「近江商人」の代表的な商人は、高島商人・湖東商人(五箇荘)・八幡商人・日野商人などがあり、現在に至っても近江商人発祥の大企業が幾つも残ります。
その中の日野商人は「万病感応丸」を関東や東方地域に売って財を成したといい、「旧正野薬店」を改造した「日野まちかど感応館」は江戸時代の佇まいを残す建物として観光案内所になっています。
「日野まちかど感応館」のギャラリーTUTUMUでは、写真家・川内倫子さんが甲賀市甲南町にある障害者福祉施設「やまなみ工房」での約1年間の日々を切り取った写真展と「やまなみ工房」の作品展が開催されました。
近江日野商人ゆかりの地で開催されるアールブリュット作品展・工房での日常を切り取った写真と映像のコラボを体感すべく日野の町へと足を運びました。
近江商人は伊藤忠商事や丸紅、西武や高島屋などの大型店舗を都市部で展開したとされますが、日野商人は地方で沢山の小型店を出店していったといいます。
いわゆる百貨店方式の商店とコンビニ方式の商店と商法の違いがあったようです。
最初は地場産業の日野椀を売り歩いていたとされますが、正野玄三の「万病感応丸」の大ヒットにより日野の町に潤いをもたらしたといい、感応丸は現在も販売中です。
会場となった「日野まちかど感応館」は、日野売薬の創始者となった旧正野薬店の店を利用した建物で、日野の薬業や町並みのシンボルとなっています。
薬棚に詰められた生薬と薬の加工道具が並ぶ部屋では、係りの方から丁寧な説明が聞け、日野の歴史が少し理解出来ました。
本題に入りますと、川内倫子さんは滋賀県生まれの写真家で「第27回木村伊兵衛写真賞」受賞を受賞されている方なんだそうです。
木村伊兵衛写真賞は「写真界の芥川賞」とも呼ばれる賞で過去の受賞者には、“藤原新也・星野道夫・今森光彦・蜷川実花”など著名な写真家がおられます。
展示写真は「やまなみ工房」での日常を写したものですが、リアルさを追求したというよりもありのままを切り取っているという印象がある。
露出をオーバー気味に撮っている写真が多く感じられ、言葉でうまく表現できないがフワフワしたような世界感のある写真との印象を受けました。
「やまなみ工房」はアールブリュットの美術展によく出品のある有名な作家が多い工房で、展示作品が予想以上に多かったのは嬉しい誤算です。
やまなみ工房には6つのグループがあり、粘土や絵画の創作活動を行う「ころぼっくる」、刺繍や絵画に取り組む「スタジオこっとん」、散歩や健康づくりをしながら創作活動を行う「ぷれんだむ」。
地域のトイレ清掃を中心に作業する「もくもく」、古紙回収の「たゆたゆ」、施設内のカフェを担当する「hughug」など、その人の個性に合わせた生活をされているそうです。
山際正己さんは30年間で5万体もの作品を造られたといい、1日30分ほどの創作時間以外はダンボールなどの整理をされているという。
縁側の端から端まで並べられた「正己地蔵」は、1体1体は素朴な地蔵さんですが、これだけ並ぶと生命が吹き込まれたような力を感じる。
同じく地蔵を創作されているのは「菜穂子地蔵」の大原菜穂子さん。
極端な言い方ですが、この作品を見た時に円空仏を思い出しました。
これまでに造った作品は2万点にも及ぶといい、それぞれの地蔵さんの表情は同じように見えて、みな違った表情をしている。
綺麗好きで整理整頓の人だそうで、ダンボールの整理をする山際さんと整理が好きなのは共通点がありますね。
“恋する女性”ともされる鎌江一美さんは、恋する人へ毎日ラブレターをつづり、作品を見て欲しい、褒めて欲しいと作品を造られているという。
10年ほど前から全ての作品に「まさとさん」が登場するといい、工房ではみんなの優しいお姉さん的存在だといいます。
吉川秀昭さんの「目・目・鼻・口」は、突起状の粘土細工にミクロレベルの点々を抽象的に刻んでいます。
当方の目では細かすぎてよく見えませんが、その点々は“目・鼻・口”だといい、膨大な数の顔が表現されている。
「こっとん班」の作品は、刺繍やボタンを使った作品になり、清水千秋さんの「壇蜜」は2年がかりで完成した作品だそうです。
最近では自身のお母さんをモチーフにして作品を造られているといい、近年さまざまな場所で評価が高まり、やりがいを感じて彼女の中で自信につながっているそうです。
鮮やかな布に大量のボタンを縫い付けている作品は井村ももか三の「ボタンの玉」。
