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実際は、さほど遠くはない場所にある大安寺という臨済宗妙心寺派の寺院の奥の院にあたり、不動明王を本尊としていますから寺院ということになるのでしょう。
美濃地域には「美濃三不動」と呼ばれる不動明王を祀る寺院があり、「迫間不動(関市)」・「山中不動(各務原市)」とこの「日之出不動」の3つの寺院を指すといわれます。
日之出不動尊は巨石を御神体として祀り、数多い石碑には霊神の名が彫られているにも関わらず、観世音菩薩が祀られている独特の空気感があります。
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寺院は(という呼び方に違和感はありますが...)、まず鳥居をくぐって入山することになります。
寺院の平面部はさほど広くはないものの、山の上に向かって広がっており、上の方にものぼりが立っているのが見えます。
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ウィキペディアによると“現在のように鎮座したのは1887年頃というが、それ以前よりこの地域は霊地とされていたという。”とあり、“1914年には奥の院が設置された。”と書かれています。
廃仏毀釈・神仏分離の時代よりも後の年代にこのような神仏習合的な寺院が建てられたところは興味深いところです。
本堂の前には大きな5円玉のモニュメントと打出の小槌があり、弘法大師像が祀られているのも奇妙に思えてしまいます。
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山の上へと登る石段の横には「日ノ出滝不動尊」という修行の滝場があり、修行場の如何にも冷たい空気に包まれています。
岩が赤茶色に染まっていますが、この辺りの山から流れ出る水には鉄分が多く含まれているのでしょう。
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本堂エリアには、本堂の他にも大黒天を祀る祠や奉納された達磨を祀る達磨堂がありました。
驚くのは住宅地とは離れているにも関わらず、次々と参拝者が訪れて来られることでしょうか。
本堂でお経を上げて帰られる方も居られ、信仰する方の多い寺院だということに驚かされます。
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さて、ここからが石段登りになります。
参拝者は多いものの上へ行かれる方はなく独りで登っていくと、この寺院の持つ独特の空気感に少し怖さを感じてしまいます。
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山の上は上中下の3段に分かれており、下段には巨石を御神体に「身代石不動明王」が祀られています。
2つの巨石が微妙なバランスで重なっている姿は「落ない岩」と呼ばれていて、受験生からは「おちないわぁ~」と縁起担ぎのパワースポットになっているとか...。
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更に中段・上段と登っていくと、最上段に御本尊である「御岳大神」の巨石が祀られています。
御岳大神は大日如来と同体と言われており、この岩(大日如来)はこの世界そのものといいます。
寺院の御本尊が巨石とされている寺院はあるとはいえ、御神体として大神を祀るとはまさしく神仏習合の寺院と言えるでしょう。
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この最上部からの景観になりますが、とにかく奉納されたのぼりの多い寺院です。
また、あちこちに奉納された石像や奉納樹がみられることから、信仰の強さに感じ入ります。
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折り返し下段まで降りてくると「見晴天狗」が祀られており、火伏せの神として大岩の上に鎮座しています。
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「行者五代八大龍王」は、龍頭が彫られた石像でした。
下から見上げる位置にありましたが、5頭の龍が確認出来ます。
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日之出不動尊は道路を挟んで両方に寺域がありますが、本堂側と反対の場所には「日乃出 観世音菩薩」が祀られ、山側には数多くの石碑が奉納されています。
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寺院とは名が付くものの、空気感としては神を祀る場所の印象があります。
寺院で時に許容されるような感覚・菩提の弔いといった空気とは違って、冷水を浴びたような冷気と怖さすら感じる空気感は神の世界から受けるものかもしれません。
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