については自民党だけではなく、議席数を減らした立憲民主党も掲げていた公約だった。
ところでこの「分配」というのは、何を指しているのだろう?

多くの場合、低所得者層への「現金支給」であったり、「高校までの学費の無償化」であったりということになるようだが、現金支給をするにしても赤字国債を発行している日本に、その財源はどこにあるのだろう?
何より、岸田さんが掲げた「新しい資本主義」とは、一体どんな「資本主義」なのか?その説明が十分にされていない様に思うのだ。

そのような話が出ている中、「働く女性の自殺者が増加している」という問題が、昨年から起きている。
日経新聞:新型コロナ 働く女性の自殺が増加 21年版白書 コロナ禍も影響

男女比のデータでは、男性の方が多いのだがこの場合「数字」ではなく「推移」という視点で、考える必要がある。
何故なら「働く女性の生活環境の変化」と「働く女性が置かれている問題」という、2点があるからだ。
これは「データを読む」コツでもあるのだが、数字だけを見て「多い・少ない」という視点で見ていると、社会的変化やその調査対象となった人・モノが置かれている社会的問題などを、見落とすことがあるからだ。
男性の場合、元々女性よりも自殺者が多かった。
それが良いわけではもちろんない。
自殺者がどのような問題を抱え、自殺を選ぶ動機となったのか?ということは、キチンと分析をし対策をしていかなくてはならない。

一方女性の場合、この「コロナ禍」になったことで、急激に自殺者が増えたとすれば、女性の自殺には「コロナ禍」が大きく関わっている、ということになる。
「コロナ禍」によって、何が変わったのか?
多くの方々が指摘されているように、働く女性の場合男性よりも約3割給与が安いと言われている。
元々安い給与の上、非正規雇用という不安定な状態で仕事をしている女性が、圧倒的に多い。
それに加え「コロナ禍」によって、ダメージを受けた業種で働く割合が多いのもまた、女性なのだ。

「コロナ禍」は、世界全体の経済に与えたダメージが大きく、日本の働く女性だけの問題ではない、という指摘をされる方もいらっしゃるだろう。
だが上述したように、男性と女性との給与差、正規雇用者よりも低い給与で働く非正規者という、日本独特の問題が以前からあった上に「コロナ禍」がのしかかってきたのだ。
その上で、当時の菅総理は「自助」ということを、常に強調していた。
「自分のことは自分で何とかしなさい」という意味だ。
それは「自己責任だから、仕方ないでしょ」と、国が言っているようなモノなのだ。
このような、八方ふさがりの状態に追い込まれ、「我慢の糸がプツンと切れ」「誰も助けてはくれない→自分の存在価値など無い」と、精神的に追い込まれてしまったのでは?と、想像するのだ。

「新型コロナ」によって、経済だけではなく人の心まで、大きなダメージを受けてしまっている。
経済の回復への期待だけでは、根本的な経済を含めた社会的な回復にはならないのではないか?と、感じている。
果たしていまいち説明がされていない、岸田さんの「新し資本主義」には、その答えがあるのだろうか?


昨日の「衆議院選挙」で見えてきたこと

2021-11-01 12:04:00 | アラカルト

昨日行われた、衆議院選挙。
ふたを開けてみれば、自民党が「安定過半数」を確保。
選挙前に予想されたいた、「自民党苦戦」とは違う結果となった。
かつて大物自民党議員の「(選挙に興味が無い有権者は)寝てくれていればいい。けどそういう訳には行かないでしょうね」と言ったが、自民党の強みは固定的な支持団体がある。
そのため、投票率が下がれば下がるほど、自民党にとっては優位になる、ということなのだ。
その視点で考えれば、過去最低から3番目という投票率は、「自民安定過半数」は納得できる結果だったのでは?と、考えている。

その一方で、衝撃的だったのが「絶対当選」と思われていた「大物議員」が、落選している。
その中でも、「派閥の領袖」とか「大臣経験」がある「世襲議員」の落選は、今回の衆議院選の変化だったかもしれない。
石原伸晃さん、よ後藤田正純さん、何より甘利明さん、小沢一郎さんだろうのような、日本の政治の中心で活躍(?)していた議員の落選及び復活当選だろう。
小沢さんに至っては、これまで「小沢大国」と呼ばれる程、選挙活動をしなくても当選確実、とすら言われていた。
その小沢さんが比例区で復活当選ということは、有権者の考えが変わった、世代が変わった、ということだろう。
もっとも、「新型コロナ」の感染者が日々増加し、自宅療養を強いられ自宅で亡くなるという問題が起きている最中、石原伸晃さんは、ご自身の感染が判明し、「既往症がある」という理由で即入院治療を受けられた、という「上級国民」扱いが、有権者の不満を買ったのでは?と、考えている。

ただ、後藤田正純さん、甘利明さんと小沢一郎さんの3人は、比例区で復活当選をしている。
これまでも「比例代表」への重複立候補の「復活当選」に、疑問を感じている有権者は多かったのではないだろうか?
というのも重複立候補による「復活当選」は、有権者の一票決まった当選ではなく、政党の都合による名簿順だからだ。
有権者が「NO!」と言った候補者が、議員として「国民の代表」となるのだ。
他にも、有権者が「議員としての資質に疑問を感じている候補者」が、名簿上位にいることで、図らずも「国民の代表」となってしまう場合がある。
政党側にとって都合の良い候補者を、名簿上位にしている為に起こる現象なのだが、それが民意を反映した議員と言えるのだろうか?

一方、議員の世代を含め様々な交代と感じさせたのは、石原伸晃さんを破った吉田晴美さんだろう。
年齢が40代ということだけではなく、女性立候補であったこと。
いわゆる「地盤・看板・カバン=世襲候補者」ではなく、様々な人生の困難を感じてきたという経験が、有権者の共感を得たのでは?という気がする。
報知スポーツ:石原伸晃氏を破り初当選の吉田晴美氏は超苦労人!実家が火災、がん闘病、娘の自閉症、母の介護20年…
海外の大学院で学び、海外の金融機関で海外赴任の経験という華やかな経歴とは裏腹に、がんの闘病や自閉症の子どもを育てたり、20代での介護経験等は、これまでの議員候補とは全く違う「苦労人」という印象がある。
単に、海外の大学院への留学経験や海外の金融機関での勤務と海外赴任という、華やかな経歴だけでは「あ~、そういう人なんだ」だけで終わっていただろうし、候補者として立てた立憲民主党に対しても「やはり、こういう経歴の人が好きなんだ」という、反感のようなモノもあっただろう。
それが、様々な苦労をしてきたという経験が加わると、「頭もよく、行動的で、人生の苦労を知っている」という、共感性に変わる。

おそらく吉田さんへの期待は、想像以上に大きいのでは?と思うのだが、このような「様々な経験をしてきた人」が、政治に携わることで、日本の政治もゆっくりとだが変わっていくのかもしれない。