布一面にボタンを縫い付けると丸めて、更に上に布を縫い付けてボタンを付けて、それを繰り返す。
完成すると頭の上に乗せて歌い歩くこともあり、工房のみんなの人気者だとか。
無数の模様と文字を鮮やかな色彩で描きあげているのは三井圭吾さんの「ふうせん」。
食事も忘れて絵画に没頭する日もあるという彼の目に見える風景はどう映っているのだろうか。
岡本俊雄さんは、床に寝そべって割り箸と墨汁で描くのが彼のスタイルだという。
溢れ出さんばかりのエネルギーを感じる絵だが、当初は環境に馴染めなかった彼が、創作を始めたのは通所してから10年が経ってからだといいます。
神山美智子さんは1枚の作品を約1年かけて描いていかれるといい、その絵は精密に描かれた5ミリ程度の人の姿が背景となっている。
細かな人の姿は拡大してみると、心地よくダンスしている人にも見え、横たわる犬の姿もあるが、タイトルは「かいぶつ」と付けられた不思議な絵です。
この『川内倫子写真展-いのちといのち-』展は、日野観光協会が主催し、たねやグループが協力しての写真・美術展でした。
たねやグループが発行する冊子『ラ コリーナ』の14号には川内倫子さんの「やまなみ工房」での写真と「やまなみ工房」の作品集が載せられていて、写真集としても図録としても楽しめるものとなっています。
まさに『三方よし』の事業展開ですが、実は「たねや」さんも近江商人の一つになす八幡商人の系譜です。
冊子『ラ コリーナ』14号
日野は酒蔵と清酒販売も盛んだったとされ、最後に立ち寄った「近江日野商人館」は、酒の卸業で財を成した山中兵右衛門邸が活用されている資料館です。
ここでも案内の方が実に丁寧な説明をしていただき、これは五個荘の近江商人屋敷でも言えることですが、地元の方には今も近江商人の心が根付いているからなのかもしれません。
今年の初詣は、亥年にちなんで猪を神の使いとする日野の「馬見岡綿向神社」に参拝しましたが、あの有名な「日野祭」は馬見岡綿向神社の春の例祭だそうです。
800年以上前の歴史を持ち、16基の曳山がある日野祭で奏でられる祭囃子は、京都に近いにも関わらず京風ではなく、日野商人が商圏としていた関東風の太鼓が鳴り響くのにぎやかな祭囃子でした。
その土地に受け継がれてきた文化は地域によって全く違うのが面白いですね。
その中の日野商人は「万病感応丸」を関東や東方地域に売って財を成したといい、「旧正野薬店」を改造した「日野まちかど感応館」は江戸時代の佇まいを残す建物として観光案内所になっています。
「日野まちかど感応館」のギャラリーTUTUMUでは、写真家・川内倫子さんが甲賀市甲南町にある障害者福祉施設「やまなみ工房」での約1年間の日々を切り取った写真展と「やまなみ工房」の作品展が開催されました。
近江日野商人ゆかりの地で開催されるアールブリュット作品展・工房での日常を切り取った写真と映像のコラボを体感すべく日野の町へと足を運びました。
近江商人は伊藤忠商事や丸紅、西武や高島屋などの大型店舗を都市部で展開したとされますが、日野商人は地方で沢山の小型店を出店していったといいます。
いわゆる百貨店方式の商店とコンビニ方式の商店と商法の違いがあったようです。
最初は地場産業の日野椀を売り歩いていたとされますが、正野玄三の「万病感応丸」の大ヒットにより日野の町に潤いをもたらしたといい、感応丸は現在も販売中です。
会場となった「日野まちかど感応館」は、日野売薬の創始者となった旧正野薬店の店を利用した建物で、日野の薬業や町並みのシンボルとなっています。
薬棚に詰められた生薬と薬の加工道具が並ぶ部屋では、係りの方から丁寧な説明が聞け、日野の歴史が少し理解出来ました。
本題に入りますと、川内倫子さんは滋賀県生まれの写真家で「第27回木村伊兵衛写真賞」受賞を受賞されている方なんだそうです。
木村伊兵衛写真賞は「写真界の芥川賞」とも呼ばれる賞で過去の受賞者には、“藤原新也・星野道夫・今森光彦・蜷川実花”など著名な写真家がおられます。
展示写真は「やまなみ工房」での日常を写したものですが、リアルさを追求したというよりもありのままを切り取っているという印象がある。
露出をオーバー気味に撮っている写真が多く感じられ、言葉でうまく表現できないがフワフワしたような世界感のある写真との印象を受けました。
「やまなみ工房」はアールブリュットの美術展によく出品のある有名な作家が多い工房で、展示作品が予想以上に多かったのは嬉しい誤算です。
