hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「タチコギ」を読む

2008年09月12日 | 読書2

三羽省吾著「タチコギ」2008年7月、幻冬舎発行を読んだ。

祖母の葬式で30年振りに故郷の町を訪れる主人公柿崎信郎は、不登校になった小学4年生の息子を連れていく。貧しくも、生き生きとしていた、あの頃の自分たち。父親として、同じ男の子だったものとして、息子に何を伝えられるか。いやなこと、つらいこともたくさんあったが、光り輝く少年時代と今を交互に描く。


1978年、そこには大きな鉱山があった。しかし、急速に閉山へと進むその中で、炭鉱夫を中心とする現場労働者達と会社の管理者達に、大人も子どもも二分され、格差が厳然として存在する。なにかと差別される柿崎信郎こと「ノブ」たち労働者の息子5人のあきれるようないたずら、悪行、笑いの日々。そのクソガキの日々の背景に背負ったものがけっこう重い。



「少年という生き物は負け方を覚えながら成長するものだ」という言葉が出てくるが、破滅へと向かいそうな危機をはらみながら話は進む。子どもから見た不可解で、なんとなく匂ってくる大人の世界が良くかけている。
774枚の書き下ろし、382ページの大部だが、一気に読んでしまった。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
甘酸っぱい少年時代を振り返る思い出話が好きな人にはお勧め。

子供たちの性格づけはいまいち。主人公のノブはほとんどすべて分かってしまっているのに、やることをやらず、バカばかり。私の子ども時代を考えると、逆に小学4年生では分かりすぎなのかも。えらそうに言うと、大幅に書き直すと良い作品になるだろう。



著者は、1968年岡山県生まれ。2002年「太陽がイッパイいっぱい」で第8回小説新潮長篇新人賞を受賞しデビュー。著書に「イレギュラー」、吉川英治文学新人賞候補に挙がった「厭世フレーバー」がある。






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