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“男のためのガーデニング”改め

『79億の他人――この星に住む、すべての「わたし」へ』①~ボーダレス・アートミュージアムNOMA~

2021-11-11 07:07:07 | アート・ライブ・読書
 近江八幡市のボーダレス・アートミュージアムNOMAでは秋の企画展として『79億の他人――この星に住む、すべての「わたし」へ』展が2つの会場で開催されています。
世界で79億人いるという違いを持った他人が、いかに多様であるか、いかにコミュニケーションするかという問いにさらされていると案内文に書かれています。

例えば身近な職場環境でも「多様性(ダイバーシティ)」や「コミニュケーション」という言葉がよく語られるようになっていますが、ネガティブな要素の強い環境下では定着したとしても遥か未來の事のように思えます。
今回の企画展では自己と他所の差異が分断や排除につながっていくとの考えの元、13組のアーティストによる表現で多様性とコミニュケーションを考える機会となる美術展です。



写真家・北野謙さんは数十人の人物写真を多重露光させて、多人数の他人を一人の人物として表現されたり、クロモジェニックプリントという技法を使った写真が展示されていました。
《our fece》というシリーズでは、海外や日本の各地で20数名から60人までの人物を重ねた写真となっていて、それぞれの人が融合して存在しない新しい人物を創造しているような写真でした。



最初の写真は「カシュガル旧市街の子供34人を重ねた肖像(中国 新疆ウイグル自治区)」。
北野さんの写真を通じて感じられるのは、多重露光された肖像写真であるにも関わらず、顔に合成感がなく実在する人物の顔のように見えること。



「多良見町立琴海中学校の生徒(女子)60人を重ねた写真(長崎県 多良見町 校庭)」。
中心にいる人を撮った写真ながら、後ろに人がいる写真も何枚か混じっているのでしょう。淡く写る人の顔が印象に残ります。



「岸和田だんじり祭 並松町の人60人を重ねた肖像(岸和田市 並松町)」。
シャーマンかと見誤るような写真ですが、祭りとあって60人もの人の多重露光であったも顔がにこやかに笑っています。



《Unseen Portrait》という作品ではガラスに写真乳剤でプリントした肖像を前に置き、後ろにはすりガラスや昔懐かしい型板ガラスを置いて、多重露光のような効果を狙ったものかと思います。
人が持つと思っている他者との差異は、実はぼんやりとした不明瞭なものかもしれませんね。



金仁淑さんの映像作品は、自身の結婚式を撮ったドキュメンタリー作品で日本・韓国・北朝鮮の文化や儀式を取り入れた結婚式や披露宴の様子が映し出されています。
それぞれ住む国によって思考や文化が違うのですが、披露宴などは3つの国に分かれて暮らしてはいるものの、通じ合う姿は日本の披露宴と同じような盛り上がり方なのに驚きます。



𡈽方ゑいさんは、2018年の「GIRLS 毎日を絵にした少女たち」にも登場された作家さんです。
82 歳になってから絵を描き始めたというゑいさんの絵は、生きた時代の思い出を奔放に明るく描かれています。
今回は孫でイラストレーターのヒジカタクミさんとのコラボで登場です。



大東亜戦争で火の海となった名古屋から子供2人と御主人とで大八車に荷物を乗せて逃げていく記憶をたどった絵。
乳母車を押している人や杖をついている人、防空頭巾をかぶって歩く人などが描かれています。



「山の中のトラの親子」は“ゑいとクミ”のコラボレーション。
トラの夫婦に子供が5匹。ネコと宇宙人みたいなネコの姿も見えますね。



蔵の中での展示は八幡亜樹さんの映像インスタレーションで、ミクロネシア連邦のピンゲラップ環礁にあるピンゲラップ島民の生活をドキュメンタリーのように映し出します。
生活はカーレックによる漁業が中心とのことですが、この島の島民は高確率でモノクロームでしか見えない全色盲の人が生まれるのだという。



映像は、映像を見る島民という形式となり、時に言葉が語られる。
エンディングでの語りでは、ピンゲラップ島から出ていく人が多いのを嘆く言葉が続く。
“出て行った島民たちが恋しいわ”



“もう誰も住もうとしなくなるだろう”



“ピンゲラップ島は近い将来なくなると思う”



蔵の中には誰も来なかったので23分の映像を床に座り込んで見ていました。
「NOMA会場」では多様性を伝える表現が多かったと思いますが、「まちや倶楽部」会場ではコミュニケーション困難な方とのコミュニケーションの可能性へと展開されていきます。...続く。



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