やまなみ工房には6つのグループがあり、粘土や絵画の創作活動を行う「ころぼっくる」、刺繍や絵画に取り組む「スタジオこっとん」、散歩や健康づくりをしながら創作活動を行う「ぷれんだむ」。
地域のトイレ清掃を中心に作業する「もくもく」、古紙回収の「たゆたゆ」、施設内のカフェを担当する「hughug」など、その人の個性に合わせた生活をされているそうです。
山際正己さんは30年間で5万体もの作品を造られたといい、1日30分ほどの創作時間以外はダンボールなどの整理をされているという。
縁側の端から端まで並べられた「正己地蔵」は、1体1体は素朴な地蔵さんですが、これだけ並ぶと生命が吹き込まれたような力を感じる。
同じく地蔵を創作されているのは「菜穂子地蔵」の大原菜穂子さん。
極端な言い方ですが、この作品を見た時に円空仏を思い出しました。
これまでに造った作品は2万点にも及ぶといい、それぞれの地蔵さんの表情は同じように見えて、みな違った表情をしている。
綺麗好きで整理整頓の人だそうで、ダンボールの整理をする山際さんと整理が好きなのは共通点がありますね。
“恋する女性”ともされる鎌江一美さんは、恋する人へ毎日ラブレターをつづり、作品を見て欲しい、褒めて欲しいと作品を造られているという。
10年ほど前から全ての作品に「まさとさん」が登場するといい、工房ではみんなの優しいお姉さん的存在だといいます。
吉川秀昭さんの「目・目・鼻・口」は、突起状の粘土細工にミクロレベルの点々を抽象的に刻んでいます。
当方の目では細かすぎてよく見えませんが、その点々は“目・鼻・口”だといい、膨大な数の顔が表現されている。
「こっとん班」の作品は、刺繍やボタンを使った作品になり、清水千秋さんの「壇蜜」は2年がかりで完成した作品だそうです。
最近では自身のお母さんをモチーフにして作品を造られているといい、近年さまざまな場所で評価が高まり、やりがいを感じて彼女の中で自信につながっているそうです。
鮮やかな布に大量のボタンを縫い付けている作品は井村ももか三の「ボタンの玉」。
布一面にボタンを縫い付けると丸めて、更に上に布を縫い付けてボタンを付けて、それを繰り返す。
完成すると頭の上に乗せて歌い歩くこともあり、工房のみんなの人気者だとか。
無数の模様と文字を鮮やかな色彩で描きあげているのは三井圭吾さんの「ふうせん」。
食事も忘れて絵画に没頭する日もあるという彼の目に見える風景はどう映っているのだろうか。
岡本俊雄さんは、床に寝そべって割り箸と墨汁で描くのが彼のスタイルだという。
溢れ出さんばかりのエネルギーを感じる絵だが、当初は環境に馴染めなかった彼が、創作を始めたのは通所してから10年が経ってからだといいます。
神山美智子さんは1枚の作品を約1年かけて描いていかれるといい、その絵は精密に描かれた5ミリ程度の人の姿が背景となっている。
細かな人の姿は拡大してみると、心地よくダンスしている人にも見え、横たわる犬の姿もあるが、タイトルは「かいぶつ」と付けられた不思議な絵です。
この『川内倫子写真展-いのちといのち-』展は、日野観光協会が主催し、たねやグループが協力しての写真・美術展でした。
たねやグループが発行する冊子『ラ コリーナ』の14号には川内倫子さんの「やまなみ工房」での写真と「やまなみ工房」の作品集が載せられていて、写真集としても図録としても楽しめるものとなっています。
まさに『三方よし』の事業展開ですが、実は「たねや」さんも近江商人の一つになす八幡商人の系譜です。
冊子『ラ コリーナ』14号
日野は酒蔵と清酒販売も盛んだったとされ、最後に立ち寄った「近江日野商人館」は、酒の卸業で財を成した山中兵右衛門邸が活用されている資料館です。
ここでも案内の方が実に丁寧な説明をしていただき、これは五個荘の近江商人屋敷でも言えることですが、地元の方には今も近江商人の心が根付いているからなのかもしれません。
今年の初詣は、亥年にちなんで猪を神の使いとする日野の「馬見岡綿向神社」に参拝しましたが、あの有名な「日野祭」は馬見岡綿向神社の春の例祭だそうです。
800年以上前の歴史を持ち、16基の曳山がある日野祭で奏でられる祭囃子は、京都に近いにも関わらず京風ではなく、日野商人が商圏としていた関東風の太鼓が鳴り響くのにぎやかな祭囃子でした。
その土地に受け継がれてきた文化は地域によって全く違うのが面白いですね。